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Kaga’s home 3話

花ちゃんが風船をもらった後、3人でのんびり園内を歩く。

ライオンのエリアに来ると、思っていた以上に近くで見ることができた。

サトコ

「花ちゃん、ライオンだよ。怖い?」

「ううん、はな、こわくなーい」

サトコ

「あっ、ほら、こっちに来たよ」

「きゃーっ!」

悲鳴を上げて、花ちゃんが加賀さんの後ろに隠れる。

加賀

あんなのが怖いのか

「はな、こわくないもん!」

「‥‥‥」

サトコ

「ん?花ちゃん、どうしたの?」

「ううん‥」

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加賀さんの後ろに隠れながら、花ちゃんが小さく首を振る。

(やっぱり、ライオンが怖かったのかな?)

サトコ

「でもあのライオン、誰かに似てるような‥」

ゆったりしているように見えても、周囲への鋭い視線は忘れない。

そんなライオンと、不機嫌そうな加賀さんの表情が重なった。

サトコ

「あっ‥」

気付かないようにこっそり、花ちゃんと話している加賀さんを振り返る。

眉間に皺を寄せたところを思い出して、一人でうんうんと頷いた。

(そっくりだ‥ライオンだ‥百獣の王だ‥)

(心なしか、低い声で私たちを脅す時の声も、ライオンの声に似てる気が‥)

加賀

何ジロジロ見てやがる

サトコ

「はっ!?めめめ、滅相もございません!」

加賀

‥俺がライオンなら、テメェは羊だな

サトコ

「へ!?」

加賀

おとなしく食われてろ

不敵な笑みに、震えと恥ずかしさが一度にやってくる。

(なんでいつも、考えてることバレバレなの‥!?)

(いや、それより‥『食われる』って、どういう意味で‥!?)

「‥‥‥」

サトコ

「‥花ちゃん?」

「ん‥」

サトコ

「どうしたの?さっきから元気ないけど」

「なんでもなぁい‥」

ギュッと、花ちゃんが加賀さんの服を掴んだ。

(さっきまでは楽しそうだったのに‥)

(やっぱりライオンが怖いのかも‥ここから離れた方がいいかな)

サトコ

「加賀さん、そろそろ違うところに行きませんか?」

「花ちゃんが楽しめる、かわいらしい動物が見れるような‥」

加賀

ああ‥

花、シロクマさん見るか

「ん‥みるぅ」

園内マップを確認して、加賀さんが花ちゃんに確認する。

(シロクマ『さん』‥!!!)

(いや‥ここで笑ったら、絶対に怒られる‥我慢我慢!)

サトコ

「じゃ、じゃあ行きましょうか!こっちですよ」

「あ、途中で飲み物が売ってるみたいです。何か買いましょうか」

加賀

そうだな

「‥‥‥」

花ちゃんは、まだ少し俯いたままだった。

(シロクマやレッサーパンダのかわいい姿を見れば、きっと元気になるよね)

【シロクマエリア】

シロクマエリアは、人で混雑していた。

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サトコ

「これじゃ、花ちゃんが見れませんね」

加賀

花、肩車だ

「んー‥」

いつものように、加賀さんが花ちゃんの前で屈む。

加賀

!?

花ちゃんがその肩に乗ろうとした瞬間、加賀さんが微かに目を見張った。

加賀

‥花、ちょっと来い

「なぁにぃ‥?」

花ちゃんの手を取り、加賀さんが人混みから抜け出す。

私も、その後を慌てて追いかけた。

【動物園入口】

サトコ

「加賀さん!どうしたんですか?」

加賀

‥‥‥

加賀さんが、花ちゃんのおでこに手を当てる。

(まさか‥)

加賀

‥熱い

サトコ

「えっ?」

慌てて花ちゃんのおでこや首に触れると、確かに熱い気がした。

サトコ

「花ちゃん、熱があるの!?」

「え‥?」

サトコ

「ごめんね!気づいてあげられなくて‥」

加賀

なんでもっと早く言わねぇ

振り返ると、加賀さんが花ちゃんに厳しい表情を向けている。

サトコ

「加賀さん‥!」

加賀

無理して、もっと熱が出たらどうする

なんで具合悪いって分かった時に言わねぇんだ

「‥‥‥」

「ぅわああああーーーーん!」

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みるみるうちに、花ちゃんの目に涙が溜まり、とめどなく頬から流れ落ちる。

サトコ

「加賀さん!花ちゃんを責めないでください!」

「気付かなかった私たちの責任です!」

加賀

‥‥‥

サトコ

「まだ3歳の子どもが、体調が悪いって訴えるのは難しいです!」

加賀

‥チッ

加賀さんが屈むと、花ちゃんは泣きながらも加賀さんに抱きついた。

そのまま立ち上がり、加賀さんが花ちゃんを抱っこして足早に歩き始める。

加賀

帰るぞ

<選択してください>

A: もうちょっといたい

サトコ

「もうちょっといませんか?花ちゃんも、せっかく来たんだし‥」

加賀

熱があんのにいても意味ねぇだろ

それより、病院が先だ

サトコ

「あ、そっか‥!休日だから、救急病院調べますね」

B: 病院に行く?

サトコ

「このまま病院に行きますか?」

加賀

‥そうだな

サトコ

「今日は休日だから、救急病院ですね。どこの病院か調べます」

加賀

‥頼む

C: 私が抱っこします

サトコ

「私が抱っこしましょうか?」

加賀

いい。お前は病院を調べろ

サトコ

「病院?」

加賀

今日は休日だ。救急病院だろ

サトコ

「あ、そっか‥そうですよね」

加賀

花、大丈夫か

「うぅっ‥うぇえええーーーん!」

加賀

怒って悪かった‥

寒くねぇか

「ひっく‥ぅう、うっ」

「だ、だいじょうぶ‥」

加賀

せっかく動物園来たのにな

「‥また、くる」

泣きながらも、花ちゃんがしっかり答える。

思わず、加賀さんと目配せして笑ってしまった。

加賀

また、か

「また、ひょうごとサトコとくる」

サトコ

「うん、また来ようね」

「とりあえず病院行って、早く治そう」

そのまま動物園を出て、車で救急病院へと向かった。

【帰り道】

病院に行った帰り、花ちゃんは疲れて車の中で寝てしまい‥‥

車を停めると、加賀さんは家まで花ちゃんをおんぶして歩いた。

サトコ

「ふふ‥いつ見ても、かわいい寝顔ですね」

加賀

見えねぇ

サトコ

「帰ったらいっぱい見れますよ」

「加賀さんっていいパパになりそうですよね」

加賀

あ?

サトコ

「めんどくさいって言いながらちゃんと遊んであげてるし」

「キライな野菜も、花ちゃんの教育のために食べるし」

加賀

‥思い出させんな

(そんなに嫌だったんだ、野菜‥)

サトコ

「子煩悩な、すごく素敵なパパになると思います」

加賀

ずいぶん気が早ぇな

サトコ

「え?」

ニヤリと笑われて、大胆なことを言ってしまったのだと気付く。

サトコ

「ち、違うんです!そういう意味じゃなくて‥!」

(いや、でも将来は加賀さんと‥って思ってるし、やっぱりそういう意味‥!?)

一人でオタオタする私を、加賀さんが呆れ顔で見ている。

加賀

どっちだ

サトコ

「あの、あの‥」

「い、いつか、加賀さんと、その‥!」

「お、親子3人と申しますか‥!そ、そ、そんな生活を送れたらいいなって‥思ってます!」

照れながらも思い切ってそう告げると、花ちゃんをおんぶしたまま、

加賀さんが私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

加賀

上出来だ

サトコ

「え‥?」

加賀

その『いつか』を楽しみにしてろ

(それって‥加賀さんも、同じ気持ちでいてくれるってこと‥?)

(ど、どうしよう‥嬉しすぎて、地に足がついてないみたいな気分だよ‥)

【花 部屋】

家に着くと、そのまま部屋に花ちゃんを寝かせる。

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サトコ

「花ちゃん、熱も下がってよかったですね」

加賀

知恵熱なんざ、ガキらしいな

嬉しくてはしゃぎ過ぎた花ちゃんは、昨日の夜もあまり寝ていなかったらしく、

そのせいで熱が出てしまったのでは、と診断された。

サトコ

「ふふ‥やっぱりかわいい寝顔」

加賀

‥‥‥

悪かったな

サトコ

「え?」

加賀

また、子守りに付き合わせちまって

<選択してください>

A: 楽しかった

サトコ

「いえ、楽しかったですよ」

加賀

‥テメェは変わってんな

サトコ

「そうですか?だって花ちゃん、かわいいですから」

「やっぱり懐いてくれると嬉しいですよね」

B: 『また』って?

