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聖夜 石神1話

【教場】

石神

「それでは、期末考査の結果を発表する」

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訓練生たち

「‥‥‥」

石神さんの言葉に、教場はピリッとしたムードに包まれる。

(今回の期末考査、かなり難しかったんだよね)

(もし、赤点を取ったりしたら‥)

クリスマスは1日中補習と決められている。

そのせいか期末考査の前は、訓練生たちがいつも以上に勉強や訓練に励んでいた。

(どうかクリアしていますように‥!)

心の中で両手を合わせて祈っていると、石神さんがゆっくりと口を開く。

石神

名前を呼ばれた者から、結果を取りに来るように

名前を呼び上げられ結果が書かれた用紙を渡された訓練生たちは、一喜一憂する。

心なしか、落ち込んでいる人が多いように見えた。

(‥今回難しかったよね。赤点多いのかな)

石神

氷川

サトコ

「はい!」

立ち上がり石神さんの前に行くと、緊張しながら用紙を受け取る。

(うぅ、見るのが怖い‥)

ドキドキしながら、そっと結果を見る。

用紙に書かれていた点数は‥

【寮 談話室】

鳴子

「それじゃ、お互いの期末考査クリアを祝して‥かんぱ~い!」

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サトコ

「乾杯!」

私たちは満面の笑みを浮かべながら、お茶で乾杯をする。

サトコ

「結果を受け取るまでヒヤヒヤしたね」

鳴子

「ね!生きた心地がしなかったよ~」

サトコ

「赤点を取ったら、クリスマスが補習で潰れちゃうし‥」

(補習を免れて、本当によかった‥)

心の底から安堵して、ほっと息をつく。

鳴子

「ホントそれ!クリスマスに補習だなんて、絶対にありえないって」

「クリスマスは、年内最後のビックイベントだもんね」

サトコ

「あっ、そういえば‥この前こんなのを買ったんだ」

私はクリスマス特集の情報雑誌を取り出すと、テーブルの上に広げる。

鳴子

「へぇ、準備いいじゃん♪」

「もしかして、誰か一緒に過ごしたい人でもいるの?」

サトコ

「そ、それは‥」

(石神さんです、なんて言えるわけないし‥)

サトコ

「‥そんな余裕、あると思う?」

鳴子

「だよね~。特に最近は勉強に訓練ばかりだったし」

「あーあ、イケメンとクリスマスを過ごしたい!」

「あわよくば、相手は颯馬教官で!」

「あっ、一柳教官もいいよね~!」

サトコ

「あはは、鳴子ったら」

鳴子

「サトコはさ、もし彼氏がいるとしたらどんなクリスマスを過ごしたい?」

サトコ

「そうだなぁ」

(去年は黒澤さんのクリスマスパーティーがあったから)

(今年は石神さんとふたりで過ごせたらなって思ってるけど)

期末考査をクリアするまではと、石神さんにはまだクリスマスの相談をしていない。

鳴子

「あっ、こういうのはどう?」

鳴子が開いたページの見出しには、『キャンドルナイト特集』と書かれていた。

教会に置かれているいくつものキャンドルが、幻想的な光景を見せている。

サトコ

「わぁ、ステキだね!」

鳴子

「でしょ?」

サトコ

「キャンドルも綺麗だし、クリスマスに教会で過ごせるなんてロマンチックだな」

私はさりげなく、ページの端に付箋を貼る。

(石神さんと一緒に行けたらいいけど‥)

書かれている場所は、北海道や福岡など遠方が多い。

(都内の教会は人が多そうだから、難しいだろうし)

(石神さんも忙しそうだから、遠出は無理だよね‥)

石神

氷川

サトコ

「へっ?」

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(い、石神さん!?)

ちょうど彼のことを考えていたせいか、突然現れた石神さんに声が裏返ってしまう。

石神

その返事はなんだ

サトコ

「す、すみません」

石神

後藤が呼んでいたぞ。教官室で待っているそうだ

サトコ

「わかりました」

「鳴子、これお願いしていい?」

鳴子

「うん。いってらっしゃい」

私は雑誌を広げたままにして、急いで教官室に向かった。

【個別教官室】

数日後。

私は石神さんの個別教官室で、資料の整理をしていた。

石神

‥‥‥

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石神さんは時折垂れたネクタイを直しながら、黙々と書類に文字を走らせている。

(相変わらず忙しそうだな)

(もうすぐクリスマスだけど‥)

去年行ったクリスマスパーティーには、石神さんは仕事で来れなかった。

クリスマスツリーのライトアップが消えた頃に、ようやく合流できたのだった。

(忙しい中、あまり無理は言いたくないし‥)

(どこで何するかよりも、会えるだけで充分だよね)

私は一度思考を止めると、目の前の書類整理に集中した。

サトコ

「お疲れ様です」

石神

ああ

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書類の整理が終わり、帰り支度をしながらクリスマスのことを考え始める。

(石神さんの喜ぶことをしたいけど、何がいいかな)

(とりあえず、当日の予定だけでも聞いておいた方がいいよね)

サトコ

「あの‥」

口を開きかけたその時、石神さんの声が重なる。

石神

サトコ、24日は空いているか?

サトコ

「えっ?」

石神

‥なんだ、その反応は

サトコ

「すみません、ちょうど私もクリスマスの予定を聞こうと思っていたので」

石神

そうか‥

石神さんは目を細めると、言葉を続ける。

石神

23日までは捜査に出るが、予定通り終われば24日に時間ができる

一緒に出掛けるか?

サトコ

「はい!」

満面の笑みで返事すると、石神さんは口元を緩めた。

石神

去年のクリスマスは遅れてしまったから、今年はサトコの好きなことをしよう

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<選択してください>

A: 一緒にいられるだけで充分

サトコ

「私は石神さんと一緒にいられるだけで充分です」

石神

お前な‥

石神さんは苦笑し、私の頭をポンッと撫でる。

石神

こういう時くらい、素直にやりたいことを言え

サトコ

「やりたいこと‥」

(キャンドルナイトが気になるけど‥)

それ以上に、忙しい石神さんが楽しめることをしてほしいという気持ちが大きかった。

サトコ

「これが私の素直な気持ちです。一緒にいられるだけで、幸せですから」

「石神さんは何がしたいですか?」

石神

そうだな‥

B: キャンドルナイトに行きたい

サトコ

「さっき雑誌でみたんですが‥」

キャンドルナイトと言いかけて、口を閉ざす。

石神

どうした?

サトコ

「いえ‥」

石神さんは前日まで捜査があると言っていた。

(遠出とか、あまり無理はしてほしくないし‥)

(それに、今年は石神さんのやりたいことを優先したい)

サトコ

「石神さんは何がしたいですか?」

石神さんは少し考える風にして、口を開く。

C: 石神さんは何がしたいですか?

サトコ

「石神さんは何がしたいですか?」

石神

俺はお前の意見が聞きたい

恋人のしたいことは、叶えてやりたいからな

石神さんの柔らかい眼差しに、笑みがこぼれる。

(石神さんは、いつも私の意見を尊重してくれるんだよね)

恋人の優しい気遣いに、胸が温かくなる。

(だけど‥)

サトコ

「石神さんのしたいことが、私のしたいことですから」

石神

サトコ‥

石神

それなら‥軽井沢のコテージに行かないか?

サトコ

「えっ、コテージですか?」

石神

お前と行きたい所があるんだ

久しぶりに、ふたりでゆっくり過ごそう

(コテージで一緒にクリスマスを過ごせるんだ‥)

サトコ

「はい!」

石神さんの提案に、私は笑顔で頷いた。

【科警研】

数日後。

莉子

「サトコちゃん、いらっしゃい」

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サトコ

「お疲れ様です。頼まれていた書類です」

莉子

「ありがとう」

「ねぇ、よかったらお茶を飲んでって?サトコちゃんと秀っちの話が聞きたいわ」

莉子さんはおちゃめな笑みを浮かべ、紅茶を淹れてくれる。

莉子

「それで、最近秀っちとはどうなの?」

サトコ

「えっと‥クリスマスに軽井沢のコテージに出かける約束をしました」

莉子

「あら、いいわね」

「秀っちも忙しい人だし、サトコちゃんが癒してあげなきゃ♪」

楽しそうに微笑む莉子さんに、私はあることを思い出す。

(そういえば、まだプレゼントの用意をしてなかったっけ)

(莉子さんに相談してみようかな)

サトコ

「莉子さん、石神さんのプレゼントですが‥何がいいと思いますか?」

莉子

「そうね‥」

莉子さんはふいに妖艶な笑みを浮かべると、私の唇を人差し指でつーっと撫でる。

莉子

「もちろん、コレじゃないかしら?」

<選択してください>

A: やっぱり自分で考えます

(も、もしかして‥)

莉子さんのその微笑に、私の顔は一瞬で熱くなる。

(私から石神さんを誘っ‥って、いやいやいや!そんなの、恥ずかしすぎる!)

サトコ

「やっぱり自分で考えます」

莉子

「あらあら、そんなに顔を真っ赤にしちゃって‥」

「冗談に決まってるじゃない」

サトコ

「うぅ‥」

楽しそうに笑う莉子さんを、恨めしい目で見る。

B: コレって、まさか‥

(コレって、まさか‥)

(じ、自分から石神さんを誘えとか、そういうこと‥!?)

サトコ

「私が石神さんを‥」

(確かに石神さんからの方が多いけど‥)

一番最後に、石神さんと過ごした夜を思い返す。

(あの時も、石神さんは‥)

(って、そうじゃなくて!)

莉子

「サトコちゃんって本当に面白いわね」

サトコ

「り、莉子さん‥!私、どうすれば‥」

莉子

「ふふっ、安心して?今のは冗談だから」

C: コレってなんですか?

サトコ

「コレってなんですか?」

莉子

「そんなの、決まってるじゃない」

サトコ

「?」

莉子さんは私の耳に唇を寄せて、そっと囁く。

莉子

「秀っちも男よ?好きな子から誘われて嬉しくないわけないじゃない」

「たまにはサトコちゃんからっていうのもアリだと思うわ」

サトコ

「私からって‥」

「ええええっ!?」

(私が、石神さんを‥誘っ‥‥)

混乱しながらも、ついつい想像してしまう。

(石神さんは驚きながらも、優しく私を受け入れてくれて)

(それで私たちは‥って、何考えてるの!)

サトコ

「き、却下です!」

莉子

「そう?名案だと思ったんだけど」

莉子さんはいたずらに微笑みながら、肩をすくめる。

莉子

「んー、普通のプレゼントとなると‥」

「この前秀っちに会った時、ネクタイが垂れて邪魔そうにしていたわね」

サトコ

「あっ‥」

(確かにその仕草見たかも‥!)

石神さんの手伝いをしていた時の事を思い出す。

サトコ

「それじゃあ、ネクタイピンとかですか?」

莉子

「そうね。ネクタイピンの贈り物には『あなたを見守ります』って意味があるし」

「サトコちゃんたちにピッタリなんじゃないかしら」

(あなたを見守ります、か‥)

今の私は、石神さんに見守られてばかりだけど‥

(いつか私も、そうなれたらいいな)

【寮 自室】

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寮に戻ると、ネットで有名店のお取り寄せプリンを注文する。

(石神さんといったら、やっぱりプリンだよね)

(ここのプリンはかなり人気みたいだし‥‥)

石神さんの喜ぶ姿を想像するだけで、頬が緩みそうになる。

こうして石神さんのことを考えている時間は、とても幸せだった。

(せっかくだし、何かサプライズもしたいな)

注文が終わると、クリスマス特集のサイトを見て回る。

サトコ

「あっ‥」

(キャンドルナイトだ。莉子さんも前に行ったことがあるって言ってたよね)

莉子

『キャンドルナイトには “ふたりで一緒に見たら幸せになれる” ってジンクスがあるのよ』

(憧れるけど‥それはまた、いつかの夢にとっておこう)

(今回は石神さんが楽しめるプランを考えたいもんね)

それから別のサイトを見ていると、とある文字で目を止める。

サトコ

「アートアクアリウム‥?」

アートアクアリウムとは、イルミネーションで彩られた水槽に魚が展示されるものらしい。

(へぇ、クリスマスイブ限定なんだ)

(それに、珍しい魚や石神さんの好きな熱帯魚も展示されるみたいだし‥)

サトコ

「‥決めた」

(サプライズはこれにしよう!)

私は早速サイトを通じて、チケットの予約をする。

サトコ

「これで、よし」

(数日後にはチケットが届くみたいだし‥)

(ふふっ、喜んでくれるといいな)

to  be  continued

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