カテゴリー

放課後 難波2話

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-008

【帰り道】

いつものラーメン屋台でラーメンとビールを楽しんだ帰り。

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-009

サトコ

「室長、今日は結構飲みましたね」

難波

そうか~?いつもこんなもんだ

(絶対、いつもより飲んでると思う)

その証拠に、いささかその足元がおぼつかない。

(これは寮監室までついて行った方がいいかな)

(前みたいに途中で寝たら、それこそ腰が‥)

難波

どうした?人の顔をじっと見て

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-010

サトコ

「い、いえ‥」

難波

そんな顔しなくても、ちゃんと寮まで送ってやるって

サトコ

「はあ‥」

(どっちかっていうと送りたいのは私の方なんだけど‥)

難波

気のない返事だな~。送ってもらうだけじゃ物足りないか?

サトコ

「え?」

難波

けど、酔っ払ってるとこに送りオオカミになるってのもな~

サトコ

「だ、誰もそんなこと言ってません」

難波

そうだ、いいことを思いついたぞ

サトコ

「何ですか?」

難波

俺が学校に行くから、ひよっこも来い

サトコ

「学校?別に構いませんけど‥」

鼻歌を歌いながら歩く室長の半歩後ろを歩いて行く。

(学校に戻るって、まだ仕事残ってたのかな?)

(この状態で仕事ができるとも思えないけど‥)

【学校 プール】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-011

難波

ふぅ‥

サトコ

「ふぅって‥どうしてプールに?」

学校に戻った室長が向かった先は学校のプール。

明かりをつけて、室長はその水面を見ている。

難波

暑いだろ。今日

サトコ

「酔ってるせいじゃないですか?」

難波

そうか?水が気持ち良さそうだと思ったら、プールが思いついたんだよな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-012

室長はプールに近づいていく。

(まさか入るの!?)

サトコ

「室長、それはさすがに‥!」

酔っ払ってる今ならやりかねないと、私は慌てて走り寄る。

難波

ん?

サトコ

「わ!急に止まらないでください!」

難波

おい‥っ

走り出したが最後、止まることができずに室長にタックルをしてしまう。

プールに向かって大きく傾く室長の身体。

サトコ

「室長!」

バッシャーン!!

サトコ

「す、すみません!大丈夫ですか!?」

慌ててプールを覗き込むものの、浮かび上がってくる気配は一向にない。

(あれだけ酔ってたから、もしかして‥)

サトコ

「今、行きます!」

私は大きく息を吸い込むとプールに飛び込んだ。

【水中】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-013

(室長、どこですか!?)

(この辺りに落ちたと思ったのに‥)

潜りながら室長の姿を探すものの、見当たらない。

(“長野のカッパ” としては、絶対に助けてみせる!)

方向転換しようと脚に力を入れたとき、後ろからグイッと手を引っ張られた。

サトコ

「!?」

難波

‥‥‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-014

(室長!)

私の手をつかんでいるのは室長で、水の抵抗にも構わず引き寄せられる。

(無事でよかった!このまま一緒に上がれば‥)

室長とアイコンタクトをとろうとすると、私の両頬を室長の手が包む。

(え?)

瞬きをした次の瞬間には唇を塞がれていた。

サトコ

「んっ‥」

難波

‥‥‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-015

サトコ

「んー‥っ」

目だけで室長が笑うのが分かる。

(私が飛び込むのを待ってた?)

(‥にしても、苦しい!)

サトコ

「‥っ!」

キスの甘さに酔う余裕もない。

その胸を叩くと、やっとのことで室長が上へと泳ぎ出してくれた。

サトコ

「ぷはっ!」

難波

あー‥やっぱ空気は美味いな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-016

サトコ

「すみませんでした!私が突き落とすことになってしまって‥」

難波

ぼっちゃんを水に落として、ぼっちゃーん、ってな

サトコ

「‥‥‥」

(‥ダジャレ?)

難波

気にするな。ちょうど酔いも醒めた

びしょ濡れになった室長は先にプールサイドに上がる。

私は続いて上がろうとすると、目の前に大きな手が差し出された。

難波

ほれ

サトコ

「あ‥ありがとうございます」

その手を借りて上がろうとすると、私が思っているよりも引き上げる力が強かった。

サトコ

「わ!」

難波

おっと

(今度は室長の胸に飛び込むかたちに!)

傾いた私の身体をしっかりと受け止めてくれる。

難波

今日のひよっこは活きがいいなあ

サトコ

「す、すみません!なんかタイミングが合わないっていうか‥」

難波

タイミングはバッチリじゃないか?

サトコ

「え?」

難波

俺の胸に飛び込みたいってことだろ?いつでも大歓迎だ

笑う室長を見上げると、プールに落ちたせいで、いつも上げている前髪がおりている。

(なんか新鮮‥)

難波

どうした?

サトコ

「室長の前髪‥」

難波

ああ‥どうだ?前髪おろすと若く見えるか?

サトコ

「そうですね‥でも、いつもの方が室長っぽいです」

難波

そうか。ひよっこはいつもの俺が好きか~

サトコ

「そこまでは言ってませんけど」

難波

なんだ、違うのか?まあ、おっさんの髪型なんか興味ないか

サトコ

「そこであからさまに拗ねた顔しないでくださいよ」

難波

俺はサトコの髪型に興味あるけどな

サトコ

「え‥」

突然名前で呼ばれ、鼓動が跳ねる。

難波

そういう濡れ髪も色っぽい

室長の指が私の髪を後ろに流すように梳いていく。

サトコ

「‥っ」

その感触に肩を揺らすと、さらにぐっと抱き寄せられた。

難波

やっぱり、最近のひよっこはあなどれねえな

水の中の続き、するか

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-017

濡れて冷えた唇が押し当てられる。

それはすぐにお互いの体温に馴染み、熱を帯びていって。

(室長‥)

誰もいない学校のプール。

二人だけの秘密の時間は、まだまだ続く‥‥

Happy  End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする