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難波 出会い編 Happy End


【街】

(なんかちょっと、足がスースーするなー)

(キレイ目な格好なんて言うから、シフォンのスカートなんて履いてきちゃったけど‥)

心許ない思いで待ち合わせ場所に向かう。

(室長は‥まだ来てないみたい)

難波

おい

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サトコ

「!?」

難波

無視は酷いな~

すぐそこにいただろ

サトコ

「え‥え?ええ!?」

「室長、ですか?」

目の前に立っていたのは、ビシッとスーツを着込んだステキな男性。

(いつものヘロヘロスーツじゃないから全然分かんなかった!)

難波

おいおい‥勘弁しろよ

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驚いたようにジッと見つめていると、室長は少し恥ずかしそうに頭をかいた。

難波

俺だってな、やればできる

サトコ

「そ、そうみたいですね」

「見違えました」

難波

でもお前は‥

室長は一歩下がって足先から頭の先まで何度か視線を往復させる。

難波

‥ちょっと、乳臭いな

サトコ

「ち、乳臭い!?」

「一体、どこがですか?」

「私的に最上級のオシャレして来たつもりなんですけど‥」

ガックリと肩を落とした私の手を、室長がガシッと掴んだ。

難波

落ち込んでる暇はない

行くぞ

【ブティック】

難波

うーん、いいねぇ

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これで、よし

室長に促されて鏡の前に立った私は、まるで別人のようだった。

(わあ‥)

難波

キレイ、とか思ったか?

サトコ

「そ、そんなことはっ!」

(もちろん、ちょっとは思ったけど‥)

難波

いや、それでいい

今日のお前は、自分に自信のある大人の女

俺の妻だ

サトコ

「し、室長の!?」

難波

室長じゃない。仁だ

わかったな?」

サトコ

「はい‥」

難波

それじゃ、呼んでみろ

サトコ

「いや、そんないきなり言われても‥」

照れた顔を俯けるが、室長は容赦ない。

難波

後藤のお蔭で人妻のプロになったんじゃないのか?

日々の成果を見せてみろ

サトコ

「‥ジン‥ジン?」

難波

じんじん?

サトコ

「す、すみません。なんだか照れくさくて」

難波

ダメだ‥これじゃプロは撤回だな

室長が呆れたようにため息をつく。

サトコ

「ま、待ってください!」

「やります!プロに戻ります!」

「‥仁さんっ!」

勢いに任せて呼ぶと、室長がニカッと笑った。

難波

よし、行くか

室長はスッと右ひじを差し出す。

そこに恐る恐る手を掛け、2人で一緒に歩き出した。

(なんかデートみたい‥!)

(でも、これは捜査なんだよね)


【クラブ】

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連れて行かれたのは、高級クラブ。

今日はその、オープン記念のパーティーだった。

難波

この中にマルタイがいる

でもお前は、俺の妻に徹していればいい

サトコ

「はい」

腕を組んだまま、クラブの奥へと入って行く。

来ているのは、高級そうな装飾品を身に付けたお客さんたちばかりだ。

(この中に公安の捜査対象者がいるんだ)

(一体、どの人なんだろう‥?)

女性客

「あら、あなた。苦み走ったいい男じゃな~い?」

「あっちで、一緒に飲まない?」

かなり歳のいった派手な女性が室長に声を掛けた。

難波

そうしたいのはヤマヤマですが、あいにく今日はツレが

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室長は一歩下がって立っていた私をグイッと引っ張った。

サトコ

「わわっ‥」

思わず声が出て、慌てて口元に手を添えて笑う。

サトコ

「ほほっ‥どうも‥」

女性客

「なによ、奥さん連れなの?」

「しかもまた、ずいぶんと若い奥さんで」

女性客は嫌味半分に言って他の男性客の方へと移って行った。

(よかった‥一応、夫婦には見えたみたい)

難波

サトコ、飲むか?

室長は黒服が運んできたシャンパングラスを2つ取ると、ひとつを私に手渡してくれる。

サトコ

「ええ、ありがとう」

その直後、室長が私の腰を抱き寄せた。

その勢いで、不覚にも室長の胸に飛び込んでしまう。

サトコ

「!」

難波

っと、危ない

後ろを見ると、酔った客がフラフラと歩いてきたところだった。

難波

ぶつからなかったか?

サトコ

「‥大丈夫」

(なんだかいつもと違ってすごく紳士‥)

(こんな室長初めてだから、ドキドキしちゃうよ)

【居酒屋】

と思ったのも束の間‥

難波

あー疲れた

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室長は座敷に上がるなり、きゅきゅっとネクタイを緩める。

結局目当ての人物は現れず、着替えた私たちは、潜入先から離れた場所にある居酒屋にやってきた。

煙がもくもくしている店内に入るなり、室長はいつもの室長にもどってしまった。

難波

悪いな。おっさんくさい居酒屋しか知らなくて

サトコ

「いえ、私はどこでも」

(ここなら、絶対にさっきのクラブにいたような人たちは来ないから安心だよね)

(それに私も、オシャレな所よりこういうお店の方がなんとなくホッとするし)

難波

それじゃ、とりあえず乾杯な

今日はお疲れ

サトコ

「お疲れさまでしたっ!」

ジョッキを軽くぶつけ、ビールをひと口飲む。

室長といえば、ごくごくと吸い込むようにビールを流し込んでいる。

難波

ぷは~

しみるなぁ

(完全におっさんモード‥)

(さっきのカッコいい仁さんはどこ行っちゃったんだろう‥?)

難波

ん?なんだ、何かついてるか?

サトコ

「いえ、なんでも‥」

難波

やっぱり、チキンソテーとかそんなんより、焼き鳥だよな

室長はブツブツ言いながら、満足げに焼き鳥を頬張っている。

(でも私は、カッコいい室長より、こっちの室長の方が落ち着くな)

サトコ

「ふふっ」

笑った瞬間、お箸が転がった。

サトコ

「ああっ!」

拾おうとして、醤油ビンを倒してしまう。

サトコ

「あああ‥」

難波

ああ、もう、いいから、いいから

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室長は、串をくわえたままテーブルをさっと拭いてくれた。

サトコ

「すみません‥」

シュンとする私を見て、室長が笑う。

難波

お前はさ、なんか目が離せないんだよな

サトコ

「え?」

(目が離せないって、それって‥)

難波

なんだろう、この感覚は‥

室長は必死に何かを思い出そうと考え込む。

私は、期待と共に次の言葉を待った。

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難波

そうだ、我が子への愛‥だな

サトコ

「そ、それは、父親気分ってことですかっ!?」

難波

そう、まさにそれだよ

(それって単に、子どもだから目が離せないっていうこと‥?)

サトコ

「ははっ」

「お父ちゃん、おかわり!‥なんて」

難波

うん、悪くない

よーし、たくさん食って、大きくなれよー

(そうか‥室長と親子かぁ‥)

その後も勢いよく飲み続けた室長は、あっという間にテーブルに突っ伏して寝てしまい‥

(こうしていると、ホント無防備なんだよね)

(ちょっと口開けて、なんかかわいいな‥)

最初の数十分は頬杖をついて寝顔を眺めていたが、

そのうち店員さんがチラチラと視線を送ってくるようになった。

(そろそろ、退散しないとかな)

サトコ

「室長!室長、起きてくださいよー!」

声を掛けるが、室長は微塵も動く気配がない。

サトコ

「室長ってば!お願いですから、起きてくださいって!」

(どうしよう‥完全に爆睡状態‥)

困っていると、店員さんと目が合った。

店員さんはここぞとばかりに近づいてくる。

店員

「あの、お客さま。お困りでしたらタクシーをお呼びしましょうか?」

「外までは、私が手をお貸ししますので」

(これはつまり、そうせよってことだよね)

サトコ

「じゃあ、お願いします‥」

【マンション】

サトコ

「ありがとうございました」

運転手さんの力を借りて、なんと室長をタクシーから降ろす。

サトコ

「室長、着きましたよ」

「ここでいいんですよね?」

難波

あ?ああ‥うん

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それだけ言うと、再びガクリと頭を垂れてしまう室長。

サトコ

「し、室長‥重いですっ!」

【部屋】

サトコ

「失礼しまーす」

室長を引きずるようにして部屋へ行くと、そこは明らかにファミリータイプの部屋だった。

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(ここで奥さんと一緒に暮らしてたのかな)

サトコ

「室長、着きましたよ」

「寝室はどっちですかー?」

難波

あっちだ

いや、待てよ?そっちか?

サトコ

「ちょ、どっちなんですか‥」

結局、室長を引っ張りながら全部の部屋を回ってしまった。

サトコ

「なんで違う部屋ばっかり指差すかな‥」

【寝室】

へとへとになりながら、室長をなんとかベッドに横たえる。

難波

‥もうダメだ。勘弁してくれ

サトコ

「あと少しです!しっかりしてください!」

「上着着たまま寝たらシワになっちゃいますよー?」

上着と靴下を脱がせ、ようやく一息ついた。

サトコ

「ふう‥疲れた‥」

「それじゃ、室長、私は‥」

「わっ!」

いきなり凄い力で引き寄せられ、ベッドの中に倒れ込んだ。

サトコ

「し、室長!?」

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逆らう私に構わず、室長は私の身体に絡みつく。

いつの間にか、私は室長の腕の中にすっぽりと収まっていた。

サトコ

「ちょ‥ダメです、室長!」

「父親なんですよね?私は子供ですよ、子どもっ!」

耳元ではすでに、スースーと気持ちのよさそうな寝息が聞こえている。

(うそ‥もう寝ちゃったの?)

(そうだった‥室長は確か、寝付くのが早いんだった‥)

寝ているにもかかわらず、抱きしめている腕の力はちっとも緩まない。

(これってつまり‥抱き枕みたいなことだと思えばいいのかなあ)

大きなため息と共に、その夜は抱き枕になりきることにした‥‥

(ああ‥いつの間にか、眩しい朝日が‥)

結局、動けず眠れないままに一夜が明けた。

でも室長は、まだ目覚める気配がない。

ジャラリラ~ン!

サトコ

「ひぃ!」

突然、演歌のような音楽が高らかに鳴り響いた。

その瞬間、室長の身体がピクリとなり、身体の拘束が解かれる。

(よかった‥!)

サトコ

「室長、おはようございます」

難波

な、なんだ!?

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室長は一瞬で壁際まで飛びのき、焦った顔で私を見ている。

難波

なんでひよっこがここにいんだ?

サトコ

「ひどい‥全然覚えてないんですね」

難波

すまん。まったく記憶が‥

俺はまさか、お前に何か‥

サトコ

「し、してませんから大丈夫です!」

室長はあからさまにホッとした様子を見せた。

サトコ

「敢えて言うなら、抱き枕にされました」

「おかげで全然眠れませんでしたよ‥」

難波

そうか‥すまなかった

そういうことなら、ここで寝てけ

俺はもう、あっちの部屋に退散するから

サトコ

「大丈夫です。そんないきなり寝ろって言われても‥」

難波

眠れないなら、子守唄でも歌ってやるか?

サトコ

「け、結構です!」

「そこまで子どもじゃありませんからっ!」

難波

そうか‥

それじゃ、メシ作ってやるから、それまで休んでろ

サトコ

「ホントに大丈夫ですから」

「ご飯作るなら、手伝います!」

【リビング】

なんだかんだでご飯を作ったのは結局私。

難波

それじゃ、いただきます

おお、うまいな

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サトコ

「本当ですか?よかった」

難波

うん。お前は意外といい嫁になるかもしれんぞ

(よ、嫁!!)

なんだか嬉しくなって、自然と顔がにやけてしまう。

サトコ

「えー、そうですかねー」

「こんなんでよければ、いつでも作りますよ!」

難波

おいおい、そういうのはこんなおっさんじゃなくて彼氏に言えよ

サトコ

「言いたいのはやまやまですが、あいにくおりませんので‥」

難波

なんだ、いないのか?

でもそうだよな‥ひよっこは、俺と2人でも暗闇でドキドキするようなウブなヤツだもんな

サトコ

「そ、そんなんじゃ‥!」

「あれは、その‥!」

難波

いいから、いいから。強がるな

室長の手が私の頭に伸びた。

その手から逃げるように、身体を遠ざける。

サトコ

「もう!子ども扱いはやめてくださいよー!」

難波

ははは

今日のひよっこは威勢がいいぞ

よしよし、ほら、こっちにこい

サトコ

「結構です!」

何度も何度も頭を撫でようとする室長から逃げながら、

この上ない満足感と幸せを感じてしまっている私がいた。

【学校 廊下】

休み明けの月曜日。

補習を終えて出てくると、隣の部屋から室長が出てきた。

難波

おお、ひよっこ

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サトコ

「室長‥」

難波

ちょうどよかった。これ、運ぶの手伝ってくれ

サトコ

「はい」

昨日の楽しい時間から一転、室長と訓練生という立場に戻ってもまだあの幸福感は続いていた。

好きだと思える人が、こうしてすぐ隣にいてくれる幸せ。

(でも‥)

やはり左手で光る指輪が気になった。

(思い切って聞いてみようかな‥)

聞きたくても聞けなかったこと。

でも昨日の2人を経ての今なら、聞ける気がした。

サトコ

「この間、奥さんはもういないって言いましたよね」

難波

ん?ああ、そうだな

サトコ

「それなら、どうして指輪、外さないんですか?」

難波

これか‥?

室長は少し切なげにため息をついた。

難波

これはな‥

外さないんじゃなくて、外せないんだ

目を伏せた室長の視線が、切なさを助長する。

(なんだろう、この感じ‥)

(もしかして奥さんは、亡くなったんじゃ‥?)

それ以上聞けない雰囲気を感じて、黙り込んだ。

(亡くなった後も指輪は外さないってことは、まだ好きってことだよね)

(それほど大切な人なんだ‥)

(亡くなった人がライバルなんて、そんなの絶対勝ち目ないよ)

【教官室】

難波

おい、どこ行くんだひよっこ

サトコ

「あ、すみません!」

ぼんやり考えていたら、いつの間にか室長は教官室のドアを開けていた。

室長に続いて中に入ると、教官たちが勢ぞろいしていた。

(なんだろう?なんか緊張感がみなぎってる気が‥)

石神

室長、今、警察庁から連絡が

加賀

永谷の野郎が、黒幕の正体を吐いたらしいです

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End

恋の行方編へ



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