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キスしてうつして 加賀 1話

【廊下】

教官室に加賀さんがいないことを確認すると、ひとまず廊下に出た。

(もしかして、室長のお使いでDOSSを買いに行ってるのかも)

(加賀さんの指示がないと、何を手伝っていいかわからないし‥いったん、教場に戻ろう)

廊下を歩いていると、途中のモニタールームから東雲教官が出て来た。

サトコ

「東雲教官、加賀教官知りませんか?」

東雲

は?

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サトコ

「え?」

東雲

聞いてないの?兵吾さん、体調不良で早退したけど

サトコ

「体調不良‥」

「‥体調不良!?た、体調不良‥!?」

東雲

何回言うの

サトコ

「だ、だって‥あの加賀教官が早退なんて」

東雲

そうだねー。初めてかもね

まあ、何日か前からその兆候はあったけど

サトコ

「え?」

東雲

たまに咳してたし、声もだんだんおかしくなってたし

今日なんて、ちょっとフラついてたでしょ。本人は隠してたけど

サトコ

「あ‥」

(じゃあ、さっきの‥勘違いじゃなかったんだ)

(最近は忙しくて、あんまり話す時間もなくて‥何も聞かされてなかった)

東雲

弱みは見せないタイプだからねー。ほんと、めんどくさい

サトコ

「え?」

東雲

兵吾さんも石神さんも、颯馬さんも

具合悪いなら悪いって、素直に言えばいいのに

東雲教官の言葉から察するに、どうやら3人とも体調不良だったらしい。

(なんとなく様子がおかしいって思ったの、勘違いじゃなかったんだ)

(あっ、だから東雲教官、加湿器ふたつも使ってたのかも)

東雲

何?

サトコ

「いえ‥『女子か!』って思ってすみませんでした」

東雲

まあ、キミがなんのこと言ってるのかはだいたい分かるけど

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(分かるの!?今の会話で!?)

(東雲教官って、私の頭の中にICレコーダーとか仕掛けてそう‥)

サトコ

「そういえば、大量の栄養ドリンクがデスクに置いてありましたよね」

東雲

あれで乗り切れると思うとか、兵吾さんらしいけどね

まあ、あとはオレの管轄じゃないから

ひらひらと手を挙げて、東雲教官が教官室の方へ歩いて行く。

(加賀さんが早退するなんて、相当具合が悪いんだろうな)

(ちゃんとご飯食べて、薬飲んでるといいけど‥)

【スーパー】

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何度か加賀さんに連絡してみたけど、返事はなく‥

室長や石神教官に頼まれた雑用を終えると、学校を出てスーパーにやってきた。

(加賀さんのことだから、絶対に自炊はしないだろうし)

(栄養ドリンクだけじゃ、身体にもよくないよね)

ネットで、風邪を引いた時に食べやすいお粥レシピを検索する。

それを見ながら、カゴに材料を入れていった。

(うーん、でももしかしたら、お粥も食べられないかもしれない‥)

(万が一の時のために、ゼリーとか買っていこう)

でも最近風邪が流行っているせいか、ゼリーコーナーにはひとつも商品がない。

(とにかく、食べられるものならなんでもいいよね)

(ゼリーがダメなら‥風邪のときには、プリン!)

加賀

眼鏡プリン野郎が

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石神プリンは黙ってろ

テメェの脳みそカラメルソースでできてんじゃねぇのか

(うっ‥今までの加賀さんの、石神教官への暴言の数々が‥!)

(いや、でも背に腹は代えられない‥プリンは卵と牛乳でできていて、栄養価が高い!)

サトコ

「‥せめて、カラメルソースがついてないやつにしよう」

柔らかくて滑らかな舌触りのプリンを選び、会計を済ませてスーパーを出た。

【商店街】

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スーパーから出ると、加賀さんから着信が入った。

サトコ

「はい、氷川です!」

加賀

うるせぇ

サトコ

「すみません‥」

いつものやり取りの後、加賀さんが電話の向こうで微かに笑った気配がした。

加賀

‥クズが

サトコ

「はい‥」

(いつもの加賀さんの声だ‥そんなに心配することなかったのかな)

サトコ

「加賀さん、もしよかったら、これから‥」

ガタン!