サトコ

「『また』って何のことですか?」

加賀

前にもあっただろ

サトコ

「あ‥クリスマスの時の」

加賀

あん時も、お前と一緒に花の寝顔を見たな

サトコ

「そうでしたね」

C: 大変でしたね

サトコ

「色々大変でしたね。熱を出させちゃうなんて、お姉さんに申し訳ないです」

加賀

ガキってのはいきなり熱出す生き物だ

サトコ

「そうなんですか」

加賀

今までも、こういうことは何度もある

サトコ

「加賀さんこそ、疲れてないですか?」

加賀

慣れてる

サトコ

「そうですよね。毎週ですもんね」

「来週も、また子守りですか?」

加賀

どうだかな。姉貴次第だ

サトコ

「じゃあ、もし来週も子守りだったら、また誘ってください」

加賀

‥懲りねぇのか

サトコ

「だってこの先、加賀さん一人じゃ大変ですよ」

「花ちゃん、もっともっと活発になってきますから」

加賀

‥‥‥

想像したのか、加賀さんが少しげんなりした表情になる。

サトコ

「私なら、いつでも大丈夫です」

「週末に、加賀さんと一緒にいられるのも嬉しいし」

素直な気持ちを告げると、私を見ていた加賀さんと視線が絡み合う。

加賀さんが身体を傾けて、私の頭を引き寄せ‥そのまま、深く、唇が重なった。

サトコ

「っ‥‥」

「か、加賀さっ‥」

加賀

黙ってろ

サトコ

「だ、だって‥花ちゃんの前っ‥」

加賀

お前が騒がなきゃ起きねぇ

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サトコ

「んっ‥」

少し強引に舌を絡め取られて、少しずつ、身体の力が抜けていく。

(ダメ‥加賀さんにキスされると‥)

(でも‥花ちゃんが起きたら‥)

必死に理性にしがみつこうとするのに、加賀さんの舌と指先が私をかき乱していく。

(前にも、こういうことがあったっけ‥花ちゃんと一緒にクリスマスを過ごした時‥)

サトコ

「加賀‥さん‥」

加賀

花が寝てんなら問題ねぇ

羊は、黙ってライオンに食われてろ

唇を離して、至近距離で口の端を持ち上げられる。

(ムリだよ‥この笑顔に抵抗できるはずない)

(まさか本当に‥このまま、ここで‥?)

美優紀

『ただいまー!花が熱出したって!?』

玄関の方から美優紀さんの声が聞こえて来て、我に返った。

加賀

‥チッ

サトコ

「加賀さん!舌打ちしちゃダメです!」

加賀

大声出しやがって、あのバカ女が‥花が起きるだろうが

サトコ

「えっ、そっち!?」

(もしかして続きができなかったから舌打ちしたのかも‥なんて)

(一人で勘違いして‥恥ずかしすぎる‥!)

加賀

安心しろ

サトコ

「え?」

加賀

ちゃんと、後で満足させてやる

サトコ

「!!!」

美優紀

「兵吾!花は‥」

加賀

でけぇ声出すな。起きるだろ

美優紀

「大丈夫なの?風邪?」

加賀

いつもの知恵熱だ

美優紀

「なんだ~よかった。サトコちゃんもごめんね~」

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サトコ

「い、いえ‥」

(うぅ、まだ頬が熱い‥早く冷まさないと、美優紀さんに怪しまれる‥!)

(でも‥さっきの加賀さんの言葉‥)

『その“いつか”を楽しみにしてろ』

それを思い出すだけで、嬉しくて舞い上がりそうになる。

(色々あったけど、加賀さんと一緒に過ごせたし、花ちゃんとも遊べた‥)

(本当に楽しくて、幸せな週末だったな)

加賀さんの横顔を見つめ、そんな気持ちで満たされたのだった。

End

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コメント

  1. みさき より:

    質問失礼します!
    東雲教官のオレの帰る場所はありますか?

    • sato より:

      みさきさん、質問ありがとうございます♪
      あゆむんの「オレの帰る場所」ですね~
      ・・・・
      ・・・・・
      ・・・・・・
      抜けてましたね~(^_^;)
      思いっきり抜けてました~(^_^;)(^_^;)

      後日追加しておきますね☆

      サトコ