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Kaga’s home 1話

【スーパー】

「どーちーらーにーしーよーおーかーなっ」

「かーみーさーまーのーいーうーとーおーりっ」

スーパーのお菓子売り場で、花ちゃんが駄菓子を一つ手に取る。

サトコ

「決まった?」

「うん!はな、これにするっ!」

私のところにお菓子を持ってきた花ちゃんが、ふと立ち止まる。

その視線の先には、オモチャがオマケになっているお菓子の箱があった。

「‥‥‥」

サトコ

「花ちゃん、それ欲しいの?」

「んーん、いらない」

サトコ

「でも‥」

「オモチャのおかしはねー、いいこにしてたときじゃないとダメなの」

「ママがいいよーっていったときだけなの」

(3歳なのに、ちゃんとママに言われたこと守ってるんだ‥偉いな‥)

サトコ

「それじゃ、花ちゃんはとってもいい子だから、お姉ちゃんが買ってあげる」

「いいの!?」

サトコ

「うん、だって花ちゃん、いつもニコニコ笑顔で‥」

ガッと、突然後頭部を鷲掴みにされた。

加賀

余計なことすんな

サトコ

「痛い!加賀さん、頭!締め付けられてます!」

加賀

分かっててやってんだ

勝手に甘やかしてんじゃねぇ

「ひょうご、ダメ‥?」

加賀

ダメだ

サトコ

「でも花ちゃん、いい子ですよ。家からスーパーまでちゃんと歩いたし」

「途中の信号でも、ちゃんと手を上げて渡ってたし」

「さっきドアを開けて待っててくれた人にちゃんと『ありがとう』と言えたし」

加賀

‥よく見てんな

サトコ

「だから、ひとつだけ!今日はママがいないけど頑張ってるから、特別ってことで!」

「とくべちゅってことで!」

加賀

‥‥‥

懇願する私たちを見比べて、加賀さんがため息をつく。

加賀

チッ‥貸せ

サトコ

「えっ?」

加賀

1回だけだからな

「やったー!ひょうご、だーいちゅき!」

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ギュッと、花ちゃんが加賀さんの腕にしがみつく。

溜息をつき、苦笑いしながらも加賀さんが花ちゃんの頭を撫でた。

(ふふ‥やっぱり、花ちゃんには甘いな)

(でもそこがいいというか‥私にもぜひあの優しさを見せてほしいというか)

加賀

だらしねぇ顔してんじゃねぇ

サトコ

「えっ」

加賀

まだ終わってねぇ。さっさとしろ

サトコ

「あ、はい!」

カゴを持って、加賀さんがさっさと食料品の方へ歩いていく。

慌てて、花ちゃんと一緒に加賀さんを追いかけた。

【帰り道】

スーパーからの帰り道、3人で並んで花ちゃんの家まで歩く。

サトコ

「花ちゃん、見て!影が伸びてるよ」

「ねーサトコ。なんでかげはおいかけてくるのー?」

サトコ

「うーん。花ちゃんのことが大好きだからじゃないかな?」

加賀

適当なこと教えてんじゃねぇ

「じゃあひょうごは、どうしてかげがおいかけてくるとおもう?」

加賀

テメェの影だからだろ

サトコ

「夢も希望もない‥」

軽い荷物は私が、重いものは加賀さんが持ってくれている。

「あのねひょうご、もうすぐえんそくがあってねー」

「そのあとはうんどうかいで、そのあとはおゆうぎかいで、そのあとは‥」

加賀

餅つきか

「そー!ほいくえんでおもちちゅきするの!」

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サトコ

「へぇ、お餅つきか~。楽しそうだね」

「っていうか加賀さん、花ちゃんの保育園行事、把握してるんですね」

加賀

この前、姉貴に年間行事予定表を見せられた

サトコ

「そ、それは‥」

加賀

‥自分が忙しい時は俺に行け、ってことだろ

(やっぱり‥)

(でも加賀さん、花ちゃんの運動会やお遊戯会に、ビデオカメラ持って参加しそう)

加賀

なんだ

サトコ

「えっ?」

加賀

いちいちにやけてんじゃねぇ

サトコ

「すみません。でも加賀さん、花ちゃんには相変わらず優しいなって」

加賀

‥‥‥

チッ

(盛大に舌打ちされた‥もしかして、ちょっと照れてるのかな)

加賀

花、危ねぇから手繋げ

「はーい」

「はいっ!サトコも!」

サトコ

「えっ?じゃ、じゃあ‥」

<選択してください>

A: 加賀と手を繋ぐ

サトコ

「えーと‥あの、加賀さん、いいですか?」

加賀

‥俺と繋いでどうする

サトコ

「えっ?」

「サトコ、ひょうごのことスキだから、ひょうごとおててつなぎたい?」

サトコ

「え!?あ、そっか、花ちゃんとだよね!」

加賀

クズが‥

B: 花と手を繋ぐ

サトコ

「うん、じゃあ、はい」

花ちゃんに手を差し出すと、柔らかくて小さな手にギュッと握られる。

「おーてーてーつーないでー♪」

加賀

保育園で習った歌か

「うん!せんせいがうたってくれるー」

C: 2人の間に入る

サトコ

「じゃ、失礼して‥」

加賀

なんでテメェが真ん中に来やがる

サトコ

「あれ?」

「はながまんなかー!はながまんなかー!」

サトコ

「そ、そうだよね‥ごめん」

「ひょうご、サトコ、ちからいれてー」

サトコ

「へ?力?」

加賀

絶対に手ぇ離すなよ

サトコ

「は、はい!」

「いち、にの、じゃーんぷ!」

ぴょん!と花ちゃんがジャンプする。

加賀さんと一緒にそれを支えて、花ちゃんが宙ぶらりんになった。

「きゃー!とらえられたうちゅうじん!」

加賀

また変なこと覚えて来やがったな‥

(ふふ‥花ちゃんも加賀さんも楽しそう‥かわいいな)

(もし私たちに子どもが出来たら、こんな感じなのかな‥)

サトコ

「きゃー!なーんて!」

加賀

うるせぇ

サトコ

「すみません‥」

【花宅】

ゆっくりと歩いて、やがて花ちゃんの家に帰り着く。

サトコ

「花ちゃん、今日はハンバーグだよ」

「はなもちゅくる!ぺったんぺったんってする!」

サトコ

「そうだね。ハート型のハンバーグとか作ろっか」

「はなねー、うさぎさんがいい!」

サトコ

「それは難易度が高い‥」

加賀

食えるもん作れよ

加賀さんが鍵を開けて、みんなで部屋に入る。

私と加賀さんはしばらくの間、この家で花ちゃんの面倒を見ることになっていた。

【学校 廊下】

始まりは、特に大きな行事もないある日のことだった。

鳴子

「じゃあ千葉さん、この前の連休は子育てに忙しかったんだ」

千葉

「誤解を招くようなこと言うなよ」

「親戚の子どもを預かって、ずっと世話してただけだって」

サトコ

「子どもって、何歳?」

千葉

「3歳だよ。幼稚園に通い始めたばっかりだって」

(3歳ってことは、加賀さんの姪っ子の花ちゃんと同い年か‥きっとすごく可愛いだろうな)

鳴子

「写真とかないの?」

千葉

「あ、写メ撮ってきたんだ」

千葉さんの携帯には、パパやママと一緒に、かわいい男の子が写っている。

サトコ

「わぁ‥素敵な家族だね」

鳴子

「いいな~、私も結婚したーい」

千葉

「気が早くない?」

鳴子

「そうだけど、こういうの見るとついそう思っちゃうんだよね」

「ねっ、サトコもそうでしょ?」

サトコ

「うん‥」

(もし加賀さんと結婚したら‥いつか、こんなふうになれるかな)