サトコ

「!」

加賀

‥なんだ

サトコ

「だ、大丈夫ですか!?」

加賀

なんでもねぇ

(嘘だ‥!きっと今、よろけたんだ!)

サトコ

「これからそっちにお邪魔します!加賀さんは寝ててください!」

加賀

おい‥

急いで電話を切ると、加賀さんのマンションへと走り出した。

【加賀 マンション】

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電話しておいたおかげか、加賀さんの部屋の鍵は開いていた。

リビングに駆け込むと、ソファに横になっている加賀さんの姿を見つける。

<選択してください>

A: 駆け寄る

急いでソファに駆け寄ると、加賀さんの顔を覗き込む。

サトコ

「加賀さん、大丈夫ですか!?」

加賀

喚くな

サトコ

「で、でも‥早退したって聞いて」

加賀

他の奴にうつすと面倒だから帰って来ただけだ

今日はもう、急ぎの仕事もねぇ

B: 様子を見る

(もしかして、寝てる‥?だったら、起こさない方がいいかも)

加賀

何コソコソしてやがる

サトコ

「ヒッ!」

「あ‥起きてたんですか」

加賀

チッ‥声かけたくらいでビクビクしやがって

(だって加賀さん、風邪ひいてるせいか、いつも以上に声にドスがきいてて‥)

C: 声をかける

サトコ

「か、加賀さん‥?」

恐る恐る声をかけると、加賀さんが微かに身じろぎする。

加賀

駄犬か‥

サトコ

「はい‥お邪魔します」

加賀

‥何しに来た

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サトコ

「急にすみません。どうしても気になって」

「もしかして倒れてるんじゃないかと思ってたから、ホッとしました」

加賀

体調不良くらいで、騒ぎやがって‥テメェは大げさすぎる

サトコ

「だって、加賀さんが早退なんて異常事態ですよ」

「とにかく、ソファじゃなくてベッドに寝ませんか?」

加賀

‥チッ

珍しく素直に、加賀さんがソファから起き上ってベッドへ向かう。

(もっと文句言われるとか、『駄犬が生意気だ』って怒られるかと思ったのに)

(もしかして、見た目以上に具合が悪いのかも‥)

なんだか不安になり、急いで加賀さんを追いかけた。

【寝室】

加賀さんは、寝室ですでに横になっていた。

サトコ

「大丈夫ですか?薬は飲んで‥」

加賀

ねぇ

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サトコ

「ですよね‥」

「えーと、それじゃ‥ごはんは、食べて‥」

加賀

ねぇ

サトコ

「やっぱり‥」

「薬飲むためにも、何か食べた方がいいですよ。すぐにお粥を作りますから」

キッチンに向かおうとした私の腕をつかみ、加賀さんがそのまま、ベッドに引きずり込む。

サトコ

「え!?」

加賀

黙ってろ

サトコ

「で、でも‥!」

(加賀さん、風邪ひいてるのに!)

必死に身をよじって、抵抗しようと頑張ってみる。

でもベッドの中できつく抱きしめられて、身動きが取れなくなった。

サトコ

「ダメです、加賀さん‥!風邪が悪化しちゃいます!」

「こ、こういうことは風邪が治ってから‥!」

加賀

なに発情してんだ

サトコ

「は、発情!?」

加賀

何もしねぇ。動くな

テメェがクスリ代わりだ。ここにいろ

加賀さんにそう言われると、抵抗しようという気も薄れてしまう。

言われた通り大人しくしていると、服越しに加賀さんの体温が伝わってきた。

(熱い‥熱が高いのかも)

(そうだよね‥加賀さんが早退するなんて、相当具合が悪いはずだし)

そっと背中に手を回して、加賀さんを抱きしめた。

そのうち、静かな寝息が聞こえて来た。

(寝たみたい‥今のうちに、お粥作ってこよう)

