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誘惑ランジェリー 難波 カレ目線

【神戸】

サトコと久しぶりの旅行。
神戸の街をあちこち見て回りながら、目指す中華街にようやくたどり着いた。

サトコ
「わぁ···あれもこれも美味しそう!」

サトコはあちこちの露店を覗いては、いちいち歓声を上げている。

(ただの軽い腹ごしらえのつもりだったが、こんなに喜んでもらえるとはな)

思いがけないサトコの反応に、俺もついつい嬉しくなる。

難波
で、次はどこで何を食う?

サトコ
「そうですねぇ···」
「まずはそこで肉まんを食べて、その後、さっきのタピオカドリンクまで戻りましょう!」

難波
いつにも増して食欲旺盛だな

サトコ
「だって、せっかくの神戸ですよ?」

俺の手を引いて弾むように歩き出したサトコの肩口から、ブラの紐がはみ出した。

難波

(おいおい···そんなもん、あんまり気安く見せてくれるなよ)

俺はブラの紐すら他の男には見せたくないと、慌ててサトコの肩に手を掛ける。

難波
なぁ、あれはどうだ?あっちにある、焼き小龍包ってやつ

さり気なく方向を変えさせながら、サトコの肩口を整える。

(俺としては嫌いじゃねぇが、街歩きをするにはちょっと襟元が開きすぎなんだよな···)

我ながら、自分の独占欲の強さに呆れるくらいだ。

サトコ
「本当だ。あれも美味しそう···肉まんと小龍包、どっちにしましょう?」

難波
せっかくの神戸なんだろ。気になったもんは全部食うぞ

サトコ
「ですね!」

またサトコは弾むように歩き出す。

(人の心配も知らないで、無邪気だな‥)

俺は思わず、心の中で苦笑を漏らした。

【ショッピングモール】

夜景がキレイという評判のレストランで食事を終えると、
なぜかサトコに強く喫煙所行きを勧められた。

(あんなサトコ、珍しいよな)
(土産を買うとか言ってたが···そういう訳でもなさそうな···)

変なところで刑事の勘が働いてしまう。

(まったく、嫌なクセだな···まあ、サトコのことだ。何か事情があるんだろ)

そんなことを思いながら勧められるままに喫煙所には行ったが、
タバコを吸い終わって出て来てもまだ待ち合わせの時間まで10分以上残っていた。

(もう一本って気分でもねぇし、たまには本屋でも行ってみるか···)

ぶらぶらと歩き出すと、すぐ近くからサトコのものらしき声が聞こえてきた。

サトコ
『そっちのも見せてもらえますか?』

難波

声の方を見ると、サトコがランジェリーショップで下着を選んでいる。

(おっと、そういうことか···そりゃ、変な気も遣いたくなるわけだよな)

サトコに気付かれないように店の前を通り過ぎ、
本屋に入って神戸の旅行ガイドブックを手に取った。

(明日は異人館の方に行きたいとか言ってたっけか···)

ランチの場所でも調べておこうとページを開いた、その直後。

サトコ
「室長、ちょっと来てもらってもいいですか?」

難波
ん?

突然本屋にサトコが現れ、強張った顔で俺の手を引くと、店から連れ出した。

難波
どうした?切羽詰まった顔して

サトコ
「どうにも決められなくて···」

(下着の話か?それとも···)

難波
そんなに重要な土産なのか···?

とぼけたふりをして言うと、サトコは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

サトコ
「い、いえ、お土産ではなく···私の、下着···です···」
「忘れちゃったので買いたいんですけど、どれがいいか、室長が決めてくれませんか···?」

(お、俺がサトコの下着を···!?)

思いがけない展開に、すぐには返事が躊躇われた。
でもサトコは、すがるような目で俺をじっと見つめている。

(そんな顔で頼まれたら、嫌だって突き放す訳にも···)

難波
しょうがないな。どこだ?

【ランジェリーショップ】

さり気ない風を装ってはいたが、俺の内心は相当動揺していた。

(下着屋はさすがに、入ったことねぇな···)

カラフルなレースやリボンの中にいるおっさんは、明らかに周囲から浮いている。

(客の視線が痛ぇぞ···)
(でもここでうろたえて挙動不審になると、本当にただの変なおじさんだ)
(こういう時こそ、平常心、平常心···)

サトコ
「一応、この2種類のどちらかという所までは絞ったんですけど···」

見せられた候補の下着をチラリと見る。
ひとつはいつものサトコらしいシンプルな可愛い系、
もうひとつはサトコらしからぬ大人っぽさのあるデザインだ。

(サトコがこういうのを選ぶとは意外だな。俺が選んだっていうなら納得だが···)

そこまで考えて、ハッとなった。

(もしかしてサトコは、俺の好みを考えてこれを···?)

サトコが悩んだ理由がようやく分かった。
サトコは恐らく、俺のために2つ目の候補を選んだものの、
普段身に着けている下着とあまりの違いに、冒険すべきかどうか迷っているのだろう。

(俺のために悩んじゃって、かわいいな···)

思わず頬が緩みそうになり、慌てて引き締める。
こんな所でニヤけたら、それこそただの変態だ。

難波
こっちだな

俺はできるだけクールに、迷わず大人っぽい方を指差した。

(せっかく悩んでくれたんだから、背中を押してやらねぇと)

サトコ
「じゃあ、こっちにします」

サトコが決意するのを待って、俺はすぐに店員を呼んだ。

難波
これでお願いします

商品とクレジットカードを渡すと、俺からのプレゼントに恐縮するサトコを残して、
一足先に店を出る。

(さっき吸ったばかりなのに、また無性にタバコが吸いたい気分になっちまったな···)

【脱衣所】

旅館に着くと、俺たちはさっそく風呂に入ることにした。
恥ずかしがるサトコが先に風呂に向かった後で、ゆっくりと服を脱ぎ始める。

(いつになっても恥ずかしがって、初々しいな···)

男の俺には分からないが、こういう場合、やはり女の子には色々と心の準備があるんだろう。

難波
さて···

脱いだものをカゴに押し込もうとして、隣のカゴに整然と畳まれたサトコの服が目に入った。
その傍らには、まだ店の袋に入ったままの新しい下着も置いてある。

(女の下着ねぇ···)

最近は、自分の好みがどんなかなんて考えたこともなかった。

(そういや昔は、いかにも色っぽいやつが好きだった時期もあったが···)
(年齢が上がってくると、逆にそれだけじゃない気がしてくるから不思議だよな)
(そりゃ、ガキっぽいよりは大人っぽい方がいいに決まってるが)
(正直な所、好きな女が気に入って身に着けているもんなら何でもいいってのが本音だ)

そう考えると、別に自分の好みに合わせた下着を選ばなくても良かったのかもしれないと、
今さらながら思い始めた。

(お前が身に着けているならどっちでもいいって言ってやればよかったか···)
(どっちがサトコに似合うかって言われりゃ、今はまだかわいい方だし···)
(サトコだって、本当はそっちの方が落ち着くんだろうしな)

難波
でもまあ、あんな所でそんなこと言うのも、さすがにこっぱずかしいだろ

下着屋にいたときの、とてつもない居心地の悪さが思い出される。

難波
うーん、ないな···

俺は一人で苦笑しながら呟いて、風呂場への扉を開いた。

【露天風呂】

難波
おお、やっぱり温泉は気持ちいいな~
この白濁具合、堪らんねぇ

サトコ
「そ、そうですね···」

お湯の中でゆっくりと俺の方に向き直ったサトコは、
温泉のせいか恥ずかしさのせいか、ほんのりと頬を赤らめていた。
そんなサトコをもっと困らせてみたくて、
下着屋では恥ずかしくて言えなかったことをつい言ってしまいたくなる。

難波
あのデザインは、ひよっこにはまだちょっと早かったかもな~
別に、お前が好きなものを···

サトコ
「な、なんですか、それ···!」

言葉が核心まで至る前に、先にサトコに過剰反応されてしまった。

(ちょっと切り出し方を間違ったか···)

難波
ウソ、ウソ···きっと似合うよ

慌てて方向修正を試みるが、どうやらサトコのデリケートな部分を刺激してしまったようだ。

(あー、怒らせちまったか···まだまだ未熟だな、俺も···)
(余計な前置きなんかしねぇで、ストレートに気持ちを言えばいいものを···)

【部屋】

翌朝、目を覚ますと隣のサトコはまだすやすやと心地よい寝息を立てて眠っていた。

(化粧をしてねぇとますますひよっこだな···)

普段よりも心なしかあどけない顔をじっと見つめ、微笑んだ。

(昨日の夜はあんな痴話げんかみたいなことになっちまったが···)
(···あれもまた、今回の旅行のいい思い出か)

昨夜の出来事が、甘酸っぱく蘇る。

サトコ
『あの···大丈夫ですか?私···』

難波
······

(似合うかどうか、相当気にしてたんだな)
(そりゃ、どっちかと言われれば、まだ軍配はかわいい方に上がるが···)

恥らう姿が絶妙に下着のテイストとマッチする瞬間があって、
それはそれでドキリとさせられる。

難波
この下着···俺のためなんだろ?

サトコ
『そ、それは···』

難波
サトコの好みは、もう一つの方だもんな

サトコ
『······』

俺のために頑張ろうとするサトコの健気な姿がかわいくて、俺は想いを込めてキスを落とした。

(これからはどんどん、あの下着が似合うような女になっていくんだろうな···)

その変化が楽しみでもあり、ちょっと不安でもある。

難波
いくら大人の女になっても、俺だけのひよっこでいてくれよな···

思わず微笑み、まだ眠っているサトコの髪をそっと撫でた。

(これから先もずっと、お前の一番近くで成長を見守り続けたいんだ、俺は···)

難波
さて···いっちょ、朝風呂でも···

ガバッと起き上ると、布団の中で浴衣をはだけさせているサトコの姿が露わになった。

難波
おいおい···朝から刺激的だな···

布団から抜け出すと、浴衣から飛び出したサトコの真っ白な足を隠すように、
そっと布団をかぶせる。

(まったくお前ってヤツは···)
(安心しきってくれてるのは嬉しいが、ブラ紐だの脚だの、あんまり出し過ぎてくれるなよ)
(俺だからまだいいようなものの、これが若い男だったら···)

頭に浮かびかけた想像を振り切るように、俺は冷たい水を一気に喉に流し込んだ。
気持ちがシャキッとしたところで、改めてサトコの寝顔を覗き込む。

難波
頼むから、あんまりおっさんを翻弄してくれるなよ?

サトコ
「んん···」

もぐもぐ言っているサトコの鼻先に軽くキスを落として、
俺は、穏やかな朝の光に微笑んだ。

Happy  End

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