カテゴリー

加賀 恋の行方編 グッドエンド

【屋上】

(はあ‥ちょっと外の風に当たって、頭を冷やそう)

サトコ
「うーん、風が気持ちいい」

加賀
また自主練か

その声に振り返ると、教官がこちらに歩いてくる。

(教官のこと考えてたから、勝手に顔が緩む‥)

加賀
ニヤけるな。気色悪い

サトコ
「す、すみません‥おつかれさまです。捜査の帰りですか?」

加賀
ああ
それより、俺に無断で鍛えるなと何度言えばわかる

私の隣に並ぶと、教官が二の腕をぷにっとつまんだ。

サトコ
「うっ‥いくら鍛えても、全然引き締まらないんですよ‥」

加賀
それでいい

サトコ
「よくないです!もっと痩せて、こう、教官みたいに颯爽と」

加賀
とりあえず

持っていた紙袋から桜見大福を取り出すと、その包みを私に手渡した。

加賀
これでも食ってろ

サトコ
「これ、期間限定のカボチャ餡が入ったヤツですね!ありがとうございます!」

加賀
詳しいな

サトコ
「教官が食べてるから、気になってチェックするようになったんですよ」

(莉子さんはまだチャンスがある、って言ったけど‥)
(教官にとって私はただの忠実な駒で‥でも、今はそれでいいのかもしれない)

加賀
ガラにもなく、何を考え込んでる

サトコ
「私‥教官の駒でいいです」
「だから、これからももっともっと、教官のそばで色々学びたいんです」

加賀
‥なんだ急に

サトコ
「今回の一件で、自分がいかに力がないか、役に立たないか痛感しました」
「でも、やっぱり刑事の夢は捨てられないんです。だから‥」

加賀
言っただろう。お前は刑事に向いてねぇ

そう言われて、思わず口をつぐむ。

加賀
お前が向いてるのは、そうだな‥
その感触で、俺を愉しませることだ

サトコ
「え?」

振り返ると、まるで私の口をふさぐように加賀教官が深く口づけてきた。

サトコ
「っ‥‥‥!」

加賀
動くな

サトコ
「教‥官っ‥」

息が苦しくなるほどのキスに身もだえする私を抱きしめて、
シャツの上から指で背中をなぞる。

サトコ
「あっ‥‥」

加賀
離さねぇよ

耳元でささやかれ、体中が熱くなり、身動きが取れなくなった。

サトコ
「ど、どうして‥だって教官、私の‥」

加賀
なんだ?まだ黙らせてほしいのか

サトコ
「そ、そうじゃなくて‥!私の気持ちなんて、聞きたくないって」

加賀
いちいち聞かなくても、見え見えなんだよ

サトコ
「‥やっぱり、教官のことが好きだって気づいてたんですか‥」

加賀
隠してるつもりだったのか?

(東雲教官にも同じようなこと言われたような‥)

加賀
お前はこの先、公私ともに俺のものだ
奴隷に戻りたくなきゃ、愉しませてみろよ
もう逃がさねぇぞ

シャツの裾から、教官の手が潜り込んできそうになる。

サトコ
「き、教官‥!」

その時、携帯の着信音が響いた。

加賀
‥‥‥

サトコ
「で、電話、出ないとダメですよ!」

加賀
うるせぇ

サトコ
「でも、ずっと鳴ってますし‥!」

加賀
チッ‥莉子か。なんだ

私を自分の腕に抱いたまま、教官が電話に出る。

(公私ともに‥って、もしかして教官も私のこと‥)
(いやいや、だって、フラれたと思ってたのに、頭がついていかない‥!)

加賀
‥‥
‥くだらねぇ情報だったら即帰るからな

電話を切ると、教官が屋上の出口に向かう。

加賀
行くぞ。用意しろ

サトコ
「え?」

加賀
莉子がいい情報を手に入れた
お前もつきあえ



【バー】

莉子さんに指定されたお店に行くと、石神教官を始めとする教官たち、
それに莉子さん、黒澤さん、難波室長が顔をそろえていた。

加賀
なんだこりゃ

莉子
「歩の退院おめでとう会よ」

サトコ
「東雲教官!」
「退院おめでとうございます!」


ありがと、サトコちゃん

黒澤
はいは~い。みなさん、お待たせしました!
ただいまより、『死の淵から蘇った公安のジーニアス』こと‥
東雲歩の復活を祝う会を始めさせていただきます!

黒澤さんが、意気揚々と立ち上がる。

黒澤
司会進行を務めさせていただきますのは、ご存じ貴女の黒澤☆こと‥

石神
前置きはいい

後藤
さっさと進めろ

黒澤
おっと、石神さん・後藤さんから愛の鉄拳を喰らう前に先に進みましょう!
ではでは~、まずは我らが公安課のボス、難波室長より乾杯の音頭をお願いします!

難波
では、えー‥歩の、退院のー‥

黒澤
室長、ぐだぐだじゃないですか

難波
なんでもいいだろ。とりあえず諸々お疲れさん

颯馬
フフ、いつものごとく、やる気ないですね


通常営業じゃないですか?

難波
黒澤、あとは任せた

黒澤
ラジャーです!

石神
たく、黒澤に任せる時点で、完全に人選ミスだろう

黒澤
ではみなさん、グラスは持ちましたか?
事件解決と、歩さんの退院を祝って!カンパーイ!

黒澤さんの言葉で、みんながグラスを合わせて乾杯した。


兵吾さん、オレがいない間に報告書溜まってないですか?

加賀
忠実なる駒が全部こなしてるから問題ない


ハハッ、でしょうね

石神
お前は、補佐官を雑用係と勘違いしているようだな

加賀
うるせぇな。似たようなもんだろ

サトコ
「いやもう、雑用係でいいです‥」
「でも教官、いつもならこういうの絶対来ないのに、珍しいですね」

加賀
お前の調教を兼ねてるからな

サトコ
「ちょ‥!」

みんなから見えないように、教官がシャツの裾から中に手を入れる。

サトコ
「!?」

加賀
他の奴らにバレるような反応したら奴隷落ちだ

サトコ
「待っ‥」

莉子
「サトコちゃん、何か言ったかしら?」

サトコ
「な、なんでも‥ないです!」

肌をくすぐるように撫でられて、グラスに口をつけるフリをしながら慌ててうつむく。

(これが調教!?だってもしみんなに気づかれたら‥!)

石神
しかし、今回は氷川のお手柄だったな

サトコ
「は、はいっ!?」

石神
お前が単独で加賀を助けに行くことは想定内だったが
それにうまく松田が食いついてくれてよかった

莉子
「じゃあ、それも最初から予想済みだったの?」

石神
当然だ。そうなるように仕向けたんだからな

加賀
エサを差し出したら、コイツが飛びつくのは目に見えてる

莉子
「さすが、兵ちゃん秀っちコンビね」

加賀・石神
「だからその呼び方はやめろ」

黒澤
ハモった!

颯馬
ハモったね

後藤
‥‥‥


あれ?後藤さん、もしかしてヤキモチ?

後藤
意味がわからない

(そうなるように仕向けた、って‥)
(じゃあ、石神教官がわざわざ松田理事官の前で、私に『待機してろ』って言ったのも‥)
(っていうか‥教官の手が気になって集中できない!)

くすぐったさと恥ずかしさに体を震わせる私に、加賀教官は目を細める。

加賀
お前の啼き声を聞いていいのは俺だけだ

サトコ
「っ‥‥!」

加賀
他の奴に聞かせたら‥
賢い駒にはわかるな?

口の端を持ち上げて笑う教官に、何も言えなくなる。
結局飲み会が終わるまで、私は教官に翻弄されっぱなしだった。

【加賀マンション】

飲み会が終わると寮には戻らず、教官の家に連行された。

サトコ
「ひどいですよ!みんなの前であんな‥!」

加賀
あんなもん、序の口だろ
俺の女になりたきゃ、もっと場数を踏むことだな

サトコ
「教官の女って‥」

言いかけた時、またふさぐようなキスが落ちてくる。

サトコ
「んはっ‥」

加賀
まだまだ場数が足りねぇようだ
来い

サトコ
「ちょっ‥」

【寝室】

寝室に連れてかれ、恥ずかしがる私のことなどお構いなしでベッドに押し倒すと、
教官は甘く激しく、私を求めたのだった。

深夜、目を覚ますと、教官の腕の中だった。

サトコ
「‥‥‥」

(信じられない‥私、本当に教官と‥)

加賀
なんだ‥起きたのか‥

サトコ
「あ‥す、すみません、起こしちゃいましたよね‥」

(ど、どんな顔すればいいんだろう?なんか、ものすごく照れる‥!)

何か話そうとした時、サイドボードに置かれた写真立てが視界に飛び込んできた。

サトコ
「これ‥前に教官の家に泊めてもらった時に、ベッドの横に落ちてた‥」

加賀
‥見てやがったか

サトコ
「あっ、その‥」

加賀
‥これは、昔の仲間だ

サトコ
「昔の仲間‥」

加賀
これがテツ、浜口鉄郎。こっちが‥

ヒビの入った写真立てを見ながら、教官が説明してくれる。

(昔の‥爆弾事件で亡くなった仲間なんだ)
(そう言えば浜口さんたちのこと、教官が自分の口で話してくれるのは初めてだ)

サトコ
「‥いつか私も教官みたいに、仲間を大切にする刑事になりたいです」

加賀
‥‥‥

サトコ
「それが‥私の新しい目標です!」

加賀
‥なんだ、そのツラは

サトコ
「え?」

知らずのうちに微笑んでいたらしく、教官が昨夜のように私を組み敷く。

加賀
俺に抱かれ足りねぇなんて、傲慢な女だな

サトコ
「ご、傲慢なのは教官の方です!」

加賀
うるせぇ

意地悪に、でも優しく笑い、そのまま教官が私の首筋に唇を這わせる。

(教官に釣り合う人になるには、まだまだだけど‥)
(でもいつか、背中を追いかけるだけでなく、その隣に並びたい)

その思いをこめて、教官の背中に腕を回した。

Good End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする