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クリスマス 石神1話

受信ボックスを確認すると、石神教官からメールが来ていた。

(石神教官からだ‥!)

ちょうど石神教官のことを考えていたせいか、宛名を見てドキッとする。

(石神教官も、クリスマスのこと考えてくれてたのかな‥)

ドキドキしながら、メールに目を通す。

サトコ
「『期末考査に関して』って‥期末考査!?」

(ど、どうしよう‥クリスマス前には、期末考査があったんだ‥!!)

石神教官のメールによってクリスマス気分から、一気に現実に引き戻される。

サトコ
「えっと、今期の勉強した範囲は‥広っ!」

(う、ウソでしょ‥こんなに広かったっけ‥)

サトコ
「クリスマスも大事だけど‥今は期末考査に集中しなきゃ!」

私は慌てて教科書を開くと、勉強を始めた。

翌日。
休み時間になり速やかに昼食をとると、鳴子と一緒に勉強していた。

鳴子
「はぁ‥もう頭がカツカツ‥」

サトコ
「今回は範囲がかなり広いよね」
「しかも、内容が難しいものばかりだし、ここで頑張っておかないと‥」

鳴子
「サトコはほんと真面目よね。あ~、昨日まではクリスマス気分だったのになぁ」

サトコ
「私もそうだったけど‥」

(石神教官からメールが来なかったら、ずっとクリスマスについて悩んでたかも‥)

鳴子の言葉で、頭の中が勉強のことからクリスマスのことに切り替わる。

鳴子
「クリスマスって言ったら、やっぱり恋人とのデートだよね!」
「愛する教官と一緒に、イルミネーションを見に行ったり‥とか!」

サトコ
「あ、愛する教官‥!?」

鳴子
「そうそう!イケメン教官とクリスマスにデートできたら最高じゃない?」
「やっぱり、一番は颯馬教官かな~」
「あっ、でも後藤教官もなかなか‥」

(び、ビックリした‥)
(一瞬、私と石神教官のことを言われてるのかと思った‥)

鳴子
「ねぇ、サトコはクリスマスにイルミネーションを見に行きたくないの?」

サトコ
「それは‥行きたいけど‥」

(石神教官と一緒にイルミネーション、か‥)

鳴子
「‥まぁ、どうせ教官たちと行くのは無理なんだし」
「独り身でイルミネーションを見に行っても寂しい以外の何ものでもないけどね」

サトコ
「う、うん‥」

鳴子
「でもでも、今年のクリスマスは教官たちとクリスマス会があるじゃない?」
「今年のクリスマスはどうしようって思ってたから、すっごく楽しみなんだ」
「教官たちが全員揃うんだもんね。豪華なパーティーになりそうだなぁ」

(あっ、そうだ‥クリスマスパーティーもあるんだった!)
(やっぱり、2人で過ごすのは難しそうだな‥)

鳴子
「‥サトコ?おーい、サトコ?」

サトコ
「‥ハッ!ご、ごめん、ちょっと考え事してた」

鳴子
「考え事って?」

サトコ
「えっと‥そろそろ、勉強再開しなきゃって」

鳴子
「うっ‥」

サトコ
「鳴子‥わざと勉強から話題を遠ざけたでしょ?」

鳴子
「あはは、バレてましたか‥」

サトコ
「気持ちよくクリスマス会に参加するためにも、まずは勉強を頑張らなきゃね」

鳴子
「‥はーい、それじゃあ、残り時間は勉強に費やそう!」

頭の片隅でクリスマスのことが引っ掛かっていたけど、
無理矢理それを押し出そうと勉強に集中した。

放課後になり、私は勉強をするために資料室にいた。

(やっぱり、ここが一番勉強がはかどるんだよね)

サトコ
「あっ、石神教官」

石神
氷川か。勉強中か?

サトコ
「はい。ここだと、わからないところもすぐに調べることもできるので」

石神
期末考査に向けて、か。感心だな

サトコ
「昨日、いただいたメールのおかげで‥」
「あの‥教官。少しわからないところがあるんですが」
「質問してもいいですか?」

石神
‥少しくらいなら構わない

石神教官は私の隣に座ると、万年筆取り出してノートに視線を落とす。

サトコ
「ここの問題なんですけど‥」

石神
ああ、ここは‥

きれいな指先が文字を追う。
ふと視線をあげると、石神教官の顔が間近にあった。

<選択してください>

A: じっと見つめる

(教官の顔‥整っていて、綺麗な顔立ちをしているな‥)

私は思わず、教官の顔をじっと見つめてしまう。

石神
‥氷川

(仕事にも一生懸命で、どんな状況でも的確に判断して‥)
(私、この人と付き合ってるんだ‥)

石神
‥氷川?聞いているのか?

サトコ
「は、はいっ!?」

B: 教官に手を伸ばす

(本当に、綺麗な顔立ちをしているな‥)

私は思わず、教官に手を伸ばした。

サトコ
「あっ‥」

教官に手が触れようとした瞬間、バシッと手を取られる。

石神
‥なんだ?

サトコ
「え‥?あっ、い、いや、これはその‥!」

C: 教官に声を掛ける

(教官が、こんなに近くにいる‥)

普段一緒にいられることが少ないせいか、距離の近さに胸が高鳴る。

サトコ
「もっと、教官と一緒に‥」

石神
‥何か言ったか?

サトコ
「へ‥?あっ、い、今のは‥!」

慌てた私は、思わずパッと手を上げてしまう。

石神
っ‥

サトコ
「あっ‥!」

上げた手が石神教官の手に当たってしまい、万年筆が床に転がった。

サトコ
「す、すみません!今、拾って‥」

万年筆を拾おうと床に手を伸ばすと、ふっと影が落ちてきた。

バキッ!

サトコ

「あ‥」

男性同期A
「えっ‥?」

(きょ、教官の万年筆が‥!)

男性同期A
「わ、悪い!それ、氷川の万年筆!?オレ、踏んじゃって‥」

石神
‥私の万年筆だ

男性同期A
「きょ、教官のですか!?あ、オレ、その‥!」

石神
気にするな。どうせ、安物だ

男性同期A
「ほ、本当にすみませんでした!!」

同期はものすごい勢いで教官に頭を下げると、慌ててその場を後にした。

石神
まったく、騒がしいな

サトコ
「す、すみません!」
「元はといえば、私が教官の万年筆を落としたから‥」

石神
気にするなと言っただろう?
‥ああ、もうこんな時間になるのか

石神さんは短く息を吐くと、壊れた万年筆を拾って立ち上がる。

石神
まともに教えられなくて、悪いな

サトコ
「いえ、ありがとうございました」

教官の姿が見えなくなると、私はため息をつく。

(はぁ、まさか教官の万年筆を壊しちゃうなんて‥)

私はどんよりとした気分のまま、勉強を再開した。
それから私は勉強に没頭し、数時間が過ぎようとしていた。

サトコ
「えっと、ここはこの前教わったところだから‥」

石神
‥まだいたのか
熱心なことはいいことだが‥こんな時間までというのは感心しないな

サトコ
「こんな時間って‥」

時計を見ると、かなり遅い時間を指していた。

サトコ
「集中していたから、つい‥」

石神
いや‥すまない。今のは恋人としての忠告だ

サトコ
「!」

(そ、そんな忠告なら、もっとお願いします!)

石神
あまり無理はするなよ?

教官は柔らかい笑みを浮かべ、ポンッと私の頭を撫でる。

石神
それと‥クリスマスの件だが

サトコ
「クリスマス‥?」

石神
‥いや、なんでもない

サトコ

「ま、待ってください!そこまで言ったなら最後まで‥」

石神
期末考査が終わったらな

石神教官はそう言うと、私に背を向け資料室のドアに手を掛ける。
そして顔だけ私の方に向けると、ゆっくりと口を開いた。

石神
‥頑張れよ

教官はそのまま部屋を出て行き、資料室には私一人になる。

(クリスマスのこと、考えてくれてたんだ‥)

教官の言葉を思い返し、胸がじんわりと温かくなる。

サトコ
「よーし、勉強頑張るぞ!」

私は再びペンを握りしめ、教科書に向かった。



数日後。
期末考査の息抜きにと、私は街に出かけていた。

(教官は何を考えてくれてるみたいだし‥何かプレゼントを買ってもいいよね?)

サトコ
「でも、何にしよう‥」

(せっかくだし、教官が喜んでくれるものがいいよね‥)

頭を悩ませていると、文具屋さんが目に入った。

(あっ、そういえば‥この前、私のせいで万年筆を壊しちゃったんだ‥)

文具屋に入ると、万年筆が置いてあるコーナーに行く。

サトコ
「ええっ!?」

大きな声を出してしまい、注目を浴びる。

サトコ
「あ‥、すみません」

(って、万年筆ってこんなに高いの!?)
(安いのもあるけど、十万以上するものもあるし‥)

よく店内を見渡してみると、いかにも!って感じのお店だ。

店員
「もしよかったら、お手に取られてみますか?」

サトコ
「え、えっと‥」

(どうしよう‥教官は安物だって言ってたけど、絶対それなりの値段するやつだったよね)

教官の万年筆を思い返していると、クリスマスの話を思い出す。

(‥教官は忙しい中、クリスマスのことを考えてくれてるんだよね)
(ここで奮発しないで、いつ奮発するの‥!)

サトコ
「あ、あの‥この万年筆、見てもいいですか?」

私は意を決して、予算よりだいぶ高めの万年筆を購入した。



期末考査が無事に終了し、私は石神教官の個別教官室へやってきた。

石神
今日で期末考査も終わりだな

サトコ
「はい!」

石神
いい返事じゃないか
手応えはあったのか?

