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黒澤 出逢い編 1話



【クラブ】

入校式を終えた数時間後。
私は、石神教官に連れられて怪しげなクラブの前に来ていた。

石神
今回は、この店に潜入してもらう
ターゲットは新種の麻薬を扱う売人で、かなりの女好きだそうだ
お前はターゲットと直接接触し、親元を探るための関係性を築け

サトコ
「私ひとりで犯人と接触するんですか!?」

石神
俺が一緒に行ったら怪しまれるに決まっているだろう

(でも「犯人と接触」なんてしたことないんですけど)
(これまでずっと交番勤務だったわけだし)

石神
首席というのは、なにかの間違いか?
やる気がないなら、帰れ

サトコ
「···っ、やります!」

(そうだ···私、名誉挽回したくて石神教官を選んだんだ)
(初対面で怒られたまま、終わりたくなかったから)

石神
緊急時は俺が助ける。肩の力を抜いて行け

サトコ
「はい!」

私は、覚悟を決めて足を踏み出した。



【店内】

マスター
「いらっしゃいませ」

渋い声のマスターに軽く会釈をして、まずは店内をぐるりと見渡した。

(ターゲットは麻薬の売人でかなりの女好き)
(左の手の甲にタトゥーが入ってて、長髪をまとめた男···)
(···いた、ボックス席だ)

サトコ
「あの···ここ、いいですか?」

長髪の男
「あ?」

サトコ
「カウンター、居づらくなってしまって···」
「その、カップルがイチャイチャしていて···」

長髪の男
「···ふん。好きにしろ」

サトコ
「ありがとうございます」

(よかった、接触成功だ)
(あとは、この人と親しくならないと···)

ところがだ。

サトコ
「それでですね!」
「今日は朝からあれよあれよと新しい仕事を振られちゃって」
「何がなんだか分からないままなのに、上司は厳しいしもう···」
「お酒くらいのんびり飲ませて欲しいんですよね!」

長髪の男
「······」

サトコ
「···あ、ごめんなさい。ペラペラと」

長髪の男
「···ハハ、あんた相当溜まってんだな」

ターゲットは唇を歪めると、何か思いついたように顔を近付けてきた。

長髪の男
「何なら慰めてあげようか?」

サトコ
「お酒に付き合ってもらえれば十分ですよ」

長髪の男
「まぁそう言うなよ。いいものがあるんだ」

(いいもの···まさか麻薬!?)
(ど、どうしよう)
(関係性を築くだけのはずが、すごい展開に···)

長髪の男
「あっちの部屋に置いてあるから見せてやるよ」
「ほら、立てって」

(えっ、移動するの?)
(でも、ここで断ったら怪しまれそうだし、せっかく接触できたわけだし···)
(···行くしかないか)

私は勇気を振り絞って、ターゲットについて行った。
その結果···

【個室】

サトコ
「ま、待ってください!」
「いいものを見せてくれるんじゃ···」

長髪の男
「そう焦るなよ。まずは楽しもうぜ」
「アンタも、そのつもりで着いてきたんだろ」
「ほら、さっさとヤろうぜ」

サトコ
「な···っ」

怯んだ一瞬の隙を突かれて、ソファーに押し倒された。

サトコ
「や、やめてください!」

長髪の男
「うるせーな、黙ってろよ」
「ったく、メンドーな服、着やがって···」

男の指が、私のブラウスのボタンにかかる。

サトコ
「···っ、やめて···!」

長髪の男
「······」

サトコ
「やめてくださいってば!」

(冗談じゃない)
(こんなの絶対に許せない···っ)

サトコ
「逮捕します!」

長髪の男
「·········は?」

(違っ···これじゃマズい!)

サトコ
「た、逮捕されますよ!警察の人に」
「強制わいせつ罪とか、なんかそういうので···」

長髪の男
「うるせーな、逮捕逮捕って」
「来るわけねーだろ、こんなとこに警察なんて···」

ドンドンッと殴るようなノック音が響き渡った。

石神
すみません、開けてください
先ほどこの部屋に忘れ物をしてしまったようで

(この声、石神教官?)

「警察の人」が来てくれたおかげで、私はこの場を逃げ出すことができた。
けれども、それは潜入捜査の打ち切りを意味するわけで···


【車内】

サトコ
「先ほどは申し訳ございませんでした」

石神
何に対しての謝罪だ

サトコ
「任務を失敗してしまったことへの謝罪です」

石神
ようやく本来の目的を思い出したか

(うっ···)

サトコ
「で、でも、あの男のやろうとしたことは犯罪で···」

石神
卑劣な行為に屈しろ、とは言わない
だが、任務は任務だ
屈さずに任務を遂行する手段を、君は考えるべきだった

石神教官は冷ややかな顔つきのまま、車を路肩に停めた。

石神
ここで降りろ

サトコ
「え···」

石神
その先に駅がある。学校に戻れ

サトコ
「石神教官は···」

石神
答える必要はない

サトコ
「······」


【駅前】

教官の車が走り去ったとたん、身体中の力がドッと抜けてしまった。

サトコ
「···なんだかなぁ」

潜入捜査を失敗したのは間違いない。
じゃあ、あの場はどうするのが正解だったのだろう。

(「ターゲットに身を任せる」?···ありえない、絶対にムリ)
(じゃあ、暴れて逃げる?それとも脇腹をくすぐるとか?)
(ていうか、そもそもふたりきりになったのが失敗?)
(でも、それだと関係性を築けない可能性が···)

サトコ
「あああーっ」

(わかんない!正解が分からないですけど!)

サトコ
「こんな調子で夢を叶えられるのかな、私···」

???
「叶えられますよ」

(えっ?)

女性
「大丈夫、信じていれば必ず夢は叶います」
「現状はどうあれ、まずは信じることが大事なんです」

サトコ
「そ、そうですか」

(もしかして、さっきの独り言、聞かれちゃったのかな)
(だとしたら恥ずかしい···)

女性
「というわけで、今、お時間ありますか?」
「すぐそこのビルで、あなたにピッタリのセミナーを開催中なんです」

(···えっ?)

女性
「あなたのような、夢を叶えたい女性が大勢集まっています」
「皆、セミナーを受講することによって夢を叶えているんですよ」

サトコ
「い、いえ、私は···」

女性
「大丈夫、皆さん、とても優しいですから」

ガシッ、と腕を掴まれた。

女性
「特に講師の『フレンドリー伊坂』先生はとても素晴らしい方で···」

(いやいや、ムリだから。セミナーなんて絶対に行かないから)
(こうなったら、もはや力業で···)

???
「おーっとぉぉぉ!」

いきなり、私とセミナー勧誘員の間に男の人が転がり込んできた。

???
「痛たた···」
「まいったなぁ。何もないところで転ぶなんて」

サトコ
「大丈夫ですか?」

???
はい、大丈···
ああっ、やっと見つけました!
アナタ、ボクの運命の人ですね!?

(えっ!?)

???
よかった、ずっと捜してたんです!
まさか、前前前···前···前世ぶりに会えるなんて

男は感極まった様子で、私に抱きついてきた。

(ぎゃあっ!)

サトコ
「や、やめてください!いったい何を···」

前世男
話合わせて

(えっ)

前世男
今だけです。とにかく合わせて

男は素早く耳打ちすると、すぐに私の身体を離した。

前世男
「すみません。つい興奮してしまって」
「でもアナタ、ボクの運命の人ですよね?」

<選択してください>

A: たぶん···

サトコ
「た、たぶん···」

前世男
やっぱり!アナタなら分かってくれると思っていました

男は私の手をとると、ブンブン振り回すように握手してきた。

前世男
それでは行きましょうか

サトコ
「えっ、どこに···」

前世男
デートです
まずは、すぐそこのカフェでお茶なんて···

B: 運命の人で間違いない

サトコ
「そ、そうですね。運命の人で間違いないです!」

前世男
やっぱり!絶対にそうだと思ったんです
出会った瞬間に、ビビビッときましたから

男は人好きするような笑顔を浮かべると、私の肩に手を回してきた。

前世男
それでは行きましょうか

サトコ
「えっ、どこに···」

前世男
デートです
まずは、すぐそこのカフェでお茶なんて···

C: 人違いでは?

サトコ
「あの、人違いでは?」

前世男
あれ、まだピンときませんか?
困ったな。じゃあ···
まずはデートしましょうか

(えっ?)

