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コラボ 東雲 1話

【空港】

東雲

‥なに、その荷物の量

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北海道旅行当日。

足取り軽く待ち合わせ場所へ行くと、教官は開口一番そう言った。

サトコ

「何って、二泊分の荷物ですけど‥」

「そういう教官は、それだけですか?私の半分くらいじゃないですか」

東雲

これで充分でしょ。たかが二日なのに、その量の方がおかしいし

家出でもするつもり?

サトコ

「いや、教官が少なすぎるんです!女子にはいろいろ必要なんですから」

(初めての旅行だし、もしかしたら、万が一ってこともあるかもしれないし‥)

(その‥可愛い下着とか、大人っぽい下着とか‥色々とね)

東雲

ほら、ボーっとしてないでさっさと行くよ

セキュリティーゲートへ移動し、順番を待つ。

サトコ

「なかなか進みませんね‥」

東雲

こんな時間かかるなんて、なにして‥‥

ピーッ!

桂木

「あ、あれ?おかしいな‥」

そら

「もー、何やってるんすか」

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東雲

げっ‥

(桂木さんに、広末さん!?それにSPの皆さんもいる‥)

瑞貴

「フフ、慰安旅行で北海道へ行けるなんて贅沢ですね」

海司

「ああ、美味いもん、食いまくろうぜ」

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「食いすぎて、腹壊すなよ」

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(えっ!?)

(もしかして、SPの皆さんも、北海道に行くの?)

ちらりと、隣にいる東雲教官を見ると‥

東雲

サイアク‥‥

(教官の眉間に、すっごいシワが寄ってる‥!)

係員

「‥ベルトに反応したんですね。どうぞ、お通りください」

桂木

「はい‥」

海司

「ベルトって‥さっき確認してませんでしたっけ?」

桂木

「ああ。確かに大丈夫だったと思ったんだが‥」

そら

「‥‥‥」

「‥そら。どこを見てるんだ?」

「まさか、お前‥」

そら

「い、嫌だなー!別に、ベルトに細工なんかしてな‥」

桂木

「‥そら」

そら

「ひぃっ!」

東雲

はぁ‥さすがお祭り課

(うわぁ、正座してお説教されてる‥)

【飛行機】

サトコ

「カニにウニ、それにじゃがバター‥どれも美味しそうだなぁ」

「教官は何か食べたいものありますか?」

東雲

別に、なんでもいい

サトコ

「そう言わずに。やっぱり、北海道って言ったら‥」

東雲

‥あ、『恐竜ランド』やってる

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教官は機内のガイドを見ながら呟くと、イヤホンをして恐竜映画と見始めてしまった。

(うん‥教官はこういう人だよね)

(すっかり旅行に浮かれていた私がバカだった‥)

ぼんやりとガイドブックを眺めていると、睡魔が顔を覗かせる。

(昨日、あまり眠れなかったから‥)

(私も少しだけ、寝ようかな‥)

【教官室】

サトコ

『北海道、ですか?』

東雲

どうせ、次の連休暇でしょ?

サトコ

『はい!暇です!とーっても暇です!』

東雲

近っ‥ちょっと近すぎだから

(つ、ついにお泊り解禁‥!?)

(しかもそれが、教官からのお誘いで北海道旅行なんて‥!)

東雲

あ、部屋はもちろん別だからね

それまでに、ちゃんと仕事終わらせといて

サトコ

『で、ですよね‥』

(そんなに甘くないかぁ)

サトコ

『あれ‥?その新聞はなんですか?』

東雲

ああ、これ?

教官はニヤリと笑みを浮かべると、私の前にとある記事を出す。

『ディノケイルスの化石発見!?』

『化石の一部が北海道で発見され、北海道の恐竜博物館に飾られており‥』

(そういうことか‥)

(教官が旅行デートに誘ってくれるなんて、珍しいと思った)

(お泊り‥いつになったら解禁になるんだろう?まさか、卒業までなしとか‥!?)

東雲

‥キミと初めての旅行、楽しみにしてるから

サトコ

『!?』

『は、はい!!素敵な宿、予約しておきます!!』

東雲

‥本当、単純

サトコ

『えっ?』

東雲

いや、なんでもない

そうだよね‥!旅行には変わりないんだし‥

教官との初めての旅行、楽しんでこよう!

【空港】

サトコ

「ふわぁぁ‥」

東雲

サイアク‥ぜんっぜん映画に集中できなかった

よくあんなに爆睡出来るよね。寝相も悪いし

サトコ

「す、すみません‥今日が楽しみで昨日あまり寝れなくて‥」

東雲

‥はぁ、ほんとバカ

ほら、荷物取りに行くよ

サトコ

「えっと、私の荷物はっと‥」

???

