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お返し 颯馬2話

【海】

風に乗って目の前をはらはらと通り過ぎていくのは、花びらだった。

サトコ

「これは‥?」

颯馬

どうやら、あそこでフォトウェディングの撮影をしているみたいですね

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サトコ

「わぁ、綺麗‥」

海の爽やかな雰囲気の中、雪のように舞う花びらはすごく幻想的だった。

そんなことを考えていると、タキシードを着た男性がこちらに向かって走ってくる。

男性

「すみません、花びらが飛んできちゃいましたか‥?」

颯馬

いえ、ふたりで綺麗だなと思って見ていましたので大丈夫ですよ

サトコ

「こちらこそ、綺麗な風景を見せて頂き、ありがとうございます」

私たちの言葉を聞き、新郎新婦は照れ臭そうに微笑みあっている。

男性

「もうすぐで終わりますので、すみません‥」

ふたりは頭を軽く下げて、撮影場所へと戻っていく。

(颯馬さんも、タキシードが似合うだろうなぁ‥)

颯馬

サトコさんも、あの花嫁さんのような真っ白なドレス、似合いそうですね

サトコ

「え‥」

颯馬

どうしました?

サトコ

「今、私もちょうど、考えていたんです‥」

「新郎さんみたいなタキシード、颯馬さんに似合うだろうなぁって‥」

颯馬

そうだったんですか。ある意味私たちは以心伝心ということですかね

サトコ

「そ、そうですね」

(でも、そういうこと言われちゃうと少しだけ結婚を意識しちゃいます‥)

颯馬

さて、そろそろ行きましょうか

颯馬さんは私の腰を抱きながら、次の場所へと向かい始めた。

【レストラン】

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あれから、颯馬さんに連れられてきたのは海辺のオシャレなレストラン。

サトコ

「海が夕日に照らせれて綺麗です‥」

颯馬

フフ、気に入って頂けて良かったです

それに、海辺をよく見てください。もっと喜んでもらえると思いますよ

サトコ

「海辺‥?」

「あっ!」

颯馬さんに促されるように砂浜を見ると、たくさんのキャンドルが灯されていた。

颯馬

気に入って頂けましたか?

サトコ

「はい‥!こんなロマンチックなレストランで食事ができるなんて‥!」

言葉を失うほどの素敵な景色に、私はやや興奮気味。

颯馬さんはそんな私を微笑ましそうに見つめている。

サトコ

「あの‥」

<選択してください>

A: どうしていつもそんなにカッコいいの?

サトコ

「颯馬さんって、いつも素敵な場所に連れて行ってくれますよね」

「嬉しいんですけど、その‥どうしていつもそんなにカッコいいんですか」

颯馬

フフ、それはきっと‥

サトコさんを喜ばせたいという気持ちが強いから、です

ここに連れて行ったら喜んでくれるかな、笑顔を見せてくれるかな‥

そんなことばかり、考えてるんです

颯馬さんは当然のように言い、私は照れることしか出来なかった。

B: ありがとうございます

サトコ

「ありがとうございます」

(‥って、何に対してのお礼か分かんないよね)

サトコ

「あの‥」

颯馬

どういたしまして。貴女が喜んでくれるなら、私は何でもできるんですよ

私の言いたいことが分かったのか、言葉を遮りながら、颯馬さんが優しく微笑んでくれた。

C: 何かお礼をしたいです

サトコ

「あの、何かお礼をさせてください」

颯馬

お礼、ですか‥?

颯馬さんは少し考え込んだ後に‥

颯馬

それなら、笑っていてください

サトコ

「え?」

颯馬

貴女の笑顔を見せてもらえるなら、それだけで十分です

颯馬さんの優しい言葉に、じわりと胸が温かくなる。

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そして、食事が終わり店先で待っていると、

颯馬さんが店員さんから何かを渡されているのが見えた。

(あれ‥なんだろう?)

サトコ

「颯馬さん、それ‥」

戻ってきた颯馬さんに問いかけてみると‥

颯馬

お土産を頂いたんですよ

サトコ

「お土産?ここのレストランって、本当に至れり尽くせりなんですね‥」

颯馬

ええ、料理も美味しかったですし、今日だけと言わずにまた今度来たいですね

サトコ

「今日はご馳走して頂いたので、次来るときは私にご馳走させてください」

颯馬

フフ、ありがとうございます

そうだ、せっかくだから夜の浜辺も、散歩してみませんか?

サトコ

「そうですね、キャンドルも綺麗ですし‥」

どちらからともなく手を繋ぎ、私たちは夜の浜辺へと歩き始めた。

【浜辺】

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昼間の海とは違い、夜の海辺は静かで月明かりに照らされて神秘的な雰囲気を出している。

(今日は最高のホワイトデーだったな‥)

颯馬

サトコさん、ちょっといいですか?

サトコ

「はい‥?」

颯馬

私の心を明るくしてくれるのは、いつもサトコさんです

ですから‥これからもずっと傍にいてくださいね

サトコ

「颯馬さん‥?」

(いきなり、どうしたんだろう‥)

颯馬さんの言葉の意図が分からず、目を瞬かせていると‥

颯馬

これを、貴女に

サトコ

「え、これって‥?」

颯馬さんが差し出してきたものは、さっき店員さんから渡されたお土産だった。

颯馬

実は、お土産じゃないんです

突然聞かれたので、咄嗟にお土産と答えてしまったのですが‥

事前に用意して、お店に預けていたんですよ

サトコ

「見てもいいですか‥?」

颯馬

もちろんです。貴女のために用意したものなんですから

ドキドキしながら紙袋の中を見ると‥

サトコ

「可愛い‥!」

菜の花やマーガレットなど、黄色系の花でまとめられた花束が入っていた。

<選択してください>

A: 可愛い花束ですね

サトコ

「可愛い花束ですね」

颯馬

でしょう?貴女に似合う花を選んでいたら、春の花が多くなったんです

貴女は、私を照らしてくれる春の日差しのような人ですからね

サトコ

「う、嬉しいですけど大袈裟ですよ‥」

颯馬

フフ、これでも控えめに言ってるんですけどね

B: 嬉しいです

サトコ

「颯馬さんが選んでくれたお花、嬉しいです」

颯馬

そう言ってもらえると、私も選び甲斐がありますよ

けど、好みに合わない時はちゃんと言ってくださいね?

サトコ

「ふふっ、そんなことはあり得ませんけど‥わかりました」

C: 春らしくて、素敵です

サトコ

「春らしくて、素敵ですね」

颯馬

私としては、春よりも貴女をイメージして作ってもらった花束なんですよ

サトコ

「えっ、私‥?」

颯馬

はい。貴女は私にとって春のような存在ですから

サトコ

「あ、ありがとうございます‥」

(恥ずかしくて、お礼以外の言葉が浮かんでこない‥!)

サトコ

「あ、そうだ‥!」

「いつか結婚式をするときは、菜の花のブーケにしたいです」

颯馬

結婚式‥

(しまった‥!結婚式なんて、気が早かったよね)

つい、テンションが上がり気の早いことを口走ってしまった。

サトコ

「す、すみません‥!さすがに気が早いですよね‥」

(結婚を意識してる重い女って思われたらどうしよう‥)

颯馬

フフ、そんなに不安そうな顔をしないでください

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少し驚いただけです‥そんな風に貴女が思ってくれたこと、すごく嬉しいんですよ

サトコ

「颯馬さん‥」

颯馬

いつか、私たちが使用するブーケの花は、菜の花にしましょう

貴女の提案に、私も大賛成ですよ

私の頬を撫でながら、颯馬さんは優しく微笑んでくる。

颯馬

けど、白いバラも可憐なサトコさんにピッタリだと思いますよ

サトコ

「可憐!?」

「いやいや、私に可憐なんて言葉は似合いませんって‥!」

颯馬

そうでしょうか?私からすれば、十分可憐な女性だと思うんですが‥

(うう、今日はずっと照れさせられてる‥)

私も颯馬さんを照れさせたいと思うのに、そう言った面ではあまり隙を見せてくれない。

颯馬

‥‥‥

サトコ

「‥‥‥」

気恥ずかしさで俯いていると、ふと沈黙が訪れる。

(あ、今なら‥)

私は背伸びをして、想いっ切って颯馬さんにキスをしてみた。

颯馬

‥っ、サトコ、さん!?

サトコ

「きょ、今日はずっと颯馬さんにドキドキさせられていたので‥お返し、です」

颯馬

‥‥‥

すると、颯馬さんは私を強く抱きしめる。

サトコ

「‥っ、ん、ぅ‥」

私が彼にしたキスとは比べものにならない、熱く激しい口づけが落とされた。

颯馬

今日の貴女は可愛すぎて、私も色々と我慢していたんですが‥

どうやらスイッチが入ってしまったようです

サトコ

「‥っ!?」

颯馬

サトコのせいだよ

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サトコ

「あっ‥」

耳元で囁かれ、ぞくりと何かが背筋を駆け上る。

颯馬

実は、ホテルの予約してあるんです

「‥私のスイッチを入れたこと、ちゃんと責任取ってもらいますよ?

サトコ

「‥は、い‥」

(結局、ドキドキのお返しが倍以上になって戻ってきた気がする‥)

差し出された手に自分の手を重ね、私たちは夜の海辺を後にしたのだった‥

【ホテル】

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サトコ

「‥ん」

沈んでいた意識が戻り、部屋の中を見渡してみる。

すると、脱ぎ散らかされた服が視界に入ってきた。

(そ、そうだ‥私あの後颯馬さんと‥)

思い出せば恥ずかしくなり、自然と頬に熱が集まってくる。

颯馬

フフ、やっと起きてくれましたね

私の髪を撫でながら、颯馬さんが話しかけてきた。

サトコ

「‥あ、す、すみません。今日もまた先に寝てしまって‥」

颯馬

いいんですよ。貴女の寝顔を見られるのは、私だけの特権なんですから

それに、寝入ってしまうほど私に心を許してくれている証拠でしょう?

サトコ

「それは、はい‥」

颯馬

今日は、貴女が私のことをどれだけ好きかということを知れました‥

‥砂浜に『好き』と書いてしまうほど、私が好きなんですよね?フフ

サトコ

「‥えっ!?」

まさか見られていたとは思わず、少し大きな声を出してしまう。

颯馬

私が見ていなかったとでも‥?

サトコ

「‥‥‥」

恥ずかしさで颯馬さんの顔を上手く見られない。

すると、そんな私の顔を颯馬さんの両手が包んできた。

颯馬

‥大好きだよ。俺の方がずっと

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サトコ

「颯馬、さん‥」

颯馬

今日はずっとこうしていたい、いい?

サトコ

「はい、私も‥こうしていたいです」

颯馬さんの逞しい胸板に頬を摺り寄せると、再び熱いキスが落とされた。

(これからもずっとずっと、颯馬さんと一緒にいられたらいいな‥)

颯馬さんの腕に抱きしめられながら、私はそんなことを考えていた‥

Happy  End

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