加賀さんを起こさないようにベッドから起きだして、キッチンへ向かった。

【リビング】

お粥を作り終えて、加賀さんの部屋に持っていく準備をする。

でも、突然後ろから後頭部を掴まれた。

サトコ

「ぎゃっ!」

加賀

テメェ‥

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サトコ

「か、加賀さん!起きて大丈夫ですか!?」

加賀

他人のことより、テメェの心配をしやがれ

勝手に姿を消すとは、野良犬になりてぇらしいな

サトコ

「痛い!加賀さん、へこむ!頭が陥没します!」

必死の訴えに、なんと加賀さんは逆に手の力を強めた。

(こっ、殺される‥!?)

加賀

テメェはさっきまで、俺の抱き枕だったはずだ

枕が歩いていなくなるとは、驚きだな

サトコ

「す、すみません‥お粥を作ろうと思ったんです!」

加賀

余計なことしやがって

ようやく手を緩められて、ホッとため息が漏れる。

舌打ちする加賀さんと一緒に、お粥を持ってソファに座った。

サトコ

「熱いので、気を付けてくださいね」

加賀

‥‥‥

土鍋のフタを開けると、湯気が視界を満たしていく。

でもなぜかお粥を見た瞬間、加賀さんが眉をしかめた気がした。

サトコ

「あの‥加賀さん?食べないんですか?」

加賀

どういうことだ

サトコ

「な、何が‥」

加賀

この中に入ってるのは何なのか、説明してみろ

実は栄養のバランスを考えて、お粥に細かく切った野菜を入れていた。

サトコ

「に、人参とほうれん草と、あと椎茸も入ってます‥」

加賀

‥で?

サトコ

「はい?」

加賀

これは、テメェが食うのか?

<選択してください>

A: もちろん加賀さんのです

サトコ

「いえ、もちろん加賀さんのですよ」

加賀

‥‥‥

(うっ‥怒りオーラが濃くなった‥!)

サトコ

「嫌なのは分かります‥!でも、野菜もちゃんととらないと」

B: 野菜を食べてください

サトコ

「お願いです、野菜を食べてください!」

加賀

必要ねぇ

サトコ

「野菜は身体に絶対必要な栄養素ですよ!」

加賀

食わなくても生きていける

(なんか、前にもこういう会話をしたような‥)

サトコ

「と、とにかくこのままじゃダメです!」

C: 好き嫌いしないで

サトコ

「もう、子どもじゃないんだから好き嫌いしないでください」

加賀

‥‥‥

(しまった‥!調子に乗りすぎた!)

サトコ

「あ、あの‥今のはですね。加賀さんを心配するあまり!」

加賀

なるほどな‥

(ダメだ、完全に怒ってる‥!)

サトコ

「どっちにしても、栄養ドリンクに頼るなんてよくないです!」

サトコ

「いつまでも、風邪が治りませんよ!」

加賀

黙れ。よけろ

サトコ

「よけろって」

加賀

そのオレンジと緑と茶色のもんだ

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(それって、人参とほうれん草と椎茸のこと?)

(この細かく刻んだ野菜たちを、よけろと!?)

サトコ

「さすがにそれは無理です!」

加賀

なら食わねぇ

サトコ

「でも、こういう時だからこそ野菜を食べるべきです」

「一人で食べられないなら、食べさせてあげますから‥!」

レンゲにお粥を掬い、加賀さんの口元に持っていく。

すると、加賀さんの眉間のシワがさらに濃くなった。

加賀

‥正気か?

サトコ

「うう‥『あーん』でそこまで言わなくても」

「でも、お願いします‥加賀さんに、早く良くなって欲しいんです」

加賀

‥‥‥

サトコ

「こういう時くらいは、甘えてください‥頼ってください」

「私だって、加賀さんの彼女として支えたいんです‥!」

加賀

ほう‥

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最後の私の言葉を聞くと、なぜか加賀さんが意味深にニヤリと口の端を持ち上げた‥

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