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バレンタイン 後藤1話

後藤さんから頼まれていた資料を届けに、教官室へ訪れる。

サトコ
「失礼します。資料持って来ました」

後藤
ああ、悪いな。その辺に置いておいてくれ

教官室に他の教官の姿はなく、後藤さんしかいない。

(聞くなら今だよね‥バレンタインの予定)
(今年のバレンタインは確か‥今週の土曜日だったし休みのはずだけど‥)

サトコ
「あの、教官。最近は任務も落ち着いてきていますよね?」

後藤
ああ、大きい案件も特にないからな

サトコ
「それじゃあ、その‥」
「週末の予定、とか‥」

後藤
「週末?」

教官は少しだけ考える素振りをする。

後藤
週末は事務仕事を片付ける予定だが

サトコ
「な、な~るほど!そうですよね!」

(それもそうか‥任務だけが仕事じゃないし‥)

後藤
‥どうした?

サトコ
「い、いえ!その‥次の講義は加賀教官だなって思いまして」

後藤
加賀さん‥?

サトコ
「加賀教官はものすごく厳しいので、気が抜けないんですよ」

後藤
その言い方だと、他の教官の講義は気が抜けるってことか?

サトコ
「っ!?そ、そういうわけでは‥!」

後藤
プッ‥何、焦ってるんだ。冗談だ

後藤さんは席を立つと、私の頭をそっと撫でる。

後藤
アンタが頑張ってることは、知ってる

サトコ
「後藤さん‥」

<選択してください>

A: 後藤を見つめる

私は後藤さんをじっと見つめた。

後藤
サトコ‥

サトコ
「後藤さん‥」

誰もいない教官室‥差し込む陽の光。
静かな世界で、ゆっくりと距離が近づく。

後藤
‥髪にゴミがついてる

サトコ
「‥ありがとうございます‥」

(キス、期待しちゃった‥)

B: 袖をギュッと掴む

私は後藤さんの袖を、ギュッと掴んだ。

後藤
サトコ‥

後藤さんのたくましい手が私の手に重ねられると、心臓が大きく波打った。
グッと私を抱き寄せ、腕の中に収める。

(暖かい‥)

C: 視線を逸らす

なんとなく子ども扱いされているように感じ、私は視線を逸らした。

後藤
どうした?

サトコ
「別に、どうもしません」

後藤
そういう割に、声が怒ってるように聞こえるけどな

後藤さんは私の両頬に手を添え、顔を覗き込む。

後藤
なにかあるなら、ちゃんと言って欲しい‥

サトコ
「それは‥」

顔の距離が近くなり、心臓が早鐘を打つ。

サトコ
「ありがとうございます。でも、本当に何でもないんです」

後藤
そうか‥

サトコ
「それじゃあ、私はそろそろ戻りますね」

後藤

ああ

教官室を出ると、肩を落としながらトボトボと歩く。

サトコ
「せめて、チョコだけは渡したい‥!」

(初めてのバレンタインだし‥!)

そう思うと自然とガッツポーズが出てしまっていた。

(そうと決まれば、放課後になったら早速買い出しに行こう!)

颯馬
おや、サトコさん。おひとりで楽しそうですね

サトコ
「そ、颯馬教官!?」

颯馬
落ち込んでいると思ったら、ガッツポーズをして‥

サトコ
「そ、そうですか‥?」

颯馬
ええ‥まぁ、この時期、悩む女性は多いでしょう
事に、相手が鈍感であればあるほど、ね

サトコ
「!」

(も、もしかして、後藤さんとのことを知ってるのかな‥)

颯馬
あまりはしゃぎすぎて、講義中眠らないように

颯馬教官はにっこりと微笑むと、そのまますれ違って行った。

放課後になり、街へ出かける。
街中はバレンタイン一色。どこもかしこも赤やピンクで装飾されていた。

サトコ
「いろいろあるなぁ‥」

(たくさんあって迷っちゃう‥あっ!あそこ、すごい人だかり‥)
(あそこに行ってみようかな)

チョコ売り場に行くと、人気No.1と書かれているチョコを見つける。

サトコ
「うわぁ、美味しそうなチョコだな‥ん?」

(って、高っ!何この値段!?)

思っていたよりもゼロの数が多く、思わず目を見張ってしまう。

サトコ
「どうしよう‥他にも美味しそうなチョコはあるけど‥」

(でも、せっかくのバレンタインだし‥妥協はしたくないよね)

サトコ
「‥よしっ!」

私は腹を括ると、チョコレートを手に取る。

(後藤さんのために、奮発しようっ!)

勢いのままレジに行き、会計を済ませる。

(さて、買うものも買ったし、あとは寮に戻って‥)

サトコ
「‥ん?」

とある看板が目に入り、足を止める。

サトコ
「お世話になっている上司へ‥」

(上司、か‥)
(他の教官たちにもお世話になってるし、渡した方がいいよね)
(でも‥)

お財布の中身が寂しいことになってることを思い出す。

(後藤さんのチョコ、奮発しちゃったからな‥)

サトコ
「‥ちょーっとくらい安くても大丈夫‥だよね?」

目の前にあるチョコをいくつか取り、レジに向かった。

数日後。

サトコ
「失礼します。レポートを持って来ました」

莉子
「あら、サトコちゃん。こんにちは」

サトコ
「莉子さん!もしかして‥何か事件ですか?」

莉子
「ううん、ぜーんぜん」
「ちょっと近くを通ったから、みんなにこれを渡そうと思ってね」

莉子さんは手に持っているチョコを掲げ、ウインクをする。

黒澤
いつもありがとうございます!

