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加賀 続エピ 1話

【寮 自室】

それは、いつもと変わらない夜。

(はあ、今日の訓練も厳しかった‥特に加賀さんの講義は恐ろしかった)

(無事に終わったと思ったら、相変わらずコキ使われるし)

サトコ

「でも私も、最初の頃に比べると少しは使えるようになったかな?」

「‥そういえば、加賀さんと付き合ってもうこんなに経つんだ」

カレンダーを眺めながら、感慨にふける。

(あれから、色々あったな‥)

(みんなには内緒だから、難波室長にお見合い話を持ちかけられたこともあったけど‥)

加賀

首輪だ

これからも、しっかり働いてご主人様のご機嫌を取れよ、クズ

胸元のネックレスを見て、あの時のことを思い出した。

(怖いし傲慢だし乱暴だし強引だし‥だけど)

(実は仲間思いで、いつもピンチの時にはヒーローみたいに助けに来てくれる)

サトコ

「そういえば、ネックレスのお返ししてないんだった」

「私も、加賀さんになにかプレゼントしたいなぁ‥」

【談話室】

翌日。

(うーん。男の人が喜ぶプレゼントって何だろう‥?)

ネットとかで調べてみても、あまり参考にならなかった。

そもそも、世間一般の男の人が欲しているものをプレゼントしたところで、加賀さんが喜ぶだろうか‥

サトコ

「いや、喜ぶはずない‥」

(となると、ネットで調べても意味ないよね‥)

(あんまり高いものもあげられないし‥うーん)

鳴子

「サトコさんサトコさん、何かお困りですか?」

ニヤニヤしながら、鳴子が後ろから雑誌を覗き込んでくる。

鳴子

「ややっ!これは男性ファッション雑誌じゃないですか!」

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「そんなのを見て、サトコさんはいったい何を探しているんでしょうか?」

千葉

「佐々木‥最近少し黒澤さんに似てきたよね」

鳴子

「それは、ちょっと複雑‥」

「で?こんなの見て、誰にプレゼント~?」

(ま、まずい‥やっぱり、談話室で堂々と見るべきじゃなかった!)

サトコ

「えーと、これは‥と、友達のお姉さんの知り合いの姪っ子さんの相談で!」

鳴子

「それ、巡り巡って普通の知り合いでいいんじゃない?」

「それで?その姪っ子さんは何で悩んでるの?」

男子訓練生A

「えっ。お前、彼女出来たの!?」

男子訓練生B

「毎日こんなに忙しいのに、よくそんなチャンスあったな」

振り返ると、他の訓練生たちが楽しそうに話している。

男子訓練生C

「実はさ、彼女からパワーストーンのブレスレットをもらったんだよ」

「刑事になるなら、お守りにしてって」

男子訓練生A

「おお~、良い彼女じゃん!」

千葉

「パワーストーンのブレスレットか」

「確かに俺たちも危険な捜査に行くことになるだろうし、そういうのは嬉しいよな」

サトコ

「パワーストーン‥」

(それなら目立たないし、いつでも身に付けていられる‥)

(加賀さんは誰よりも現場に行くことが多いから、お守りになってもいいかも!)

鳴子

「だけど、そういうのって好みもあるし難しいよね」

サトコ

「好み?」

千葉

「そうだね‥それにパワーストーンって、石によって効能も違うんだろ?」

鳴子

「効能って‥漢方薬じゃないんだから」

千葉

「まあ、一緒に買いに行けたら一番いいと思うけど」

鳴子

「あ、もしかして千葉くん!誰か一緒に行きたい相手でもいるの~?」

千葉

「えっ!?だ、だからそういうんじゃ‥」

(一緒に買いに行く、か‥それなら、デートもできて一石二鳥かも!)

(確か今日の宿直は加賀さんだったよね。あとで、早速誘ってみようかな)

鳴子

「あ、またサトコがニヤニヤしてる」

サトコ

「えっ!?」

鳴子

「残念だね、千葉くん‥」

千葉

「い、いや‥別に俺は氷川とは言ってないだろ」

(加賀さんには、ブレスレットのことは黙っておいた方がいいよね)

(そういえば、自分からデートに誘うのって初めてかも‥!?き、緊張してきた!)

【寮監室】

その夜。

サトコ

「加賀教官、氷川です。失礼します」

加賀

なんだ

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寮監室に入ってドアを閉めると、ふたりきりになった。

サトコ

「あの‥加賀さん、今度の週末はお休みですよね?」

「よ、よかったら一緒にお出かけしませんか、と‥」

加賀

あぁ?

サトコ

「ひぃっ」

加賀

そりゃ、何の話だ

サトコ

「す、すみません!私からデートに誘うなんて、やっぱり生意気でした‥!」

加賀

ほう‥

(やっぱり、自分から誘うなんて無謀だった‥?)

(いつも加賀さんから呼び出されてばっかりだから、たまにはいいかと思ったんだけど)

サトコ

「私なんて、加賀さんに誘われて尻尾振って行くのがお似合いですよね」

「すみません、今の話は忘れて‥」

加賀

クズも、少しはマシになったか

サトコ

「え?」

加賀

呼ばれるのを待って尻尾振ってばっかりじゃ

テメェは、いつまでたっても駄犬止まりだ

サトコ

「そ、それは‥!そろそろ人間に昇格したいです!」

加賀

駄犬がいきなり人間になれるか?

まずは忠犬になってみやがれ

(やっぱり犬扱い‥)

サトコ

「それで‥週末のご予定は‥」

加賀

‥いいだろう。行ってやる

サトコ

「ほんとですか!?」

(やった‥!加賀さんとデートしながら、ブレスレットも選べる!)

加賀

テメェがどうやって俺を愉しませるか、お手並み拝見だな

サトコ

「愉しませる‥!?あの、今回はそういうアレでは‥」

いつものように、じりじりと壁際に追い詰められる。

抵抗する間もなく、キスで口を塞がれた。

(こ、ここ‥寮監室っ‥)

慌てる私を押さえつけるように、加賀さんが私の足の間に足を入れる。

肩を掴まれて、角度を変えて何度もキスが降ってくる‥

サトコ

「だ、ダメですっ‥加賀さん、これ以上は‥!」

加賀

喚くな

サトコ

「んっ‥!」

抱き寄せられ、首筋に唇が這うと、抵抗する力が抜けていった。

(愉しませる‥のは、無理かもしれないけど)

(加賀さんが気に入るパワーストーンが見つかるといいな‥)

【談話室】

デートの約束を取り付けた後、談話室に戻った。

(あ、危なかった‥まさか寮監室であんなことまでされるなんて)

(抵抗しなかったら、危うく‥)

男子訓練生A

「教官と訓練生が付き合ってる?」

その声に、心臓が思いきり跳ね上がった。

男子訓練生B

「ああ、どこの県の警察学校だったかな」

「教官と訓練生が付き合ってるって噂があるらしいんだよ」

男子訓練生C

「消灯後に抜け出して、教官室で会ったり‥」

男子訓練生D

「寮の宿直の時にも、こっそり寮監室に行ったりしてるって聞いたな」

(うっ‥どこもこれも、思い当たる節が‥)

男子訓練生A

「恋愛は自由だけど、俺たちは刑事になるために勉強してる身だしな」

男子訓練生B

「だよな。恋愛にかまけてる場合じゃないだろ」

みんなの言葉が、胸に突き刺さった。

(私も、加賀さんとのことがバレないように気を付けよう‥)

(それに、訓練生として補佐官として、気を引き締めなきゃ)

【街】

週末、加賀さんと一緒に街に来ていた。

サトコ

「実は、今日は行きたいところがあるんです」

加賀

行きたいところ?

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サトコ

「はい!よかったら、加賀さんに選んでもらいたいなって」

「たぶん、加賀さんは興味ないお店だと思うんですけど‥」

事前に調べておいたお店へ向かおうとすると、加賀さんが私の手を掴んだ。

そして、胸元のネックレスに手を伸ばし、指でなぞるようにいじる。

加賀

ちゃんとつけてんな

サトコ

「も、もちろんです!大事なものですから」

「普段も、制服で隠してますけど‥毎日つけてますよ」

加賀

上出来だ

なら。主人の愉しませ方もわかってんだろ

サトコ

「へ?」

加賀

デートだなんだ、ガキみてぇなこと言ってんじゃねぇ

サトコ

「そ、それってどういう‥」

最後まで言い終わる前に加賀さんに手を引かれ近くの路地に連れ込まれた。

【ホテル】

近くのホテルに引きずり込まれると、乱暴にベッドに押し倒される。

サトコ

「加賀さん!?なんで‥」

加賀

この間は、生意気にお預けしてくれたよな

サトコ

「この前って」

(もしかして、寮監室でのこと?)

サトコ

「だって、あそこであれ以上は‥!」

加賀

啼かせる前に、さっさと退散しやがって

私を見下ろしながら、加賀さんがネックレスをいじる。

加賀

主人にお預けとは、駄犬が偉くなったもんだ

サトコ

「違っ‥だって、もし誰かが入ってきたらと思って」

「万が一訓練生や他の教官たちに見つかったら、大変じゃないですか!」

加賀

ノックもしねぇで寮監室に入ってくる奴がいるか

テメェが俺の傍にいて、怪しむ奴はいねぇ

サトコ

「それは‥専任補佐官だから、確かにそうですけど」

加賀

くだらねぇ心配なんざしてねぇで、テメェは俺を悦ばせることだけ考えろ

ネックレスから指が動き、肌を伝うようにして胸元へと移動する。

サトコ

「や、やめ‥」

加賀

なんだ?

ニヤニヤしながら、加賀さんが手を止めた。

(やめてください、なんて言ってやめてくれた試しがない‥!)

(それに、別に本当にやめてほしいわけじゃ‥って、何考えてるの、私!)

サトコ

「いや、あの‥」

加賀

駄犬のくせに主人に逆らうなら、もう首輪は要らねぇか

サトコ

「い、要ります!逆らいませんから!」

加賀

フッ‥忠犬にはまだまだ遠いな

服の裾を押し上げると、加賀さんが私の肌に顔を埋める。

サトコ

「あの!でも私、今日は加賀さんと一緒に行きたいところがっ‥」

加賀

俺を満足されられたら、いくらでも付き合ってやる

満足させられたら、な

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(なんで2回繰り返すの!?)

ささやかな反抗も、加賀さんのとろけるようなキスの前では無力で‥

いつものように従順に、加賀さんの言いなりになる私の身体だった‥

【街】

ホテルから出ると、少し前を歩く加賀さんを追いかける。

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サトコ

「‥‥‥」

加賀

なんだ

サトコ

「‥ひどいです」

加賀

どれのことだ?

サトコ

「どれって‥」

加賀

ベッドの中か?それとも‥風呂のことか

サトコ

「!!!」

加賀

風呂は声が響くからな。テメェも普段より、よく啼‥

サトコ

「そういう赤裸々な発言はやめてください!」

(はあ‥加賀さんといると、いろんな意味でドキドキしすぎる‥)

(っていうか、今日の目的、まだひとつも達成してないよ)

サトコ

「あの、加賀さん‥私の行きたいところ、一緒についてきてくれますか?」

加賀

俺の言葉を忘れたか

サトコ

「お、覚えてます‥加賀さんが満足させられたらですよね」

「ダメ、ですか‥?」

恐る恐る尋ねると、加賀さんが一瞬だけ、険しい顔をした。

(怒らせた!?なんで!?)

加賀

‥テメェは普段から、んな声出してんのか

サトコ

「へ?」

加賀

上目遣いに、甘えた声‥そんなもん、どこで覚えてきやがった

サトコ

「む、無意識です!普段からなんてやってません!」

加賀

無意識なら普段からやってんだろうが

サトコ

「でも、なにかお願いする人は加賀さんしかいませんよ」

「他のことは、自分でできるならやるし‥あ、たまに鳴子に色々お願いしてますけど」

加賀

‥‥‥

(っていうかこれ、もしかして)

サトコ

「あの、ヤキモ‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「なんでもないです‥」

(今、悪魔のようなオーラが見えた‥)

(加賀さんは、無言の威圧が一番怖い‥)

加賀

どこだ

サトコ

「え?」

加賀

テメェが行きてぇ店ってのはどこだって聞いてんだ

サトコ

「行っていいんですか?」

(ってことは、加賀さんを満足させられた‥!?)

加賀

満足には程遠いがな

風呂の中でのテメェの声は、悪くねぇ

サトコ

「そ、それはもう忘れてください‥!」

(でもよかった!これで、なんとかプレゼントを渡せそう!)

(問題は、加賀さんが気に入るパワーストーンがあるかどうかだけど)

サトコ

「それじゃ、早速そのお店に‥」

男子訓練生

「氷川‥?」

振り返ると、少し離れたところに、同期の訓練生が立っている。

男子訓練生

「と‥加賀教官!?」

サトコ

「あっ‥」

加賀

‥‥‥

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(し、しまった‥!デートしているところ、見られた‥!)

(ど、どうしよう!?‥!)

to be continued

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