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コラボ 東雲 3話

【部屋】

旅行最終日の朝。

サトコ

「ん‥‥」

(教官がいない‥?)

(もしかして‥寝すぎた!?)

サトコ

「あれ?まだ5時だ‥」

東雲

あ、起きたんだ

サトコ

「教官!こんなに早く、どこに行ってたんですか?」

東雲

朝風呂。この時間は誰もいないから

それはともかく、出掛ける準備して

サトコ

「今からですか?」

東雲

あの人たちに見つかったら、面倒でしょ

サトコ

「でも、今日は8時起床で‥」

ガイドブックを広げながら、ひとつひとつ読み上げていく。

サトコ

「朝は海鮮丼、お昼にはジンギスカンを予定していて‥」

「間食はジャガイモ餅と有名チョコレート店の限定ソフトクリーム」

「夕張メロンソフトクリーム。最後の締めは‥」

東雲

却下

サトコ

「まだ終わってませんよ!?」

東雲

食べてばっかじゃん。聞いただけで胃がもたれそう

サトコ

「そんなぁ‥北海道食い倒れツアーが‥」

東雲

ほら、モタモタしてると置いてくよ

サトコ

「わわっ、ちょっと待ってください!」

教官に促され、慌てて身支度を整える。

【車】

サトコ

「あの‥教官、こんなに朝早くどこに行くんですか?」

東雲

着けば分かるでしょ

サトコ

「そ、そうですけど」

(恐竜博物館は昨日行ったし‥今日は、恐竜展とか?)

(いや、教官のことだからもう一度博物館の可能性も‥)

【朝市】

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サトコ

「うわぁ‥!新鮮な海鮮類がいっぱい!!」

東雲

どうせ食べるなら、美味しいもの食べたいし

キミのことだから、ガイドブックに載ってるようなメジャーなとこしか調べてないんでしょ

サトコ

「うっ‥」

(図星だ‥)

東雲

海鮮丼1つじゃキミの胃袋は満足しないだろうし

せっかく旅行来たんだから、美味しいもの食べたいじゃん

(せっかく旅行来たんだから‥って)

(もしかして、私の食べたいもの調べてくれたの?)

サトコ

「教官ー!!」

「嬉しいです!ありがとうございます!」

東雲

うわぁ‥うざ

嬉しさのあまり教官に抱きつくと、嫌な顔をする。

しかし、どこか嬉しそうな教官に私も自然と笑顔になる。

東雲

あ、あのウニ美味しそう

サトコ

「ちょ、ちょっと待ってください!教官」

私は、1人でスタスタと歩き始めた教官の背中を追いかけた。

【店】

私たちは、海鮮バーベキューのお店に入った。

サトコ

「はぁ、美味しかったぁ~」

東雲

朝からよくあんなに食べれるよね

見てるだけで胸やけしそう‥

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サトコ

「美味しいものは、いくらでも入るんです」

東雲

そんなこと言ってたら、帰るまでにどんどん体重が増えるんじゃない?

サトコ

「そ、その分、訓練で消費するからいいんです!」

東雲

脂肪から筋肉にかえるつもり?ボディービルダーでも目指すんだ

オレ、後藤さんと違って筋肉フェチじゃないし

マッチョな彼女とか嫌なんだけど

サトコ

「マッチョなんて目指してませんから!」

東雲

どうだか

サトコ

「うぅ‥」

相変わらず、『美』には細かい教官の言葉に反省する。

東雲

で‥?この後の予定はどうなってるの?

サトコ

「えーっとですね‥この後はー‥ジ」

東雲

ジンギスカンとか、食べれないから

てか、食い倒れツアーは勘弁

サトコ

「わ‥分かってますって」

(でも、どうしよう‥)

(ガイドブックに頼っても、教官喜んでくれなそうだし‥)

サトコ

「あっ‥!そうだ!」

東雲

なに?急に

サトコ

「教官、ちょっと待っててくださいね!」

東雲

え、ちょっと‥

サトコ

「すみませ~ん!ちょっといいですか?」

私は近くのお店のおばさんに、声を掛ける。

サトコ

「この辺に、お勧めのデートスポットってありませんか?」

おばさん

「んー‥あっ!最近、アベックに人気なスポットがあるよ!」

「青い池っていってね、何かジンクスがあるみたいだよ」

サトコ

「本当ですか?」

おばさん

「ああ、そのジンクスって言うのは‥」

おばさんは私にだけ聞こえるように、こっそり教えてくれる。

おばさん

「青い池はややこしい場所にあるからね。手書きで悪いけど‥」

手書きの地図を受け取ると、おばさんに別れを告げた。

東雲

‥で、その池に行くつもり?

サトコ

「はい!行きましょう!」

東雲

食い倒れツアーは?もういいわけ?

サトコ

「‥捨てがたいですけど、また後ででも食べれますし」

「今は、青い池です!」

東雲

怠‥

キミひとりで行けば?

サトコ

「それじゃあ、意味がないんです!ほら、行きますよ!」

【車】

青い池に向かう途中、車窓から風景を眺める。

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サトコ

「やっぱり、田舎っていいですよね」

「空気が美味しいし、落ち着くって言いますか‥」

東雲

そう?絶対、飽きると思うけど

半径100メートル以内にコンビニがないとかムリ

サトコ

「そりゃあ、都会の方が何かと楽ですけど‥」

「田舎には田舎の良さがありますよ?」

東雲

そんなの、知らなくても問題ないでしょ

サトコ

「それはそうですけど‥」

(さすが都会っ子‥まぁ、教官らしいけど)

【山道】

東雲

ねぇ、本当にこっちで合ってるの?

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サトコ

「はい。地図によると、もう少しで着くみたいなんですけど‥」」

青い池付近に到着した私たちは、車から降りて山道を歩く。

東雲

さっきも同じこと言ってたよね?

サトコ

「そ、そうでしたっけ‥」

東雲

はぁ‥

サトコ

「ちょ、ちょっと待ってください!今、スマホで調べて‥‥」

東雲

‥どうしたの?

サトコ

「圏外、です‥」

東雲

‥‥‥

サトコ

「だ、大丈夫です!私たちには、おばさんからもらった地図がありますから!」

東雲

その地図通りに進んでいるのに、いつまで経っても着かないじゃん

そもそも、その地図合ってるわけ?

サトコ

「それは‥」

東雲

‥‥‥

(前にも同じようなことがあったような‥)

(また同じ失敗しちゃったかも)

それからしばらく歩くも、池は見つからず‥

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それどころか、辺りに霧が立ち込めてくる。

東雲

‥この辺で引き返した方がいいかもね

こんなところで遭難とか、シャレにならないし

サトコ

「そう、ですね‥」

(教官と青い池、見たかったな‥)

ジンクスも気になるが、遭難なんかで教官との旅行を台無しにはしたくない。

青い池を諦めようとしたとき‥‥

東雲

‥‥‥はぁ

貸して

サトコ

「え‥?」

東雲

その地図貸して

サトコ

「あ、はい‥!」

東雲

こっちが北だから‥

あっち、かな

サトコ

「きょ、教官‥!?」

地図を確認しながら、教官はどんどん森の奥へと歩き始める。

サトコ

「待ってください!」

「雨も降りそうだし、このまま進むのは‥」

東雲

うるさい

教官は私の手を取って、道を進んでいく。

(教官‥‥)

(今日は、私の気持ちを何よりも尊敬してくれてる)

繋がれた手の温もりから教官の優しさが伝わってきた。

東雲

‥やっぱりね

サトコ

「えっ?」

ふいに、教官の足が止まった。

サトコ

「あの‥?」

東雲

‥見てみなよ

教官に促されて、数歩進んだ先には‥

【青い池】

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サトコ

「わぁ、綺麗‥」

目の前には、鮮やかな青色が広がっていた。

サトコ

「すごいです、教官!青い池ですよ!」

東雲

見ればわかる。てか、オレが見つけたし

サトコ

「こんなところにあったんですね‥」

「あんなに何度も地図を確認したのに」

東雲

そもそも、この地図自体が間違ってる。方角が逆になってるから

サトコ

「へっ‥!?」

(改めて見ると、確かに方角が逆だ‥)

東雲

こんな簡単なこと、なんで気付かないの?人のこと、信じすぎ

サトコ

「すみません」

東雲

ほんと‥ムカつく

サトコ

「むぐっ!な、なにするんですか!?」

(いきなり、人の鼻つまむなんて‥!)

東雲

なんかムカつく

サトコ

「そ、そりゃあ今回は私が悪かったですけど‥」

東雲

それだけじゃない。今回のことも、昨日のことも

サトコ

「へ‥?」

東雲

昨日の夜、立ち聞きしてたよね?

サトコ

「き、気付いてたんですか!?」

東雲

気付かない方がおかしいでしょ

昨晩の教官の言葉を思い出し、私の頬が熱くなる。

東雲

鼻、赤くなってる

サトコ

「きょ、教官のせいです」

「あんな‥ズルいこと言うから」

東雲

オレは自分のタイプを言っただけ

立ち聞きしてたのはキミでしょ

サトコ

「あ、アレはしょうがないといいますか‥なんといいますか」

東雲

まぁ、立ち聞き好きなのは今に始まったことじゃないか

サトコ

「別に立ち聞きが好きなわけじゃ‥」

「あっ‥」

東雲

雪‥?

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教官に言い返そうとした時、空からチラチラと、雪が降ってきた。

青い池に真っ白な雪が舞い降りるその光景は、見たこともないくらい幻想的で‥

サトコ

「‥教官、ありがとうございます」

「教官と旅行に来れて、幸せです」

東雲

‥うん

(初雪も、教官と見れて良かったな‥)

東雲

そういえば、ジンクスって何だったの?

サトコ

「そ、それは‥」

東雲

『ここでキスをすれば、永遠に結ばれる』‥とか?

サトコ

「なっ‥!知ってたんですか!?」

東雲

ありがちでしょ

大抵『永遠』とか『結ばれる』とかだし

サトコ

「そ、そうですよね‥でも、もうひとつジンクスがあるんです」

「『自分の好きな人が幸せになれる』っていうジンクスが‥」

東雲

‥ふーん

興味なさげに呟いたかと思うと、教官はニヤリと微笑む。

東雲

じゃあ‥幸せにして

キミが叶えてみせてよ

サトコ

「あの‥それってどういう」

東雲

して‥キミからキス

サトコ

「!」

(何回も自分からしてるけど、いつもは勢い任せなとこあるし‥)

(改めてってなんだか恥ずかしい)

東雲

したくないならいいけど‥?

サトコ

「したいです!教官とキスしたいです!」

東雲

バカ‥‥

2回も言わなくていいから‥

私は教官の肩に手を置き、背伸びすると‥

教官の唇に、かすかに触れるだけの優しいキスを落とした。

東雲

‥全然足りない

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(教官が幸せにしてって言ったのに‥)

それ以上に、私が幸せにしてもらっている。

そう感じるくらい、とろけるほど甘いキスを何度も贈られたのだった‥‥

Happy  End

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