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総選挙2016② 加賀 1話

【加賀 マンション】

連休だったその日は、朝から加賀さんの部屋にお邪魔していた。

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一緒に借りてきたDVDをセットして、ソファに座る。

サトコ

「楽しみですね。『KISS or KILL』!」

「映画館には観に行けなかったから、DVDになるのずっと待ってたんです」

加賀

スパイ映画か‥

映画が始まると、加賀さんの表情がどんどん険しくなっていくのがわかった。

サトコ

「か、加賀さん‥?」

加賀

つまらねぇ

サトコ

「そうですか?結構よくできてると思いますけど」

加賀

殺し屋って言ってんのに、しくじり過ぎだ

そもそも、この男はどの段階で女が殺し屋だって気づいたんだ

サトコ

「うーん‥偶然再会して恋人同士になったんですよね」

「仲間もいるみたいですから、結構最初の方に調べたんじゃ」

加賀

なら、もっとできることがあったはずだ

‥俺なら、こんなところでしくじらねぇな。相手の動きがまるで読めてねぇ

(あ‥もしかして、敵のボスに囲まれたこのシーン?)

(確かに、加賀さんだったらもっと事前に相手の動きを調べてそう‥)

私には純粋に楽しい映画でも、加賀さんにはツッコミどころが満載らしい。

(すごいな‥加賀さん、こういう映画は全然違う視点から観るんだ‥)

(‥職業病?)

クライマックスに近いシーンでは、主人公が身を挺して恋人を敵から守る。

恋人も一緒に戦う姿は、私が憧れるものだった。

(私も、加賀さんにこんなふうに守られてみたい‥)

(でも一緒に戦うのも素敵だな‥「足を引っ張るじゃねぇ」って言われそうだけど)

ラストに、甘いベッドシーンが流れる。

加賀さんの隣で見ていると、なんだかものすごく恥ずかしかった。

(こ、これはずいぶんと濃厚な‥)

(ここまでのベッドシーンは珍しいんじゃっ‥)

加賀

‥‥‥

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私の隣で、加賀さんは冷めた様子で映画を観ている。

やがてスタッフロールが流れ始めたので、加賀さんがテレビを消した。

加賀

時間の無駄だったな

サトコ

「面白くなかったですか?」

加賀

もうちょっと作り込んでるなら、観てやってもいいが

立ち上がり、キッチンの方へと消えていく。

(私は面白かったけど‥っていうか、さっきのベッドシーンが目に焼き付いてて)

(加賀さんのことだから、私たちもそういう雰囲気になるのかもってドキドキしちゃった‥!)

すっかり加賀さんの躾が染みついている自分に、少し恥ずかしくなるのだった。

その後、キッチンを借りてふたり分のコーヒーを淹れる。

加賀さんは冷蔵庫から大福を取り出して、ソファに戻ってきた。

加賀

くだらねぇ映画のせいで、気分が悪ぃ

サトコ

「大福を食べて気分を上げるんですか?」

加賀さんが持っているのは、期間限定のショコラ大福。

(あれって、確か朝イチで並ばないと買えないって言われてるんだよね)

(捜査の帰りとかに並んだのかな‥美味しそう‥)

じっと眺めていると、加賀さんが小さく舌打ちした。

加賀

‥欲しいならそう言え

加賀さんが、箱に入っていた大福を一つ、私に差し出してくれる。

お礼を言って受け取ろうとしたけど、ひょいっとかわされてしまった。

サトコ

「あっ、私のショコラ大福!」

加賀

テメェのじゃねぇ

タダでやるわけねぇだろ

サトコ

「な、何をすればいいんですか?」

加賀

言うことを聞くってんなら、くれてやってもいい

(加賀さんの言うことを聞く‥!?それはとても危険な賭けだ)

(でも‥ショコラ大福食べたい!)