サトコ
「自分がやれるだけのことはやったので、あとは結果を待つのみです」

石神
そうか‥

サトコ
「あの‥教官。期末考査も無事に終わりましたし‥」
「その‥ですね‥」

石神
‥クリスマスのことか?

サトコ
「はい!」

石神
フッ‥氷川はどこか行きたいところはあるのか?

<選択してください>

A: イルミネーションを見に行きたい

サトコ

「あの‥イルミネーションを見に行きたいです」

石神
イルミネーション?
街中の、か?

B: 教官はどこに行きたいですか?

サトコ
「教官はどこに行きたいですか?」

石神
俺の意見はいい。今は氷川に聞いているんだ

サトコ
「教官‥」

(私が教官と行きたいところ、か‥)

私はふと、鳴子と話していたことを思い出す。

サトコ
「あの‥イルミネーションを見に行きたいです」

C: 教官と一緒にいられるだけでいい

サトコ
「その‥私は教官と一緒にいられるだけでいいです」

石神
‥氷川

(‥あれ?教官の顔が少し赤いような‥)

石神
‥今は氷川の意見が聞きたいんだ

サトコ
「えっと‥」

(私の意見‥あっ、そういえば、前に鳴子とクリスマスについて話してたっけ‥)

サトコ
「‥教官と、イルミネーションを見に行きたいです」

サトコ
「あ、でも‥近場はやめた方がいいですよね」
「誰かに見られるかもしれないですし‥」

教官は少しの間沈黙すると、真っ直ぐ私を見て口を開く。

石神
イルミネーション、か‥いいだろう

サトコ
「本当ですか!?」

石神
ああ。こちらから聞いといてなんだが‥氷川がワガママを言うのは初めてだからな

サトコ
「そうですか?」

石神
俺としては、もっと甘えてくれても‥
いや、なんでもない

教官の顔は、少しだけ赤くなっていた。

石神
イルミネーションの前だが‥食事をしないか?

サトコ
「え‥?」

石神
実は、レストランの予約を取ってるんだ。新しく六本木にできたホテルの‥

(六本木に新しくできたホテルって‥高級ホテルの!?確か、予約を取るのが難しいんじゃ‥)

サトコ
「い、いいんですか?」

石神
いいも何も、俺が誘っている
それに‥

教官は私との距離を少し詰めると、私の耳元に顔を近づけた。

石神
部屋も予約している

サトコ
「よ、よや‥っ!?」

石神
だから、イルミネーションを見て遅くなっても大丈夫だろう
まぁ、クリスマスは毎年仕事が入るから、あまり期待させるのも悪いが‥

サトコ
「いいです!大丈夫です!」
「すごく、すごくうれしいです!ありがとうございます」

笑顔で言うと、石神教官も優しい笑みを浮かべた。



数日後。
寮で休んでいると、石神教官からメールが入った。

(えっと‥『長期出張が入った。日程は‥』‥)

サトコ
「ウソ!?」

メールに記されているのは、来週末から1月上旬のスケジュールだった。

(この予定だと、クリスマスもお仕事か‥)

突然のことに、思わず呆然としてしまう。

(‥ううん、教官は毎年仕事が入るって言ってたじゃない)
(ちゃんと‥2人で過ごそうって考えてくれてたことだけで、充分だよ)

教官に用意していたプレゼントの包みを手に取る。

(せっかくだし‥先に渡しちゃおうかな)



石神教官出張の前日。
私は石神教官の個別教官室にやってきた。

サトコ
「お忙しいところすみません」
「何か、お手伝いすることはありますか?」

石神

いや‥最終チェックも今終わったところだ
明日以降の補佐官のスケジュールだが、そのファイルにまとめてある

サトコ
「了解しました!ありがとうございます」

ファイルを手に取ると、その中は丁寧できれいな字でまとめられていた。

サトコ
「あの‥」

石神
どうした?

サトコ
「これ‥ちょっと早いですけど、クリスマスプレゼントです」

石神
あり、がとう

サトコ
「気に入っていただけるといいんですけど」

石神
‥怒ってないのか?

サトコ
「そんなに心が狭いつもりありませんよ!」
「それに‥」
「私は教官のこと‥いつも、一番に応援していたいんです」

石神
氷川‥

教官は、フッと力が抜けたように笑う。

(この笑顔が一番好きだ‥)

石神
開けてもいいか?

サトコ
「はい、もちろんです!」

教官は丁寧に包装を解き、プレゼントを確認する。

石神
万年筆‥

サトコ
「はい。その、前のを壊してしまったので‥」
「って、なんだかこれだとお詫びみたいですね」

石神
気にするなと言ったのに‥

サトコ
「いいんです。私がプレゼントしたかったので」

石神
ありがとう。大事にする

石神教官はもう一度お礼を言って、微笑んだ。

to be continued

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