前世男
場所はカフェがいいかな。そこでゆっくりお茶なんて···

女性
「待ってください!」

勧誘員の女性が、我に返ったように割り込んできた。

女性
「彼女は今、大事な時期なんです!」
「夢を叶えようとしているんです!」
「そのためにも、これから私たちのセミナーに···」

前世男
まあまあ、今日はボクに譲ってくださいよ~
なにせ、前前···ええと···
とにかく、久しぶりに彼女に会えたんですから
ね、アナタもその方がいいですよね?

男が、ウィンクしてきた。
そこで、ようやく私は彼の意図に気付くことが出来た。

(そっか、勧誘を追い払おうとしてくれているんだ)
(だったら···)

サトコ
「行きます!あなたとお茶します!」

女性
「···っ!そんなことでは夢はかないませんよ!?」

前世男
まあまあ、そう怒らないで
恋を犠牲にして叶える夢なんて、どうかしてると思いますよ★

そんなわけで、私は無事にセミナーの勧誘から逃れることが出来た。
そして、私と前世男さんはその後カフェにーー

ーー行くはずもなく。

サトコ
「先ほどはありがとうございました」
「本当に、助かりました」

前世男
いえ、お役に立てたようで何よりです
ああいう勧誘ってかなりしつこいですもんね
じゃあ、オレはこれで

(え···)

なぜだろう。
彼の笑顔に、懐かしさを覚えたのは。
理由なんて分からない。
ただ、この笑顔を「前から知っていた」ような気がして···

サトコ
「あ、あの!」
「私たち、どこかで会ったことありませんか?」

前世男
??

サトコ
「なんていうか、その···」
「あなたのこと、前から知っているような気がして···」

前世男
そうですか?じゃあ···
本当に前世で会っていたのかもしれませんね

サトコ
「!」

前世男
なーんて。それじゃ、お気をつけて★

(前世で···彼と······)
(前世で·········)

サトコ
「って、そんなわけあるかーっ!」

(私ってば、初対面の人になんてことを···)
(あれじゃ、まるでナンパしたみたいだよ)

でも、本当にあの笑顔を知っている気がしたのだ。
偶然通りかかって、助けてくれただけの人のはずなのに。

(ダメだ、恥ずかしすぎる)
(なんであんなこと言っちゃったんだろう、私)

とはいえ、もう二度と会うこともない相手だ。
今さらあれこれ考えたところで何かが変わるわけでもない。

サトコ
「もういい。忘れよう···うん」

(それより、帰ったら今日の反省会をしなくちゃ)
(このままだと、石神教官に見捨てられてしまうよ)

さて、翌日から本格的な学校生活が始まった。
石神教官の「専属補佐官」にも正式に着任し、警察官として前途洋洋ーー

となるはずだったんだけどーー


【教場】

後藤
では、次···少し難易度の高い問題だが···
氷川、解答を

サトコ
「は、はい···ええと···」

後藤
······

サトコ
「ええと···」

後藤
答えられないのか?

サトコ
「···申し訳ありません」

後藤
では、分かる者

訓練生たち
「「はい」」

後藤
···思ったより多いな。では佐々木

鳴子
「はい。この場合、テキスト5ページの事例を応用して···」

(うう···ダメだ、全然ついていけない)

【グラウンド】

(でも、体育系なら···)

サトコ
「はぁ···はぁ···」

加賀
てめぇら、チンタラ走ってんじゃねぇ
特にそこのクズ!
追加でもう10周だ!

サトコ
「はぃぃぃぃっ」

(うそ···私だけ···?)

【教場】

そして、ついに···

成田
「昨日の小テストを返す」
「なお、赤点が1名いるので、その者は特別課題を提出するように」

男子訓練生A
「えっ、赤点?」

男子訓練生B
「昨日の小テスト、楽勝だったよな」

(うっ、嫌な予感···)

成田
「赤坂···上島···衛藤···」

男子訓練生C
「お前、何点?」

男子訓練生D
「93点」

男子訓練生C
「くそっ、負けた!俺は89点」

成田
「···次、女子。佐々木」
「まあ、女子にしては悪くなかったな」

鳴子
「ありがとうございます」

成田
「氷川」

サトコ
「···はい」

成田
「所詮、女子は女子といったところだな」
「明日中にこの課題を提出するように」

鳴子
「えっ、サトコが?」

(やっぱり···)


【カフェテラス】

そんなわけで昼休み···

サトコ
「はぁぁ···」

千葉
「そんなに落ち込むなよ」
「たまたま苦手科目だっただけだろ」

鳴子
「そうそう、次のテストは絶対に大丈夫だって」
「なんたってサトコは首席なんだから」

(「首席」か···それって本当なのかな)
(これまで私が「1番」を取れたの、地元の水泳大会くらいなんだけど)
(勉強に関しては、せいぜい「中の上」程度で···)

鳴子
「ところで聞いた?例の連続不審死事件のこと」

千葉
「ああ、公安事案になるかもしれないってヤツだろ」
「事件の背景に、監視対象団体がいるらしくて···」

ふたりの会話をぼんやり聞いていると、男子訓練生が駆け込んできた。

男子訓練生A
「あ、いたいた!」
「氷川、石神教官が『今すぐ教官室に来い』だってよ」

(うわぁ)

【廊下】

(どうしよう。教官室に行くの、憂鬱すぎるんですけど)
(小テストの件、絶対耳に入ってるよね)
(ていうか、それ以外で呼び出される理由が···)

???
「それでですねー」
「合同飲み会を開催したいんですよ、警護課の皆さんと」

(え、来客中?)

石神
くだらん。なぜ、俺がお祭り課の連中と···

???
「またまた~」
「そのわりに毎回律儀に顔を出してるじゃないですか~」

(···どうしよう、出直した方がいいのかな)
(でも「今すぐ来い」って話だったし···)

サトコ
「···よし、いちおう···」
「石神教官、氷川です」

石神
入れ

(あ、いいんだ。出直さなくても)
(じゃあ···)

サトコ
「失礼しま···」


【教官室】

(えっ、この人···)

???
「あーっ、もしかしてピッカピッカの新人訓練生ですか?」

石神
今季の俺の補佐官だ
氷川、自己紹介を

サトコ
「は、はい!」
「氷川サトコです。よろしくお願いします」

黒澤
黒澤透★永遠のハタチ。またの名を『公安の新しい風』···

石神
余計なことを言うな。黒澤

黒澤
痛っ

石神
氷川、こいつは黒澤だ
お前と同じ歳だが、公安刑事としてのキャリアはお前より上だ

黒澤
つまり先輩ってことなので、ぜひオレを見本に···

石神
する必要はない。むしろ反面教師とするように

黒澤
またまた~、石神さんってば素直じゃないんですから

石神教官に軽口を叩く「先輩」を、私はまじまじと見てしまった。

(···やっぱり、間違いない)
(この人、セミナー勧誘から助けてくれた人だ)

もっとも、彼···「前世男さん」は私のことなんてまったく覚えていなさそうだ。

(仕方ないか。ほんのちょっと口をきいただけだし)
(でも、同じ警察関係者だったなんて、すごい偶然···)

石神
ところで氷川
今日、成田教官の講義で、特別課題を出されたそうだな

(···っ、きた···)

サトコ
「はい、その···1週間で『正』の文字をノート1冊分書けと···」

石神
その課題は提出しなくていい
代わりに、黒澤の仕事に同行しろ

(えっ、黒澤さんの?)

石神
明後日、黒澤は、我々公安の『協力者』と接触する

黒澤
あ、『協力者』っていうのはですね
オレたち公安に情報提供してくれる、スパイみたいな人のことで···

石神
その程度のことはすでに教えてある
氷川、黒澤の仕事に同行して、レポートを提出しろ
枚数は10枚
それを埋められるだけのことを、黒澤から学び取って来い

サトコ
「······わかりました」

【廊下】

(レポート10枚か。ちゃんと埋められるかな)
(大学時代も、レポートとか苦手だったし···)

???
「氷川さーん」

(えっ)

黒澤
よかった、追いついて
明後日、よろしくお願いしますね

サトコ
「···っ、こちらこそよろしくお願いします!」
「いろいろ学ばせていただきます!」

黒澤
ハハッ、そんな勢いよく頭を下げなくても···
マジメなんですねー、氷川さんって

サトコ
「いえ、そんなことは···」
「単に、人一倍頑張らないといけないだけです」
「私、落ちこぼれですから」

黒澤
落ちこぼれ?
氷川さんって首席入校者ですよね?

(うっ···)

サトコ
「い、一応そうらしいんですけど、実際は全然ダメで···」

黒澤
······

サトコ
「最初の潜入捜査も失敗したし」
「講義では、みんなが答えられる質問に答えられないし」
「小テストでも、私だけ赤点で」
「持久走でも、ひとりだけ追加で走らされて···」

黒澤
ハイ、ストップ!

(えっ?)

黒澤
ダメですよー、そんなションボリ顔してたら
どんなに頑張っても、成果が出なくなっちゃいます

(そんなこと言われても···)

サトコ
「じゃあ、どうすればいいんですか?」

黒澤
『笑顔』です

サトコ
「笑顔?」

黒澤
辛い時ほど明るく!
ということで、まずは『笑顔』を浮かべるんです
そうすれば、必ず状況が変わりますよ。··ハイ、笑顔!

サトコ
「!」

黒澤
ほら、笑って笑って

(ええと、作り笑顔でもいいのかな)

サトコ
「こう···ですか?」

黒澤
いい感じです。できればもう少し口角を上げて···

(···こうかな?)

黒澤
惜しい、もう少し···
こうです!

(うわ、すごい笑顔···)
(なんだかお手本みたい···)

サトコ
「···ふふっ」
「アハハハッ」

黒澤
······

サトコ
「あ、すみません!つい···」

黒澤
いいですよ
今のサトコさん、さっきより断然いい顔してますから

(黒澤さん···)
(そうだ、難しい顔してうつむいていても仕方がない)
(だったら笑顔で前を向いた方が、ずっとマシだ)

サトコ
「ありがとうございます。なんだか元気が出ました」
「改めて、明後日よろしくお願いします」

黒澤
こちらこそ。分からないことがあったら何でも聞いてくださいね
なにせ、サトコさんは『運命の人』ですから

サトコ
「そうですね、運命の人···」

(えっ?)

黒澤
よかったです。再会が来世とかじゃなくて

サトコ
「···っ、覚えてくれていたんですか、私のこと」

黒澤
もちろんですよ
でも、石神さんの前で言うのはもったいないでしょ?
せっかく『ふたりだけの秘密』なのに

サトコ
「!!」

<選択してください>

A: そうですよね

サトコ
「そ、そうですよね。秘密ですもんね」

黒澤
ええ、だから···
サトコさんも、誰かに言ってはダメですよ?

サトコ
「···っ、了解です!」

(秘密、秘密···絶対に『秘密』···)
(···よし、心に刻んだ!)

B: からかわないで

サトコ
「か、からかわないでください」

黒澤
からかってなんかいませんよ
こう見えて、かなり本気で言ってますから

サトコ
「は、はぁ···」

(だとしたら、よけいにドキドキするんですけど···)

C: 口説いてる?

サトコ
「もしかして、その···口説いてますか?」

黒澤
さあ、どうでしょう?
実は冗談···と見せかけて···
案外、本気だったりして

サトコ
「···っ」

(ほ、本気!?)

黒澤
ハハッ
意外と顔に出やすいですね、サトコさんって

黒澤
ところで、連絡先を教えてもらってもいいですか?
明後日のこと、いろいろやりとりしたいですし

サトコ
「わかりました。ええと、電話番号とメアドと···」

黒澤
LIDEはやっていますか?

サトコ
「はい、もちろん」

黒澤
じゃあ、これ、オレのQRコードです
それと、念のため、電話番号とメアドも伝えておきますね

黒澤さんの手際がいいおかげで、あっという間に連絡先の交換が終了した。

黒澤
これでいつでも連絡を取り合えますね
では、また明後日会いましょう

サトコ
「はい。よろしくお願いします」

(なんだか不思議な人だな、黒澤さんって)
(先輩のはずなのに、気さくですごく話しやすくて···)
(あ、でも私と同い年だっけ。だとしたら同期?)
(うーん···でも、やっぱり「先輩」って感じだなぁ)

黒澤
······

to be contineud



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