カテゴリー

本命チョコ カレ目線 加賀2話

【個別教官室】

サトコにチョコを作り直す必要がないと告げた後。

その足で、石神の個別教官室のドアを開けた。

石神

‥ノックぐらいしろ

加賀

ノックされねぇとまずいことでもあんのか

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-352

石神

お前と一緒にするな

それにしても、お前が訪ねてくるとは珍しいこともあるものだな

(わかってるくせに、相変わらず白々しい眼鏡野郎だな)

石神のデスクには、サトコが渡したチョコの箱が置いてある。

加賀

わかってんなら、さっさとよこせ

石神

それが、人にものを頼む態度か?

加賀

頼んでんじゃねぇ。よこせって言ってんだ

ただでさえ、サトコがチョコを渡し間違えたということに少し苛立っていた。

(あのクズが‥よりにもよって相手が、クソ眼鏡とはな)

石神が、サトコのチョコの箱に手を掛けて笑う。

石神

バレンタインなどくだらないと言っていなかったか?

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-353

加賀

テメェにゃ関係ねぇ

石神

チョコひとつで、情けないな

加賀

テメェこそ、ちゃっかり受け取ってんじゃねぇ

テメェがアイツからのチョコを楽しみにしてんのは、見え見えだ

石神

なんのことだ

加賀

どいつもこいつも、人の犬を何だと思ってやがる‥

石神

お前こそ、補佐官を犬呼ばわりして、何だと思ってるんだ

加賀

ごちゃごちゃうるせぇ

しばらく、言葉もなく睨みあう。

(‥やっぱり、こいつとは合わねぇ)

加賀

‥埒が明かねぇな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-354

石神のデスクに近づくと、チョコの箱を取り上げた。

加賀

この借りは返す

石神

ほう‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-355

加賀

その代わり、これは返してもらう

石神

‥‥‥

俺の手の箱を少し眺めて、石神が眼鏡を押し上げた。

石神

まあ、大福は俺の口には合わない

プリンの良さが分からないとは、氷川は気の毒な上官を持ったものだな

加賀

そりゃこっちの台詞だ

舌打ちして、石神の教官室を出た。

【個別教官室】

自分の教官室に戻ってくると、箱をデスクに置いてひと息つく。

(あのクズが‥クソ眼鏡に借り作らせやがって)

イスに座り、箱を開ける。

すると、二重になっているラッピングはまだ開けられていなかった。

(サイボーグのくせに、一応は気を利かせたらしいな)

中のラッピングを開けると、メッセージカードが入っている。

そこにはサトコの字で『加賀さん、大好きです』とあった。

加賀

フッ‥んなことはわかってる

(それにしても‥これが、あのサイボーグ野郎の手に渡ったのか)

メッセージカードを見られたら、また面倒なことになるところだった。

加賀

ったく‥面倒かけやがって

それでも、ようやく取り戻せて知らずのうちに笑みがこぼれる。

外の空気を吸うため、裏庭へと向かった。

【裏庭】

よく晴れた夜空の下で、タバコの煙を吐き出す。

その時、サトコからメールが送られてきた。

(『今どこですか?会いに行ってもいいですか?』)

裏庭にいると短いメールを出すと、しばらくしてサトコが走ってきた。

その手には、石神から取り戻したあの箱がある。

サトコ

「加賀さん‥どうして、これ‥」

加賀

プリンプリン言ってる奴に、それはもったいねぇ

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-357

自分のために取り戻したとも言えず、ただそれだけ告げる。

サトコは半分泣きそうになりながら、その場に崩れ落ちるように座った。

サトコ

「私‥加賀さんが怒ってるんだと思って‥」

加賀

この程度で怒るほど暇じゃねぇ

テメェが何かやらかすのは、想定の範囲内だ

サトコ

「ハイ‥」

どうやらサトコはさっきの『いらねぇ』の意味を、勘違いしていたらしい。

加賀

‥テメェのチョコだけは、受け取ってやる

サトコ

「加賀さん‥」

加賀

だが‥この失態は、きっちり払ってもらう

サトコ

「!?」

ホッとしたような笑顔から一転、サトコが真っ青になる。

(あのサイボーグに借りを作るってのがどういうことか)

(一晩かけて、その身体に教え込んでやる)

【加賀 マンション】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-358

家に帰ると、サトコが茶を淹れている間に大福を食べる。

中にチョコが入っていて、悪くない味だった。

サトコ

「どうですか?」

加賀

‥悪くねぇ

だが、大福にチョコなんざ、邪道だ

サトコ

「ふふ‥言われると思いました」

満足げに、サトコが笑う。

その余裕のある笑みが気に入らない。

加賀

甘さが足りねぇ

サトコ

「え!?チョコなのに!?」

加賀

喚くな

‥テメェの身体で補え

ソファに押し倒して唇を舐めてやると、サトコが頬を染めてぼんやりと俺を見上げた。

(‥サイボーグに借りを作った分も、テメェで返してもらわねぇとな)

(大福もいいが、やっぱりテメェだろ)

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-359

そのまま、サトコの中に身を沈めるのだった‥‥

【寝室】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-360

その夜、サトコは俺の腕の中でぐったりとしていた。

サトコ

「加賀さん‥ひどい‥」

加賀

何がだ

サトコ

「だって‥あ、あんなに‥」

涙目で抗議してくるサトコを見ると、もっと啼かせてやりたくなる。

組み敷こうとした時、サトコがハッとしたような顔になった。

サトコ

「そういえば‥石神教官に、チョコ渡しそびれてました!」

加賀

あ?

サトコ

「加賀さんの大福が戻ってきたってことは、石神教官には何も渡してない状態ですよね‥」

「しかも、一度渡したものを返してもらってるし‥何かお詫びの品を」

加賀

‥‥‥

サトコ

「やっぱり、プリンがいいですかね?チョコプリンなんて、作れるかな‥」

加賀

適当でいい

キスで口を塞いで黙らせても、唇を離すとサトコはまだ考え込んでいる。

サトコ

「教官に一人だけ何も渡さないっていうのは、よくないですよね」

「簡単だけど、別のチョコを作って渡すとか」

加賀

‥‥‥

サトコの両手首を掴み、頭の上で押さえつけた。

サトコ

「え‥」

加賀

他の男の話をするなんざ、随分余裕だな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-362

しかも、今度は他の男の餌付けか

サトコ

「え、餌付け!?滅相もない!」

加賀

だったら、他の男の話なんてするんじゃねぇ

テメェは、飼い主のことだけ考えてりゃいい

意識をこちらに向けるために、サトコの身体を攻める。

夜が明けるまで、何度も抱き合った。

【教官室】

バレンタインの翌日、早めに来ると、後藤が一番乗りで来ていた。

後藤

加賀さん、おはようございます

加賀

ああ

‥後藤、頼みがある

後藤

‥‥‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-363

加賀

なんだ?

後藤

いえ‥加賀さんが『頼み』なんて、珍しいので

颯馬

本当ですね

いつの間にか来ていた颯馬が、後ろで笑っていた。

加賀

テメェらはめんどくせぇな‥

後藤

それで、頼みって何ですか

加賀

‥あのプリンのデスクに、これ置いとけ

朝早く寄って買ってきた老舗洋菓子店のプリンを後藤に渡すと、後藤が目を見開いた。

後藤

それくらい、自分で渡せば‥

加賀

絶対にごめんだ

颯馬

フフ‥ふたりとも、素直じゃないですからね

東雲

へぇ、朝からいいもの見ちゃった

加賀

‥‥‥

(なんだって、今日に限って早く来やがる‥)

東雲

もしかして、誰かさんのチョコを取り返したからですか?

加賀

うるせぇ

東雲

まあ、専属補佐官ですからね。“特別”なのは当たり前ですよ

加賀

チッ‥

(相変わらず、生意気なガキだ)

ニヤニヤ笑う歩に背を向けて、自分のデスクに座った。

それから数日後、黒澤が久しぶりに教官室にやってきた。

石神

黒澤‥お前、太ったんじゃないか?

後藤

トレーニング、ちゃんとやっているのか?

黒澤

いやー、実はもらったチョコを食べ過ぎちゃいまして

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-365

東雲

どうせ、今年も全部兵吾さんのでしょ

黒澤が太った理由を知っている歩は、蔑むような目で黒澤を見ている。

(どうやら、言いつけを守って全部食ったらしいな)

それは、バレンタイン当日のこと‥

黒澤

加賀さーん!!!

加賀

うるせぇ

黒澤

やっぱり今年もすっごい届きましたよ、チョコ!

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-366

加賀

‥‥‥

去年、サトコは『気持ちがこもっているのだから手紙くらいは見た方がいい』とほざいていた。

(だがやっぱり、何が入ってんのかわかんねぇチョコは食う気がしねぇ)

(それに‥アイツのだけ、あればいい)

加賀

処分しとけ

黒澤

今年もですか?じゃあオレ、ちょっともらっちゃおうかな

あ、でも今年はサトコさんからもらえるはずだから

ちょっと、おなかに余裕持たせておかないと!

サトコからもらえると思い込んでいる黒澤に、苛立ちを覚える。

(‥まあ、アイツのことだから、他の奴らにもやるだろうが)

加賀

おい

黒澤

はい?

加賀

それはテメェが全部食え

黒澤

はい!?』

加賀

食って処分しろ

黒澤

これ全部!?む、無理ですよ!

(アイツのチョコを食う腹の余裕なんざ、テメェには‥いや、他の男にはいらねぇ)

加賀

残したら、ただじゃおかねぇ

黒澤

ええー!?』

そんな、横暴すぎます!

焦る黒澤に口の端を持ち上げて笑ってやると、教官室を後にした。

to be continued

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする