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黒澤 出逢い編 4話



ターゲットを追跡するべく、私たちは十字路を曲がった。
ところが、そこに待ち受けていたのは···

【ホテル街】

(こ、ここって、まさかのラブホ街!?)

黒澤
サトコさん···

いきなり、黒澤さんが私の腰に手を回してきた。

サトコ
「!?黒澤さ···」

黒澤
親しげな『フリ』をしてください
じゃないと、万が一気付かれた時に悪目立ちします

(···っ、そうだ、ここってそういう場所···)

黒澤
それと、歩くスピードを落としましょう
ターゲットの足取りが遅くなっています

(ほんとだ、いつの間に···)

やがて、ターゲットはとあるホテルの前で立ち止まった。
さらに相手の男性と二言三言かわし、そのまま中に吸い込まれていった。

黒澤
···待機決定ですね

サトコ
「は、はぁ···」

黒澤さんの手が、するんと外れた。
距離ができたことにホッとしつつも、妙にいたたまれなさは否めない。

(なんだろう、この感じ)
(「ソワソワ」っていうか「モヤモヤ」っていうか···)

黒澤
気まずいですか?

サトコ
「!」

黒澤
そういう顔をしていますよ、今のサトコさんは
プライベートを盗み見るのは心苦しいなぁって

サトコ
「そ、そんなことは···」
「これも訓練···ですし···」

黒澤
······

サトコ
「···嘘です。本当はすごく気まずいです」

だって、彼女は知らないのだ。
自分のプライベートを、第三者に見られていることを。

サトコ
「せめて彼女がテロリストだったら、割り切れると思うんです」
「犯罪を防ぐため、って思えるから」

黒澤
······

サトコ
「でも、実際はただの『一般市民』で···」
「私だったら、こんなところ、絶対誰にも見られたくなくて···」

黒澤
······」

サトコ
「なのに、どうしてこんなこと···」

黒澤
実際にあるからですよ。一般市民を監視することが

サトコ
「えっ」

黒澤
たとえば『テロリストに狙われる可能性のある人』···
『本人は気付いていないけど、テロリストと繋がってしまった人』···

(あ···)

黒澤
『気まずいもの』なんてたくさん見ます
でも、そこから目を背けたら、大事な情報を取りこぼすかもしれない

サトコ
「······」

黒澤
オレたちが追い掛ける事件は、一度発生すると大規模なものになる
だからこそ、情報の取りこぼしは許されません
たとえ、どれだけ罪悪感を抱いたとしても

(黒澤さん···)

サトコ
「それが、今回の訓練の本当の目的なんでしょうか」

黒澤
さあ、どうでしょう
でも、そう考えることで『ココ』は変わりますよね?

黒澤さんは、自分の左胸を軽く叩いた。
熱い鼓動を伝えてくる部分を。

サトコ
「···分かりました」
「私も、罪悪感と戦ってみます!」

(そうすることで夢に近付けるなら)
(「刑事になるためには必要だ」って言うのなら···)

黒澤
それじゃ、そろそろ待機場所を決めましょうか
いつまでもここにいるのはマズいですし

サトコ
「そうですよね。このまままじゃ不審に思われて···」


「ちょっと、あんたたち!」
「さっきから、何をウロウロしてるんだい!」

突然の怒声に、口から心臓が出そうになった。


「そこのあんただよ、待ちなさい!」

(マズい、恋人のふりをしないと···っ)

ドンッ!

黒澤
!?

サトコ
「す、すみません!私たち、このとおり恋人同士で···」
「ただ今、ホテルを物色中でして!」


「あんたじゃないよ、成人済み」

(えっ···)


「そこの高校生!さっきから待ちなさいって言ってるだろう!」

男子高校生
「はぁっ?うるせー、ババア」


「ババアじゃないよ!あんたたち、学校はどこだい?」
「ここは未成年が来るような場所じゃないんだよ!」

(なんだ、私たちじゃないんだ···)
(びっくりしたなぁ、もう···)

サトコ
「!!!」

(そ、そうだ、私···自分から黒澤さんに抱きついて···)
(しかも、こんな···身体とか超密着して···)

サトコ
「あの、これは···」

黒澤
いやぁ、ビックリですよ
サトコさんって結構積極的なんですね★

サトコ
「違···っ」

黒澤
なんなら、待機場所、そこのホテルにしちゃいます?
もちろん『ご休憩』ってことで

<選択してください>

A: ダメです!

サトコ
「そんなのダメです!今は訓練中です」

黒澤
ハハ、冗談ですよ、冗談
本当に休憩したら、オレ、後藤さんに滝行に連れて行かれちゃいます

サトコ
「···っ、そうですよね」
「すみません、本気で言い返しちゃって···」

黒澤
謝る必要はありませんよ
今のは、からかったオレが悪いんですから

B: 黒澤が望むなら

サトコ
「く、黒澤さんが望むなら···」

黒澤
······
ああ、その···今のは冗談だったんですけど
さすがに訓練中にそういうのはどうかと思いますし···

サトコ
「あっ、そ···そうですよね」

(うわ、バカ···!)
(恥ずかしすぎるんですけど!)

C: 冗談ですよね

サトコ
「冗談···ですよね?」

黒澤
さぁ、どうでしょう

(えっ、違うの!?)
(じゃあ、どうやって断れば···)

黒澤
···アハハッ

サトコ
「!?」

黒澤
ごめんなさい。冗談ですよ、冗談
サトコさんが焦ってるから、からかいたくなっちゃいました

(なんだ···よかった···)

黒澤
それじゃ、そろそろ本気で待機場所を探しましょうか
2時間くらいいられるところがいいですよね

サトコ
「そうですね、それとできれば···」
「ホテルから出てきた2人を撮影できる場所を···」

黒澤
なるほど、それも大事ですね
この写真だけでは、資料として物足りないですし

サトコ
「ええ、まぁ···」

(えっ「写真」?)

黒澤
いちおう見てみますか?
うどん屋から出てきたところを、デジカメで撮っておいたんです
残念ながら、横顔しか撮れませんでしたが

(うそ、いつの間に···!)

サトコ
「すごいです、どうやって撮ったんですか!?」
「隣にいたのに全然気付かなかったんですけど!」

黒澤
うーん···それは企業秘密ですねー

サトコ
「そんなこと言わないで、教えてください!」

黒澤
ハハッ、勉強熱心だなぁ、サトコさんは

結局「企業秘密」は教えてもらえなかったものの、
それ以外のことは、丁寧にサポートしてもらって···



【電車】

時刻は17:15。

(訓練終了まであと45分···)
(この感じだと、会社に戻るのを見送って終了かな)

サトコ
「下車駅はY駅でしたよね」

黒澤
ええ。ここからだと5つ先です

(じゃあ、当分は居場所を確認するだけでよさそうだな)
(念のため、下車駅のひとつ手前で、入り口付近に移動して···)

サトコ
「えっ」

予想外の出来事が起きた。
Y駅で下車すると思っていた彼女が、いきなり電車を降りたのだ。

サトコ
「黒澤さん···」

黒澤
焦らないで。まずはあとを追いましょう

【倉庫街】

駅の外に広がっていたのは、古びた倉庫街だった。
そのせいか、人通りは驚くほど少なかった。

(どうして、こんな駅で下車したんだろう)
(この先に取引企業があるとか?)
(でも、もう営業が終わる時間帯なのに···)

黒澤
サトコさん、落ち着いて
歩くスピードをもっと緩めてください

サトコ
「···っ、すみません」

(そうだ、距離を詰め過ぎたらダメだ)
(もう少し離れて、絶対顔を見られないように···)

いきなりターゲットが立ち止まった。
まるで周囲を窺うように、ぐるりと頭が大きく動いた。

(マズい、見られる!)

気付けば、勝手に身体が動いていた。
倉庫脇に隠れようと、私は死角に飛び込もうとした。

ガッ···

(えっ、今なにかぶつかって···)

サトコ
「!!!」

まるで、スローモーションのようだった。
壁に立てかけられていた鉄柱が、次々とこちらに倒れ込んできた!

