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恋の秋 石神2

教室に入ると、そこには石神教官の姿があった。

サトコ
「教官、寮に戻ったんじゃないんですか?」

石神
明日の準備をしていた
明日は色々な方が視察に来るからな。準備は入念にする必要がある

サトコ
「こんな時間まで‥」

石神
‥時間が押していたからな
氷川はちゃんと寮を案内してきたか?

サトコ
「はい、案内した後、居酒屋で接待をして‥ちゃんと寮まで送りました」

(居酒屋で接待中は、セクハラを受けて散々だったけど‥)

さっきまで文句を言ってやろうと思っていたけど‥遅くまで仕事をしている教官の姿を見たら、
いつの間にかそんな気は失せていた。

石神
キミが来るとは思わなかった

サトコ
「え‥?でも、『今夜会う』って約束しましたし」

石神
先ほどは突然の事だったから仕方なくキミに頼んだが‥上の相手をするのも疲れただろう
そのまま部屋に戻って、休んだものだとばかり

サトコ
「それは、その‥石神教官に会いたくて‥」

石神
‥‥‥
そうか

サトコ
「‥プリン、買ってきたんです。よかったら休憩しませんか?」

石神
ああ‥

私は石神教官の隣に座り、プリンを差し出す。

石神
これは‥

サトコ
「新発売のプリンです。美味しいって評判なんですよ」

石神
‥‥‥

教官はスプーンでプリンをすくい、口にする。

サトコ
「どうですか?」

石神
「‥悪くない

そう言いながら、教官は黙々とプリンを食べる。

(口ではこう言ってるけど‥ふふっ、美味しそうに食べてる)
(気に入ったのかな?また今度買ってみよう)

石神
‥ごちそうさま

サトコ
「‥‥‥」

石神
‥‥‥

教官がプリンを食べ終わり、私たちの間に沈黙が訪れる。

(教官、少し顔色が悪いよね‥やっぱり、連日の疲れが出てるんだ)
(こうしてふたりでいられるのは久しぶりだし、話したいことはたくさんあるけど‥)

疲れている様子の教官を見ると、うまく言葉が出なかった。

<選択してください>

A:教官、疲れていますよね?

サトコ
「教官、疲れていますよね?」

石神
‥別に、疲れていない

サトコ
「今、間がありましたよ?」

石神
‥‥‥

サトコ
「顔色もよくないですし‥少し休んだ方がいいと思います」

石神
‥まだやることが残ってる

サトコ
「でも、無理をして倒れでもしたら‥」

B:何か手伝えることはありますか?

サトコ
「教官、何か手伝えることはありますか?」

石神
いや、俺ひとりで十分だ
氷川は明日に備えて早く帰れ

サトコ
「でも‥」

(疲れてるって分かってるのに、教官をひとり残すなんてできないよ‥)

サトコ
「私は教官の補佐官なんですよ?雑用でもなんでもいいです。私にできることがあるなら‥」

C:そろそろ寮に戻りませんか?

サトコ
「そろそろ寮に戻りませんか?」

石神
いや、まだやることが残っている
俺の事は気にせず、氷川は先に帰れ

サトコ
「でも、明日に備えて早く寮に戻った方がいいですよ」

(無理して倒れたら、大変だし‥)

サトコ
「やることが残っているなら、明日の朝、私も手伝って‥」

サトコ
「あっ‥」

突然、電気が消えて辺りが暗くなる。

石神
しまった、申請を忘れていたな‥仕方ない、作業はここまでだ

石神教官はため息をつきながら、片づけを始める。

サトコ
「私も手伝います‥っ‥」

広げられている資料を片づけていると、教官と手が重なった。

サトコ
「教、官‥」

顔を上げると、教官と視線が絡み合う。

石神
‥‥‥

サトコ
「ん‥」

そして私たちは月明かりが差し込む教室の中で、どちらともなく触れるだけのキスをした。

石神
教室でキスなんて‥俺も大概だな

サトコ
「教官‥」

石神
‥メガネが邪魔だな

サトコ
「んっ‥」

教官はメガネを取ると、もう一度私の唇にキスをした。
今度のキスは先ほどよりも甘く、深いキス‥

サトコ
「っ‥」

そして名残惜しそうに唇が離れると、とたんに恥ずかしさが襲ってくる。

(こんなところでキスだなんて‥)

サトコ
「あ、あの‥」

石神
‥‥‥

サトコ
「っ‥‥」

教官に声を掛けると、私の肩にコテンともたれかかってきた。

(やっぱり、疲れているんだ‥)

サトコ
「‥教官、私が言うのもあれですけど‥もっと私を頼ってください」
「私はまだまだ学生で、頼りないかもしれないけど‥それでも、少しでも教官の力になりたいんです」

石神
‥‥‥

サトコ
「あの‥教官?」

石神
‥‥‥

返事がなく、チラリと教官を見ると、小さく寝息を立てていた。

サトコ
「寝てる‥」

(こんなところで寝ちゃうほど、疲れがたまっていたんだ)
(今の言葉、聞かれなくてホッとしたような残念なような‥)

教官は無防備に、そこか幼い顔をして眠っていた。

(なんだか、可愛いかも‥)

私はそんな教官の頬を思い切って触ってみる。

(わ、柔らかい‥!って、私は何をしているんだろう‥)

予想以上に柔らかい頬を触り、何故だか罪悪感が襲ってきた。

(ていうか、どうやって帰ろう‥ずっとこのままってわけにはいかないし‥)

だけど、すやすやと気持ちよさそうに眠っている教官を起こす訳にはいかない。
私は教官が目を覚ますまでの間、途方に暮れるのだった。



感謝祭当日。
私は予定通り、政府や警察関係の方々の接待に当たっていた。

男1
「なるほど、キミたちはこうして毎日訓練に当たっているんだな」

サトコ
「はい」

男2
「教官たちは厳しいだろう?女のキミみは辛いんじゃないかね?」

サトコ
「確かに、辛いと思うこともあります。ですが公安になるためにも、日々訓練に励んでいます」

男1
「そうか。大変なこともあると思おうが、頑張ってくれ」

そう言いながら、私の肩を軽く抱いてくる。

サトコ
「‥はい、ありがとうございます」

私は振り払いたい衝動に駆られながらも、笑顔でそう返した。

男1
「それにしても、石神くんだったか‥彼は非常に優秀だな」

男2
「彼がいるなら、この公安学校も安泰だ。近い将来、優秀な刑事を生み出すに違いないな」

サトコ
「本当ですか?」

男1
「ああ、もちろんだとも。石神くんには、期待しているよ」

(石神教官がこんなに褒められるなんて‥)
(なんだか、自分の事のようにうれしくて‥くすぐったいな)

男1
「そういえば、キミは石神くんの補佐官だったな」

サトコ
「はい」

男1
「キミは石神くんの一番近くで、多くの事を学べる機会がある」
「将来、立派な刑事になる時を楽しみにしているよ」

サトコ
「はい、ありがとうございます!」

私はセクハラを受けたことを忘れるくらい、うれしさでいっぱいだった。

接待が終わり、自由時間が出来た私は、特にすることもなく、廊下を歩いていた。

(少し時間が空いちゃったな‥)
(感謝祭が終わったら、すぐに片づけに入るから、それまでの間少し休んで‥)

颯馬
あ、サトコさん。お疲れ様

廊下を歩いていると、颯馬教官と後藤教官に出くわした。

サトコ
「颯馬教官、後藤教官。お疲れ様です」

後藤
接待は無事に終わったのか?

サトコ
「はい。皆さん、とっても楽しそうにしていました」

颯馬
それならよかった。これもサトコさんと‥石神さんのおかげですね

サトコ
「え‥?」

颯馬
こういうイベントにはトラブルがつきものですからね
石神さん、それが起きないように気を配っているみたいですよ

後藤
きっと今も、忙しそうに動いているんじゃないか?

サトコ
「‥‥‥」

(さすが、石神教官‥すごいな)

颯馬
サトコさんはこの後の片づけも残ってるんだよね?

サトコ
「はい」

颯馬
サトコさんも接待をして大変だったと思うけど、最後まで頑張ってね

サトコ
「ありがとうございます」

私が頭を下げると、颯馬教官と後藤教官は仕事があるからと言ってその場を後にした。



感謝祭も無事に終わり、私は片づけを始める。

難波
氷川、お疲れさん

サトコ
「難波室長、お疲れ様です」

難波
接待は上手くいったようだな。上機嫌で帰って行ったぞ

サトコ
「そうですか‥よかったです」

難波
‥石神の言っていた通りだ

サトコ
「え?」

難波
石神のやつ、氷川の頑張りを上のやつに見てもらいたかったんだろう
だから、お前を推薦したんだよ

サトコ
「そうだったんですか‥」

(石神教官がそんなこと考えてたなんて‥私、全然気づかなかった‥)

サトコ
「あの、石神教官がどこにいるか知ってますか?」

難波
石神?アイツなら、体調を崩して帰宅したぞ

サトコ
「え!?体調を崩したって‥」

難波
ここんとこ、任務や講義に感謝祭の準備が重なって、忙しさに拍車がかかっていたからな

サトコ

「そうですか‥ありがとうございます」

(教官、昨日も体調悪そうだったし、大丈夫かな)



私は急いで片づけを終わらせると、石神さんの家にやってきた。
インターホンを押してしばらくすると、ドアが開く。

石神
氷川‥?

サトコ
「あの、難波室長から教官が体調を崩したって聞いて‥来ちゃいました」

石神さんの雰囲気が、ふっと和らいだことがわかった。

石神
‥まぁ、とりあえず入れ

サトコ
「お邪魔します」

部屋に入ると、教官はソファに腰を下ろした。
私は少し迷ってから、教官の隣に座る。

サトコ
「起きてても大丈夫なんですか?」

石神
ああ、少しくらいなら平気だ

サトコ
「そうですか‥でも、無理はしないでくださいね?」

石神
ああ‥

教官はそう言って私の顔をじっと見ると、ゆっくりと口を開く。

石神
‥なぁ、ちょっとだけいいか?

サトコ
「え?あっ‥」

石神さんはそう断りを入れ、私の膝の上に頭を乗せた。

<選択してください>

A:き、教官!?何をして‥

サトコ
「き、教官!?な、何をして‥」

石神
見れば分かるだろう?膝枕だ

サトコ
「た、確かに膝枕ですけど‥」

(まさか、教官がいきなりこんなことするなんて‥)

石神
‥イヤか?

サトコ
「イヤなんて、そんなことありません。ただ、いきなりだったから驚いて‥」

石神
‥‥‥

B:教官の顔を覗き込む

(いきなり膝枕なんて‥どうしたんだろう?)

私は教官の顔を覗き込んだ。

石神
‥‥‥

サトコ
「あっ‥」

教官はフッと笑みを浮かべると、私の頬を優しい手つきで撫でる。

石神
たまにはそういうのも、いいものだな

サトコ
「教官‥?」

(どうしたんだろう‥?)

C:教官の頭をそっと撫でる

サトコ
「教官‥」

(いきなり膝枕なんて‥どうしたんだろう)

私はそう思いながらも、教官の頭をそっと撫でる。

(教官の髪の毛、柔らかいな‥)

石神
‥‥‥

私が頭を撫でると、石神教官は気持ちよさそうに目を細めた。

不思議そうに首を傾げる私に、教官は口を開く。

石神
言っただろ、甘えろって‥

サトコ
「え‥ま、まさかあの時、起きたたんですか!?」

石神
ああ

驚く私に、教官はニヤリと笑みを浮かべる。

(聞かれてたなんて‥でも、あの時は『甘える』じゃなくて『頼って』って言ったんだけどな‥)
(でも、こうやって甘えられるのもうれしい、かも‥)

サトコ
「じゃあ、私がほっぺを触ったのも‥」

石神
は?

(あ、あれ?ほっぺを触った時は寝てたのかな‥?)

サトコ
「い、いえ、その‥教官の寝顔、なんだか幼いように見えて、可愛かったなって‥」

石神
‥寝ていない

サトコ
「え?」

石神
あの時、氷川の言葉を聞いていたと言っただろ?俺は寝ていなかったからな

そう言う教官の頬は、少しだけ赤くなっているように見えた。

(もしかして‥照れてるのかな?)

サトコ
「私は教官の寝顔が見れて嬉しかったですよ?だって、いつもは私が先に寝ちゃうから‥」

(自分で話してて、何だか恥ずかしくなってきちゃった‥)

頬に熱が上がるのを感じ、思わず教官から視線を逸らす。

石神
なら‥今日も先に寝るか?

サトコ
「え?あっ‥」

石神教官は急に起き上がると、私をソファに押し倒す。

サトコ
「教、官‥んっ‥」

ゆっくりと教官の顔が近づき、私の唇にキスを落とす。
少しだけ長いキスをすると、教官は唇を離しメガネを外した。

サトコ
「教官、体調が悪かったんじゃ‥」

石神
言っただろう
サトコがいなくて静かだと‥調子が狂う

サトコ
「ん‥」

今度は触れるだけのキスをし、私の頬に手を添えた。

石神
だから‥今夜は離れるなよ‥

サトコ
「石神、教官‥んっ‥」

教官は、額、頬、耳元へとキスを落としていく。
教官の唇が触れる度、私の肌は熱を持っていった。

サトコ
「私も‥私も、教官から離れたくないです‥」

石神
サトコ‥

サトコ
「んっ‥」

私の名前を呼び、教官はもう一度私の唇にキスをする。
お互いを求め合うように、どんどん深くなっていくキス‥‥
思考が奪われていく中、教官の背中にそっと腕を回すと、甘くて熱い夜が始まりを告げた。

Happy End

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