カテゴリー

ふたりの恋敵編 石神8話

【教場】

石神

捜査訓練中に各々課題が見えてきたと思うが

‥佐々木、どうだ

鳴子

「はい」

「私はやっぱり暗記力でしょうか‥もっと鍛えるべきだと感じました」

退院後、石神さんはすぐに復帰した。

男子訓練生A

「公安はクレジットカード番号の16ケタは即暗記しろって言うもんな‥」

男子訓練生B

「俺も苦手かも」

鳴子

「持続して頭に焼き付けなきゃいけないしね」

石神

それは日々、鍛える他ないな

鳴子

「はい‥」

石神さんは何か思い立ったのか、でたらめな数字の羅列をホワイトボードに書いていく。

(石神さんが教壇に立つ姿、久しぶりだな‥)

(本当に元気になって良かった)

と、石神さんは背を向けたまま、ピタリと手を止めた。

石神

‥氷川

サトコ

「!」

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-030

「は、はい!」

石神

ボーっとするな。当てるぞ

サトコ

「!!!」

(背中に目でも付いてるの‥!?)

鳴子

「うわぁ‥さすが石神教官だね」

「頑張って!サトコ!」

鳴子が石神さんに聞こえないぐらいの声で話す。

サトコ

「ま、待ってください‥あんなに暗記できな‥」

石神

できない‥?

やる前からお前がそれを言うのか

サトコ

「ウソです覚えます!」

「任せてください!」

子訓練生B

「氷川、必死だな‥さすが専属補佐官」

千葉

「ハハ、難問だね」

サトコ

「ちょ、ちょっと静かに‥!」

(4730・2595・3847・1180‥)

ブツブツと念仏のようにホワイトボードの数字を唱える。

石神

いいか、消すぞ

小テストの最後にこの数字を書いて提出するように

男子訓練生A

「ええっ、全員ですか!」

石神

当然だろう

(4730・2595‥)

(よし、大丈夫そう‥!)

久しぶりの石神さんの講義は、和やかな雰囲気で終わった。

【個別教官室】

サトコ

「失礼します。レポート集めてきました」

石神

ああ

放課後、個別教官室へ行くと、石神さんはデスクで作業中だった。

(入院中の仕事、溜まってそうだよね‥)

石神

決裁書類の件、助かった

サトコ

「いえ‥そういえばそんなこともありましたね」

「いろいろありすぎてすっかり忘れてました」

石神

そのわりにはテストの点はなかなか良かったが

サトコ

「ホントですか!」

石神

ああ

事件のこともあったのによく頑張ったな

サトコ

「ここで成績落としちゃったら、石神さんに顔向けできませんから」

「鳴子と一緒に猛勉強したんです」

石神

‥‥‥

石神教官は手を止めると、ソファに腰掛ける私の隣にやってくる。

サトコ

「このテーブルに積んであるのはチェック済みのレポートですよね?」

「仕分けて持っていきます」

石神

ああ

(他には仕事なさそうだし、自分の分を先に見ちゃおうかな)

紙の束を抱えて、1枚ずつ捲っていく。

石神

‥来週の代休は予定を入れないでくれるか

サトコ

「?」

「捜査訓練の代休ですか?」

(休日返上で訓練したから、全生徒調整するんだったっけ‥?)

石神

たまにはふたりでのんびり過ごそうと思うんだが‥

サトコ

「!」

(デート‥!)

(しかも休日に‥!)

嬉しすぎて言葉にならないけれど、喜びは思いっきり顔に出る。

石神

お前は‥

相変わらず、分かりやすいな

サトコ

「す、すみません‥すごく嬉しくて」

「楽しみにしてますね!」

石神

‥‥‥

素直に喜んでいると、石神さんはふっと目を細める。

サトコ

「い、石神さん‥?」

石神

?どうした

サトコ

「えっと‥」

(信じられないくらい柔らかい表情してますよ、なんて言えない‥)

石神

サトコ‥

おそらく赤くなってるだろう頬に、石神さんの指先が触れる。

難波

石神いるか~?

DOSSの応募券また頼‥‥」

サトコ

「!?」

石神

‥‥‥

難波

‥おっと、もしかしてお邪魔だったか

悪いなー

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-034

咄嗟に石神さんから離れた私に向かって、難波室長は可笑しそうに笑う。

サトコ

「な、な‥!」

難波

そういや石神の退院祝いも‥

石神

必要ありません。奴らに飲む場を与えると面倒です

難波

冷たい上官だな

なー、氷川

サトコ

「石神教官らしい気はしますけど」

難波

‥俺もしばらくは石神に頭上がらないから、無理言えないしなー

氷川にも

サトコ

「はい?」

難波

ま、いいか

今後とも、ほどほどに仲良くやれよ

軽くそう言って、バタンとドアが閉まる。

サトコ

「‥やっぱり掴めない人ですね、難波室長」

石神

室長相手に食って掛かった訓練生が何を言っている‥

サトコ

「あ、あの時はとにかく必死でですね‥」

「今思い返すと、とんでもないことをしたなって‥」

しどろもどろになる私を、石神さんも楽しげに眺めて‥

石神

今度の休みは‥

お前が頑張った褒美だが、俺も楽しみにしている

石神さんは、穏やかに微笑んだ。

Happy  End

Good  End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする