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加賀 出会い編 ハッピーエンド

【寮 自室】

数日後、久しぶりの休日。

(教官は今日も捜査に出てるんだっけ)

部屋でのんびりしていると、加賀教官から携帯に電話がかかってきた。

加賀
今、暇だな

サトコ
「え!?な、なんですか急に」

加賀
今すぐ駅前に来い。10分以内だ

サトコ
「駅前って‥ちょっと待ってください‥寮から駅前まで、20分かかります!」

加賀
なら20分以内だ

サトコ
「で、出かけるんですか!?ならその準備も‥」

加賀
遅れたらどうなるかわかってるな

不吉な言葉を最後に、教官からの電話が切れた。

(なんで急に‥もしかして潜入捜査とか?)
(とにかく急いで準備しないと‥1分でも遅れたら、大変なことになる!)

駅前で待ち合わせをすると、

わけがわからないまま、教官にかわいらしいスイーツのお店に連れて行かれた。

【スイーツ店】

サトコ
「こんな素敵なお店があったんですね!知らなかったです」

加賀
俺もちょうど甘いもんが食いたかったからな

サトコ
「教官。今日は確か公安課の捜査の日でしたよね」

加賀
ああ。めどくせぇ任務がようやく終わった
それに、これは前の報酬だ

どうやら、あの時限装置のコードを切る直前の話のことらしい。

(あんな約束、もう忘れられてるかと思ってた‥覚えててくれたんだ)

話ししている間に、さっき注文したケーキセットが運ばれてくる。

加賀
食わせてやろうか?

サトコ
「へっ!?」

加賀
アホ。冗談だ

サトコ
「は、はい‥」

(だから、本気なのか冗談なのか分かりづらいんだって‥)

教官の顔を見ていると、頬が熱くなっていくのを感じた。

(この前の、審査結果発表の日‥教官、頭を撫でてくれた)
(あれから、なんだか変に意識しちゃって‥)

加賀
おい

サトコ
「え?」

加賀
ったく、お前は‥

何か言いながら、教官が私の口元に手を伸ばす。
唇の端についたクリームを拭い、そのまま舐めた。

サトコ
「っ!?」

(な、なな、舐め!!)

加賀
手のかかる奴隷を持つと疲れる

サトコ
「あ‥す、すみません‥」

(‥今みたいにクリームを拭ってくれたあの時は、任務中で‥恋人のフリをしていた)
(だけど、今は‥教官と生徒、なのに)

周りを見ると、カップルが多くみられる。

(私たちも、カップルに見えてるのかな‥教官はスーツだから、無理かも)
(でも‥そんなふうに見えてたら、いいな)

【寮前】

あの後、教官の車で寮まで送ってもらった。
駐車場から寮までの道のりを歩く。

サトコ
「今日は、おいしいスイーツありがとうございました」

加賀
ああ

サトコ
「教官が甘いものを好きだって知ったときは驚きました」
「最初、『奴隷になれ』って言われた時は、なんて人だって思いましたけど」

加賀
人を見るたびビクビクして、小動物を見てるみてぇだった

サトコ
「小動物‥」

加賀
まあ、怯えたお前を追い詰めるのも悪くなかったけどな

(教官らしい‥)

サトコ
「‥私、まだ教官の奴隷のままなんでしょうか?」

加賀
あ?何が言いたい

サトコ
「あの‥できればせめて、もうちょっと」

恐る恐る言うと、教官がまたじっと私を見つめる。

加賀
‥そうだな。そろそろ解放してやる

サトコ
「え?いいんですか?」

加賀
奴隷から駒に昇格だ

サトコ
「こ、駒!?」

加賀
これからもお前は、俺の駒として置いてやる

(奴隷から駒に昇格!?これっていいことなの‥?)
(でも、そばに置いてくれるって‥ちょっと、ううん、かなり嬉しいかも)

