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刑事が浴衣に着替えたら 颯馬

【お祭り会場】

颯馬さんとの待ち合わせに、少し早く着いてしまった。

(浴衣の着付け、大丈夫だよね)
(鳴子が着付けできてよかった。私ひとりじゃ無理だっただろうな)

颯馬
おや、待たせてしまいましたね

振り返ると、浴衣姿の颯馬さんがこちらに歩いてくる。
普段の服装や教官の制服とも違った色気に、くらくらしそうだった。

(こ、これは···!)
(前にも見たことあるけど···やっぱり素敵すぎる···!)

颯馬
どうしました?

サトコ
「見惚れてました···」

正直に言うと、私の前に立った颯馬さんがクスッと笑う。

颯馬
貴女も素敵ですよ

サトコ
「あ、ありがとうございます···鳴子に着付けてもらったんです」
「颯馬さんは自分で着付けを···?」

颯馬
ええ。何度か着る機会があったので

サトコ
「す、すごい···!」

颯馬
慣れれば簡単ですよ

穏やかに笑う颯馬さんは、スマートに浴衣を着こなしている。

(簡単なんて言ってるけど、そんなことないよね···さすが颯馬さん、なんでもできるんだな)
(こうしてお互いに浴衣を着て、お祭りを歩けるなんて···)

普段は周りの目を気にしてのデートが多いので、やっぱり嬉しい。
早速、気になる露店を見て回ることにした。

金魚すくいや型抜きなどを楽しんだあと、ふと胸元を見ると浴衣が少し乱れてしまっていた。

(はしゃぎすぎたかな···トイレで直してくる···?)
(でも自分で着付けできないのに、下手にいじったらとんでもないことになるんじゃ)

颯馬
サトコさん、少し休みませんか?

サトコ
「えっ?」

颯馬
疲れたでしょう。向こうへ行きましょうか

サトコ
「あ、はい···」

颯馬さんが、私の手を取って歩き出す。
少しずつ露店から離れ、ひと気も徐々に減っていき···

颯馬
ここなら大丈夫ですね

そう言って颯馬さんが立ち止まったのは、明かりもほとんど届かない、神社の近くだった。

サトコ
「颯馬さん···?」

颯馬
···じっとして

颯馬さんの手が伸びてきて、私の胸元にそっと触れる。
指先で浴衣の合わせをなぞると、艶っぽく微笑んだ。

颯馬
すぐに済みますから

サトコ
「······!」

(まさか、こっ、こんなところで···!?)

艶っぽい笑みを浮かべ、颯馬さんは素早い動きで私の浴衣を直した。
乱れた浴衣があっという間にきちんと整えられ、呆気に取られてしまう。

サトコ
「···え?」

颯馬
もう大丈夫ですよ

サトコ
「ゆ、浴衣···」

颯馬
ええ。少し着崩れしていたので、直しました
···何をされると思ったんですか?

サトコ
「······!」

勘違いしていたことに気付き、恥ずかしさに顔から火が出そうだ。

サトコ
「あの、あのっ···」

颯馬
···もしかして

私の腰を抱き寄せると、颯馬さんが長い指で首にかかった私の髪をそっと払う。
首筋に唇を寄せて、チュッと音を立てて肌に吸い付いた。

サトコ
「っ······」

颯馬
こういうことを期待してた?

サトコ
「ち、ちが···」

違います、とはっきり言えないのがまた恥ずかしい。
今度は耳たぶにキスをすると、颯馬さんが低く囁いた。

颯馬
この続きは、またあとで

サトコ
「そ、颯馬さん···」

颯馬
さて···行きましょうか

私に手を差し伸べて、颯馬さんが微笑む。
このあとのことを想像して再び頬が火照るのを感じながら、その手を取ったのだった。

Happy End

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