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キスしてうつして 石神 1話

【石神 マンション】

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サトコ

「いきなり来ちゃったけど‥迷惑だったかな?」

(でも、心配だし‥)

石神さんのマンションを見上げながら、食材とプリンが入ったスーパーの袋をギュッと握りしめる。

【教官室】

難波

石神なら、今日は帰ったぞ

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サトコ

「えっ、そうなんですか?」

(石神さんがこんなに早く帰るなんて、珍しいな)

サトコ

「ありがとうございます」

室長に頭を下げ、教官室を後にする。

【廊下】

(昼は何も言ってなかったけど、急な予定でも入ったのかな?)

疑問に思い、石神さんにメールを送る。

すると‥

サトコ

「わっ、もう返信が来た」

「えっと‥」

石神

『今日は大丈夫だ。お前も早くカレー』

(早く‥カレー?)

(帰れって打とうとしたのかな?)

(石神さんがこんな誤字をするなんて‥)

珍しい誤字に頬が緩むも、ふと疑問が残る。

(そういえば‥今日の石神さん、どこかおかしかったよね?)

(昼間だって、いつもならお説教が始まるのに何も言われなかったし‥)

後藤

氷川

サトコ

「あ、後藤教官、どうかしましたか?」

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後藤

石神さんの容体はどうだ?

サトコ

「容体、ですか?」

後藤

ああ。かなり具合が悪そうだったが‥

サトコ

「えっ‥」

(石神さん、体調崩してたの!?)

後藤教官の言葉に、目を丸くする。

後藤

‥知らなかったのか?

サトコ

「はい‥」

(なんで気付けなかったんだろう)

(石神さんの様子がおかしいって、思ってたのに‥)

後藤

まあ、石神さんも氷川に心配かけたくなかったんだろう

風邪が流行ってるからな。氷川も気をつけろ

サトコ

「はい‥」

【石神 マンション】

(石神さんに何かしたいって、勢いで来ちゃったけど‥)

いきなり訪ねていいのか‥不安が頭を覗かせる。

サトコ

「‥ん?メール?」

携帯が着信を告げ、受信ボックスを開く。

石神

『さっさと上にあがって来い』

サトコ

「上って‥」

顔を上げ、石神さんの部屋を見ると‥

(石神さん!?)

ベランダにいる石神さんと目が合った。

(体調が悪いんじゃ‥と、とにかく、急いで行かなきゃ!)

【リビング】

サトコ

「お邪魔します」

石神

ああ

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私を出迎える石神さんの頬は、ほんのり赤く染まっていた。

石神

来るなら連絡くらいしろ。もし俺が出かけていたらどうするんだ

サトコ

「すみません‥」

「でも、なんで私が来ること知ってたんですか?」

石神

後藤から連絡がきた。お前に俺のことを伝えてしまった、とな

サトコ

「そうだったんですね」

(だから、ベランダにいたんだ‥)

サトコ

「あの、体調は大丈夫ですか?」

石神

問題ない

サトコ

「だけど、顔が赤いですよ?熱があるんじゃ‥」

石神

‥これくらい、寝れば治る。お前はさっさと帰れ

サトコ

「石神さん‥」

(石神さんに何かできたらって、思ったけど‥)

サトコ

「‥ご迷惑でしたか?」

石神

‥‥‥

石神さんは小さくため息をついて、ゆっくりと口を開く。

石神

‥ああ。今日はゆっくり休みたいんだ

お前がいたら、それもできないだろう?

(‥あれ?)

(言葉はキツイけど‥)

石神さんの瞳は、わずかに揺らいでいた。

(もしかして、石神さんは‥)

サトコ

「私のこと、心配してくれてるんですか?」

「風邪がうつらないようにって」

石神

‥‥

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石神さんは頬の色を濃くして、気まずそうに視線を逸らす。

石神

‥いいから、さっさと帰れ

石神さんの不器用な優しさが、胸を締め付ける。

<選択してください>

A: 石神の手を握る

サトコ

「石神さん‥」

両手で包み込むように、石神さんの手を握る。

石神

‥あまり俺に近付くな

サトコ

「ふふ、これくらいなら大丈夫ですよ」

「心配してくれて‥ありがとうございます」

石神

‥‥

石神さんは薄い笑みを浮かべて、空いている方の手で私の頬を優しくなでた。

(そういえば‥前に私が倒れたとき、石神さんが看病してくれたんだよね)

(今度は、私が石神さんを看病したい‥)

B: うつされてもいい

サトコ

「石神さんになら‥うつされてもいいです」

石神

‥何?