(なんて、そんな日が来るかどうかもわからないけど‥もしかしたら‥もしかして‥)

加賀

おい、クズ

サトコ

「ひい!」

ぐいっと首根っこを掴まれて、思わず悲鳴が漏れる。

サトコ

「かかか、加賀教官!」

加賀

ちょっと来い

サトコ

「は、はい‥!」

鳴子

「いってらっしゃい‥」

千葉

「平和な時間が終わった瞬間だな‥」

鳴子

「短い休息だったね‥」

2人の憐れむような視線を感じながら、加賀さんに引きずられて廊下を歩いた。

【資料室】

近くの資料室に入ると、加賀さんが鋭い視線で、周りに誰もいないことを確認する。

サトコ

「ど、どうしたんですか‥?」

加賀

‥‥‥

なぜか壁際に追い詰められて、ドンと壁に手を突かれた。

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サトコ

「‥‥‥!?」

加賀

来週の週末、空けとけ

サトコ

「へ‥?」

加賀

空いてるな?

<選択してください>

A: デートのお誘い?

サトコ

「もしかして‥デートのお誘いですか?」

加賀

‥‥‥

ジロリと睨まれて、竦みあがってしまう。

サトコ

「す、すみません‥!捜査ですよね!」

B: 捜査ですか?

サトコ

「やっぱり、捜査のお手伝いですか?」

加賀

『やっぱり』?

サトコ

「今、入ってきてすぐ、誰もいないか確認してたので‥」

(聞かれたくない話って言えば、やっぱり捜査のことだよね)

C: 空いてないかもしれない

サトコ

「あ、空いてないかもしれませ‥」

加賀

あ゛?

サトコ

「あ、空いてます!」

(本当はまだわからないけど、何がなんでも空けないと命の危険が‥)

サトコ

「それで、何時にどこへ行けばいいですか?」

加賀

朝10時、駅前に来い

サトコ

「早いですね。そんな早くから張り込みですか?」

加賀

誰が仕事だと言った

‥ガキの子守りは好きだったよな?

サトコ

「え?」

加賀

ガキは好きだよなって聞いてんだ

サトコ

「は、はい‥子どもは好きですけど‥」

(でも、一体なんの話‥?)

戸惑っていると、加賀さんがさらに顔を近づけてきた。

加賀

週末、子守りだ

サトコ

「子守り?」

「あ!もしかして花ちゃ‥」

ひらめいた直後、加賀さんの顔が目の前に迫った。

加賀

口塞ぐぞ

サトコ

「!?」

加賀

デカい声出すな

(そっか‥私と一緒に花ちゃんの面倒を見るなんて)

(他の教官や訓練生に知られたら大変だもんね)

サトコ

「わかりました。プライベートの極秘任務ということですね!」

加賀

‥‥‥

なんでもいい。アイツらに聞かれるよりはマシだ

サトコ

「アイツら?」

加賀

いつどこで黒澤や歩が聞いてるか分からねぇ

アイツら、莉子に情報をリークしてやがる

サトコ

「リークって‥」

加賀

これ以上、奴らに弱みを握られんのはごめんだ

(そういえば、莉子さんも花ちゃんのこと知ってるんだった)

サトコ

「あれは、東雲教官たちからの情報だったんですか‥」

加賀

奴らに情報が漏れると後々めんどくせぇ

(要するに、花ちゃんにメロメロになってる自分を東雲教官たちに知られたくない、と‥)

加賀

今なんつった?

サトコ

「な、何も言ってないですよ!?」

加賀

‥まあいい

週末、遅れんじゃねぇぞ

サトコ

「は、はい!頑張ります!」

(花ちゃんの子守り‥ってことは、加賀さんのお姉さん夫婦、仕事が忙しいのかな)

(花ちゃんに会うのは久しぶりだし、加賀さんと一緒に過ごせるし、楽しい週末になりそう!)

to be continued

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