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一つ屋根の下で奪われ合いストーリー 加賀班 1話

【宿泊所】

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とある捜査のため、私は室長、加賀教官、東雲教官とともに宿泊施設の門をくぐった。

(‥のはいいけど)

(なんでこのメンバーに、私なんかが紛れ込んでるの‥!?)

難波

おー、ついたついた

東雲

はー、泊まりがけの出張とか、怠‥

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加賀

腹減ったな

おい駄犬、なんか作れ

サトコ

「えっと‥だ、台所は勝手に使ってもいいんでしょうか」

難波

ああ、まだ何も説明してなかったな

室長が、ぐるりと部屋を見回す。

難波

今回の出張の期間は、一週間。俺たちは日中のほとんどは捜査でいない

ひよっこにはそのときの留守番と、俺たちの日々のサポートをしてもらう

(3人のサポートか‥つまり、食事や洗濯、掃除‥あと報告書とかもだよね)

東雲

キミが役に立てるのなんて食事の支度と洗濯、あとは報告書作るくらいだから

まるで私の心を見透かしたかのように、東雲教官が言い切る。

東雲

まあ、オレたちが快適に過ごせるようにせいぜい頑張ってよね

サトコ

「うっ‥はい」

(直接捜査に関われないのは残念だけど‥)

(教官たちの捜査を支える裏方なんだから、立派な仕事だ!)

(それはいいけど、まさか寝泊りまで一緒なんて‥)

サトコ

「本当に、私でよかったんでしょうか?千葉さんとか、男性の方が‥」

加賀

衣食住に関しては、女の方が何かと便利だ

メシもロクに作れねぇ男に、用はねぇ

東雲

そうですね。そんなの、いるだけ無駄だし

まあキミも、追い出されないように頑張って

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サトコ

「お、追い出す‥!?」

難波

大丈夫だろ。ひよっこは料理もうまいし。なあ?

サトコ

「ひ、ひと通りはできますけど‥」

(でももしかして、料理が美味しくなかったらお払い箱‥!?)

(いや、料理だけじゃない‥身の回りのお世話をするために呼ばれてるんだから)

それが満足にできなければ、室長は別として、

教官たちはなんのためらいもなく私を追い出すだろう。

サトコ

「い、一生懸命頑張らせていただきます!」

慌てて答えると、室長が満足げにうなずいた。

そして、早々に自分の部屋へと引き上げる。

難波

捜査は明日からだから、お前ら早く寝ろよー

サトコ

「は、はい‥じゃあ私も」

加賀

おい

東雲

ちょっと、本気でもう寝るつもり?冗談でしょ?

腕を掴まれて振り返ると、加賀教官と東雲教官が、なぜか恐ろしい笑みを浮かべている。

<選択してください>

A: 寝ないんですか?

サトコ

「な、なんでしょう‥?おふたりとも、寝ないんですか?」

加賀

テメェに言う意味はあんのか?

東雲

何?オレたちの就寝時間まで知ろうとするなんて、キミ、変態?

(なんでそんな話に!?)

B: 室長呼んできます?

サトコ

「あ‥し、室長、呼んできましょうか」

加賀

必要ねぇ

東雲

室長に聞かせられるような話じゃないしね

(ま、まさか‥ここで殺られる!?)

C: もうお払い箱?

サトコ

「私、何もしてないうちからお払い箱ですか!?」

加賀

そうしてほしきゃ、捨ててやる

東雲

まあ、キミの代わりならいくらでもいるしね

(反論できないのがつらい‥!)

加賀

テメェに、言っておくことがある

東雲

その回転の悪い頭で、しっかり聞いてよ

サトコ

「言っておくこと‥?」

震えながら聞いていると、ふたりに、これから共同生活をする上での注意事項を教えられた。

起床時間、昼間にやるべきこと、お風呂の時間、就寝前の約束事‥

東雲

‥で、朝起きる時間も帰る時間もまちまちだから、ちゃんと覚えてよね

加賀

ひとつでも間違えやがったら、海のもくずにしてやる

サトコ

「ぶ、物騒なこと言わないでください‥!」

(っていうか、細かっ!そんなにたくさん、覚えられる自信ない‥)

(けど、ひとつでも間違えたら海のもくずに‥!)

