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総選挙2016公約達成 後藤2話

【大広間】

そら

「サトコちゃん、一緒に飲もう!」

私たちの前に座ったのは、グラスを持った末広さんと秋月さんだった。

2人は楽しそうにグラスを傾けている。

そら

「それにしても、まさかサトコちゃんたちに会うなんて思わなかったな」

サトコ

「ふふっ、そうですね」

そら

「こんな可愛い娘と一緒に温泉旅行なんて、スパイの手下も隅に置けないよな~」

サトコ

「スパイ‥?」

(そういえば、さっきもスパイって言ってたけど‥)

そら

「あっ、これは愛称みたいなもんだから」

サトコ

「そ、そうなんですね‥」

(‥スパイの手下が愛称って、すごいな)

(皆さんを見て、後藤さんは嫌そうにしてたけど‥)

思っているよりも、SPの皆さんと仲が良いのかもしれない。

(なんて言ったら、後藤さんは否定するだろうけど)

そら

「あー、サトコちゃんに会えて本当よかった!」

「サトコちゃんがいなかったら、男だけのむさ苦しい親睦会になるところだったよ」

海司

「本当だったら、あいつも来る予定だったんですけどね」

サトコ

「あいつ、ですか?」

海司

「オレの幼馴染ですよ。歳はサトコさんと同じくらいです」

サトコ

「秋月さんって幼馴染がいたんですね」

(私にも付き合いが長い友だちはいるけど‥幼馴染って響き、いいよね)

そら

「あっ、そうだ!」

「こうして会ったのも何かの縁だし、今度皆で遊びに行こうよ!」

海司

「いいですね!サトコさんは行きたいとこありますか?」

<選択してください>

A: 山に行ってキャンプがしたい

サトコ

「山に行ってキャンプがしたいです」

海司

「おっ、いいですね!」

サトコ

「せっかくですし、本格的なキャンプもいいですよね」

そら

「ふっふっふ‥何を隠そう」

「オレたちは桂木スペシャルを何度も経験してるからキャンプなんてお手の物だよ」

サトコ

「桂木スペシャル、ですか?」

海司

「桂木さんによる地獄の特訓のことです」

そら

「内容は‥想像にお任せするよ」

(ひ、広末さんが遠い目をしてる‥一体、どんな特訓なの?)

B: テーマパークに行きたい

サトコ

「テーマパークに行きたいです!」

「最近新しく出来た絶叫マシンがあるらしいんですが、一度乗ってみたいなって思ってたんです」

そら

「新しく出来たって‥あの世界一怖いってヤツ?」

海司

「サトコさんって、絶叫系が好きなんですね」

サトコ

「特別得意ってわけじゃないんですけど、テレビの特集を見て気になって」

そら

「へぇ、そうなんだ」

「‥オレ、大丈夫かな」

サトコ

「どうかしましたか?」

そら

「う、ううん!なんでもないよ」

C: 後藤に聞いてみる

サトコ

「後藤教官はどこに行きたいですか?」

後藤

は?

私の発言に、後藤さんが眉をひそめる。

後藤

俺も行くこと前提なのか?

サトコ

「もちろんです!大人数の方が楽しいと思いますし」

何より、楽しそうなことは後藤さんと共有したい気持ちが大きい。

後藤

‥分かった。俺も行く

私の気持ちを察したのか、後藤さんは微笑みながら私の頭にポンッと手を乗せた。

そら

「‥今の見た?」

海司

「見ました‥」

そら

「スパイの手下があんな顔するなんて‥槍でも降るんじゃない!?」

海司

「外に出ないようにしないとっすね」

そら

「ってか、こいつを手なずけるなんてサトコちゃんって何者!?」

サトコ

「え!?えっと‥」

そら

「サトコちゃんには、色々と聞かなきゃね!」

(ど、どうしてこんな展開に‥!?)

そら

「それじゃあさ‥」

そらさんをはじめ、賑やかなSPメンバーたちからどんどん話題が湧き上がってくる。

お酒が入っているせいもあるのか、話題で盛り上がっていった。

サトコ

「えっ!?秋月さんって、オリンピック候補だったんですか!?」

海司

「あくまでも候補ってだけですよ」

サトコ

「それでも充分すごいですよ!」

海司

「どうも‥」

秋月さんは視線を逸らしながら、薄らと頬を染める。

(SPの皆さんと話すのって、楽し‥‥)

サトコ

「っ‥」

後藤

どうした?

サトコ

「いえ‥」

(ちょっと飲み過ぎちゃったかな‥)

サトコ

「ちょっとお手洗いに行ってきますね」

酔いを醒ましに行こうと、立ち上がる。

(少し廊下で涼めば‥‥)

サトコ

「あっ」

足元がふらつき、バランスを崩してしまう。

(あ、危な‥‥)

海司

「‥‥っと、大丈夫ッスか?」

サトコ

「あ、秋月さん‥」

顔を上げると、目の前に秋月さんの顔があった。

サトコ

「すみません!ありがとうございます」

海司

「いえ‥」

そら

「海司~、なに照れてんだよ」

海司

「別に照れてなんて‥!」

そら

「そんなに顔赤くして、説得力ないって」

海司

「っ‥‥」

(え、えっと‥)

離れるタイミングを失ってしまい、視線を漂わせる。

そら

「なになに、海司ってばサトコちゃん狙い?」

海司

「そ、そういうわけじゃ‥」

そら

「気持ちは分かるよ。オレだって、サトコちゃんみたいな可愛い彼女欲しいし!」

サトコ

「ひ、広末さん!?何言ってるんですか‥!」

そら

「えー、だって話しやすいし気も利くし‥」

「サトコちゃんみたいな彼女がいたら、絶対に幸せだって」

サトコ

「!」

いきなりの褒め言葉に、顔が熱くなる。

後藤

‥お前ら、その辺にしておけ。氷川も困ってるだろ

海司

「そ、そうッスよね!」

後藤さんの指摘に、海司さんは慌てて私から離れる。

サトコ

「それじゃあ、私は行きますね」

(後藤さん、ありがとうございます‥!)

私は心の中でお礼を言いながら、この場を後にした。

【廊下】

サトコ

「ふぅ‥」

(少しここで休もう)

廊下にあるソファに座り、ひと息ついていると‥‥

桂木

「サトコさん、よかったらどうぞ」

サトコ

「あっ、桂木さん」

桂木さんが、水の入ったグラスを差し出してくれる。

桂木

「廊下に出て行くのが見えたので、もしかしたらと思いまして」

サトコ

「すみません‥お気遣いありがとうございます」

グラスを受け取り、水を口に含む。

桂木

「だいぶ飲まれていたようですが、大丈夫ですか?」

サトコ

「これくらいなら、少し休めば大丈夫です!」

桂木

「そうですか」

桂木さんは安心したように微笑む。

桂木

「そらも心配していたんですよ」

サトコ

「末広さんが、ですか?」

桂木

「ええ、調子に乗って飲ませすぎてしまったのではないかと言っていました」

(そうだったんだ)

(広末さんって、見た目は派手だけど心配してくれるし‥紳士的で優しいんだな)

桂木

「それでは、私は戻りますが‥」

「酔いが醒めたら、戻ってきてくださいね」

優しい笑みを浮かべたまま、桂木さんは私の頭にポンッと触れる。

(えっ!?)

大広間に戻る桂木さんの背中を、呆然と見送る。

サトコ

「び、ビックリした‥」

(桂木さんが頭をポンッて‥)

ふと、桂木さんのテーブル周りに置かれていた大量の空き瓶の量を思い出す。

(顔に出てないだけで、酔ってたのかな‥?)

【大広間】

「お前、どこ行ってたんだよ」

大広間に戻ると、一柳教官から声を掛けられる。

サトコ

「少し飲み過ぎたので、酔いを醒ましてました」

「ふーん‥」

返事をしながら、私のことをじっと見てくる。

サトコ

「な、なんですか‥?」

「馬子にも衣装だな」

サトコ

「なっ‥!」

「冗談だよ」

一柳教官は楽しそうに笑うと、ニヤリと口角を上げる。

「浴衣、よく似合ってる」

「後藤のところになんていないで、オレのとこへ来いよ」

サトコ

「へっ‥!?」

いきなり腕を掴まれたかと思うと、ぐいっと引かれる。

(もしかして、一柳教官まで酔ってる‥!?)

