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王子様 難波①

イケメン総選挙2015 前篇

もしも1年に1度しか

2人が会えなかったら‥!?

【商店街】

(お母様が亡くなって、お義父様やお義兄様が私を引き取ってくれたのはよかったけど)

義兄B(歩)

キミさ、このペースじゃ日が暮れちゃうけど

義兄A(加賀)

グズは何したってグズだな

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サトコ

「ま、待ってください‥この荷物、ほんとに重くて」

義兄B(歩)

女だからって、甘えても無駄だから。あ、ちょっと遠回りしていこうか

オレ、他に欲しいものいっぱいあったんだよね

(重いって言ってるのに、さらに荷物持たせるつもり‥!?)

義兄A(加賀)

この程度で弱音を吐くとは、まだまだ躾が足りねぇみたいだな

義兄B(歩)

そうですね。この階段を100往復させるとか‥

義兄A(加賀)

そうだな‥使えねぇクズなら、海に沈めるまでだ

サトコ

「しっ‥沈める!?」

(それ、お仕置きじゃなくて犯罪だよね‥!?)

(もうやだ‥なんで私ばっかり、こんな目に)

泣きたくなり、思わず2人をキッと睨みつける。

その時、のんびりとした声の主に呼び止められた。

王子(難波)

おー、ちょっとそこの姉ちゃん

‥じゃない、お嬢さん

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サトコ

「へ?」

義兄B(歩)

兵吾さん、あれってナンバ王子じゃないですか?

義兄A(加賀)

ああ゛‥?

義兄B(歩)

間違いない。ほら、あの年季の入ったスーツ

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義兄A(加賀)

‥アイツが王子か

驚く2人など気にせずに、ナンバ王子はゆったりと私の方へ歩いて来る。

(ま、まさか本当に声を掛けてきたの?)

(だってこんな庶民の私に、王子が直々に話しかけてくるなんて‥!)

王子(難波)

悪いが、ちょっと付き合ってくれないか?

サトコ

「つ、付き合うって‥?」

王子(難波)

まぁ、来ればわかる

お前らも、構わないよな?

義兄A(加賀)

チッ‥

ナンバ王子にそう念を押され、お義兄様たちも頷くしかないらしい。

王子は構わず、私の手を引いて歩き出した。

サトコ

「あ、あの‥!」

王子(難波)

ん?どうかしたか?

‥‥‥

(な、なんだろう‥?王子が真剣な顔で私を見てる‥!)

王子(難波)

んー‥思ったより若いな

サトコ

「え?」

王子(難波)

女は、30代から大人の色気が出てくるんだが

まさか、こんな乳臭い子どもだったとはな‥

サトコ

「ち、乳臭い!?」

(い、いくら王子だからって、失礼すぎる‥!)

サトコ

「た、確かに‥胸は大きくないですけど!」

「ヒドイです‥!いきなり連れて来ておいて」

王子(難波)

ああ、悪い悪い。んじゃまぁ、失礼ついでに一杯行くか

サトコ

「か、からかってるんですか?」

王子(難波)

ハハハ、そんなにムキになるな

サトコ

「だってナンバ王子が私みたいな貧乏娘に‥」

王子(難波)

まぁ、その辺はあまり気にするな

せっかくだ。おじさんに付き合ってくれ

どうせ帰ったってアイツらが待ってるだけだろ?

(そうだ!帰ったらきっとお義兄様たちの恐ろしいお仕置きが‥!)

(ちょっとぐらいなら‥付き合ってもいいよね?)

物腰は柔らかいのに、なぜか断れず‥

結局そのまま王子に手を引かれ、付いていくことにした。

【酒場】

やってきたのは、オシャレなバー‥

ではなく、庶民的な酒場だった。

サトコ

「王子でも、こういったお店に来るんですね」

王子(難波)

他の奴らには内緒だぞ?執事に見つかると来れなくなっちまうからな

こういうところの方が、のんびり飲めていいだろ

(確かに、私にはこういうお店の方が身近だけど)

(なんだか‥ナンバ王子って、想像してた人とは全然違うのかも)

目の前で美味しそうにお酒を飲む王子に、お酌する。

普段は家でもさせられているけど、こんなに楽しい気持ちは初めてだった。

王子(難波)

ほら、ひとりで飲んでてもつまらないだろう。お前も飲め

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サトコ

「あ、ありがとうございます」

「あの‥聞いてもいいですか?」

「王子はどうして、私を連れてきたんですか?」

王子(難波)

そうだなぁ‥

お酒を飲む手を止めて、王子がジッと私を見る。

王子(難波)

お前、あいつらに腹立ててただろ?

サトコ

「‥え?」

王子(難波)

泣きそうな顔で睨みつけてたら、誰だってわかる

何があったか知らないが、たまには息抜きも必要だぞ

(じゃあもしかして‥お義兄様たちから助けてくれたの?)

気だるげにコップを傾ける王子が、どんな人なのかわからなくなってくる

(かっこいいのか、ただのおじさんなのか‥)

(いや、王子におじさんなんて、ものすごく失礼なんだけど‥でも)

王子(難波)

なんだ?そんなに見惚れて、おっさんに惚れたのか?

サトコ

「なっ!?」

王子(難波)

ハハハ。冗談だ、そう慌てるな

でもこんなおっさんでもよければ、このままどこかへ抜け出してもいいぞ?

(そ、それって‥まさか、駆け落ち!?王子が、私と!?)

執事(石神)

王子!ナンバ王子!

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やはり、ここにいましたか‥

王子(難波)

‥見つかっちゃったか

酒場にその声が響き渡り、王子がため息をつく。

王子(難波)

石神‥お前な、こんなところで堂々と名前を呼ぶな

執事(石神)

申し訳ありません。しかし、勝手な行動をされては困ります

万が一、王子の身に何かあったら

王子(難波)

お前は相変わらず固いな

執事(石神)

とにかく、戯れもその辺にして、早く城へ戻りましょう

王子(難波)

残念。また次会う時までおあずけだな

驚く私を残して、王子が立ち上がった。

王子(難波)

またな。えーっと‥

サトコ

「あの‥私、サトコっていいます!」

王子(難波)

サトコか。次会う時はもう少し色々成長させとけよ

サトコ

「色々、って‥」

王子(難波)

まあ、主にカラダだな

サトコ

「!?」

執事(石神)

王子、今のはセクハラになります。お控えください

ただでさえ、隣国の姫君たちから苦情が寄せられているのですから

王子(難波)

いや、やっぱり礼儀としてな

のらりくらりとかわしながら、ナンバ王子が執事と一緒に店を出ていく。

(‥本当に、本物の王子だったんだよね?)

(変わった王子だったけど、なんだか夢みたいな心地良い時間だったな‥)

サトコ

「って‥ぼんやりしてる場合じゃない!早く帰らなきゃ!」

【自室】

あの日以来、私は王子への接近を禁止されてしまった‥

継父(颯馬)

王子に、私たちがコキ使っているところを見られるとは‥

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義兄B(歩)

随分とオレたちに恥をかかせてくれたよね

義兄A(加賀)

使えねぇクズには、仕置きが必要だな

継父(颯馬)

まあまあ、家の雑用をやらせている分には問題ありません

貴女はこれからも、一生この家で暮らしていくんですよ

(そんな‥本当に、ずっとこの家から出られないの?)

義兄B(歩)

ここでおとなしくしてなよ

継父(颯馬)

私たちは今から七夕の舞踏会に出かけてきますから

お留守番、頼みましたよ

お義父様とお義兄様たちが部屋を出ていく。

(どうしよう‥王子に会えなくなっちゃう!)

(窓から脱走する‥?でも、お義兄様たちならすぐに見つけられちゃうだろうし‥)

助けを呼ぼうにも、きっと盗聴器が仕掛けられているはず‥

(‥いったいどうしたらナンバ王子と会えるの?)

(私‥あの日からずっと、ナンバ王子のことばっかり考えてる)

サトコ

「でも、どうやったって王子には会えない‥」

???

「もう一度、王子に会いたくないのか?」

突然の声に振り返ると、そこに見知らぬ男性が立っていた。

サトコ

「あ、あなたは‥!?」

???

俺は‥ま、魔法使いの後藤だ

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(ま、魔法使い‥?本物!?)

(しかもなんか、照れてる‥!)

魔法使い(後藤)

‥今日は、年に一度の七夕の舞踏会が行われる

サトコ

「あ‥そういえば、お義父様たちがそんなこと言ってました」

魔法使い(後藤)

一般の人間が城に入れるのは、今日しかない

普段は警備も厳重だ。王子には常に優秀な執事がついている

サトコ

「ずいぶん、お城の内情に詳しいんですね」

私の言葉に、魔法使いさんは気まずそうに目を逸らす。

魔法使い(後藤)

‥それではいくぞ

スッと魔法使いさんが手をかざすと、

その瞬間、私のみすぼらしい服が煌びやかなドレスに変わった。

サトコ

「え!?」

魔法使い(後藤)

外に馬を準備した。ヘンな鳴き方をするが気にするな

最後に、俺の魔法は7月7日しか効果がない。日付が変わる前に戻ってきてくれ

(ヘンな鳴き方をする馬っていったい‥)

サトコ

「でも、本当にいいんですか?」

魔法使い(後藤)

ああ。この魔法で、チャンスを掴んで来い

サトコ

「ありがとうございます‥!」

魔法使いさんが魔法で部屋の鍵を開けてくれて、こっそりと抜け出す。

そして、用意されていた馬車で城へ向かった。

【城】

緊張しながら、なんとかお城に辿り着く。

あまりにも豪華な雰囲気で、逃げ出したくなった。

(でも、ここで帰ったら‥二度とナンバ王子には会えない‥)

(王子、どこにいるんだろう‥)

王子(難波)

ん?お前は‥

おーい、こっちだこっち

振り返ると、ナンバ王子が私に手招きしていた。

サトコ

「お、王子‥!私のこと、覚えてるんですか?」

王子(難波)

伊達にいろんな女見てないからな

女は、身なりひとつで変わる生き物だろ?

まぁ、ここじゃゆっくり話もできない。場所を変えるぞ

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【バルコニー】

王子が連れて来てくれたのは、最上階のバルコニーだった。

王子(難波)

ここは、王族以外は立ち入り禁止だからな。誰も来ない

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サトコ

「王子‥もしかして、舞踏会を抜け出すきっかけが欲しかっただけじゃ」

王子(難波)

おお、よくわかったな。まだ2回しか会ったことないのに

(そう言われれば、確かに‥でもなんとなく、そんな気がして)

王子が用意してくれたお酒で、満天の星空を見ながら乾杯する。

王子(難波)

それにしても、よく思い切ってここまできたもんだな

サトコ

「はい!魔法使いさんが‥」

王子(難波)

魔法使い‥?

サトコ

「いや、すみません‥今のは忘れてください」

(魔法使いだなんて話しても、信じてもらえるわけないよね‥)

王子(難波)

魔法使いねぇ‥会ってみたいもんだな

知ってるか?魔法使いは心が綺麗なヤツの前にしか現れないんだ

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サトコ

「ナンバ王子‥」

王子(難波)

なんて‥ちょっとクサかったな

照れ隠しをするかのようにハハハと笑った王子は、頬をかく。

サトコ

「そんなことないです!嬉しいです」

王子(難波)

そうか‥

いろんな女を見てきたが、お前みたいのは初めてだ

サトコ

「え‥」

ナンバ王子が優しく微笑み、私の頭にポンッと手を置いた。

見つめ合い、王子との距離の近さに心臓が高鳴る‥

(王子から、目が離せない‥)

(もしかして、このまま‥)

ゆっくりと顔が近づき、唇が触れ合いそうになった時‥0時を告げる鐘が鳴り始めた。

サトコ

「いけない‥!帰らなきゃ!」

王子(難波)

なんだ?もう帰るのか?

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サトコ

「ごめんなさい‥!日付が変わる前に、帰らなきゃいけないんです!」

立ち上がり、急いで出口に向かう。

王子(難波)

サトコ!

サトコ

「!」

王子(難波)

来年もまた来いよ?

サトコ

「‥はい!」

王子と約束を交わして、0時の鐘が鳴り終わる前に馬車へと乗り込んだ。

【自室】

そして、あれから1年。

(今日は7月7日、七夕の舞踏会の日‥)

(魔法使いさん、今年も来てくれるのかな‥?)

サトコ

「今年も、ナンバ王子に会えますように‥」

「私の願い、叶うかな‥?」

魔法使い(後藤)

そのために今年もアンタに会いに来た

サトコ

「わっ!?魔法使いさん、いつの間に!」

魔法使い(後藤)

会えない間に、いっそう王子のことが好きになったのか

サトコ

「はい‥1年に一度でもいいですから、王子に会いたいです!」

魔法使い(後藤)

なら‥

義兄B(歩)

やっぱりね‥来ると思ったよ

部屋のドアが開いて、お義兄様たちが入ってくる。

サトコ

「ど、どうして‥」

義兄B(歩)

去年、魔法で舞踏会に行ってたの、バレてないとでも思った?

義兄A(加賀)

クズの分際で舞踏会とはな

継父(颯馬)

これ以上、私たちの顔に泥を塗ることは許しませんよ

お義兄様たちが魔法使いさんと羽交い絞めにして、後ろ手に縛りあげてしまう。

義兄B(歩)

2人で仲良く、舞踏会が終わるまでここでおとなしくしててよね

悪いけど、王子には絶対会わせないよ

笑顔でそう言い捨てると、お義兄様たちは部屋を出て行ってしまった‥

後篇へ続く

【管理人のつぶやき】

ナンバ王子がナンパ王子に見えてしかたない‥‥‥

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