カテゴリー

塩対応 東雲 1話

サトコ

「公然わいせつ罪‥かな」

千葉

「えっ、それってどういう‥」

サトコ

「実は訓練の後、東雲教官に下着姿を見られちゃって」

千葉

「下‥っ!?」

サトコ

「そしたら、すっごいイヤな顔されて」

「『変質者だよね』とか『公然わいせつ罪で捕まるんじゃない?』って」

千葉

「‥‥‥」

サトコ

「そりゃ、うっかりしてた私が一番悪いんだけど」

「べつに見せたくて見せたわけじゃ‥」

(‥ん?)

サトコ

「千葉さん?どうかした?」

千葉

「いや、その‥予想外すぎたっていうか‥」

「氷川の‥‥着とか‥」

サトコ

「私が、なに?」

千葉

「だから、その下‥とか‥」

サトコ

「えっ?」

千葉

「ちょ‥そんな近づかなくても‥」

サトコ

「だって千葉さん、さっきから何言ってるのか聞こえない‥」

東雲

スケキャミ

(えっ‥)

東雲

キミだよ。そこのスケスケキャミソール

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-074

(ぎゃっ!)

サトコ

「きょ、教官、なにを‥」

東雲

それはこっちのセリフ

キミのせいで怒られたんだけど、兵吾さんに

サトコ

「どういうことですか?」

東雲

書類のファイリング

キミ、年度間違えたって?

サトコ

「そ、そうですけど‥!」

「あれは一方的に私に押し付けた教官も悪いんじゃ‥」

東雲

何言ってんの

このメモ、置いといたよね

(えっ‥『資料とりまとめリスト』?)

(言われてみれば、うっすら見覚えがあるような‥)

東雲

他にもさー

今日の訓練、最後までクリアできなかったって?

(うっ‥)

東雲

で、小テストはクラスで最低点

(ううっ‥)

東雲

後藤さんには無視されて

(そこまでバレてるの!?)

東雲

ねぇ、千葉。どう思う?

うちの補佐官

千葉

「そ、それは‥」

「でも、その‥氷川は努力だけは人一倍してますから‥」

(千葉さん‥!)

(う、嬉しい‥嬉しすぎて涙が‥)

東雲

‥なるほど、確かにそうだね

もっとも、実を結ばない努力はだたの『無駄』だけど

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-075

(ぐっ‥また突き落とされた‥)

東雲

ま、次からは気を付けて

スケキャミさん

サトコ

「‥分かりました」

(はぁぁ‥帰り際までダメ出しくらうなんて)

(そりゃ、自業自得ではあるんだけど‥)

東雲

ああ、それとさ

はい、これ

サトコ

「なんですか、このメモ‥」

東雲

リストだよ

明日中にそろえて欲しいものの

サトコ

「えっ、でもこれ‥ほとんどパソコン関係の‥」

東雲

大丈夫、家電量販店をハシゴすればほぼ揃うから

もちろん新宿のね

サトコ

「ええっ」

東雲

それでダメならアキバかな

じゃ、よろしく

(よろしくって‥よろしくって‥!)

【寮】

サトコ

「はぁぁ‥」

鳴子

「どうしたの、サトコ。憂鬱そうな顔しちゃって」

千葉

「帰り際にいろいろあったんだよ。‥な?」

サトコ

「うん‥」

(明日は、新宿で家電量販店めぐりか‥)

(別にいいんだけど‥私は教官の補佐官なわけだし)

(でも、いちおう『恋人』でもあるはずだよね‥)

(だったら5回に1回‥ううん、10回に1回くらいは‥)

サトコ

「尽くされたい」

千葉

「えっ」

サトコ

「たまには私も尽くされてみたい‥」

鳴子

「そうそう、やっぱり女の子は尽くされてナンボだって!」

千葉

「でも、氷川の魅力は逆だと‥」

サトコ

「尽くされたい!」

「氷川サトコ、たまには尽くされてみたいです!」

(でも、どうすれば尽くしてもらえるんだろう)

(全然思いつかないんだけど‥)

そんなときだった。

背後から同僚たちの話し声が聞こえてきたのは。

男子訓練生A

「なぁ、お前。さっきから何書いてんだよ」

男子訓練生B

「『実現したいことリスト』だよ」

「叶えたい夢があるときは『リスト化しろ』って言うだろ」

「そうすれば現実率が上がるって」

男子訓練生A

「ああ‥自己啓発書とかによく書いてあるよな」

(‥それだ!)

サトコ

「決めた!私も『リスト』を作る!」

鳴子

「リストってなんの?」

千葉

「まさか‥」

サトコ

「もちろん『尽くされたいリスト』だよ!」

【カフェテラス】

というわけで‥

サトコ

「まずは『デートプランを立ててもらう』‥だよね」

「それから『恋人繋ぎで手を繋いでもらう』‥」

鳴子

「‥それ、リスト化する必要なくない?」

「そんなの、付き合ってたら普通やるでしょ」

サトコ

「そ、そうかな‥」

(でも、外でデートするときのプランは、ほぼ私が立ててるし)

(『恋人繋ぎ』も、まだやったことがなかった気が‥)

サトコ

「じゃあ、これは?」

「『助手席のドアを開けてもらう』‥」

鳴子

「ああ‥それはアリだね。やってくれる人、あまりいないし」

サトコ

「だよね。これ、けっこう憧れるよね」

鳴子

「憧れって言えば、こういうのは?」

「助手席で、シートベルトを外せなくてモタモタしてたらさ」

「『バカ、貸せよ』って、運転席から手を伸ばして外してくれるの!」

サトコ

「いい!それいいね!距離が近くてドキドキする!」

「すぐ目の前に、彼の頭があったりして‥」

鳴子

「そうそう!やっぱさ、距離近い系はドキドキするよね」

「ほら、『耳つぶ』とか」

サトコ

「あっ、それも書く!『耳つぶ』っと‥」

「あと、ついでに『床ドン』と『両腕ドン』も‥」

鳴子

「だったら『バックハグ』は?」

サトコ

「ああ、背中からのハグだよね。よし、それも‥」

千葉

「あの‥途中から主旨が変わってないか?」

「それだと『尽くされたいリスト』じゃなくて、ただの『やってほしいことリスト』な気が‥」

鳴子

「いいじゃん、べつに」

「結局のところ、『尽くされる』って『やってほしいこと』をやってもらうんだから」

「千葉くんだって、彼女に『彼シャツ』をリクエストしてさ」

「やってもらったら『俺、尽くしてもらってる』って思うでしょ」

千葉

「それは、まぁ‥」

「って、べつに俺は『彼シャツ』が好きなわけじゃ‥」

鳴子

「またまた~。男の人って、みんな『彼シャツ』してほしいんでしょ」

千葉

「そんなことないって!」

「そりゃ、まぁ‥ドキッとはするけど‥」

(そっか‥『彼シャツ』ってドキッとするんだ)

(よし、メモっておこう。『彼シャツ』っと‥)

千葉

「俺の話より、今は氷川の話だろ」

鳴子

「そうだったね。サトコ、他にやってほしいことは?」

サトコ

「うーん、そうだなぁ」

(あとは、やっぱり‥)

<選択してください>

A: 顎クイ

(顎クイかな‥たとえば‥)

【教官室】(妄想)

東雲

ん?キミ‥

リップ変えた?

サトコ

「はい。昨日新しいの買って‥」

東雲

ふーん‥

見せて

(あ、顎クイ‥っ!?)

(でも、ここ‥)

サトコ

「教官‥!他の教官たちが見て‥」

東雲

いいよ。別に

キミさえオレを見ていれば

B: 鼻チュー

(鼻チューかな‥たとえば‥)

【東雲の部屋】(妄想)

東雲

ネコってさ、鼻チューするよね

サトコ

「鼻チューですか?」

東雲

ほら、こんなふうに‥

鼻と鼻‥ぶつけて‥

(うわ、なんか‥吐息が‥)

東雲

‥ヤバ

サトコ

「え‥」

東雲

これ‥くる‥

キスの寸止めみたいで‥

C: 袖クル

(袖クルかな‥たとえば‥)

【台所】(妄想)

東雲

何作ってんの?

サトコ

「エビフライです!」

東雲

へぇ‥

‥待って。袖、落ちてる

サトコ

「えっ」

「きょ‥教官、何を‥」

東雲

袖、捲ってる

キミのかわりに

(それは分かるけど‥!)

(いろいろなとこ、密着して‥!)

東雲

やば‥食べたくなってきた

サトコ

「えっ‥じゃあ、急いで揚げて」

東雲

違う。ブラックタイガーじゃなくて

サトコのこと

【カフェテラス】(現実)

(きゃーっ!!)