サトコ

「ちょっ、ちょっと待っ‥‥」

後藤

ふざけるな

サトコ

「あっ‥‥」

私を一柳教官から引き離そうと、後藤さんが割って入る。

後藤

こいつに手を出すなよ

「かっこつけてんじゃねぇよ」

後藤

お前がバカな真似をするからだろ

「パジャマ野郎にバカ呼ばわりされる筋合いはねぇな」

後藤

黙れ、ローズマリー

「黙れって言われて、黙る奴がいるか?」

「サトコ、こんな根暗な奴よりオレを選べよ。満足させてやるぜ?」

後藤

は?何を言って‥

「そうだな、例えば‥」

一柳教官は私をじっと見て、口元に笑みを浮かべる。

「オレならその浴衣もっと可愛くしてやれるし、料理だって美味いもんたくさん作ってやれる」

「こいつと違って掃除だって完璧だ」

「選ぶなら絶対オレだろ」

後藤

くっ、俺だって‥

「俺だって?」

後藤

っ‥

後藤さんは悔しそうに唇を噛み締めたかと思うと、一柳教官を真っ直ぐ見る。

後藤

何ができるかなんて関係ない

俺は教官としてサトコの傍にいてやることができる

一緒に歩んでいける

お前みたいなオレ様は時代錯誤なんだよ

「!?」

「寝言はパジャマ着てから言え!」

後藤

テメェが寝ろ!

サトコ

「‥‥‥」

『一緒に歩んでいける』その言葉に、

頬が緩みそうになるも、そんな甘い空気を払しょくする言葉の応酬。

そら

「おーっと、昴さんに分があると思いきや、まさかの切りかえし!」

瑞貴

「なかなかやりますね。今のでサトコさんの母性がくすぐられたんじゃないですか?」

海司

「2人ともすごいな‥」

サトコ

「!?」

(いつの間に‥!)

末広さんたちがお酒を片手に、見物人と化している。

後藤

お前はさっさと帰ってお庭でローズマリーでも育ててろ

「お前、ちょいちょいローズマリーをバカにしてるけど、あれはすげーんだぞ?」

「記憶力や集中力を高め、新陳代謝を良くして‥」

(ど、どうしよう。そろそろ止めた方がいいよね)

サトコ

「あ、あの!おふたりとも、その辺で‥」

「‥ってわけだ。分かったか?」

後藤

何をドヤ顔で語ってんだ

お前だってパジャマをバカにしているが、あれは‥

(話聞いてない!)

ヒートアップしているせいか、私の声が聞こえていないようだった。

(うぅ、どうしたらふたりを‥)

桂木

「お前ら、こんなところで止めないか」

サトコ

「か、桂木さん‥」

桂木

「そらたちも、何をしてるんだ」

そら

「だって、楽しそうだったんですもん」

桂木

「お前な‥」

「‥‥‥」

一柳教官は、渋々ながら私の手を離す。

「サトコ、オレのところに来たくなったらいつでも来いよ?」

そう言い残して、一柳教官はその場から去っていく。

桂木

「すみません。氷川さん」

サトコ

「いえ、私なら大丈夫ですから」

桂木

「そう言っていただけると、助かります」

「後藤も邪魔して悪かったな。あとは2人でゆっくりしてくれ」

桂木さんは申し訳なさそうに言って、私に視線を向ける。

桂木

「氷川さん、あいつらの相手をしてもらってありがとうございました」

「ウチは普段女っ気がないので」

「氷川さんみたいな素敵な人がいてテンションが上がってしまったのでしょう」

「それでは」

軽く会釈をして、桂木さんは皆のところへ戻っていく。

後藤

‥俺たちも行くか

サトコ

「はい」

私たちは大広間を後にし、自分たちへの部屋へ戻った。

【部屋】

サトコ

「窓、開けていいですか?」

後藤

ああ

部屋に戻り窓を開けると、心地よい夜風が頬を撫でた。

サトコ

「気持ちいいですね」

後藤

そうだな

私たちは隣合って座り、窓の外をぼんやり眺める。

サトコ

「SPの皆さんと遭遇するなんてビックリでしたね」

後藤

‥‥‥

サトコ

「後藤さん?」

後藤さんに視線を向けると、浮かない顔をしていた。

サトコ

「あの‥」

後藤

サトコがアイツらに囲まれているのを見ていて、俺は‥

気まずそうに口にして、視線を逸らされる。

<選択してください>

A: どうかしたんですか?

サトコ

「あの‥どうかしたんですか?」

後藤

っ‥

顔を覗き込むと、後藤さんの頬が見る見るうちに赤く染まっていく。

後藤

‥察しろ

(察しろと言われても‥)

私は旅館に来てからのことを思い返す。

(温泉に入って、SPの皆さんに会って‥)

藤咲さんや広末さん、それに秋月さんや一柳教官が言ってくれたことが脳裏を過った。

(もしかして‥嫉妬、してくれたのかな?)

じわじわと嬉しさが込み上げ、頬が緩んだ。

B: 後藤さんの口から聞きたい

(もしかして、ヤキモチ妬いてくれたのかな?)

後藤さんの気持ちが嬉しくて、笑みがこぼれそうになる。

(でも、どうせなら後藤さんの口から聞きたいな)

ちょっとしたイタズラ心が、顔を覗かせる。

サトコ

「仲良くしてるのを見て‥どうしたんですか?」

後藤

それは‥

先を促すと、後藤さんは意を決して口を開く。

後藤

嫉妬、したんだ

サトコ

「!」

顔を赤くしながらも、ハッキリ言う後藤さんに胸がキュンっとする。

(こ、これはズルい‥!)

C: ヤキモチですか?

(もしかして‥)

サトコ

「ヤキモチですか?」

後藤

っ‥

後藤さんは口元を押さえ、顔を赤くする。

後藤

俺だって、ヤキモチくらい妬く

サトコ

「!」

ハッキリと口にする後藤さんに、今度は私の頬が熱くなって‥

(どうしよう、嬉しすぎる‥)

顔がニヤけそうになるのを、必死に堪えた。

サトコ

「後藤さん‥」

私は気持ちを落ち着けて、後藤さんの手を取る。

両手を包み込むように握ると、後藤さんを真っ直ぐ見つめて微笑んだ。

サトコ

「私はどんなことがあっても、後藤さんが一番ですよ」

後藤

っ、そうか‥

‥悪かった、大人げないところを見せて

サトコ

「あっ‥」

後藤さんは私の身体を引き寄せ、腕の中に閉じ込める。

後藤

‥浴衣が似合いすぎるのも考えものだな

サトコ

「え‥?」

後藤

あいつらがちやほやするのも、仕方ないってことだ

だけど‥

サトコ

「ん‥」

触れるだけの可愛らしいキスを、唇に受ける。

後藤

お前は、俺のだろ?

甘い吐息がかかり、鼓動が高鳴った。

サトコ

「はい‥」

小さく頷くと、もう一度唇が塞がれる。

先ほどよりも深くて長いキスは、私の頭を麻痺させていく。

サトコ

「‥はぁ」

名残惜しそうに唇が離れると、後藤さんは私を布団の上に押し倒した。

後藤さんは私の頬を優しく撫でると、耳元に顔を近づける。

後藤

俺も‥アンタが一番だからな

サトコ

「っ‥」

甘い声音に、小さく息を呑む。

後藤

やっと2人きりになれたんだ

これから先は‥俺のことだけ考えろ

サトコ

「んっ‥」

身体に重みを感じ、全身で愛しい人の温もりを感じる。

それから私たちは時間の感覚を忘れるほど、どこまでも深く愛し合った。

Happy  End

【管理人より】

やっぱりここでもヒロインちゃんは昴のことを『昴さん』と呼んでいた。

ここでも私の判断で『一柳教官』に替えました。

だって彼氏のことを『後藤さん』呼びで、仮にも教官を『昴さん』呼びするのはなんかしっくりこない。

あと、後藤が女々しすぎてイライラする(笑)

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