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総選挙2016②  加賀 カレ目線

【加賀のマンション】

ある週末。

サトコと一緒に『KISS or KILL』というスパイ映画のDVDを、観ることになった。

(評判がいいらしいが‥たいしたことねぇな)

サトコ

「面白くないですか?」

加賀

全体的に、設定が甘ぇ

こんなにしくじる殺し屋なんざ、すぐにお陀仏だろ

(俺なら、こんな穴だらけの作戦と取らねぇ)

(万が一、女が恋人を殺すことが出来ず、悩んだ挙句死にでもしたら‥)

チラリと、隣のサトコに視線を移す。

映画に夢中になっているのか、真剣な顔でテレビを見ていた。

(‥好きな女が死ぬ可能性が少しでもあるなら、オレはその作戦は使わねぇ)

(それなら、自分がくたばった方がマシだ)

やがて映画はクライマックスを迎え、主人公と恋人がベッドで絡み合う。

(ぬるいな)

(こんなガキみてぇな絡みの、何が‥)

面白いのか、という疑問は、真っ赤になってうつむいているサトコを見て消える。

あからさまに落ち着かない様子で、考えていることがダダ漏れだった。

(‥わかりやすすぎんだろ)

(よくこれで、刑事を目指そうとしたもんだな)

からかってやろうと思ったが、考え直して最後まで一緒に観てやった。

あえて何も言わず大福を取りに冷蔵庫へ向かうと、サトコは心なしか残念そうだった。

(‥期待してたってツラだな)

(そういう、物欲しそうな顔は悪くねぇ)

冷蔵庫から大福を取ってくると、ソファに座る。

続いて、サトコがふたり分のコーヒーを淹れて戻ってきた。

サトコ

「それって、限定のショコラ大福ですよね」

加賀

ああ

サトコ

「美味しそう‥」

(欲しいなら、素直に言え)

サトコに大福を差し出すと、嬉しそうに手を伸ばしてくる。

それをかわす俺に、唇を尖らせて拗ねてみせた。

サトコ

「私のショコラ大福が!」

加賀

テメェのじゃねぇだろ

サトコ

「ひと口くれると思ったのに、ひどいです!」

(そうやって、テメェはいつまでも俺に遊ばれてりゃいい)

(そうすりゃ、満足するまでかわいがってやる)

大福を食べ終えたサトコをソファに押し倒すと、その頬が一気に赤く染まった。

加賀

テメェは、大福よりも俺が欲しいんだろ

サトコ

「そ、そんな‥」

加賀

テメェの考えなんざ、お見通しだ

まだ反論しようとするサトコの口を、キスで塞いでやる。

味わうように中を求めると、服をめくって肌の柔らかさを愉しんだ。

(こいつの柔らかさだけは、やめられねぇ)

(大福なんかより、よっぽど俺を満足させる)

何度もサトコから『もう無理です』と懇願されたが、止めるつもりはない。

満たされるまで、サトコを抱き続けた。

【訓練所】

数日後、実戦形式の訓練を行うことになり、俺と成田も駆り出された。

(めんどくせぇ‥ガキ共なんざ相手にならねぇな)

予想通り、後ろがガラ空きだったり気配を消しきれていない訓練生ばかりだ。

容赦なく撃ちリタイアさせて、頭数を減らしていく。

加賀

チッ‥面白味もねぇ

あいつもとっくにやられてんだろうな

銃を装填しながら、辺りに注意しつつ歩く。

すると遠くで微かにサトコが動き、それを追って移動する成田の姿が見えた。

(ほう‥生き残ってたか)

(成田の野郎なんかに、あいつはやらせねぇ)

柱の陰に隠れて、成田を狙撃する。

悪態をつきながらも、成田はそそくさと逃げて行った。

サトコ

「加賀さん‥!助けてくれてありがとうございました」

(‥これだからこいつは、詰めが甘ぇんだ)

(どこの世界に、敵を助ける人間がいる?)

(クソ映画の見過ぎだ)

サトコを追い詰めて、わざと危機感を持つように見下ろした。

加賀

俺は、誰が相手だろうが隙を見せたら撃つ

そこに、上司も補佐官も関係ねぇ

サトコ

「‥‥‥!」

ハッとしたように、サトコが俺と距離を取って近くの壁に隠れた。

物陰を移動しながら、徐々に俺から離れていく。

(それでいい)

(油断したら、お前だろうが容赦はしねぇ)

それが、上司としてあいつに教えてやれることだった。

【学校】

その日の訓練が終わった後、廊下の向こうから難波さんが歩いてきた。

難波

おー、加賀。訓練お疲れさん

加賀

お疲れさまです

難波

明日、警視庁のお偉いさんが来るんだよ~。なんかあったらよろしくな

加賀

約束はできませんが

難波

そう言うなって。頼りにしてるぞ

俺の背中を叩き、難波さんが再び廊下を歩いていく。

だが何か思い出したように立ち止まり、俺を振り返った。

難波

そういや、資料室の掃除はお前の補佐官に頼んどいたからな

今日の仕事は、勘弁してやってくれ

(資料室の掃除か‥)

ため息をつき、資料室へと足を向けた。

【資料室】

資料室では、サトコがひとりでファイルの整理をしていた。

加賀

駄犬に相応しく、雑用か

サトコ

「加賀さん‥!お疲れさまです!」

「室長に頼まれたんです。明日、偉い人が来るからって」

加賀

頭を使えねぇテメェは、クズだな

サトコがキョトンとした表情で掃除の手を止めた。

加賀

バカ正直に一人でやるより、誰かに手伝ってもらえ

サトコ

「それも考えたんですけど‥鳴子も千葉さんも、訓練で疲れてるみたいだったので」

(そりゃ、テメェだって同じだろうが)

(‥どこまでお人好しなんだ)

ゆっくりと近づくと、身の危険を察知したのかサトコが後ずさる。

逃げられないようテーブルに手をつき、腕の中に閉じ込めた。

加賀

今日の訓練の仕置きが、まだだったな

サトコ

「あ、あれは‥確かに、不甲斐ない結果でしたけど」

加賀

わかってるなら、口答えしてんじゃねぇ

奥の資料棚へと、サトコと一緒にもつれ込む。

サトコの口からこぼれる甘い声を堪能していると、突然、資料室のドアが開いた。

サトコ

「!」

加賀

‥‥‥

(見回りか‥?だが、普段ならとっくに終わってる時間だが‥)

どうやら訓練が長引いていたせいで見回りも遅れたらしい。

加賀

チッ‥テメェらがちんたら訓練してるからだ

サトコ

「か、加賀さん‥!早く出て行かなきゃ!」

加賀

いいから黙ってろ

サトコを抱きかかえて、奥の本棚の陰に隠れる。

警備員

「電気、ついてるけど‥誰かいるのか?」

サトコ

「ば、バレちゃいますよ‥!」

加賀

喚くな

キスで、サトコを黙らせる。

警備員はしばらく見回ったあと、首を傾げながら出口に向かった。

警備員

「電気、消し忘れか。困るんだよなあ」

サトコ

「消された‥!」

加賀

あとで点けりゃいいだろ

警備員が出て行った音がして、サトコがホッとしながら出て行こうとする。

その腕を掴んで、きつく抱きしめた。

サトコ

「加賀さん‥?」

加賀

もう少し、ここでじっとしとけ

サトコ

「でも、掃除がまだ‥」

加賀

明日でいい

頬に触れて、その柔らかさを愉しむ。

警備員の足音が遠ざかった後も、しばらく離してやるつもりはなかった。

End

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