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加賀 ふたりの卒業編 4話

【教場】

加賀さんが単独でスナイパーの男の尋問を行って、数日。

颯馬

では、これまでの復習です

このような状況になった場合の、適切な対処法は?

颯馬教官の講義を受けながらも、考えてしまうのは捜査のことだった。

(加賀さんはどうして、すぐに犯人を逮捕しなかったんだろう)

(いつもの加賀さんなら、問答無用で犯人を確保してるはず‥)

思い出すのは、あの時の加賀さんの言葉‥

加賀さんがスナイパーを見逃したあと、みんなと合流するため車に乗り込んだ。

私に運転を任せ、助手席に乗り込んだ加賀さんがどこかへ電話を掛ける。

加賀

俺だ。大臣を狙撃したスナイパーを見つけた

まだアジトにいる。泳がせたあと、確保しとけ

(泳がせたあと‥?もしかして、まだ欲しい情報があるとか?)

(でもそれなら、自分がやるはず‥じゃないと、犯人確保の手柄は別の人のものになる‥)

加賀さんが、手柄を誰かに譲ることに違和感を覚える。

でもきっと答えてくれないだろうと思い、その場では何も聞けなかった。

(他に欲しい情報があるのか‥それとも、別の意図があるのか)

(どっちにしろ、加賀さんは教えてくれない‥)

サトコ

「はあ‥なんかもやもやする‥」

颯馬

何かお悩み事ですか?

ぽん、と後ろから肩を叩かれる。

今が講義中だと気づいた時には、颯馬教官の冷たい笑顔が目の前にあった。

サトコ

「し、しまった‥!」

颯馬

何がですか?

サトコ

「あ、いえ、そのっ‥」

背筋が凍りつくような思いをしていると、颯馬教官が前方を指差した。

ホワイトボードには、絶体絶命の状況を想定した事例が書かれている。

颯馬

ではアレは、貴女に答えていただきましょうか

(つまり、こういうときにはどういった対処をするのが正解か‥って聞かれてるんだよね)

(これまでの演習や捜査を思い出せば、わかるはず‥!)

サトコ

「か、可能な限り、時間を引き延ばします」

「優秀な分析官が、必ず居場所を突き止めてくれるので‥」

颯馬

優秀な分析官がいない場合は?

サトコ

「引き延ばした会話から、逃げ道を探ります」

「その前に、常に退路を確保しておくのが基本ですが‥」

颯馬

正解です

颯馬教官の笑顔がいつものものに戻り、ホッと胸を撫で下ろす。

そのあとも質問攻めされたけど、講義終了を告げるチャイムが鳴り、なんとか乗り切った。

【カフェテラス】

その日の講義が終わり、教官室へ行く前にカフェテラスに立ち寄った。

私を見つけた鳴子と千葉さんが、向かいの席に座る。

鳴子

「さっきの颯馬教官の講義、よく答えられたね」

サトコ

「ホワイトボードに、ヒントが書いてあったから‥」

「加賀教官だったら問答無用でマーカーが飛んでくるけど、颯馬教官でよかったよ‥」

千葉

「なあ‥今、警察庁長官狙撃事件に関わってるんだろ?」

「大丈夫か?ぼんやりしてることが多いから、みんな心配してるよ」

サトコ

「ありがとう。なんとか、捜査は進展してるんだけど‥」

(確かに加賀さんが見つけたスナイパーは捕まって、捜査は進展した)

(でも、捕まえたのは加賀さんじゃない‥加賀さん指示を受けた別の刑事だ)

(どうして‥?加賀さんは、何を考えてるんだろう?)

考え込む私を、ふたりが心配そうに眺めている。

千葉

「俺たちにも、何かできることない?」

鳴子

「事件を未然に防ぎたい気持ちは、私たちも同じだからね」

サトコ

「ふたりとも‥」

卒業前の筆記試験などもあって忙しい中、その言葉は嬉しかった。

サトコ

「ありがとう。でも‥」

鳴子

「ほら、もうすぐ卒業試験でしょ」

「それが終わったら、みんなで打ち上げでもやろうって話になってるんだよ」

サトコ

「打ち上げ‥」

千葉

「その前に、心配事はなくしておきたいだろ?」

(心配事、か‥加賀さんのことだから、きっと何か考えがあるっていうのはわかってる)

(でも‥頼りなくても、私には話して欲しいのに)

いつだって、公私ともに加賀さんに支えられていた。

私も、加賀さんにとってそんな存在になりたい。

サトコ

「ありがとう‥どうしようもなくなったら、ふたりに手伝ってもらうかも」

鳴子

「どうしようもなくなる前に、ちゃんと声かけなさいよ」

千葉

「俺たちは、いつでもいつでも力になるから」

「これでも、2年間一緒に頑張ってきたんだしな」

鳴子

「そうそう!あの鬼合宿も講義も、死にかけながらも乗り越えてきた仲じゃん」

「夜通し、教官たちの素敵さを語ったり!」

サトコ

「いや、それはほとんど鳴子がひとりで語ってたような‥」

鳴子

「とにかく!今さら私たちの間に、遠慮はナシだからね!」

サトコ

「‥うん」

ふたりの気持ちを嬉しく思いながら、教官室へ向かうため、席を立った。

【アジト】

ある夜、加賀さんとともにこの間のスナイパーのアジトへやってきた。

サトコ

「あの男、まだ吐かないんですか?」

加賀

ああ。面倒な野郎だ

スナイパーは加賀さんの部下によって逮捕されたものの、黙秘を貫いているらしい。

でも警察庁長官や外務大臣襲撃を、ひとりの人間が単独で計画したとは考えにくい。

(だから、手掛かりを追ってここへ来たんだけど‥)

(あの男の身元や交友関係は、東雲教官のほうで調べてるし)

私たちも、男のこれまでの行動などを地道に洗い出そうとしたものの‥

なかなか有力な情報は得られないまま、今に至る。

サトコ

「やっぱり、アジトには何も残されてないですね」

「そう簡単に証拠を残すほど、バカじゃないでしょうけど」

加賀

‥‥‥

‥今日はここまでだ

サトコ

「え?」

加賀

お前は、戻って報告書を提出しろ

<選択してください>

A: 加賀さんはどうするの?

サトコ

「加賀さんはどうするんですか?」

加賀

俺も戻る

短くそう言うと、加賀さんがアジトを出て行く。

(報告書の指示なら、学校に戻ってからでもできるのに‥)

B: 切り上げるのが早すぎる

サトコ

「切り上げるの、早すぎじゃ‥」

加賀

何も出ねぇところを探しても、意味がねぇ

とんだ無駄足だったな

(確かにそうかもしれないけど、もしかしてまだ探してないところもあるかもしれないのに)

あっさり諦めるのは、加賀さんらしくないように思える。

C: 犯人を尋問するの?

サトコ

「もしかして、戻って犯人を尋問するんですか?」

加賀

それはこの前やった

俺が欲しい情報は、もうあいつからは引き出せねぇ

(加賀さんが欲しい情報‥?つまり、他のみんなとは違うことを調べてる‥?)

(時間的には、まだまだ捜査が可能だ)

(いや‥時間なんて関係ない。夜中だって張り込みすることがあるんだから)

何も手がかりがないせいかとも思ったけど、それでも捜査を続けるのが加賀さんだ。

それだけに、この早い切り上げ方は疑問が残る。

(‥私が学校に戻ったあと、加賀さんはどうするんだろう?)

(スナイパーも、その場ですぐ逮捕しなかったし‥)

ここ数日の加賀さんの行動に、なんとなく納得がいかない自分がいた。

【ビル】

報告書を書いている途中で、加賀さんが教官室を出て行った。

時間差で私も教官室を出て、加賀さんを追いかける。

(ここまでは、なんとか尾行に気付かれなかった‥)

(普段の加賀さんなら絶対気付かれて睨まれるか、うまくまかれるのに)

なんとなく、加賀さんは自分だけで “何か” を追いかけている気がした。

そしてそういうときは必ず誰にも詳細は話さず、常に自分ひとりで行動を起こす。

(私の勘違いなら、いいけど‥)

不安になりながらも尾行を続けると、加賀さんはある企業のビルに入っていった。

どこかできいたことがあるような会社だけど、どうしても思い出せない。

(誰かの就職先とか‥?でも、書面とかで見たような気も)

(でも、これ以上ここにいたらいくらなんでも加賀さんに気付かれる)

そう思い、ビルの場所と会社名を覚えると、すぐに立ち去った。

それから、毎日のように加賀さんを尾行した。

あとを尾けるのが遅れたときは、あの会社の前で待っているとたいてい、加賀さんが現れた。

(これまでに、何度かここに来てる‥でも、なんの目的で?)

(調べてみたけど、別に怪しい企業じゃないみたいだし)

夜遅く、ビルから誰かが出てくるのが見えた。

息を潜めて注意深く観察すると、それが見知った人物であることに気付く。

(まさか‥松田理事官!?)

松田

『お前はここで、裏切られた腹いせに加賀を殺し、自殺するんだ。歪んだ愛の末路としてな』

『警察の情報というのは、驚くほど高く売れる』

お金と手柄欲しさから、警察の情報を政治家に流していたあの松田管理官が、ビルから出てくる。

私と加賀さんを殺そうとしたものの、加賀さんと石神教官の連係プレーの前に膝をついた。

(あのときのことは、加賀さんと上層部によって公にはされなかったけど)

(責任を追及されて、松田理事官は警察を辞めさせられたはず‥なのに、どうして)

そこでようやく、見覚えのある企業名が、警察の天下り先になっているところだと思い出した。

松田理事官は、あのときの出来事の口止めのために、この企業への再就職を手配されたのだろう。

(松田理事官が、今回の事件に関係してる‥!?)

(だから加賀さんは、このビルに通ってるんじゃ)

サトコ

「松田理事官!」

駅へと向かうその人に、咄嗟に声をかけていた。

松田理事官が、驚いたように私を振り返る。

松田

「君は‥」

サトコ

「公安学校訓練生、氷川サトコです」

「松田理事官、お伺いしたいことが」

松田

「私はもう、理事官じゃない。それは、君が一番良く知ってるだろう」

淡々と話しながらも、松田理事官‥いや、松田さんは私を見ようとはしない。

松田

「加賀といい、君といい‥今さらなんだというんだ」

「私は、今回の長官襲撃事件には関与していない」

私が聞く前に、松田さんがはっきりと言い切る。

サトコ

「‥本当ですか?」

松田

「信じられない気持ちは分かるがな」

「私はあの事件で、全てを失った。今さら面倒事を起こしたいという気もない」

(確かに、今の松田さんにはあの頃のギラギラした野心がない)

(じゃあ本当に、今回の件には関与してないの‥?)

松田

「まったく‥大臣を襲撃したスナイパーが」

「たまたま私が昔雇った男と同一人物だからといって、安直じゃないか?」

サトコ

「えっ?」

松田

「加賀も、あの男から私の名前を聞いたんだろうがな」

「まだ “あの事件” を追っているとは、意外と執念深い奴だ」

ため息をつき、松田さんが私の前から立ち去る。

でも、それを追いかけることはできない。

( “あの事件” ‥ってきっと、浜口さんが関係してる事件のことだ)

“仲間殺し” の汚名を着せられ、それでも仲間をかばい続けた。

加賀さんのなかでは、松田さんを逮捕したからといって、“あの事件” は終わってない。

(加賀さんが追ってるのは‥ “あの事件” だった)

(それなら‥私だって、力になりたい!)

その気持ちを抱えて、急いで学校へと戻った。

【個別教官室】

個別教官室を訪ねると、加賀さんがひとりで昔の資料を読み込んでいた。

加賀

まだいたのか

サトコ

「あのっ‥」

( “あの事件” を追ってるなら、私も捜査に加えてください)

(どんな雑用でもいいから、加賀さんを支えたいんです‥!)

その気持ちを伝えようと、口を開きかける。

でも、加賀さんの性格を思い出して再び口を閉ざした。

(いくら『支えたい』『頼って欲しい』って言ったって、なんの説得力もない‥)

(そんな言葉で心が動くほど、加賀さんは甘くない)

それに、ついこの間の演習で凡ミスをしたばかりだ。

加賀さんのことだから、きっとすぐに拒否されるだろう。

サトコ

「えっと‥ほ、報告書が途中だったので」

加賀

さっさと書いて帰れ

サトコ

「はい」

急いで報告書を書くと、加賀さんに提出して個別教官室を出る。

(何か、有益な情報を持って行かなくちゃ‥私だって使える、ってところを見せないとダメだ)

(でも、ひとりだと難しいし)

廊下に出ると、そっと、携帯を取り出した。

【寮 談話室】

数日後の深夜、寮の談話室の隅で鳴子、そして千葉さんと落ち合う。

千葉

「お疲れ。さっきは緊張したな」

鳴子

「勝手にモニタールームに入ったなんて知られたら、東雲教官に怒られるんじゃない?」

サトコ

「大丈夫。今回の捜査で気になることがあったので、って言っておくから」

「それよりふたりとも、巻きこんじゃってごめんね」

千葉

「力になるって約束だろ?」

鳴子

「それに私たちも、この経験がいつか役に立つかもしれないしね」

私たちの手には、モニタールームで見た映像をプリントアウトした紙。

そこには、あのスナイパーの後ろ姿の拡大写真が映し出されていた。

鳴子

「怪しいと思って印刷してきたけど‥これがなんなのか、分かったの?」

サトコ

「うん‥」

鳴子に外を見張ってもらい、千葉さんと一緒に忍び込んだモニタールーム。

そこで見つけた犯人の首筋に、気になるタトゥーを発見した。

サトコ

「このマーク‥調べてみたんだけど、大きなテロ組織の印みたい」

鳴子

「テッ‥」

千葉

「しーっ」

鳴子と千葉さんが、顔を見合わせる。

鳴子

「じゃあ‥この人物は、テロ組織とつながってるの?」

サトコ

「そうみたい‥単独犯じゃないとは思ってたけど」

千葉

「なら、早く教官たちに報告しないと」

サトコ

「今から、加賀教官のところに行ってくる」

「本当にありがとう。ふたりのおかげで、すごい証拠が見つかったよ」

鳴子

「そんなのいいから、早く行きな」

千葉

「無理するなよ」

機密事項である以上、事件の詳細は語れない。それでもふたりは多くを聞かずに力を貸してくれた。

その恩を胸に刻むと、見送るふたりを背に、加賀さんの家へと急いだ。

(いくら加賀さんでも、たったひとりでテロ組織に接触するのは危険すぎる‥!)

(何がなんでも、絶対に止めなきゃ!)

【加賀マンション】

深夜に近い時間に部屋を訪ねた私を、加賀さんは訝しがりながらも入れてくれた。

早速、プリントアウトした写真を見せる。

サトコ

「これ‥この間逮捕したスナイパーの首元の拡大写真です」

「このタトゥー‥国際的なテロ組織の紋章です」

加賀

‥‥‥

サトコ

「最近急激に勢力を伸ばし、有能な傭兵や若者を招集して」

「今や、世界各国の脅威となっているテロ組織‥Crow」

「公安の要警戒対象組織として追加された、過激派集団ですよね?」

自力で調べた情報を挙げると、加賀さんが一瞬、軽く目を見張る。

でも、それ以上は驚きを見せなかった。

サトコ

「加賀さんが松田理事官に接触したのは、“あの事件” のためですか?」

加賀

‥お前‥

サトコ

「松田理事官に聞きました。昔、自分が雇ったスナイパーだって」

加賀

なんであいつと接触した

サトコ

「すみません‥加賀さんを尾行したんです」

「そうしたら、松田理事官が天下りした会社のビルに入って行ったので」

加賀

‥‥‥

しばらく、加賀さんはじっと私を見つめたまま動かなかった。

私に尾行されたことに、驚いているのかもしれない。

(正直、普段の加賀さんなら尾行が成功したとは思えない)

(私の尾行にも気づかないくらい、“あの事件” のことで頭がいっぱいだったんじゃ‥)

加賀

‥よくそこまで調べたな

サトコ

「加賀さん、お願いです‥!話を聞いてください!」

加賀

必要ねぇ

一言だけそう言うと、加賀さんは寝室へと入って行った。

【寝室】

加賀さんを追いかけて、寝室に飛び込む。

サトコ

「加賀さん‥どうして他の教官たちに協力を仰がないんですか?」

「私だって、加賀さんの‥」

まるで私の言葉を遮るように、加賀さんが腕を引っ張る。

そのまま、少し乱暴にベッドに押し倒された。

サトコ

「かっ、加賀さ‥」

加賀

こんな時間に来て、仕事の話か

相変わらず、色気のねぇ女だな

<選択してください>

A: なくて結構です

サトコ

「仕事に関しては、色気なんてなくていいです!」

「私にはハニートラップは向いてないってわかってますから!」

加賀

それだけわかってりゃ充分だ

色気で仕事をどうにかしようなんざ考えたら、即捨て駒行きだ

(ハニートラップを覚えろって、前は言ってたのに‥!)

(って、今はそうじゃなくて!)

B: 誤魔化さないで

サトコ

「誤魔化さないでください!加賀さん、今回の事件は‥」

加賀

喚くな

サトコ

「だって‥!」

加賀

テメェは黙って、俺の指示に従ってりゃいい

C: 力になりたいんです

サトコ

「私、加賀さんの力になりたいんです!」

「少しでも、役に立てることがあれば‥なんでもしますから!」

加賀

駄犬が、一人前の口をききやがる

サトコ

「駄犬だって、ご主人様のために何かしたい気持ちは本物です‥!」

加賀

テメェに意見されるほど落ちちゃいねぇ

テメェは、今回の事件の収束だけを考えろ

サトコ

「でも‥」

言い返そうとしても、加賀さんのキスに阻まれる。

強引でどこか急いているような、普段よりも少しだけ、余裕のないキスに思えた。

(加賀さん、疲れてる‥?身体じゃなくて、心が‥)

(ううん、疲れてるっていうよりも‥何かに焦ってる)

性急なキスから、そう感じ取る。

でも何か言おうとするたびに、深くなっていく口づけが私から力を奪った。

(どうして、何も言わせてくれないの‥?)

(やっぱり私じゃ、加賀さんの力になれない‥?)

思わず、加賀さんの背中に腕を回して抱きしめる。

一瞬動きを止めた加賀さんだけど、すぐに私の服に手を差し入れて、温もりを求めてきた。

サトコ

「お願いです。聞いてください」

「ひとりで捜査に行くのは危険です。国際的なテロ組織が関わってるなら、なおさら」

「せめて、室長には相談を‥」

加賀

駄犬がそこに辿り着いたことは、褒めてやる

だが、ここまでだ

まるでこれ以上踏み込むことを許さない、というように加賀さんがぴしゃりと言い切った。

服を乱されて、強引で甘い手と唇に翻弄される。

(きっとこれ以上は、踏み込ませてくれない‥)

(私はやっぱり、加賀さんの隣には並べない‥?)

サトコ

「加賀さん‥最近、あまり寝てないですよね?」

「それくらい、私でもわかります。心が疲れてるって」

起き上ろうとしたけど、力づくでベッドに押さえつけられる。

加賀

テメェが癒すんだろ

サトコ

「えっ!?そ、そうじゃな‥」

「それより、たまにはゆっくり寝ないと、疲れが取れないんじゃ」

加賀

そうしてほしけりゃ、俺を愉しませろ

服の中でうごめく手に、弱いところを攻められる。

久しぶりの刺激に甘い声がこぼれると、加賀さんが満足そうにニヤリと笑った。

加賀

テメェは、余計な心配なんざしないていい

黙って守られてろ

サトコ

「っ‥‥」

(ただ守られるだけなんて、嫌なのに‥)

(私だって、加賀さんを‥)

仕事の面で役に立てないのが、もどかしい。

それでも、加賀さんの役に立てるのならどんな形だっていいと、自分に言い聞かせる。

(たとえ、疲れた身体を癒すことしかできなくても‥)

(加賀さんは私にそれ以上は求めてなくても‥でも、私は)

今は必死に、加賀さんの熱を受け止める。

言葉もないまま、長い夜は更けていった。

to  be  continued

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