黒澤
サトコさん!

背中を突き飛ばされ、地面に押し倒された。
耳障りな音が響くなか、生木が折れるような音を聞いた。

???
「う······っ」

サトコ
「···っ、痛たた···」

(まずい、腰を打ったっぽい···)

サトコ
「!?」

起き上ろうとして、血の気が引いた。
目の前で、黒澤さんが私に覆いかぶさるようにして倒れていた。

サトコ
「黒澤さん!?」

黒澤
······

サトコ
「しっかりしてください、黒澤さん!」

(どうしよう、救急車···)

黒澤
待って···

サトコ
「···っ、黒澤さん!」
「大丈夫ですか!?痛いところは···」

黒澤
ハハ···平気ですよ···
それよりサトコさん···ターゲットの追跡を···

<選択してください>

A: えっ···

サトコ
「えっ、追跡って···」
「黒澤さん、動けるんですか?」

黒澤
いえ、それはさすがに···

(じゃあ、つまり···)
(黒澤さんを置いていけってこと?)

サトコ
「···ムリです」
「今の黒澤さんを放置するなんてできません」

B: できません!

サトコ
「できません!」
「黒澤さんを放ってはおけません!」

黒澤
ですが···

サトコ
「イヤです!できないものはできません!」

C: わかりました

サトコ
「···わかりました」
「でも、その前に手当てを···」

黒澤
ダメです、早く行かないと見失っ···
く···っ

サトコ
「黒澤さん!?」

(···やっぱりムリだ)
(こんな黒澤さん、放っておけるわけないよ)

サトコ
「すみません。追跡はあきらめます」

黒澤
······

サトコ
「今、救急車を呼びますから」
「それまで、寄りかかってラクにしていてください」

黒澤
···っ、だったら···
救急車はやめてください
代わりに、石神さんに連絡を

サトコ
「······分かりました」

日が落ち、街灯が点灯し始めたころ。
ようやく、1台の車が私たちの前に停車した。

後藤
氷川、黒澤は···

サトコ
「倉庫の脇で休んでいます。ずっと左足が痛むみたいで···」

後藤
わかった。歩、担ぐぞ

東雲
了解

後藤
氷川は、黒澤の荷物をまとめてくれ
ついでに、後部座席のドアを開けてくれると助かる

サトコ
「分かりました」

東雲
···あいつ、キミを庇ったんだって?

サトコ
「······はい」

東雲
バカなヤツ
どっちが有益な存在なのか、考えればすぐに分かるはずなのに

サトコ
「···っ」

後藤
歩、早くしろ

東雲
はい、今行きます

(···ダメだ、まだ立ち止まるな)
(まずは黒澤さんの荷物をまとめて······)
(それから···それから······)

やるべきことをなんとか終わらせ、私は黒澤さんを送り出した。
病院には、同行させてもらえなかった。
後藤教官から「学校に戻れ」との指示を受けたからだ。

後藤
石神さんが待っている
今回のこと、報告するように

サトコ
「···わかりました」


【学校】

学校に着いたのは、1時間後のことだった。

サトコ
「氷川です」

石神
入れ

サトコ
「失礼します」

【個別教官室】

サトコ
「あの···」
「この度は申し訳ありませんでした」

石神
謝るのはあとにしろ。まずは報告を

冷ややかな声に促されて、私は順番に説明をした。
ターゲットを追って、倉庫街に来たこと。
ターゲットに見つかりそうになったこと。
とっさに隠れようとして、鉄柱を倒したこと。

石神
···そこで黒澤に庇われた、というわけだな

サトコ
「はい」

石神
なるほど。そこまではよくわかった
それで?
なぜ、ターゲットの追跡を止めた?

(······え?)

石神
黒澤のケガは、命にかかわるものじゃない
意識もはっきりしていて、我々への連絡手段もあった
本人も、君に尾行を続けるように言ったはずだ

サトコ
「···っ、ですが···」
「先輩がケガをしているのに、放っておくわけには···」

石神
今日のターゲットが、テロリストだったらどうする

サトコ
「!」

石神
君が黒澤を優先させたせいで、テロが発生した場合は?
どれだけの被害者が出ると思っている?

(それ···は···)

石神
明日中に報告書と反省文を提出しろ
俺からは以上だ

サトコ
「······」

石神
以上だ

サトコ
「···わかりました。失礼します」

なにも考えられなかった。
頭の中が真っ白で、その場を去るだけで精一杯だった。


【教場】

翌朝ーー

鳴子
「おはよう、サトコ」

千葉
「その···昨日は大変だったって?」

サトコ
「···うん」

(そっか···昨日のこと、もう耳に入ってるんだ)

鳴子
「まあさ、いろいろあるよ」
「私も、途中でターゲットを見失いかけたし」

千葉
「そうそう、俺もさ」
「最初の1時間で、尾行がバレそうになって···」

男子訓練生A
「あーあ、あり得ねーよなぁ」
「選抜訓練でバディにケガさせるなんて」

2人
「!」

はっきりとした当てつけに、教場内に静まり返る。
今のは、明らかに私に向けられた言葉だ。

鳴子
「···ちょっと、そこ」
「独り言にしてはうるさすぎるんですけど」

男子訓練生A
「は?べつに独り言じゃねーんだけど」
「むしろ、聞かせてやってるくらいだし」

鳴子
「は!?」

千葉
「佐々木、落ち着いて···」

男子訓練生A
「選ばれて訓練受けて、大失敗ってなんだよ」
「他のヤツが選ばれた方が、絶対マシだったんじゃん」

もっともな指摘に、周囲がざわつき始める。
皆の視線が、次から次へと突き刺さるように痛い。

男子訓練生B
「たしかに疑問だよな。氷川って失敗多いのに」

男子訓練生C
「成績も大してよくないし。まさかのノンキャリだし」

男子訓練生D
「でも、いちおう首席だろ」

男子訓練生E
「それ、本当なのか?正直信じられない···」

???
「おーい、氷川はいるか?」

場違いなのんびりした声が、教場内の空気をかき乱した。

難波
氷川ー、氷川はどこだー?

サトコ
「あ、はい···ここに···」

難波
おお、いたいた!
聞いたぞ。お前、黒澤にケガさせたんだって?

サトコ
「···っ」

(このタイミングで···)

難波
というわけで罰ゲームな
この書類、今日中に黒澤んとこに届けてきてくれ

(えっ、今日中?)

サトコ
「待ってください!できれば後日···」

難波
いーや、今日中だ
それじゃ、あいつにもよろしくな

(そんな、いきなり···)


【病院】

というわけで夜ーー

サトコ
「はぁ···」

(まいったな。こんなに早く来ることになるなんて)

もちろん、お見舞いには行くつもりでいた。
けれども、もっとタイミングをみるつもりでいた。

(入院してすぐのお見舞いは、かえって迷惑だって聞くし)
(せめて、4~5日経ってから行こうって···)

サトコ
「···ううん」

今のは、全部言い訳だ。
結局、私が気まずいだけなのだ。

(どんな顔すればいいのか、分からないから)
(黒澤さんに、迷惑そうな顔をされたくないから···)

受付嬢
「こんばんは。夜間診療をご希望ですか?」

サトコ
「···っ、いえ、その···」
「お見舞いに来たんですけど」

受付嬢
「来訪先はどちらですか?」

サトコ
「510号室の黒澤さんです」

受付嬢
「······黒澤さま、ですか」
「それでは来客名簿にお名前をお願いします」

(···いい加減、覚悟を決めよう)

【廊下】

サトコ
「すみません、510号室は···」

看護師
「ナースステーションを右に曲がった奥です」

サトコ
「ありがとうございます」

(黒澤さんに会ったら、まず真っ先にお詫びをしよう)
(それでどんな態度をとられても、全部受け入れるんだ)
(だって、私にはそれくらいしかできないんだから)

サトコ
「510号室···ここだ」

(よし、いざ···)

???
「あれ、サトコさん?」

サトコ
「!」

黒澤
やっぱり!サトコさんじゃないですか
お見舞いに来てくれたんですか?

サトコ
「は、はい、その···」

黒澤
嬉しいなぁ。ささ、どうぞどうぞ

(ま、待って!)
(思っていたのと、全然違うんですけど···!)

【病室】

黒澤
そこ、座っちゃってください

サトコ
「は、はい···」

(じゃなくて、まずはお詫び···)

サトコ
「黒澤さん!」
「このたびは、いろいろご迷惑をおかけして、本当に···」

黒澤
あれ、ない!

(えっ?)

黒澤
おかしいなぁ、ここに『プリン最中』あったはずなのに

(プリン?最中?)

黒澤
ていうか聞いてくださいよー、サトコさん
オレ、朝からずーーっと退屈で!

サトコ
「は、はぁ···」

黒澤
ここ、2人部屋だったのに、同室の人が今朝退院しちゃうし
テレビカードもすぐに使い切っちゃったし

サトコ
「······」

黒澤
あまりにもヒマだから、皆にLIDEしてみたんですけど···
後藤さんは既読スルーだし、石神さんは未読スルーだし
歩さんにはブロックされたっぽくて···
唯一、周介さんだけですよ。スタンプ返してくれたの。ほら

サトコ
「!?」

(『黙りなさい』って···すごいスタンプ···)

黒澤
だから今、すごく嬉しいんです。サトコさんが来てくれて
お疲れのなか、ありがとうございます

サトコ
「···っ、そんな、お礼なんて!」
「昨日はすみませんでした!私のせいでケガさせてしまって···」

黒澤
違いますよ
助けたのはオレの意思です。その上での今回のケガです

サトコ
「でも···」

黒澤
それより大変だったでしょ、反省文

(えっ)

黒澤
尾行、途中でやめちゃいましたからねー
石神さんのことだから5枚···
いや、『10枚提出しろ』って感じですか?

サトコ
「···10枚です」

黒澤
やっぱり。あの人、容赦ないから

サトコ
「······」

黒澤
でも、これでわかりましたよね
ダメですよー。ああいうときは、オレのこと見捨てないと
公安刑事ってそういうものですから

サトコ
「···っ、でも···」

理屈では分かるのだ。
それが「大勢の命を守るため」だということは。

(でも···それでも、やっぱり私は···)

黒澤
っていうのは建前で···
本当は嬉しかったですよ。オレを見捨てないでくれて

(······え?)

黒澤
だってそんなものでしょう、人間って

(···黒澤、さん?)

黒澤
なーんて
今の発言、石神さんにはナイショですよ
バレたら、オレ、絞められちゃいますんで

サトコ
「あ、はい···」

黒澤
あーそれにしてもラッキーだなぁ
これでしばらくの間、堂々と仕事をサボれますよ
ほら、石神さんって人使い荒いから
これくらいのことがないと、休みをくれないんですよねー

サトコ
「······」

黒澤
って、今のもナイショですからね!
オレとサトコさん、ふたりだけの秘密です

朗らかな彼に、泣きたくなった。
そこにあるのは、未熟な後輩への「心遣い」だけだった。

(すごいな···)
(やっぱりすごい人だな、黒澤さんって)

責められる覚悟をしてきたのに。
なじられても、受け入れるつもりでいたのに。

サトコ
「黒澤さん、私···」
「黒澤さんのことが好きです」

黒澤
えっ!?

サトコ
「人として、刑事として、尊敬しています!」

黒澤
······

サトコ
「またお見舞いに来てもいいですか?」
「後輩として、いろいろ学ばせてもらってもいいですか?」

黒澤
······
···もちろんですよ
サトコさんなら、いつでも大歓迎です

変わらない笑顔を向けられて、私は決意を新たにした。

(もっと頑張ろう)
(頑張って、黒澤さんみたいな刑事になるんだ!)

to be continued



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