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難波 出会い編 シークレット2


Episode 5.5

「ラーメン代の行方」

【学校 廊下】

サトコ

「いっけない!次の訓練に遅れちゃう‥!」

2限目開始まであと3分。

急いでグラウンドに向かおうとしていると、少し先の教場から室長と後藤教官が出てきた。

(あ‥室長に後藤教官‥)

私に気付かず、目の前をゆっくりと歩いていく2人。

(どうしよ‥時間はないけど追い抜くわけにもいかないしなあ‥)

時計を見ながらすぐ後ろを歩いていると、2人の会話が聞こえてきた。

後藤

このまま警察庁に向かいますか?

難波

そうだなあ‥

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ああ、でも一件だけ電話を掛けないといけなかったんだ

先に車に行っててくれ

後藤

はい

難波

ついでと言っちゃなんだけど、タバコ買っといてもらえるか?

後藤

分かりました

サトコ

「!?」

後藤教官は急ぎ足で角を曲がって行ってしまった。

(買って来てくれって言ったのに、お金は‥?)

(この間のラーメンも後藤教官に払わせてたし、これってどうなんだろう‥?)

(普通は‥)

頭の中にもくもくと妄想が広がっていく‥

廊下を並んで歩いていた室長は、突然立ち止まると私に千円札を差し出した。

難波

氷川、これでタバコを買って来てもらえるか

サトコ

「わかりました!」

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急いで買い物から戻った私は、指定のタバコとお釣りを渡そうとする。

サトコ

「室長、買ってきました!」

難波

おお、サンキュー

釣りは取っとけ

サトコ

「え、でも‥」

難波

いいから

(だいたいこんな感じになるはずだと思うけど‥)

(室長、恐るべし‥)

心の中でひとり言を繰り返す私に気付かず、室長も次の角を曲がって行った。

その背を見送りながらふと思う。

(でもあの後もう一度一緒にラーメンに行ったときは、私にラーメン奢ってくれたよね‥)

【ラーメン屋台】

難波

大将、お会計

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サトコ

「あ、お金‥」

慌てて財布を出そうとする私の手をそっと制して、室長はポケットから無造作にお札を出す。

【廊下】

(あれってもしかして、特別だったってこと!?)

鳴子

「サトコ、こんな所でなにニヤニヤしてるのよー?」

「次は加賀教官だよ?遅れるとどんなひどい罰があるかわかんないよ!」

サトコ

「そ、そうだよね」

(私ったら、こんな時に何を考えてるんだか‥)

サトコ

「鳴子、待って!」

表情を引き締めると、慌てて鳴子の後を追いかけた。

【カフェテラス】

今日のお昼休みは、鳴子と千葉さんと一緒にカフェテラスでランチ。

千葉さんは少し年上の同期で、寮で知り合った。

サトコ

「ええっ‥合コン!?」

「昨日、あれから?」

鳴子

「うん、もちろん!」

サトコ

「あの猛特訓の後でよく行けたね‥」

(すごいバイタリティー‥私にはその気力はないなあ)

鳴子

「行けるかどうかじゃないの。問題は、行きたいかどうかだよ」

千葉

「さすが佐々木は、気合いが違うね」

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鳴子

「当然だよー。でもね、せっかく気合い入れて行ったのに、割り勘だったんだよ?」

「年上だったのに!」

サトコ

「ふーん」

千葉

「そういうのって、女の子はやっぱり奢って欲しいものなの?」

鳴子

「もちろんマストじゃないけど‥」

「同じ年ならまだしも、年上ならねえ?」

「スマートに奢ってくれた方が、かっこいいなって思うけどなー」

サトコ

「それはまあ、そうかもね‥」

頷きながら、ふと廊下で見た光景を思い出した。

サトコ

「じゃあ、部下に奢らせる人ってどう思う?」

鳴子

「部下にっ!?」

千葉

「あんまりそんな人、聞いたことないな」

鳴子

「そうだよねえ?そんな人、いるの?」

サトコ

「ま、まあ‥」

(すぐ近くにいるけど‥室長とも言えないし‥)

???

「確かにいるよねー、そういう人」

サトコ

「!?」

驚いて振り返ると、いつの間にか東雲教官が立っていた。

サトコ

「し、東雲教官!?」

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鳴子

「すみません!全く気づきませんでした‥」

千葉

「東雲教官の近くにそんな人がいるんですか?」

東雲

うん、まあ‥

鳴子

「ちなみに、誰なんですか?」

東雲

‥室長、とか?

(やっぱり、室長っていつもああなんだ‥)

鳴子

「え‥室長ってそういう人なんですか?」

東雲

そうだねえ‥

東雲教官はいたずらっぽく私を見た。

東雲

キミは知ってるでしょ?

後藤さんと3人でラーメン食べに行ったんだもんね?

サトコ

「え?あ、まあ‥」

(な、なぜそのことを‥?)

(東雲教官の情報網はあなどれない‥!)

東雲

でも、室長に関してはもう少し観察してみた方がいいかもね

謎の微笑みを残して東雲教官は去って行った。

(観察?どういう意味だろう‥?)


【教官室】

サトコ

「失礼しま‥」

講義終了後、集めたレポートを抱えて教官室に来ると、

ちょうど室長が後藤教官の傍らに立ったところだった。

難波

後藤、これな

室長はポケットからくしゃくしゃの千円札を出すと、後藤教官に差し出す。

(あれ?あのお金って、もしかして‥)

難波

あと、あれもあったな

ひよっこを連れてったラーメン

いくらだ?

後藤

大丈夫です。これで

難波

大丈夫じゃないだろ

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いくらあのオヤジのラーメンでも、3人分はそんなに安かねぇぞ

後藤

でも大した額じゃありませんし

難波

ダメだ。部下に奢られるわけにはいかねぇからな

室長はポケットからさらにくしゃくしゃの千円札を2枚取り出し、後藤教官に押し付けた。

難波

取っとけ

釣りはいらない

後藤

‥じゃあ、頂きます

サトコ

「!」

あまりに私の妄想通りの展開に、唖然となった。

(室長はああやって、後でちゃんとお金を返してたんだ‥)

東雲

あれ?サトコちゃん

「こんな入口にぼんやり立ってどうしたの?

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サトコ

「あ、す、すみません」

「レポートを出しに来たんですが、つい‥」

お財布に受け取った3千円をしまっている後藤教官。

私の視線を辿るように、東雲教官も後藤教官を見た。

東雲

どうやら、ちゃんと返金されたみたいだね

室長から

サトコ

「東雲教官が言ってたのはこのことだったんですね」

(確かに、ちゃんと観察しないと室長のこと誤解するところだった‥)

東雲

室長はオンとオフの差が激しいからね

オフスイッチが入ると、急にボーっとなって払うのも忘れちゃうらしいよ

小さく笑いながら、東雲教官は部屋に戻って行った。

(そっか‥でも私がラーメンを奢ってもらった時、室長は明らかにオフモードだったはず)

(それなのにちゃんと奢ってくれたってことは)

(真剣に話を聞いてくれてたってことなのかも‥?)

サトコ

「ふふっ」

思わず出た笑い声に、後藤教官が怪訝な目を向ける。

後藤

‥?

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でもそれすら気にならないほど、嬉しい気持ちが私を包み込んでいた。

End



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