鳴子

「‥サトコ?」

「どうしたの、赤くなって」

サトコ

「あ、えっ‥ええと‥あはは‥」

千葉

「でも、夢を壊すようで申し訳ないんだけど」

「氷川の場合、リストを作る前に恋人をつくらないと‥」

鳴子

「それは言っちゃダメだって!」

「夢を見るのは、誰だって自由なんだから」

千葉

「そ、それはそうだよな。ごめん、氷川‥」

サトコ

「う、うん‥」

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-076

(ていうか、こっちこそ、ごめん。いろいろ秘密にしてて‥)

内心こっそり謝りつつ、私は再びペンを握りしめる。

鳴子

「そういえば、あれってよくない?」

「彼氏以外の人と話してるときにさ、彼が嫉妬してその場から連れ去るっていうの‥」

サトコ

「分かる!いいよね。あれ」

千葉

「じゃあ、あれは?『肩ズン』とかいう‥」

鳴子

「うーん、シチュエーション次第かなぁ」

「こっちが疲れてるときにやられると、かえってイラッとしそうだし」

千葉

「そうなんだ‥」

「‥気を付けよう‥」

サトコ

「あと、お姫様抱っこも憧れるけど、体重がね‥」

鳴子

「そうそう、相手ががっちりした人なら安心なんだけどね」

千葉

「え、俺‥氷川ならたぶん平気‥」

サトコ

「ほんと!?」

(でも、千葉さん‥教官より背が高いからなぁ‥)

黒澤

やあ、みなさん!お揃いのようですね

サトコ

「あ、お疲れさまで‥」

(やば‥!)

東雲

‥なに、その顔

サトコ

「い、いえ‥なんでも‥」

「それより珍しいですね、3人が一緒なんて‥」

黒澤

それが、難波さんに呼び出されちゃって

後藤

呼び出されたのはお前だけだろう

俺と歩は巻き添えを食っただけだ

黒澤

まあまあ、そう言わずに‥

(教官たち‥こっちを見てないよね)

(よし、今のうちにリストを隠して‥)

東雲

‥なに、この紙

(あああっ!)

東雲

耳つぶ、床ドン、両腕ドン‥

鳴子

「ああ、それ‥サトコの『尽くされたいリスト』なんです」

(鳴子‥っ!!)

東雲

へぇ‥『尽くされたい』ね

いいことだよね。夢は大きく持たないと

(この言い方‥絶対バカにしてる‥)

東雲

でもさー。この『彼シャツ』っておかしくない?

これ、どちらかというと男側の要望だよね

サトコ

「それは‥男の人が喜ぶって聞いたから‥」

鳴子

「ていうか、ぶっちゃけ千葉くんの趣味ですけど」

千葉

「違っ、俺、そんな趣味は‥」

東雲

へぇ、そう‥千葉の‥

千葉

「??」

すると、それまで無言でリストを見ていた後藤教官が、怪訝そうに首を傾げた。

後藤

この『耳つぶ』というのは何だ?

東雲

ああ、それ‥耳元に口を寄せて囁くんですよ

後藤

‥?つまり、内密な話をしたいということか?

東雲

いえ、それとは少し違うんですけど‥

黒澤

実際にやってもらえばいいですよ。サトコさんに

東雲

サトコ

「私がですか!?」

黒澤

だって、その方が分かりやすいですよ

ほら、後藤さん‥サトコさんに近づいて‥

後藤

‥こうか?

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-077

(えっ‥ほ、本当に?)

(でも、東雲教官の前でそれは‥)

東雲

そういえばさー

買い出しはどうなってるの、氷川さん

(う‥っ)

後藤

‥買い出し?

東雲

昨日、彼女買い出しを頼んでたんです

あれ、どうなってるのかなー?

サトコ

「そ、それはこれから‥」

東雲

すぐ行ってきて

はい、ゴー!

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-078

サトコ

「は、はい‥っ!」

【街】

(良かった、助かった‥)

(やっぱり、他の人に『耳つぶ』するのは抵抗あるもんね)

(それにしても『尽くされたいリスト』にいろいろ書いてみたけど‥)

(本当にアレだけで願いが叶うのかな)

【学校 廊下】

4時間後‥

サトコ

「はぁ‥疲れた‥」

(まさか、ほんとにアキバまで行く羽目になるなんて‥)

(でも、頼まれていたものは全部揃ったし)

(教官は‥この時間帯だと個別教官室かな‥)

【教官室】

サトコ

「失礼しま‥」

ガツッ!

(えっ‥誰かいた?)

(あああっ!)

(よりによって一番ぶつけてはいけない人に‥)

サトコ

「す、すすす、すみませ‥」

加賀

ああ゛?

謝って許されると思ってんのか、このクズが

ドンッ!

(これ‥っ、リストに書いた『両腕ドン』‥)

(って違う!加賀教官にやってほしいわけじゃ‥)

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-079

加賀

いっそ、イチから調教してやるか?

サトコ

「い、いえ‥そういうのはちょっと‥」

(ど、どうしよう‥)

(この鉄壁の包囲網から逃げるにはどうすれば‥っ)

???

「‥うちの補佐官になにか用ですか?」

(この声‥!)

東雲

用があるならオレが聞きますが

加賀

‥チッ

クズの躾はちゃんとしておけ

東雲

分かりました。今日中に教育し直しておきますんで

ところで氷川さん、買い物は?

サトコ

「あ‥これです」

東雲

ありがと

じゃあ、一緒に来て

教官は私の腕を掴むと、半ば強引に個別教官室へ向かって歩き出す。

(こ、これってもしかして‥)

(『嫉妬』からの『連れ去り』シチュエーション‥!?)

(ほんとに‥!?)

(だとしたら、2人きりになった途端‥きっと‥)

【個別教官室】

東雲

ねぇ

(きたっ、やきもち‥)

東雲

4時間13分

遅すぎ

サトコ

「‥え?」

東雲

たかが買い出しに何時間かかってんの

サトコ

「す、すみません‥」

「その‥アキバまで行ってきたんで‥」

(うう‥そっちの話‥)

(もしかしてって期待してたのに‥)

東雲

しかも、なに

あの壁ドン

(えっ‥)

東雲

前にもされてたよね、兵吾さんに

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-080

(あれ、この展開は‥)

東雲

なんなの、キミ‥

ほんとムカつく

いい加減、警戒して‥

サトコ

「嫉妬ですか!?」

東雲

‥‥‥‥は?

サトコ

「嫉妬ですよね、今の!」

(きたっ!)

(きたきたきたーっ!)

(これで、さっきのは『嫉妬』からの『連れ去り』に決定‥!)

嬉しさのあまり、つい口元がにやけてしまう。

そんな私を見て、教官は心底嫌そうな顔つきになった。

東雲

キモ‥

なに、その般若

<選択してください>

A: (しまった、つい‥)

(しまった、つい‥)

サトコ

「す、すみません‥」

「でも、今の教官の顔の方がよっぽど般若‥」

東雲

なに?

なんか言った?

サトコ

「い、いえ‥なにも‥」

(怖っ‥)

(やっぱり教官の方が般若顔なんですけど‥!)

B: なんとでも言って

サトコ

「何とでも言ってください」

「般若でも般若心経でもはんにゃんこでも‥」

東雲

そこまで言ってない

っていうか、なに?『はんにゃんこ』って

サトコ

「今、人気のゆるいキャラです!」

「だらーんにょろーんって感じがすごく可愛い‥」

東雲

ハイハイハイ

(‥質問しておいてその反応って)

C: 般若はヒドイ

サトコ

「前々から思ってましたけど、般若はヒドイです!」

東雲

あっそう

じゃあ、『おたふく』

サトコ

「そうですね、おたふくなら‥」

「って、嫌です。おたふくも!」

東雲

じゃあ『ヱビス様』

サトコ

「それもちょっと‥」

(それにしても、すごいなぁ‥リストの効果って)

(書いただけで、さっそく1つ実現したんだもん)

(この分だと『恋人繋ぎ』や『バックハグ』も‥)

すると、教官のスマホがブルル‥と震えた。

東雲

誰だよ、こんな時間に‥

‥‥‥

‥‥‥

‥あ、当選

サトコ

「なにがですか?」

東雲

『真夏の恐竜展』のチケット

しかも2枚

(え‥)

東雲

行く?せっかくだから

久しぶりに外デート‥

サトコ

「行きます!絶対行きます!」

東雲

そう‥

じゃ、今回プランは任せて

オレが考えるから

サトコ

「!!」

(きょ、教官がデートプランを‥?)

(本当に‥?)

サトコ

「すごい‥」

東雲

なにが?

サトコ

「い、いえ、なんでも‥」

「ところで日程は‥」

東雲

そうだね‥今週末は?

サトコ

「問題ありません!」

東雲

そう、よかった

じゃあ、当日よろしくね

サトコ

「はいっ!」

(すごい‥すごいすごいすごい!)

(すごすぎるよ、あの『尽くされたいリスト』!)

(ほんとにもう‥『リスト』バンザーイ!)

東雲

‥‥‥

to be continued

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする