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恋人は公安執事 第二夜

公安流・お嬢様の癒し方★0時まで ~加賀の場合~

【玄関】

その日、仕事から帰ると加賀さんが出迎えてくれた。

加賀

遅ぇ

サトコ

「す、すみません‥今日は取材が長引いてしまって」

謝りながらも、いつの間にか加賀さんに上着を脱がされバッグを持って行かれる。

(怖いけど、さすが加賀さんだなぁ‥)

(いつもこうやって、知らないうちに寛げるようにしてくれてるんだよね)

【リビング】

ソファに座ると、どっと疲れが湧いてきた。

(こういう時は、紅茶でも飲んで癒されたいな‥)

お願いしてみようかな‥と加賀さんを見ると、目が合った。

加賀

‥チッ

(まだ何も言ってないのに舌打ちされた!?)

加賀

そこ、動くんじゃねぇ

サトコ

「は、はい‥!」

(何‥!?動いたら殺される!?それとも、動かなくても殺られる!?)

ビクビクしながら待っていると、加賀さんが紅茶を淹れてきてくれた。

サトコ

「え、エスパー‥!?」

加賀

飲まねぇなら下げる

サトコ

「飲みます!いただきます!」

慌てて追いすがると、カップをテーブルに置いてくれる。

(こうして紅茶を出してくれる様子は、執事っぽいんだけどな)

(普段の加賀さんは、獲物を狩るような、凶悪犯を見つける刑事のような目をしてるから)

サトコ

「ふふ‥」

加賀

気持ち悪ぃ

サトコ

「主人に『気持ち悪い』って言っちゃう執事も、そうそういないですよ」

「あの、加賀さん‥ついでに、マッサージなんてお願いできますか?」

調子に乗ってそうお願いすると、加賀さんがニヤリと不吉に笑った。

加賀

ほう‥

サトコ

「あの!む、無理にとは‥!」

加賀

そんなにマッサージされてぇなら、望み通りしてやる

サトコ

「えっ?」

次の瞬間、ガッと、顔面を大きな手でつかまれた。

(あ、アイアンクロー!?)

サトコ

「主人にアイアンクローかます執事もいないですよ!?」

加賀

調子に乗ってんじゃねぇ、お嬢様

サトコ

「くっ‥これもある意味、マッサージ!?」

(でも、全然癒しになってない!)

(加賀さんに癒してもらえる日なんて、一生来ない気がする‥!)

公安流・お嬢様の癒し方★0時まで ~颯馬の場合~

【玄関】

サトコ

「ただいま帰りましたぁ~」

その夜は、酔っ払って帰宅してしまった。

颯馬

おかえりなさいませ、お嬢様

‥どうされたんですか?そんなに酔っ払って

サトコ

「どうもされてませんよぉ~」

【リビング】

颯馬さんにバッグとコートを脱がせてもらうと、ドサッとソファに身を投げ出す。

(はあ、飲み過ぎたかも‥でも、たまにはこういう日があってもいいよね)

(明日、仕事に行きたくないな‥)

颯馬

どうぞ

颯馬さんが、水が入ったコップとルームウェアを持ってきてくれる。

サトコ

「ありがとうございますぅ‥」

颯馬

‥‥‥

(ダメだ、起き上がる気力がない‥)

(もうちょっとだけ休んで、それから見ず飲んで、着替えて‥)

颯馬

‥お嬢様

サトコ

「ひゃい‥」

颯馬

よろしければ、着替えさせて差し上げましょうか?

サトコ

「!!!」

一瞬にして目が覚めて、慌てて起き上る。

サトコ

「だ、大丈夫です!自分で着替えられます!」

颯馬

そうですか?残念ですね

微笑みながら、颯馬さんが頭を撫でてくれた。

颯馬

今日も、お仕事お疲れ様でした

サトコ

「え‥」

颯馬

大変だったでしょう

どうやら、仕事で何かあったのだと察してくれたらしい。

サトコ

「‥実は、大きなミスをして編集長に叱られてしまって」

「私がきちんと確認してたら、防げた失敗だったんです」

颯馬

そうですか‥でも、もう過ぎてしまったことでしょう

私は、いつも前を向いているお嬢様が素敵だと思いますよ

サトコ

「颯馬さん‥」

(そうだ‥この失敗は、仕事で取り戻すしかないんだ)

サトコ

「よし!明日からは、もっと気合入れて頑張ります!」

「でも‥今日だけは、ヤケ酒します!」

そう宣言すると、苦笑した颯馬さんが後ろから包み込むように抱きしめてくれた。

颯馬

お嬢様は、いつも頑張っていますよ

落ち込んでも、何度でも立ち上がれるのが、お嬢様の強みです

優しい励ましに、ぎゅっとその腕に抱きつく。

サトコ

「‥1杯だけ、付き合ってくれませんか?」

颯馬

そうですね‥そんなにお酒が飲みたいのなら

私が、口移しで飲ませて差し上げますよ

サトコ

「‥え!?」

慌てて身体を離す私を、意味深な笑みを浮かべて見つめる颯馬さんだった‥

公安流・お嬢様の癒し方★0時まで ~東雲の場合~

【玄関】

仕事を終えて家に帰ると、東雲さんが笑顔で迎えてくれた。

東雲

おかえりなさいませ、お嬢様

サトコ

「うっ‥今日も笑顔が眩しいですね。東雲さん」

東雲

疲れて帰ってきたお嬢様のためですから

(嬉しい‥!今までは、家に帰っても誰もいなくて)

(一人でごはん食べて、一人でお風呂に入って‥毎日寂しかったから)

東雲

リビングにピーチティーを用意してあります。召し上がってください

サトコ

「はい!ありがとうございます!」

私のジャケットをハンガーにかけてくれる東雲さんにお礼を言って、リビングに急いだ。

【リビング】

リビングには、ピーチティーの爽やかな香りが漂っている。

(ん?それにもうひとつ、甘い香りが‥)

サトコ

「あっ‥パンケーキ!」

東雲

お嬢様、どうぞ

いつの間にか、東雲さんがクッションを用意して待ってくれていた。

(毎日、帰ってくると私が食べたいもの、飲みたいものが全部そろってる‥!)

(東雲さんって、なんて完璧な執事なんだろう!)

サトコ

「ありがとうございます!これだけで、一気に疲れが取れました!」

思わず、東雲さんに抱きつこうとする‥‥‥が、

東雲

ちょっ‥

‥調子に乗るな

ぎゅっと、鼻をつままれた!

サトコ

「うぅ‥」

「だ、だって‥こんなに私のことを考えてくれるなんて、本当にうれしいんです」

東雲

仕事だから。一応、キミの執事だからね

(うう‥『仕事』の部分、ものすごく強調された‥)

サトコ

「わかってます‥仕事だからですよね‥」

東雲

そうだね。じゃなかったら、こんな怠いことしないから

だいたいさ、キミがお嬢様って‥どうなわけ?

サトコ

「どうなのと言われましても‥」

東雲

品性の欠片もない、おしとやかでもない、むしろ賑やか

あ、もちろん悪い意味でね

サトコ

「ハイ‥」

東雲

毎日でっかい口開けて寝るし、この前は風呂で寝て溺れかけるし

朝は寝坊して髪ボサボサのまま家を出るし、帰ってきてもボサボサだし

(ほ、本当のことすぎて、返す言葉もない‥)

美味しそうなパンケーキを前に、嫌味を並べ立てられ肩を落とす私だった‥

そして、午前0時‥

相変わらず癒されたのかどうか分からないまま、私はその瞬間を迎える‥

End

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