「ようやく到着だな」

???

「楽しみですね!二課で北海道旅行!」

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???

「約一名お留守番がおるけどな」

???

「ああ、せっかくの休み当日に熱を出すとは、バカな奴だ」

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荷物を探していると、賑やかな集団がこちらにやってきた。

???

「ボスが止めなきゃ這ってでもついてくる勢いでしたね‥‥」

???

「ああ、あいつが一番楽しみにしてたからなぁ」

???

「彼女の食にかける情熱は並々ならぬものがありますからね」

???

「北の国から、ドンマイ」

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???

「食べたものを、逐一写真で送って差し上げましょう」

???

「ハハ、やめとけ。戻った後ぶん殴られるぞ」

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「お前ら、泣かれたくなかったら、ちゃんと土産選べよ?」

(仲良しだな。社員旅行とか?)

(休んだ人は、食いしん坊で愛されキャラなんだな)

頬が緩むのを感じながら荷物を取ると、教官の元へ急ぐ。

東雲

なに、ひとりで笑ってんの?不審者みたい

サトコ

「ふ、不審者って‥!」

東雲

まあいいや。行くよ

サトコ

「あっ、ちょっと待ってください~!」

【駐車場】

東雲

あー、楽しかった!

レンタカーを借りた私たちは、まずは恐竜博物館へやってきた。

東雲

ネットでも公開されてたけど、やっぱり生で見るのが一番だよね

見た?あのディノケイルスの鋭い鉤爪

サトコ

「そ、そうですね」

(化石を見た時の教官‥子どものように目を輝かせてたな)

サトコ

「‥ん?」

(あそこにいる人たちって‥さっき空港で見かけた人たちだよね?)

(恐竜が好きなのかな?)

東雲

何、ボーっとしてんの?次は動物園に行くんでしょ

サトコ

「あっ、はい!」

(博物館も賑わってたし、恐竜男子が流行っているのかも)

【車内】

サトコ

「‥‥‥」

(まさかとは思ってたけど)

(さっきからずっと、私たちつけられてる気がする)

後ろの車の様子を観察すると、中に見覚えのある男性たちが乗っているのが見えた。

(あれって‥空港で会った男の人たちだよね‥?)

東雲

‥何?さっきからソワソワして。集中できないんだけど

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サトコ

「その、実は‥」

教官に事の経緯を説明し終わる。

すると‥

東雲

‥キミをストーカーして、なんのメリットがあるわけ?

疑われた人が気の毒でしょ

サトコ

「で、ですよね‥」

東雲

自意識過剰、考えすぎ

サトコ

「うっ‥」

(そうだよね‥あの人たちも旅行みたいだし、たまたま行き先が同じだけだよね!!)

【動物園】

東雲

その大荷物でまわる気?

サトコ

「大丈夫です。サブバック入れてきましたから」

動物園に到着し、大きなカバンの中からサブバッグを出そうとすると‥

サトコ

「えっ‥!?コアラ!?」

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東雲

‥なんでコアラのぬいぐるみ?

こんな余計なもの持ってくるから荷物が多いんでしょ

サトコ

「ち、違っ!このコアラは私のじゃ‥」

???

「‥ここにいたか」

サトコ

「きゃっ!」

手首を掴まれ、目を見開く。

(こ、この人ってさっき空港にいた‥)

???

「よかった、見つかって‥」

サトコ

「よ、よかったって‥私はあなたのことなんて知らな‥」

「うっ‥!?」

東雲

‥もしかして特命二課の花井さん、ですよね?

サトコ

「へ‥?」

花井

「ええ、そうですが‥」

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東雲

ご挨拶が遅れてしまってすみません‥警察庁の公安課に勤めている東雲歩です

うちの補佐官がご迷惑をかけてしまったみたいで、失礼いたしました

教官はよそ行き用のキラキラとした笑みを浮かべている。

一方で、教官に踏まれた私の足はジンジン痛んでいた。

東雲

その荷物、花井さんのだったんですか?

花井

「ああ」

(も、もしかして‥空港で取り違えちゃったんだ!)

振り返ると、教官が冷たい目線でこちらを見ていた。

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サトコ

「す、すみません!!」

花井

「ああ、無事ならいい」

そう言って花井さんは私の鞄を差し出す。

サトコ

「はい‥」

(ん?無事って‥コアラが?)

???

「無事に見つかったようだな」

(あ、さっきの人たちだ‥)

私たちは、簡単に自己紹介する。

空港で見かけた人たちは全員警視庁特命二課の刑事さんだった。

「はみだし二課」と言えばその筋では有名らしい。

桐沢

「ああ、加賀んとこの‥見覚えがあるわけだ」

東雲

申し訳ありません‥こんなところまで追いかけさせてしまって

天王寺

「ええねん。もともとこの動物園に行く予定やったし」

京橋

「結果オーライですね」

瑛希

「解決したところで、さっそく入りますか!」

花井

「そうと決まれば、コアラを見にいくぞ!」

サトコ

「え‥」

「この動物園には、コアラいませんよ?」

花井

「なに‥‥‥」

(うなだれてる‥どれだけコアラが好きなんだろう)

浅野

「花井さん‥‥ドンマイ」

サトコ

「でも、レッサーパンダも可愛いですよ!」

東雲

それは、キミが見たいだけでしょ

サトコ

「うっ‥い、いいじゃないですか!」

東雲

ハイハイ

こうして私たちは、二課の皆さんに続いて動物園に入って行った。

【園内】

サトコ

「わぁ、可愛い‥!」

(2足でうろうろ歩いてる‥)

東雲

これが、レッサーパンダか‥へぇ、意外と機敏に動くんだ

‥‥‥

‥‥‥っ

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(ふふ、なんだかんだ言って、教官もレッサーパンダに興味津々みたい)

東雲

‥何、その顔。うざっ

今日は終始、顔が緩みっぱなしなんじゃな‥‥

???

「可愛い~!」

(あれ?この声ってどこかで‥)

そら

「写メ撮らなきゃ!」

「そら、少しは落ち着け」

サトコ

「末広さん!SPの皆さんも、動物園に来てたんですね」

瑞貴

「サトコさん、こんにちは」

サトコ

「こ、こんにちは」

「ん?東雲と補佐官が一緒にいるってことは‥」

サトコ

「そ、捜査です!ここには捜査のために来ました!」

浅野

「捜査って言う割には、楽しんでいたみたいだけど」

サトコ

「それは‥」

東雲

わざとそういう風に見せているんです

動物園に来て楽しそうにしていないなんて、どう見ても怪しまれますからね

そら

「そっかー。公安も大変なんだね」

サトコ

「は、はい。そうなんです!」

(さすが東雲教官、ナイスフォロー!)

桐沢

「特捜にSPに公安‥こんなに揃うとはな」

桂木

「ええ、そうですね」

(二課だけじゃなくて、SPの皆さんも一緒になるだなんて‥)

東雲

大人の男が揃って動物園って、どうなの‥

瑞貴

「へぇ、キミは最近ここに来たばかりなんだ?」

「そっか‥いい子たちばかりで良かったね」

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(‥藤咲さん、誰と話してるんだろう?)

(目の前にはヤギしかいないけど‥)

浅野

「‥話せるの?」

瑞貴

「はい。ヤギだけじゃなくてリスや小鳥なんかもいけますよ」

(‥そんなことある!?)

ヤギと藤咲さんのやり取りに釘付けになっていると‥

天王寺

「なぁ、このヤギ、なにかに似てへんか?」

花井

「言われてみれば‥」

京橋

「サトコさんではありませんか?」

サトコ

「へ‥?」

振り返ると、二課の皆さんにまじまじと顔を見られる。

浅野

「‥確かに」

サトコ

「‥‥‥」

(初対面の人に、こんなに言われるなんて‥)

(そういえば、前に教官からも『ヤギに似てる』って言われたことあったっけ)

楽しそうに笑う皆さんを見ていると、何だかどうでもよくなってきた。

そら

「次は猛獣のコーナーに行ってみない?」

瑛希

「いいですね。行ってみましょう!」

(どうせなら、教官とふたりきりが良かったけど‥)

(こういう賑やかなのも、たまにはいいよね)

東雲

どうしたの?移動するってさ

サトコ

「ふふっ、修学旅行みたいで楽しいなって思ったんです」

東雲

‥そう?オレはむさ苦しくて嫌だけどね

サトコ

「そうですか?なんだかんだ言って、教官も楽しそうでしたよ」

東雲

‥うざ

ホント生意気

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サトコ

「むぐっ!?ほ、ほっぺ引っ張らないでください~!」

東雲

プッ、変な顔

教官はパッと手を離すと、私を置いて歩き始める。

サトコ

「ちょ、ちょっと!置いてかないでくださいよ!」

私は慌てて、教官の背中を追いかけた。

to be continued

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