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王子様 難波②

イケメン総選挙2015 七夕 後篇

もしも1年に1度しか

2人が会えなかったら‥!?

【自室】

(魔法使いさんも一緒に、お義兄様たちにつかまっちゃった‥)

(魔法も使えそうにないし、これじゃあもう‥)

魔法使い(後藤)

こんなこともあろうかと、家の裏側に馬を待機させてる。窓の外を見てみろ

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サトコ

「えっ?ブサ猫‥じゃない、馬ですか?」

魔法使い(後藤)

ああ。アイツがいれば、城まで行けるはずだ

ここは3階か‥少し危険だが、一人で行けるな?

サトコ

「でも、魔法使いさんはどうするんですか!?」

魔法使い(後藤)

ひとりならどうとでもなる。俺のことは気にせず、行け

サトコ

「ありがとうございます!」

なんとか自力で窓から脱出すると、馬に乗ってお城を目指した。

【城】

(なんとかここまで来たけど‥やっぱりダメだ)

(魔法がないから‥私、ボロボロの身なりのままだし)

改めて自分の格好を見て、悲しくなる。

(これじゃ、パーティ会場には入れない‥)

(せっかく、魔法使いさんのおかげでここまで来れたのに‥)

「ぶみゃー」

サトコ

「えっ!?」

「みゃあああああぁぁ‥ぶみゃーぁ」

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(う、馬ってこんなふうに鳴くの!?)

(そう言えば、あの魔法使いさんが何か言ってたような‥)

サトコ

「いや、っていうかその前に‥!」

「ダメだよ!お城の人に気付かれちゃう!」

「ぶーみゃー」

サトコ

「しーっ!うるさくしたら、怒られちゃうから‥!」

王子(難波)

お、来たかー

その声に上を見上げると、ナンバ王子がバルコニーからこちらを見ていた。

サトコ

「ナ、ナンバ王子‥!」

王子(難波)

やっと来たな。ちょっとそこで待ってろよ

サトコ

「え?」

(ま、待ってろって‥王子、私に会ってくれるの?)

(でも私、こんな格好なのに‥)

どうすることもできず大人しく待っていると、城門から王子が出てきた。

王子(難波)

大人を待たせるなよー

サトコ

「す、すみません‥もしかして、待っててくれたんですか?」

王子(難波)

ん?去年、約束しただろ?

ほら、こっちだ

迷いなく、王子が私の手を取ると、そのまま城へと足を踏み入れた。

【城内】

案内された部屋に入ると、たくさんの綺麗なドレスと大きなドレッサーがあった。

サトコ

「すごい‥どれも素敵ですね」

王子(難波)

どんなのが若い子に流行ってるか、おっさんにはわからないからな

お前が好きなものを選んでくれ

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サトコ

「え!?で、でも‥」

王子(難波)

選んだら、メイドに言えよ。全部やってくれるから

そう言って、王子が部屋を出ていく。

(ど、どういうこと‥?私、夢を見てるのかな‥)

ドレスとアクセサリーを選び、メイドさんにメイクを施してもらい、クローゼットを出る。

すると、柱にもたれかかってナンバ王子が待っていた。

王子(難波)

なるほどねぇ

サトコ

「あの‥ど、どうでしょうか」

王子(難波)

うん。いいんじゃないか

‥いい女になった

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私の手を取ると、ナンバ王子がゆっくりとエスコートしながら歩いてくれる。

(去年は、子ども扱いされてたのに‥今日は、なんだか違う気がする)

(この1年間、王子に会いたいってずっと願ってた‥)

王子(難波)

いやあ、お前が早く来ないかと待ってたんだ

サトコ

「ふふ、またパーティを抜け出したかったんですか?」

王子(難波)

ご名答

ようやく来たかと思ったら、あの格好だったから驚いたけどな

サトコ

「す、すみません‥本当はちゃんとした格好でお会いしたかったんですけど」

王子(難波)

まぁ、何を着ててもサトコなのは変わりない

サトコ

「‥ナンバ王子」

お城の廊下を、王子と並んで歩く。

(本当に夢みたい‥魔法使いさんが、私の願いを叶えてくれたのかな)

(また来年も、ナンバ王子に会えるかな‥)

そんなことを考えていると不意に、足に痛みが走った。

王子(難波)

どうかしたか?

サトコ

「‥いや、なんでもありません‥」

慣れないヒールを履いたせいか、歩くと足が痛い。

王子(難波)

ああ、気付いてやれなくてすまない

ちょっと、その辺で休むか

【バルコニー】

テラスに出ると、王子がベンチに座らせてくれる。

王子(難波)

おー、今年も星が綺麗だな

こういう日は月見酒ならぬ、星見酒ってのも粋だよな

(王子ってほんと、お酒好きだな‥)

(最初は緊張したけど、王子の隣ってなんだか安心する)

ナンバ王子の後ろ姿を眺めていると、王子が私の方に振り向く。

そして、私の前にひざまずいた。

サトコ

「ナンバ王子!?」

王子(難波)

‥なぁ

サトコ

「はい」

王子(難波)

今日は‥ずっと一緒にいてくれるだろ?

