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クリスマス 加賀1話

(メール、加賀教官からだ!えーと‥)

サトコ
「‥え!?『25日は2人で過ごせねぇ。悪ぃな』‥」

(そういえば、用事があるからクリスマスパーティーはパスするって言ってた)
(もしかして捜査かなって思ってたけど‥)

捜査が終わった後、夜は一緒に過ごせると思っていたので、ショックも大きい。

サトコ
「仕事かぁ‥」

(せめて彼女っぽいことしたいな‥)
(クリスマスプレゼント渡したら、もらってくれるかな‥?)

数日後、講義が終わった後、鳴子と一緒にランチを楽しんでいた。

鳴子
「それで?ずっと悩んでたけど、プレゼントは決まったの?」

サトコ
「うん、昨日見つけて買ってきたよ、キーケース」

鳴子
「あ、そういう普段使えるのはポイント高いよね。どんなデザイン?」

サトコ
「落ち着いた感じの、革製で‥」

25日は、ホワイトクリスマスになった。

(うう、寒い‥本当は朝から、教官と過ごせたらよかったんだけど‥)
(こんな日にまで捜査なんて大変だな‥何時頃帰ってくるんだろう)

せめてプレゼントだけでも渡そうと教官のマンションの前で待っていると、
背後から声を掛けられた。

加賀
‥サトコ?

サトコ
「教官!お仕事お疲れ様です!」

加賀
‥クズが。何やってんだ

驚きながらも、教官が私の肩についた雪を払ってくれる。

サトコ
「すみません。どうしても今日、プレゼントを渡したくて‥」

加賀
‥そのために、待ってたのか?

サトコ
「はい。ちょっとだけでも、教官の顔が見たかったんです」

プレゼントを受け取ると、教官が優しく、私の頭を撫でてくれる。

加賀
さすが、俺の女だな

サトコ
「そんな‥」

加賀
‥体、冷えてるだろ

サトコ
「平気です。教官に会えたから、暖かくなってきましたよ」

加賀
バカ

ギュッと抱きしめられると、教官にささやかれた。

加賀
今夜は、俺が温めてやる

サトコ
「教官‥」

加賀
クリスマスだからな‥特別に、お前に奉仕してやる
どうしてほしい?なんでも言ってみろ

(なんでも‥?それなら、私‥)

鳴子
「‥サトコ?サトコってば!」

サトコ
「奉仕なんて‥私、そんなつもりじゃ‥」

東雲
‥普段、どんなプレイを楽しんでるの

サトコ
「えっ!?」

(あれっ?ここ、食堂!?教官のマンションの前にいたはず‥)
(‥いや!あれ、私の妄想だ!)

東雲
すごい顔だったけど‥顔面、平気?

サトコ
「東雲教官、なんていうか、それは全く違う心配をされてるような気がします」

東雲
そう。その別の心配してるの

サトコ
「!」

鳴子
「最近のサトコ、こうして一人で妄想してニヤニヤしてることが多いんですよ」

東雲
なるほど、そうやって報われない愛を誤魔化してるんだ

(な、なんでわかるの‥!?)
(っていうか、みんなに妄想してることがバレてる私って‥)

東雲
それより、クリスマスプレゼントの話してなかった?

サトコ
「は、はい。昨日、素敵な革製のキーケースを見つけたので、それを」

東雲
定番だね

サトコ
「う‥」

(うう‥『定番』っていう言葉が突き刺さる‥)

鳴子
「クリスマス、東雲教官はどうするんですか?」

東雲
うーん、とりあえず透に見つからないようにしないと
そうそう、クリスマスと言えば、兵吾さんは今年もあの彼女と過ごすのかな

サトコ
「えっ?」

思わず顔を上げた私よりも、鳴子の方が勢いよく反応した。

鳴子
「あの彼女って!?いつも一緒に過ごしてる人なんですか!?」

東雲
オレが知ってる限り、毎年25日はその人のために空けておいてるはずだけど

(そ、それって‥)

<選択してください>

A: 加賀教官の恋人?

サトコ
「か、加賀教官の恋人‥ってことですか!?」

東雲
さあ?オレからはなんとも言えないけど

鳴子
「気になる発言しておいて、それはないですよ~」
「でも彼女のためにクリスマス空けておくなんて、加賀教官のイメージ変わるかも」

B: 詳しく聞かせてください

サトコ
「く、詳しく聞かせてください!」

東雲
いやあ、これ以上話すと、オレの身に危険が生じるから
兵吾さんの場合、どこで聞いてるかわからないしね

鳴子
「でも、そっかー、やっぱり加賀教官って彼女いるんですね」
「特定の人は作らないタイプかなって思ってましたけど」

C: 25日は仕事だって‥

サトコ
「で、でも‥加賀教官、25日は捜査だって」

東雲
言ってた?

サトコ
「‥‥‥」

(言って‥ない!?『会えない』とは言われたけど、理由は何も聞いてない‥!)