莉子
「どーして、公安学校に黒澤くんがいるのよ」

黒澤
神出鬼没!多くの皆さんに求められて‥っ
どうしても来ちゃうんです

加賀
失せろ

黒澤
そんなぁ加賀さ~ん!

莉子
「そうだ!サトコちゃんにもあるのよ。はい、どうぞ」

莉子さんから手渡されたのはチョコではなく、チケットだった。

サトコ
「これ‥ショコラ・バーのチケット!?いいんですか!?」

莉子
「もちろん。サトコちゃんが行きたそうだったから、どうかなって思って」
「私、最近行ったばっかりなの」

サトコ
「ありがとうございます!」

黒澤
へぇ、ショコラ・バーと言ったら、今人気のスポットじゃないですか!

東雲
うわぁ、何それ‥酔いそう‥

加賀
だな

石神
いかにも女子が好きそうなところだな

後藤
‥‥‥

教官たちは、三者三様の反応を見せる。

莉子
「ふふ‥」

莉子さんは私の耳元に顔を近づける。

莉子
「せっかくだし‥好きな人と行って来たら?」

サトコ
「えっ!?」

黒澤
あ~、ナイショ話ですか?

莉子
「ええ、そうよ。女同士の、ね?」

莉子さんは含みのある笑みを浮かべる。

(好きな人と、一緒に‥でも、後藤さんは仕事だって言ったし無理だよね‥)
(鳴子と行ってこようかな‥)

私はチケットを見ながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。

バレンタイン前日。

サトコ
「おかしいな‥片付けても片付けても、片付かない」

(ここまでくると、後藤さんは綺麗にしていると落ち着かない性質なんじゃないかな)

後藤
氷川、ちょっといいか?

サトコ
「は、はい!」

後藤
どうした、慌てて

サトコ
「い、いえ!なんでもないです。どうしました?」

後藤
任務外のことだ
明日なんだが‥一緒に出掛けないか?その、ショコラ・バーに

サトコ
「えっ‥?でも、教官はお仕事なんじゃ‥」

後藤
仕事は片付けた‥行きたかったんだろ?

<選択してください>

A: お礼を言う

サトコ
「あ、ありがとうございます!」
「教官はお仕事で一緒に行けないと思っていたから、すごくうれしいです!」

後藤
そうか‥

教官は目を細めると、私の頭を優しく撫でてくれた。

B: 抱きつく

サトコ
「後藤さん!」

後藤
うおっ!?

私はうれしさのあまり、後藤さんに抱きついた。

後藤
お、おい‥!

サトコ
「ありがとうございます!すごくうれしいです!」

後藤
ああ‥

ゆっくりと私の背中に、後藤さんの腕が回る。

後藤
それだけ喜んでくれたってことなら、安心した

C: 手を握る

私は後藤さんの手を両手で握る。

サトコ
「お仕事だって聞いていたので‥本当に嬉しいです!」

私は嬉しさのあまり、手をぶんぶん振る。

後藤
っ、分かったから、少しは落ち着け

サトコ
「あっ‥すみません!つい‥」

私は頬に熱が上がるのを感じながら、パッと手を離す。

後藤
フッ‥

サトコ
「あの‥明日、楽しみにしてますね!」

後藤
俺もだ
詳細は、後でメールする

サトコ
「はい!お待ちしてます」

私は寮に戻ると、ショコラ・バーについて調べ始めた。

サトコ
「へぇ、いろいろなチョコがあるんだなぁ。あっ、チョコパフェもある‥」

(どうせパフェを食べるなら‥)

後藤さんはチョコパフェをスプーンですくうと、私の口元へ運ぶ。

後藤
サトコ、あーん‥

サトコ
「あーん‥ん、美味しいです!」

後藤
そうか、よかった
プッ‥サトコ。口元についているぞ

後藤さんは私の口の端についているチョコを指で拭うと、そのまま自分の口に含んだ。

サトコ
「ご、後藤さん!」

後藤
なーに、恥ずかしがってるんだよ

つん、と指先でおでこを突かれる。

サトコ
「だ、だってぇ‥」

サトコ
「なーんてことがあったりして‥きゃ~!」

自分の妄想に恥ずかしくなり、口元を手で覆う。

(明日のためにも、今日は早く寝よう!)

私は明日の支度をすると、ベッドに横になった。

バレンタイン当日。
私たちはショコラ・バーにやってきた。

後藤
思ったより広いな‥どこから回るのがいいのか‥

サトコ
「カフェに行きませんか?美味しいチョコパフェがあるらしんですよ!」

後藤
もともとそれが目的だったんだろ

サトコ
「‥はい」

後藤
ははっ!行ってみるか

カフェに行くと、そこには長い行列ができていた。
私たちは最後尾に並ぶ。

サトコ
「覚悟はしていましたけど、すごい行列ですね」

後藤
ああ、これだと中に入るまでに結構かかりそうだな
だけど‥アンタとだったら、並ぶのもイヤじゃないから不思議だな

サトコ
「ふふっ、私もです」

ゆっくりとつないだ手に、カレの言葉に、胸が温かくなる。

(こうしてふたりでいられる時間が、もっと続けばいいのになぁ‥)

???
「あれ、氷川と‥後藤教官‥!?」

サトコ
「え‥?」

聞き覚えのある声がし、私たちは慌てて繋いでいた手を離した。
そして恐る恐る声のした方を振り返ると、そこにいたのは‥

男子訓練生A
「こんなとこで会うなんて、ビックリですね!」

男子訓練生B
「でも、なんでふたりが一緒に‥?」

(ど、どうしよう!まさか、こんなところで同期に遭遇するなんて‥!)

to be continued

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