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ヒミツの恋敵 加賀HE

【車内】

奥野さんに挨拶をした後、加賀さんの車に乗せられてやってきたのは、公安学校‥

ではなく、薄暗い森中だった。

サトコ

「学校に戻らなくていいんですか?」

加賀

いいから黙ってろ

‥ついたぞ

それだけ告げて、加賀さんが車から降りる。

慌てて助手席から降りて加賀さんを追いかけた。

【森】

車を降りると、そこには月明かりに輝く綺麗な湖が広がっていた。

サトコ

「すごい‥!見てください、湖に月が映ってますよ!」

加賀

ああ

サトコ

「こんなに素敵なところがあったんですね‥」

「でも、こんな遠くまで来ちゃったら帰るのが遅くなっちゃうんじゃ」

加賀

構わねぇ

サトコ

「だけど、学校に‥」

加賀

テメェはまだ、休暇中だ

サトコ

「えっ?」

加賀

怪我が完全に治ってねぇヤツに、仕事なんざさせられねぇだろ

月明かりの下、加賀さんが優しく微笑んだ気がして驚く。

加賀

‥たまにはいいだろ

サトコ

「‥ありがとうございます」

嬉しくて、目の前の幻想的な景色を眺める。

その美しさに見惚れていると、不意に加賀さんに呼びかけられた。

しかし‥

加賀

‥おい

サトコ

「え?」

振り向いた直後、思いきり顔面をつかまれる!

(あ、アイアンクロー!?久しぶり‥!)

(いや、懐かしんでる場合じゃない!)

サトコ

「な、なんですか‥!?」

加賀

‥テメェは、守られてるのが嫌だって?

サトコ

「え‥」

サトコ

『私は、守られてるだけじゃ嫌なんです』

思い出したのは、奥野さんに告げた言葉。

(あれ、聞かれてたの‥!?)

サトコ

「いえ、あれは、その‥!」

加賀

4分の1人前のくせに、偉くなったもんだな

サトコ

「4分の1人前‥!?半人前のさらに半分!?」

加賀

半人前だとでも思ってたのか

サトコ

「1人前ではないですけど、せめて半分くらいはあると思ってました‥」

ぎゅっと、加賀さんの手に力がこもる。

サトコ

「痛い!加賀さん、顔が変形します!」

加賀

テメェは、黙って俺に守られてりゃいいんだ

サトコ

「ち、ちが‥そういう意味で言ったんじゃなくて」

「もちろん、加賀さんに守ってもらえるのは嬉しいんですけど」

ようやく手の力が緩み、ホッと胸を撫で下ろす。

サトコ

「その‥守られてるばっかりじゃ、嫌だなって」

「私だって、加賀さんを守りたいんです‥どんな小さなことでも」

加賀

‥‥‥

私の決意に、加賀さんは少し驚いたように目を見張った。

でもすぐにいつもの不敵な笑みを浮かべて、腕を組む。

加賀

必要ねぇ

サトコ

「でも‥」

加賀

飼い犬に守ってもらう主人が、どこにいる

俺は必ず、どっちも守り通してやる

サトコ

「どっちも‥?」

加賀

テメェも‥仕事も、だ

加賀

もし目の前でテメェが死ぬかもしれねぇって時

テメェを見殺しにしてでも、刑事としての仕事を全うする

大事な女一人、守れねぇ

俺は‥無力だ

いつかの、夢で見た加賀さんの言葉を思い出した。

(あれはもしかして、夢じゃなくて‥)

(私が昏睡状態の時に、加賀さんがかけてくれた言葉なのかもしれない)

サトコ

「じゃあ、私も‥どっちも守ります」

加賀

何がだ

サトコ

「加賀さんのことも‥立派な刑事になりたい、自分の気持ちも」

「あと、加賀さんに恐ろしい尋問を受ける被疑者のこととか‥」

加賀

上等だ

クッと笑い、加賀さんは私の頭をくしゃくしゃに撫でた。

【車】

綺麗な景色を堪能して車に戻ると、加賀さんがハンドルを握る。

でもなぜか、なかなか車を出さない。

サトコ

「‥加賀さん?」

加賀

お前は‥俺といて、幸せか?

車内に響き渡ったのは、加賀さんの静かな声だった。

サトコ

「え‥?」

加賀

ここぞって時に、そばにいてやれねぇ

仕事を優先して、平気でテメェの前からいなくなる

‥そんな男でも、いいのか

ぽつりぽつりとこぼす加賀さんの言葉が、胸に染み渡る。

(こんなこと言う加賀さん、珍しい‥)

(でも‥私の心は、もうとっくに決まってる)

サトコ

「‥平気じゃないことは、知ってます」

加賀

‥‥‥

サトコ

「この前‥私が撃たれた時だって、残ってくれようとしてくれましたよね」

加賀

‥だが、結局他のヤツに任せた

サトコ

「加賀さん、あの時に言ってましたよね。一人の男である前に、刑事だって」

「私も、同じこと考えたんです」

前を見つめる加賀さんを、そっと抱きしめる。

サトコ

「私は、加賀さんのそばにいられるなら、平気です」

「それに、幸せになりたいから加賀さんと一緒にいる訳じゃないんです」

少し驚いたように、加賀さんが私を振り返る。

サトコ

「加賀さんといると、幸せになれるんです」

「他の誰でも、無理なんです。加賀さんとじゃなきゃ、幸せになれません」

加賀

‥‥‥

その瞬間、加賀さんが不敵に笑った。

そして、口を塞ぐようにキスされる。

サトコ

「っ‥‥」

加賀

‥言うじゃねぇか

サトコ

「か、加賀さ‥」

加賀さんは、私の顎を持ち上げる。

サトコ

「!」

加賀

俺を煽るとは、いい度胸だな

サトコ

「あ、煽ってな‥」

加賀

俺とじゃなきゃ、幸せになれねぇんだろ

なら、俺を満足させてみろ

サトコ

「ちょ、ちょっと待ってください‥!ここ車ですよ!?」

加賀

ああ゛?誰も見てねぇだろうが

サトコ

「そういう問題では‥」

加賀

黙れ

加賀さんが私のシートを倒して、強引に押し倒した。

何度も何度も、甘い口づけが落ちてくる。

次第に、加賀さんのペースに巻き込まれ頭がぼんやりし始める‥

加賀

‥‥‥

‥テメェは厄介だな

サトコ

「え‥」

加賀

俺にまで、ハニートラップ仕掛けてんじゃねぇ

サトコ

「し、仕掛けてな‥」

加賀さんが、さらに深く唇を合わせた。

その手がうごめき、スカートの裾から太ももを伝い、中へと差し入れられる。

サトコ

「!!!???」

加賀

‥もっと色気のある反応しろ

サトコ

「だっ‥」

肌をなぞられて、せり上がってくる快感に背中がしなった。

サトコ

「加賀っ‥さ‥」

加賀

飼い主にお預け食らわせやがって

やっぱりテメェにはまだ、躾が足りねぇな

サトコ

「っ‥‥」

必死に腕を伸ばすと、それに応えるように加賀さんが私に身を重ねる。

大好きなその温もりに、ゆっくりと目を閉じた。

【コテージ】

車を走らせて、加賀さんが予約してくれていたらしいコテージへとやってきた。

サトコ

「湖が見えるコテージなんて、素敵ですね」

加賀

重要なヒントを見つけた褒美だ

サトコ

「それって、山下部長のあのメモですか?」

加賀

ああ‥そばに、アイツがいたのは気に入らねぇが

(アイツって、奥野さんのことだよね)

サトコ

「前にも言いましたけど、奥野さんって加賀さんと似てますよね」

加賀

‥‥‥

サトコ

「仕事にストイックで、言葉は悪いけど実は優しくて」

「素直じゃないところとかも、すごくよく似て‥」

加賀

ほぅ‥そんなに黙らせてほしいか?

サトコ

「へっ?」

言葉通り、キスで口を塞がれベッドに押し倒された。

加賀

他の男の話をするとは、駄犬から捨て犬に格下げだな

サトコ

「ま、また捨てられるんですか!?」

「それに今のは、奥野さんの話をしたっていうよりは、加賀さんの‥」

加賀

‥‥‥

(睨まれた‥)

(しばらく、奥野さんの話は禁句にしておこう)

私に寄り添うように、加賀さんがベッドに横になる。

すると、加賀さんが優しく私の腕の傷に触れた。

サトコ

「っ‥‥」

加賀

‥痛むか?

サトコ

「い、いえ‥大丈夫です」

(そうじゃなくて、くすぐったくて‥)

なんとか笑顔を作ると、一瞬、加賀さんがつらそうな表情になる。

加賀

‥もう、誰にも傷つけさせねぇ

消え入りそうなほど小さな声でささやくと、加賀さんがそっと、私の傷跡にキスを落とした。

(私‥こんなに、加賀さんに大事にしてもらってる)

(それだけで、どんな事件にも危険にも、立ち向かっていける‥)

加賀

‥怪我が完全に治ったら、覚悟しとけ

サトコ

「‥はい」

優しく抱き留められて、胸に顔を埋めた。

(言葉は怖いけど、でもいつだって私のことを考えてくれてる)

(一番優先する仕事と天秤にかけるくらい、加賀さんが私を想ってくれてるなら‥)

そんな幸せなことはない。

加賀さんの温もりを感じながら、そう、心の中で繰り返した‥‥

Happy  End

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