石神さんの眉が、ピクリと跳ねる。

石神

公安たる者、体調管理も仕事の内だ。それなのに、お前は‥

サトコ

「じょ、冗談です!ほら、ものの例えといいますか‥」

石神

なんの例えだ

サトコ

「そ、それはですね‥」

石神

‥サトコ

私の頭に、ポンッと石神さんの手が乗せられる。

石神

お前の気持ちはありがたい

だが‥俺の気持ちもわかってほしい

サトコ

「石神さん‥」

(石神さんって、本当に優しいな‥)

(でも、私は‥)

私は頭に乗せられた手を取り、ニッコリと微笑む。

C: 優しいですね

サトコ

「石神さんって‥すごく優しいですよね」

石神

‥俺が嫌な思いをしたくないだけだ

サトコ

「嫌な思い、ですか?」

石神

‥‥

石神さんはどこか言いづらそうに、視線を漂わせる。

石神

お前が辛そうにしているところを見たくない‥それだけだ

サトコ

「石神さん‥」

石神さんの言葉が、胸を打つ。

(今辛いのは石神さんなのに‥)

熱いものが込み上げるも、グッと堪えながら満面の笑みを浮かべる。

サトコ

「大丈夫です!うつらないように対策はしますので」

私はスーパーの袋から、ウエットマスクとうがい薬を取り出す。

サトコ

「ほら!これさえあれば、完璧です!」

石神

お前な‥

呆れたようにため息をつき、フッと笑みを浮かべる。

石神

何を言っても無駄、か

サトコ

「はい!いくら石神さんがダメだと言っても、勝手に看病しちゃいますから」

「あ、ご飯は食べましたか?」

石神

いや、まだだ

サトコ

「それじゃあ、これから用意しますね」

「その間、石神さんは寝ててください」

石神

ああ

石神さんが寝室へ行くのを確認すると、キッチンに立つ。

(お粥もいいけど、もう少し栄養がつきそうなものがいいし‥)

サトコ

「えっと、風邪に効く料理は‥」

携帯で調べながら、ご飯の準備をする。

【キッチン】

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サトコ

「‥ん、我ながらいい出来かも」

(あとは、野菜がクタクタになるまで煮込んで‥)

サトコ

「出来上がるまでもうちょっと時間かかるし‥石神さんの様子、見に行ってこようかな」

【寝室】

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サトコ

「失礼しまーす‥」

石神

‥‥‥

音を立てないように部屋に入り、ベッドのそばに行く。

石神

っ‥

石神さんは汗をかきながら、辛そうに眠っていた。

(口には出さなかったけど、よっぽど辛かったんじゃ‥)

私は一度部屋を出ると、冷やしタオルを用意する。

(少しでも楽になればいいんだけど‥)

石神さんのおでこに、冷えたタオルをそっと乗せる。

石神

‥ん

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サトコ

「あ、すみません。起こしちゃいましたね」

石神

いや‥大丈夫だ

サトコ

「ご飯、食べられそうですか?」

石神

ああ

サトコ

「ちょっと待ってくださいね。今持ってきますから」

サトコ

「お待たせしました」

野菜がたっぷり入った雑炊を、お茶碗によそう。

そして何度か息を吹きかけて熱を冷ますと、レンゲを石神さんの口元へ運んだ。

サトコ

「はい、あーん‥」

石神

‥大丈夫だ。自分で食べられる

石神さんはふいっと、顔を背けてしまう。

サトコ

「ダメですよ。今日はとことん看病するって決めたんですから」

石神

しかし‥

サトコ

「こういうときくらい、甘えてください」

「これでも私は、石神さんの彼女なんですから!」

石神

サトコ‥

石神さんは観念したように、私の名前を呼ぶ。

石神

‥わかった。今日ばかりはお前の好意に甘える

サトコ

「はい、任せてください!」

ドーンと胸を叩くと、石神さんはくすりと笑みを漏らした。

サトコ

「それでは、気を取り直して‥あーん」

石神

‥あーん

石神さんの口元にレンゲを運ぶと、ぱくりと口にする。

石神

‥ん、美味い

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サトコ

「ふふ、よかったです。どんどん食べてくださいね」

石神

ああ

石神さんは時間をかけながらも、綺麗に雑炊を平らげる。

石神

ごちそうさま。ありがとな

サトコ

「どういたしましてです」

「薬があるので、飲んで‥‥‥」

石神

‥サトコ

サトコ

「?」

申し訳なさそうに口を開く石神さんに、首を傾げる。

石神

すまない。いつもお前には自己管理が足りないと言っているのに‥情けないな

サトコ

「あんなに風邪が流行ってるなら、しょうがないですよ」

「それに‥こういうときにしか石神さんに頼ってもらえないので、私は嬉しいです」

石神

そうか‥

石神さんは私の手を取り、指を絡める。

石神

それなら、今日はとことん甘えさせてもらうぞ

サトコ

「はい!」

手を握り返し、私は笑みを返す。

サトコ

「あ、それでお薬なんですが‥食後30分以内なので今飲んじゃってください」

石神

それは錠剤か?

サトコ

「粉薬です。店員さんに聞いたら、これを勧められて‥」

石神

‥‥‥

サトコ

「石神さん?」

石神

粉薬は苦手だ‥

サトコ

「へ‥?」

石神

‥‥‥

石神さんは嫌そうな顔をしながら、私の手元にある薬を見ている。

(甘党だから、苦い薬が苦手なのかな?)

サトコ

「でも、薬はこれしかありませんし‥」

石神

飲まなくても問題ない

サトコ

「そんなこと言ってたら、治りが遅くなっちゃいますよ?」

石神

寝ればすぐ治る

サトコ

「もう‥」

(子どもみたい‥なんて、本人には言えないけど)

石神さんの可愛い一面に、頬が緩む。

(でも‥苦手なのはわかるけど、薬は飲まなきゃいけないし‥)

<選択してください>

A: プリンで釣る

(‥そうだ!)

サトコ

「そういえば‥駅前のお店でプリンを買ってきたんです」

石神

何‥?

『プリン』と聞いて、石神さんの耳がピクリと反応する。

サトコ

「しかも、新作のプリンです」

「風邪が治ったら一緒に食べようと思ってたんですが‥」

石神

プリンを出すとは‥汚いな

石神さんは眉間にシワを寄せながら、薬に手を伸ばす。

石神

っ‥

苦味に耐えているのか、眉間のシワを深くしながら、薬を飲みきった。

(ふふ‥石神さん可愛いな)

B: 口移しで飲ませる

(こうなったら‥)

私は薬と水を口に含むと、石神さんの両頬に手を添えて‥

石神

っ‥

口移しで、薬を飲ませた。

石神

サトコ、何を‥

サトコ

「だ、だって‥こうでもしなきゃ、飲んでくれないと思ったので‥」

自分でも大胆なことをしたと思い、頬に熱が上がる。

石神

‥‥‥

石神さんは耳まで赤くなりながら、手の甲で口元を押さえていた。

C: 無理やり飲ませる

(早く風邪を治すためにも、ここは心を鬼にして‥)

私は薬をコップに入れて、水に溶かすと‥

サトコ

「石神さん、覚悟ーっ!」

石神

なっ‥!?

片手にコップを持ち、もう一方の手は石神さんの肩を捕える。

そして、石神さんの口元にコップを近づけ‥

石神

っ、待て!

分かった、飲めばいいんだろう

サトコ

「あっ‥」

石神さんは私の手からコップを取ると、薬を一気に飲み干した。

石神

っ、苦‥

まさかこうまでして飲ませようとするとは‥

サトコ

「す、すみません!とにかく飲ませなきゃって思って‥」

石神

別に怒ってはいない

ただ‥お前らしいと思ったんだ

苦笑いする石神さんに、顔を赤らめながら小さくなる。

(うぅ‥自分からしたこととはいえ、いたたまれない‥)

(と、とにかく!気を取り直して‥)

サトコ

「薬も飲んだことですし、ゆっくり寝てくださいね?」

しばらくして、片づけをしにキッチンへ向かおうとすると‥

石神

‥待て

石神さんは、私の腕をギュッと掴んだ。

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