サトコ

「‥えっ?」

ひざまずいたナンバ王子が、私の手をそっと取る。

王子(難波)

この1年、俺がどれほどこの日を待ち焦がれていたか‥

今日も、お前が来るのをずっと待っていた

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サトコ

「お、王子‥」

王子(難波)

パーティを抜け出したいからじゃない。‥お前とふたりで過ごしたいからだ

今日だけではなく、これから先も‥

そっと、王子が私の手の甲にキスを落とす。

(う、嘘‥!?王子が、私を‥!?)

(‥私だって王子のことが‥)

(王子‥私、ずっと王子についていきます‥!)

???

「ん?いたいた。おーい、氷川」

サトコ

「来年の七夕も、また‥」

???

「氷川ー?大丈夫か?」

【資料室】

その声に目を覚ますと、目の前にいたのはtね

サトコ

「お、王子!?」

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難波

ん?王子?俺がか?

サトコ

「あ、あの、あのっ‥」

難波

ハハハ、なに寝惚けてんだ?

サトコ

「へ?って‥室長!」

(‥あれ?そういえばここ、お城じゃない‥?)

(あ、そうだ!石神教官に頼まれた調べものしてて、眠っちゃったんだ)

難波

なんか、楽しい夢でも見てたみたいだな

サトコ

「そ、それは‥」

顔を覗き込まれて、慌てて目を伏せる。

なぜだかさっきから、私の心臓がドキドキ言ってる‥

(な、なんでこんなに室長を意識しちゃうんだろう?)

(夢の中で、ナンバ王子を好きになっちゃったから‥?)

(って‥いやいや!ナンバ王子と室長は別人だから!それ以前に、夢の中の人だし‥!)

難波

で?何やってたんだ?

サトコ

「石神教官に、調べものを頼まれまして‥」

難波

ああ、難航してるあの件か

それなら俺がやるから、悪いがこっちを手伝ってくれ

サトコ

「わかりました。何をしたらいいですか?」

難波

こっちこっち。ちょっと力仕事なんだけどなー

(きっと、あんな夢を見ちゃったからだよね‥!)

手招きする、室長を追いかける。

さっき室長に感じた気持ちは勘違いだと自分に言い聞かせながら‥

難波

これじゃない‥こっちだったか?

ん?

サトコ

「‥‥‥!」

難波

どうした氷川?顔が赤いぞ

サトコ

「な、なんでもないです!」

(ダメだ‥夢の中のナンバ王子と重なりすぎるよ)

(夢の中の私は、王子が好きだったけど‥現実の私は‥?)

【屋台】

しかしその後、感傷に浸る暇もないくらいにコキ使われ‥

サトコ

「疲れました‥」

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難波

いやー、悪かったな。ほら、食え。今日は俺の奢りだ

室長行きつけの屋台に連れて来られ、ラーメンを注文する。

サトコ

「高級レストランでディナー‥じゃなくて、こういうところなのが室長らしくていいですよね」

難波

ああ、若い奴は小洒落たバーとかの方がいいんだろ

サトコ

「いえ、私は居酒屋の方が好きです」

難波

なんだ、気が合うな

(‥ほんとに、夢の中のナンバ王子とそっくりかも)

(いや‥私が勝手に、室長が王子になったら‥なんて夢を見ちゃっただけだよね)

難波

どうした?人の顔ジロジロ見て

サトコ

「いえ、その‥石神教官に任された調べもの、本当に室長にお願いしちゃっていいんですか?」

難波

ああ。その代り、俺の方の仕事をお前にやってもらったからな

なんだ?もしかして石神のカミナリが怖いのか?

サトコ

「そりゃもう、怖くないと言えば嘘になりますけど」

難波

ハハハ、アイツは堅物だからな

サトコ

「明日、カミナリが落ちそうで怖いです‥」

難波

そうだな‥

その時は、俺が庇ってやるから安心しろ

サトコ

「っ‥」

室長がポンと私の頭に手を置き、優しく微笑む。

(この感じ‥夢で見た気がする)

(‥室長の手とナンバ王子の手の温かさが一緒だ)

難波

ひよっこな訓練生は守ってやらなきゃな

って、早く食わないと、麺が伸びちまうぞ

サトコ

「は、はい‥‥」

一緒にラーメンをすすりながら、室長の横顔に少しだけ胸が高鳴るのを感じる。

(‥そうだ、室長からしたら私はただの訓練生だ)

(それに、室長には‥)

自分にそう言い聞かせ、心の奥の気持ちに気付かないよう、そっと蓋をした。

End

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