鳴子
「じゃあ、やっぱり彼女と過ごすんだ~」

(彼女‥彼女!?)
(クリスマスに過ごす彼女がいる‥それってつまり、私じゃないってこと!?)

東雲
どんな人か知りたい?

サトコ
「し、知りたいです‥!」

鳴子
「教えてくれるんですか!?」

東雲
じゃあ、ヒントだけ
『ハナ』さんっていう名前で、すごく無邪気で純粋で可愛い人だよ

鳴子
「ハナさんかあ~。どんな人なんだろうね、サトコ」

サトコ
「う、うん‥」

動揺を隠しきれない私をニヤニヤ笑いながら、東雲教官は食堂から出て行った。



(ハナさん‥可愛くて純粋で無邪気‥毎年、加賀教官と一緒にクリスマスを過ごしてる人‥)

悶々としながら、教官たちに頼まれた書類を探すため、資料室のドアを開ける。
すると中で、ファイルを見ている莉子さんに会った。

莉子
「サトコちゃん、久しぶり。元気だった?」

サトコ
「は、はい。莉子さんも資料探しですか?」

莉子
「そうなの。本部になくて、聞いてみたらこっちにあるって言うから」
「‥ところで、ずいぶん暗い顔してるけど?」

(バレてる‥私ってそんなにわかりやすいのかな)

サトコ
「あの‥莉子さんは、加賀教官が毎年一緒にクリスマスを過ごす人の事、ご存知ですか?」

莉子
「兵ちゃんが、クリスマスを過ごす人‥?」
「ああ!ハナちゃんのこと?」

(ハナ『ちゃん』‥!?)

サトコ
「も、もしかして、莉子さんのお友達ですか!?科捜研の人ですか!?」

詰め寄る私に、莉子さんは少し驚きながらもフッと笑った。

莉子
「ああ‥そういうこと」
「いくら兵ちゃんお気に入りのサトコちゃんでも、ハナちゃんには敵わないかもね」

サトコ
「そ、そんな‥」

莉子
「あの人、ハナちゃんにゾッコンだから」
「ハナちゃんと25日を過ごすために、仕事を前倒しするくらいだし」

サトコ
「仕事を‥前倒し‥!?」

(そ、そんなことする加賀教官、見たことない‥!)
(そのくらい、教官にとって『ハナさん』は大事な人なんだ‥)

莉子さんが出て行っても、私はしばらく、その場から動けなかった。



そして、運命の25日がやってきた。

(あれからずっと、『ハナさん』のことが頭から離れない‥)
(教官に直接聞く勇気も出ないまま、今日になっちゃったけど)

サトコ
「あれこれ考えてても仕方ないし、この日で真実を見届けなきゃ」
「黒澤さんに誘われたクリスマスパーティー、ドタキャンしちゃったけど‥」

(なんか、すべてを予想していたらしい東雲教官に)
(『透にはうまく言っとくから、頑張って』って満面の笑顔で送り出されたんだよね‥)

サトコ
「東雲教官、まさか私たちの修羅場を期待してるんじゃ」
「いや!それより今は、加賀教官の尾行に集中しなきゃ」

その時、マンションのエントランスから出てきた加賀教官の姿を確認した。

加賀
‥‥‥

(大丈夫、気づかれてない‥よし、尾行開始!)



歩き出した教官に見つからないようについていくと、やがて大きなデパートへと入って行った。

(もしかして、『ハナさん』へのクリスマスプレゼントを買いに‥?)
(もし教官が、アクセサリーを選びだしたらどうしよう‥万が一、指輪とか)

そんな場面を見たら、黙っていられる自信がない。

サトコ
「もしかして、デパートで修羅場になったり‥?」
「でも、こんなところで別れを切り出されるなんて耐えられないよ‥!」

???
「そうか」

サトコ
「そうですよ‥!絶対別れたくないし、でも教官は一度決めたら絶対考えを変えない人だから」

???
「よくわかってるじゃねぇか」

サトコ
「‥‥‥」

(今の声‥)

恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは‥

サトコ
「な!?」

加賀
確かに、こんなところで別れ話なんざいい笑いもんだな

<選択してください>

A: 偶然ですね

サトコ
「ぐ、ぐぐぐ、偶然ですね‥!」

加賀
ほう

サトコ
「わわわ、私もたまたまこのデパートに用事があって‥!」

加賀
そうか

(ダメだ‥教官を誤魔化せるはずがない‥)

B: いつから気づいてたの?

サトコ
「い、いつから気づいてたんですか!?」

加賀
お前がマンションの前にいた時からだ

(さ、最初から!?)

サトコ
「これには、やむを得ない事情がありまして‥!」

C: 人違いです

サトコ
「ひひひ、人違いです!」

加賀
そうか。つまりテメェは、俺とは無関係の人間ってわけだな

(そう言われるとすごく寂しい‥!)

サトコ
「うう、ずるいですよ、教官」

加賀
訳は、向こうでじっくり聞かせてもらおうか

首根っこをつかまれて、ズルズルと引きずられる。

(やっぱり、教官を尾行するなんて百年早かった!)

近くの喫茶店に入ると、向かいの席に教官が座る。

加賀
‥‥‥

(ただ見られてるだけで、この威圧感‥!)

加賀
で?

サトコ
「は、はい‥」

加賀
俺を尾けるとは、いい度胸じゃねぇか
誰の入れ知恵だ?あ?

(なにこれ、取り調べ‥!?)

加賀
クズが俺の尾行なんざ、千年早ぇ

サトコ
「ひゃ、百年じゃなくてですか!?」

加賀
百年くらいでテメェのバカが治るならな
学校に戻ってイチからやり直すか?あぁ?

(ひいっ!取り調べどころじゃない!!)

加賀
それで?尾行の理由は?

サトコ
「そ、それはですね‥」

加賀
‥と聞きたいところだが
どうせ歩にでも、くだらねぇこと吹き込まれたんだろ

サトコ
「く、くだらないことと申しますと‥」

加賀
俺に、毎年クリスマスを一緒に過ごす女でもいると思ったか?

(全部バレてる‥もうダメだ、お仕置きコースだこれ‥いや、お仕置きで済めば御の字‥)
(お仕置きと躾を足して2を掛けたくらいの教育が待ってる‥!)

加賀
バレたなら仕方ねぇ

サトコ
「ひえっ」

加賀
何ビビってんだ

サトコ
「だ、だって‥」

加賀
行くぞ、テメェも道連れだ

サトコ
「道連れ‥?」

立ち上がると、伝票を持って教官はさっさと喫茶店を出て行った。

喫茶店を出ると、教官はなぜか別のフロアへと移動した。
私たちが向かった先には、所狭しとおもちゃが並んでいる。

サトコ
「‥キッズコーナーですか?」

加賀
お前も探せ。『雪原の女王』のプリンセスセットだ

(教官の口からプリンセスなんて言葉が‥ん?)

サトコ
「雪原の女王って、今年ブレイクしたあのアニメですよね」
「メリゴーメリゴー、って鳴子もずっと歌ってましたよ」

加賀
それに出てくる姫になれるセットがあるらしい

サトコ
「でも、どうしてそれを教官が‥」

ふと見ると、人気商品なのかレジの前に大量に陳列されていた。

サトコ
「あ、ありましたよ。あれですよね?」

加賀
でかした

ポンッと私の頭に手を乗せて、教官がレジへ向かう。

(な、なんで『プリンセスセット』を見つけただけで褒められるの?)
(いつもなら『もっと早く見つけろ、クズ』とか言われるのに‥)

サトコ
「それにしても、なぜプリンセスセット‥」

加賀
黙ってろ

店員
「いらっしゃいませ。プレゼント用ですか?」

加賀
ああ

(アクセサリーじゃなくて、プリンセスセットがクリスマスプレゼント!?)
(わけがわからない‥教官がゾッコンの『ハナさん』って、いったい‥!?)

何も説明されないまま、教官に連れられて住宅街を歩く。

サトコ
「あの‥教官、いったいどこに」

加賀
‥引くなよ

サトコ
「えっ?」

加賀
何があっても引くなって言ってんだ

サトコ
「はぁ‥」

(それより、尾行がバレたのにお仕置きが何もない方が怖い‥)



やがて、教官が一軒の大きな家の前に立つ。

ゆっくりとインターホンを押すと、勢いよくドアが開いた。

女の子
「ひょうごー!やっと来たぁ!」

サトコ
「!?」

加賀
遅くなって悪かったな。そこのクズが面倒を起こしやがって

女の子
「くず?」

加賀
おい、妙な言葉覚えんじゃねぇ

サトコ
「いや、今のは教官のせいじゃ‥」

ジロリと睨まれて、慌てて言葉を飲み込む。

女の子
「ねー、このおねえちゃん、だれ?」

サトコ
「あ‥氷川サトコっていいます。こんにちは」

加賀
ほら、挨拶しろ

女の子
「こんにちは!はなちゃんです!しゃんさいです!」

サトコ
「そっかー、はなちゃんは3歳なのか~」
「‥はなちゃん?」

思わず振り返ると、教官はどこかめんどくさそうな、難しそうな、複雑な表情をしていた。

(じゃあ‥この子が『ハナさん』!?教官がゾッコンの‥!?)
(ままままさか、教官の隠し子‥!?)

加賀
テメェ今、フザけたこと考えただろ

サトコ
「え!?め、滅相もない‥!」

はな
「あのねー、ママもういっちゃったの。『ひょーごのやつ、おっそいわね!』っていってたー」

加賀
独りにして、悪かったな

教官に目配せされて、恐る恐る中へお邪魔する。

(何がどうなってるのか、全然わからない‥!)

to be continued

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