サトコ
「だけど‥捨て駒はやめてくださいね」

加賀
それはお前次第だ

サトコ
「ですよね‥」

その時、慣れないヒールを履いていたせいか、ぐらりと体が傾いた。
ハッと気づいた時には、教官が私の体を抱き留めてくれている。

サトコ
「す、すみません‥!」

加賀
‥まだ足が痛むか

サトコ
「え?」

加賀
クズが。お前は無理しすぎなところがあるのを気付いてねぇのか

その言葉は、いつものように蔑んでいるようにも聞こえたけど‥

(でも‥前よりも、少しだけ‥優しい気がする)

サトコ
「大丈夫です。もうほとんど治りました」

加賀
‥‥‥

笑顔を見せると、教官小さくため息をついた。
でも、私を抱き留めたまま腕を解こうとしない。

サトコ
「教官‥?」

加賀
お前は頑丈で何よりだが、だらしないところが多い

サトコ
「はい、すみません‥」

加賀
たとえば‥

教官の手が私の二の腕をつまんだ。

サトコ
「な、何するんですか!?」

加賀
なんでこんなプニプニしてる

サトコ
「気にしてるんですよ!やめてください!」

加賀
あ?お前で唯一褒められるのはさわり心地くらいだろうが

サトコ
「こんなの褒められても‥!」

加賀
まだしごき足りないようだが、身体に関しては、俺の許可なく鍛えるなよ

私の腕や頬をぷにぷにと触りながら教官が睨む。

サトコ
「ど、どうしてですか‥」

加賀
触り心地が悪くなんだろ
キープできねぇなら、即捨て駒行きだ

サトコ
「わ、わかりましたから離して下さい!」

心臓の音が教官に伝わりそうで、恥ずかしさに泣きそうだった。

加賀
‥‥‥

ふと、教官が私から体を離し、至近距離でじっと見つめてくる。
吸い込まれそうな瞳に、目をそらすことができない。

サトコ
「あの‥教官‥?」

ゆっくりと教官の顔が近付き、思わず目を閉じる。
すると、唇ではなく‥額に、ほんの一瞬柔らかいものが触れた。

サトコ
「っ‥」

加賀
ここにされると思ったか?

教官が私の唇を指して言う。

加賀
自意識過剰もいいとこだな

サトコ
「あ‥」

今度こそ体を離すと、教官が意地悪に口の端を持ち上げる。
そして私に背を向けて、さっさと歩き出した。

サトコ
「ま、待ってください!」

(まだ、唇の感触が残ってる‥今のキスは?)
(一緒にいるだけでこんなにドキドキする‥)
(私、教官のことが好きなんだ‥)
(‥好きになっちゃったんだ)

あふれ出して止まらない気持ちを抱えながら、
そっと、教官からのキスを思い出すように、目元に触れた。

ポイントサイトのポイントインカム

【資料室】

数日後、私は一人学校の資料室で膨大な資料とにらめっこしていた。

サトコ
「えーと、これじゃないし、こっちでもない‥なんでこんなバラバラ収納されてるの!?」

加賀教官はあの日の優しさがウソだったかのように、
また私を『駒』として容赦なくこき使うようになった。
でも実際は、『奴隷』と呼ばれていた時とさほど変わらない。

(嬉しいような、悲しいような‥前よりは全然、嫌じゃない)
(やっぱり、私が教官のことが好きだから‥かな)

サトコ
「あ、やっと見つけた‥この辺の資料、全部だ」

膨大なファイルを一気に抱えたせいか、数冊のファイルが手元から落ちる。
慌ててかき集めると、最後に見た書類に『加賀兵吾』の名前を見つけた。

(教官が関係した事件の資料‥?)

詳細を見ると、それは数年前の連続爆弾事件の捜査資料だった。

(『加賀兵吾を除く、チーム全員が殉職』‥)
(殉職って‥捜査中に亡くなったってこと!?)

加賀
‥昔一緒に仕事した奴らに少し似てるってだけだ
もう、誰も残ってねぇけどな

あの時の教官の言葉が蘇った。
数年前の爆弾事件。教官の過去に何があったのか、今の私は知る由もなかった。

Happy End

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