(‥これも業務これも業務これも業務‥頑張るしかない!!!!)

東雲

とりあえず、これで全部ですかね、兵吾さん

加賀

ああ、まあ大丈夫だろ

駄犬は、最初にしっかり躾けておかねぇとな

東雲

ほんと、出来の悪い訓練生だと困りますよね

っていうか、いつまでそこに突っ立ってんの?

早く寝た方がいいんじゃない?

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(いや!寝ようとしたのを無理矢理引き留めたのは、教官たちなのに‥!)

震える私を置いて、ふたりは笑いながら自分の部屋に戻って行った‥


翌朝、アラームをセットして誰よりも早く起き、リビングへ向かう。

朝食の準備をしていると、一番奥の部屋から室長があくびをしながら現れた。

難波

おっ、氷川。早いな

サトコ

「おはようございます。室長こそ、早いですね」

難波

おっさんは、長く寝られないんだよ

知ってるか?寝るのも体力がいるんだぞ

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大きく伸びをする姿を眺めていると、不意に振り返った室長が苦笑いした。

難波

寝癖ついてるぞ

サトコ

「えっ?」

その手が伸びてきて、ふわりと髪の毛を撫でられる。

心臓が跳ねて、驚きと照れくささに思わず頭を下げて誤魔化した。

サトコ

「す、すみません!ありがとうございます」

難波

そこまで気にすることじゃねぇだろ。お前、普段からよく寝癖つけてるし

サトコ

「え!?ついてますか!?」

難波

なんだ、気付いてなかったのか

それが最近の流行りかと思って黙ってたけど、今度見つけたら直してやらねぇとな

‥ん?今の、もしかしてセクハラか?

サトコ

「い、いえ‥そんなことは」

難波

そうか。最近はなんでもセクハラセクハラってなー

おっさんだってたまには若い子と交流を持ちたいのに、訴えられそうでできねーよ

軽く笑いながら室長は顔を洗いに洗面所へ向かったけど、ドキドキして朝食の準備がはかどらない。

(びっくりした‥あんなふうにさりげなく触れてくるなんて‥)

(なんかちょっとガサツっぽいのに優しい手だった‥さすが室長、大人だな)

(それにしても、普段からよく寝癖ついてるのか‥気を付けよう)

その後、みんなで食卓を囲んで朝食‥となったものの、いくら待っても東雲教官が起きて来ない。

難波

あいつ、初日から寝坊かあ?

氷川、ちょっと起こしてきてくれ

サトコ

「わかりました」

(東雲教官の部屋か‥)

(いくら起こすためとはいえ、勝手に入ってあとで怒られないといいな‥)

【部屋】

何度かノックしたけど、予想通り、東雲教官からの返事はない。

部屋にお邪魔すると、教官はドライヤーで髪を乾かしていた。

サトコ

「あの‥東雲教官?朝ごはんの準備ができましたよ」

東雲

‥‥‥

(もしかして、ドライヤーの音で気付いてない?)

サトコ

「きょうかーん。朝ごはんですよー」

東雲

‥うるさいな

しっかり気付いてたらしく、髪を乾かし終えると、うんざりしたようすでこちらを振り返った。

東雲

何?朝から盛ってんの?

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サトコ

「盛っ‥」

「そ、そうじゃなくて!朝ごはん、できてます!」

東雲教官は、意味が分からない、といった様子で首を傾げた。

東雲

朝ごはん?何それ

サトコ

「知りませんか?朝食べるごはんを、朝ごはんって言うんですよ」

東雲

キミ、バカにしてんの?

そうじゃなくて、なんで行かなきゃなんないの?

サトコ

「え?だって、もうとっくに集合時間は過ぎてますよ」

東雲

集合時間‥?そんな話してたっけ

(あれ、朝ごはんの話してたとき東雲教官いなかったんだっけ)

(だけど室長を待たせている手前、引き下がれない‥)

東雲

はぁ‥考えてること分かりやす過ぎ

‥行かなきゃうるさそうだな

ボソッとつぶやき、東雲教官がため息まじりに部屋を出ようとする。

急いで私も追いかけると、慌てていたせいか何もないところでつまずいてしまった。

サトコ

「わっ」

東雲

ちょっ‥

声が聞こえたと思うと同時に、細身の割にたくましい腕に支えられた。

サトコ

「す、すみません!」

東雲

‥‥‥

‥うわ

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私の顔を間近で見たせいか、東雲教官があからさまな不機嫌さを醸し出す。

身体を離し、私を突き放すようにしてドアの方へ歩き出した。

東雲

ハァ‥朝から迫力ありすぎ

サトコ

「なっ‥」

東雲

なに突っ立ってんの、早く出て

サトコ

「す、すみません‥」

(って‥なんで私が謝ってるの‥!?)

釈然としないまま、私も教官の後を追って急いで部屋を出た。

【自室】

その夜。教官たちに言われたことをメモして、すべて終えているか確認した。

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(掃除、洗濯、明日の朝ごはんの下ごしらえ‥よし、全部終わった)

(うう、疲れた‥明日からも大変そうだし、シャワー浴びて早く寝よう)

お風呂の支度をして、共同のバスルームへと向かった。

【バスルーム】

バスルームのドアを開けると、上半身裸の加賀教官が立っていた。

サトコ

「‥‥‥」

「!!!????」

加賀

テメェ‥

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サトコ

「な、なんで加賀教官がここに!?」

加賀

そりゃこっちの台詞だ

上官の風呂を覗き見るとは、いい趣味だな?

サトコ

「ち、違うんです!不可抗力で‥」

「っていうか、あれ!?今って、私が入っていい時間じゃ‥」

加賀

テメェは入っちゃならねぇ時間だ

(まさか‥時間を間違えた!?)

(昨日、東雲教官に説明されたけど‥覚えることが多すぎて、忘れてた!?)

サトコ

「し、失礼しました!」

慌ててドアを閉めようとしたけど、それよりも早く加賀教官が私の腕をつかむ。

バスルームに引き戻されドアを閉められて、絶体絶命の大ピンチに陥った。

(こ、殺される‥!海のもくず決定‥!)

加賀

クズが‥この程度のことも覚えられないとはな

サトコ

「他のことは終わったんですけど‥す、すみません」

必死に謝っても、加賀教官は納得してくれない。

私の腕をつかんだまま、まるで追い詰めるように顔を近付けてきた。

加賀

こんな所にのこのこ現れるってことは

かわいがってほしいのか?あ゛?

サトコ

「そ、そんな‥違います!」

「本当に、時間を間違えてしまって‥あ、あの、海のもくずだけはどうかご勘弁を」

加賀

‥‥‥

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じっと私を見つめていた加賀教官が、目を細める。

その威圧感でじりじりと私を追い詰めると、乱暴に壁に手をついて私を閉じ込めた。

サトコ

「な、何するんですか‥!」

驚きのあまり、咄嗟に教官の胸を突き飛ばす。

加賀教官は興をそがれたとでも言いたげに、私を一瞥した。

加賀

色気の欠片もねぇクズだな

サトコ

「な‥」

加賀

上官を愉しませることすらできねぇのか

テメェみてぇなガキを相手にするほど、女に飢えてねぇ

サトコ

「ガキ‥!?」

加賀

まあ、どうしても相手して欲しくなったら部屋に来い

サトコ

「い、行きません!」

自分でも、真っ赤になっているのが分かる。

加賀教官は鼻で笑うと、タオルを手に脱衣所を出て行った。

(きょ、教官のお風呂を覗いてしまった‥最悪のスタートだ‥)

(‥でも、加賀教官に抱き寄せられた感覚が、まだ残ってる)

それが恥ずかしくて、思わずしゃがみ込む。

(室長には寝癖を直してもらったり、東雲教官の寝起きを目撃したり)

(加賀教官の裸を見たり‥最初からこんなハプニングばっかりで、大丈夫なのかな)

頭を抱えながら、今日一日のことを振り返ってしまう私だった‥

to be continued

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