サトコ

「言うことを聞きます!だからください!」

加賀

しょうがねぇな

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ようやく大福を手に入れて、加賀さんの隣に座って甘さを味わった。

サトコ

「んー、柔らかい!」

加賀

‥‥‥

サトコ

「加賀さんが買ってくるお菓子は、外れがないですね」

加賀

当然だ

大福を食べ終わると、加賀さんにソファに押し倒された。

サトコ

「え‥」

加賀

まだ足りねぇ

サトコ

「足りないって、何が‥」

加賀

テメェは、あの大福程度の柔らかさで満足したらしいがな

映画も駄作で、不完全燃焼だ

テメェで解消させる

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サトコ

「ぁっ‥」

悲鳴に近い私の声も、加賀さんの口づけにかき消される。

強引に舌で中をかき回されて、時折甘い声が零れる。

加賀

なんでも言うこと聞くんだろ

サトコ

「そ、そうですけどっ‥」

加賀

途中で音を上げるんじゃねぇ

(さっきの映画のキスシーンよりも、激しっ‥)

頭の上で両手を押さえつけられて、肌を攻められ、されるがままになってしまう。

身体中に感じる加賀さんの温もりに、自然と力が抜けていった‥‥

【学校 教場】

数日後、珍しく難波室長が教壇に立った。

難波

なんか、今日は実践形式の訓練をやるらしいぞ

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詳しいことはあとで石神から説明があるから、ちゃんと聞いとけ

(実践形式か‥講義も勉強になるけど、実践形式はさらに実務に役立ちそう!!)

難波

それと‥お前らに、言いたいことがあったような気がするんだけど

‥忘れたから、また思い出したら言うわ

首を捻りながら、室長がいつもの緩い雰囲気を醸し出しながら教場を出て行った。

(言いたいこと‥?なんだろう、気になるな)

(それにしても、室長は相変わらず適当だ‥)

そのあと、訓練のため、鳴子たちと一緒に教場を出て訓練所に移動を始めた。

【訓練所】

全員が揃うと、石神教官から今回の訓練の説明があった。

石神

今日は、ターゲットを確実に仕留める訓練を行う

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全員、後藤が配る風船を腰につけろ

後藤教官や颯馬教官が、私たちに小さな風船をくれた。

石神

それを、訓練用の銃で狙ってもらう

風船を割られた者は即失格。最後の一人になるまで行う

後藤

これまでの実践や講義の、総合的な訓練だ

俺と石神教官は、訓練所内に設置した監視カメラ映像で訓練の採点を行う

また今回はターゲットのレベルを上げるため、特別に加賀教官と成田教官にも加わってもらう

全員が振り返ると、加賀さんと成田教官が銃を持ってニヤニヤしている。

加賀

テメェら、最初に失格になった奴はどうなるかわかってんだろうな

成田

「気が緩んでいる証拠だからな。相応の罰を覚悟しておくがいい」

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千葉

「あのふたりが結託するなんて、珍しいね‥」

サトコ

「嵐の前触れじゃ‥きっと恐ろしいことが起きるよ‥」

鳴子

「絶対、最初に失格だけは免れなきゃ!」

不穏な空気に、自然とみんなの気が引き締まる。

(加賀さん、銃を持つと獲物を狩る獣の目になるからな‥)

(でも教官たちにこれまでの頑張りを見てほしいし、とにかくやるしかない!)

そうして、教官たちも交えた訓練がスタートした。

【訓練所】

(まずは、気配を消さないと‥風船も、風で揺れないようにしっかり固定して)

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(集中して‥周りに気を配りながら、気を緩めないようにして移動しなきゃ)

これまで学んできたことを活かしながら、壁から壁へ、通路から通路へと身を隠す。

その途中で、複数の銃声と、何人かの訓練生がやられていく声が聞こえてきた。

(こっちからは、下手に攻撃しなくていい。自分から居場所を知らせる必要はない‥)

(とにかく今は生き残って、最後のチャンスを狙おう)

移動する間に銃弾が飛んできて、風船を狙われる。

間一髪かわすと、物陰に隠れた。

(いま、私を撃ってきたのは‥?)

そっと確認すると、恰幅のいい男性が銃を構えながらこちらに歩いて来る。

それは、間違いなく‥

成田

「そこにいるのはわかっているぞ。お前に勝ち目はない」

(‥成田教官!)

(なんたる悪人っぷり‥!って、そういうことじゃなくて)

成田教官の風船は、完全にこちらからは死角になっていた。

狙うために移動すれば、その隙に撃たれるだろう。

(もう、ダメかもしれないっ‥)

(でも、最後まで諦めたくない!)

銃を構えて、成田教官の一瞬の隙を狙う。

でも突然の銃声が聞こえて、成田教官の風船が割れた。

(え‥!?)

成田

「クソッ‥誰だ、邪魔した奴は!」

悔しそうな成田教官の視線を追いかけると、そこに立っていたのは‥

(あれは、まさか‥!?)

to be continued

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