カテゴリー

ヒミツの願い 加賀 1話

イケメン総選挙 2015

アナタにしてほしい

カレのお願いごと‥

【教場】

(眠い‥このままじゃ意識を失ってしまう‥)

(でも眠ったら最後、意識どころか命まで失うかもしれない‥)

教場の前方には、加賀さんの姿。

(加賀さんの講義中に居眠りしたなんてことがバレたら‥)

(その先に待っているのは‥‥死!)

必死に自分を叱咤して、なんとか講義終了の時間を迎える。

ホッと胸を撫で下ろした時、頭上から低い声が聞こえてきた。

加賀

おい、クズ

サトコ

「!!!」

恐る恐る顔を上げると、そこには不機嫌そうな加賀さんが立っていた。

サトコ

「な、なんでしょう‥?」

加賀

後で俺の教官室に来い

サトコ

「えっ‥!?」

私の返事を待たずに、加賀さんは教場を出て行った。

(仕事‥?それとも‥)

鳴子

「バレたね、あれは‥」

サトコ

「な、鳴子‥?」

千葉

「氷川、ちょっとウトウトしてただろ」

鳴子

「寝てる人に対して、容赦ないからね‥」

(寝そうになってたのがバレた‥!?ってことは、私を待っているのは‥)

(‥いや!さすがに命の危機はないはず‥)

サトコ

「でも、グラウンド100周とかさせられそう‥」

鳴子

「とにかく行っておいで‥」

千葉

「この時の笑顔が、彼女の最後の姿となった‥」

「‥なんてことにならないといいな」

サトコ

「不吉‥!」

震えながら、加賀さんの教官室へと向かった。

【教官室】

サトコ

「失礼します」

東雲

なに?兵吾さんにお説教されにきたの?

教官室に入ってすぐに、東雲教官が声を掛けてくる。

いつものように嫌味っぽく‥

東雲

案外、キミが思っているようなことじゃないかもね

サトコ

「え?」

東雲

早く行かないと、更にお仕置きがプラスされちゃうんじゃない?

サトコ

「わ、分かってます‥!」

(東雲教官が話しかけてきたのに!)

個別教官室の前に立ち、ゴクリとつばを飲み込む。

ドアをノックすると、低い返事が聞こえてきた。

(お、怒ってる‥?)

【個別教官室】

サトコ

「失礼します‥」

加賀

閉めろ

サトコ

「はい‥」

そっとドアを閉めると、加賀さんが立ちあがる。

サトコ

「ぐ、グラウンド何周すればいいですか!?」

加賀

あ?

サトコ

「それとも資料整理ですか!?」

「な、何をしたらいいですか!?」

加賀

チッ‥

やりたきゃ好きにしろ

サトコ

「え?」

加賀さんが、ポケットから何かのチケットを取り出す。

加賀

この前、ガキのお守りに付き合わせた礼だ

サトコ

「え‥」

加賀

週末、東京スカイタワー前に18時。遅れるな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-001

サトコ

「で、デート‥!?」

(お仕置きだと思ったら、まさかのデートのお誘い!?)

サトコ

「スカイタワー前に18時ですね!わかりました!」

加賀

俺を待たせたらどうなるか、わかってるな?

サトコ

「はい!絶対加賀さんよりも早く行きます!」

チケットを握りしめ、天にも昇る気持ちで個別教官室を出た。

【東京スカイタワー】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-002

当日、待ち合わせ場所に着くと、加賀さんはまだ来ていないようだった。

(早めに来てよかった。加賀さんももうすぐ来るかな)

加賀

遅ぇ

サトコ

「!?」

加賀

いつまで待たせんだ。クズが

サトコ

「か、加賀さん‥!?もう来てたんですか!?」

(早めに家を出たはずなのに‥!?)

サトコ

「す、すみません!お待たせするつもりは‥」

加賀

さっさとしろ

サトコ

「はい!」

加賀

こんなところでグズグズしても仕方ねぇ

私に背を向けて、加賀さんがスカイタワーの中に入っていく。

急いで、その背中を追いかけた。

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-003

スカイタワーの中は星空仕様になっていて、まるいで本物の星空の下を歩いているようだった。

サトコ

「綺麗ですね‥もうすぐ七夕だからでしょうか?」

加賀

かもな

まるでそのフロア全体がプラネタリウムになったように、様々な星座を楽しむことができる。

(加賀さんとプラネタリウムを眺める日がくるなんて、思ってもみなかった‥)

(っていうか、こんなの『くだらねぇ』とか言いそうだけど)

チラリと隣の加賀さんを盗み見ると、意外にもちゃんと楽しんでいるようだ。

しばらく歩いていると、ナレーションが流れ始めた。

音声

『皆様、7月7日は七夕です。古くから伝わる神話では、彦星と織姫は‥』

わかりやすく天の川が現れて、周りがわあっと沸く。

(織姫と彦星か‥もし加賀さんと、年に一度しか会えないとしたら‥)

そう考えるだけで、寂しい気持ちになる。

加賀

よそ見してんじゃねぇ

手に温かいものが触れて、そのまま繋がれた。

サトコ

「す、すみません」

加賀

前みたいに迷子になって呼び出しでもしてみろ

捻り潰すぞ

サトコ

「ひね‥っ!?」

(どこを!?)

サトコ

「大丈夫です!意外と明るいですから」

音声

『‥で、雨が降ると、カササギが橋を作って2人を会わせてくれると言われており‥』

流れ続ける音声を、加賀さんが真剣に聞いている。

(‥加賀さんって、意外とロマンチストだよね)

(1年に一度なんて耐えられないな‥やっぱり、こうしていつでも会いたいよ)

そっと、手を握り返した。

ナレーションに沿って歩いていると、少しして短冊コーナーが見えてきた。

サトコ

「加賀さん!『短冊にお願い事を書いて笹に吊るしましょう』って書いてます!」

加賀

‥で?

サトコ

「い、いえ‥やってみませんかと思いまして‥」

加賀

テメェだけで行ってこい

サトコ

「加賀さんは行かないんですか?」

加賀

くだらねぇ

(そりゃそうか‥加賀さんが短冊にお願い事を書いてる姿なんて、想像できないし)

(加賀さんのお願い事、知りたかったけど‥諦めるしかないか)

【東京スカイタワー外】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-004

スカイタワーを出て、手を繋いだまま夜の公園を散歩する。

サトコ

「すごく綺麗でしたね。誘ってくださってありがとうございました」

加賀

ああ

サトコ

「あの‥加賀さんは、七夕にお願い事とかしたことありますか?」

加賀

興味ねぇな

サトコ

「でも、もしかしたら織姫と彦星が叶えてくれるかもしれませんよ」

加賀

正気か?

サトコ

「そんな、神経を疑う、みたいな顔で見なくても‥」

加賀

‥‥‥

‥織姫と彦星なんざ、信じちゃいねぇ

ただ‥願い事を叶える、っていうのは悪くねぇな

サトコ

「加賀さんもそんな風に考えるんですね」

(加賀さんの願い事かぁ‥)

サトコ

「それってやっぱり、自分の力ではどうしようもないことなんですか?」

加賀

何でそう思う

サトコ

「加賀さんだったら、たいていのことは自力でどうにかしそうだし‥」

「仕事のことをお願いするとも思えないです」

加賀

よくわかってんじゃねぇか

サトコ

「じゃあ、どんなお願いするんですか?」

加賀

テメェで考えろ

サトコ

「えー!」

でもいくら聞いても答えてくれるとは思えないので、必死に考えてみる。

サトコ

「昇進‥とかはないですよね。自分の力でできるし‥」

「あ!花ちゃんに素敵な彼氏ができますようにとか」

加賀

まだ早ぇ

ピシャリと言われて、慌てて口をつくんだ。

(花ちゃん、お嫁に行くとき大変そうだな‥)

サトコ

「じゃあ、えーと‥もしかして私のことなんて、そんな」

加賀

‥‥‥

サトコ

「ないですよね!すみません。調子に乗りました!」

加賀

いつも教えてんのに、わかんねぇのか

だからテメェは、いつになってもグズなんだよ

サトコ

「仰る通りです‥」

(でも、『いつも教えてる』‥ってことは、やっぱり私に関係してる?)

(いつも教えられてることといえば‥)

教場以外では、もうベッドの中しか浮かばない。

(い、いや!まさかそんな‥!)

(ベッドの中で言われてることを、普段からやれと‥!?)

加賀

どうした?

サトコ

「いや、あの‥!」

覚悟を決めると、自分から加賀さんの腕をギュッと掴んだ。

サトコ

「こっ。ここでいつもみたいなことは、さすがにできないので‥!」

「い、今はこれで許してくださいっ‥」

しがみつく私に驚いたように、加賀さんが軽く目を見張る。

そして、ギュッと目を瞑り、加賀さんに近づく‥‥

すると、フッと加賀さんの鼻で笑う声が聞こえた。

加賀

俺の教育が足りねぇみてぇだな

サトコ

「め、滅相もない‥!」

加賀

テメェにそんなことは期待してねぇ

サトコ

「え?」

加賀

それに関しちゃ、気長に躾けてやるつもりだったからな

私が何を考えているのか、加賀さんにはお見通しらしい。

サトコ

「ち、違ったんですか‥」

加賀

こんなことろでテメェに強要するほど、飢えちゃいねぇ

テメェがすぐバテるから、毎度物足りねぇがな

サトコ

「す、すみません‥」

加賀

‥どうしようもねぇクズでも

救いようのねぇバカで、躾甲斐のねぇ駄犬でも‥

‥テメェは、俺の隣にいろ

グイッと、加賀さんが私の頭を引き寄せて自分の胸に顔を埋めさせる。

サトコ

「‥それが加賀さんのお願い事ですか?」

私の顎に手を添えて、加賀さんが上を向かせた。

加賀

叶わねぇとは言わせねぇ

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-006

サトコ

「‥はい」

うなずくと、満足そうな加賀さんの顔が近づく‥

(何があっても、加賀さんのそばにいる)

(加賀さんから離れられないように、心も身体も躾けられてるから‥)

End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする