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東雲 恋の行方編 シークレット3



Episode10.5
「不意打ちのキスもキスのうち」

【東雲マンション】

以前から何となく気になっていたことがある。
それは···

東雲
···ねぇ、キミさ
唇の端にチョコついてるんだけど

サトコ
「えっ···どっちの端ですか?」

東雲

サトコ
「左···?」

東雲
あ、間違えた

ちゅっ!

サトコ
「!!?」

東雲
ああ、とれた
よかったね、取る手間省けて

(ま、またキスされた!)

そう、私がずーっと気になっていたこと···

(東雲教官って、もしかしてキス魔?)



【カフェテラス】

(そもそも、こうなる前から教官には何度かキスされてたよね)
(こめかみとか頬っぺとか···)
(それに、テロリストのアジトで水攻めにあったときだって···)

あのときの光景を思い出すと、今でも頬が熱くなる。

(だって、いきなり頬っぺを両手で挟んで···)
(そのあと···そのあと···)
(きゃーーー!)

???
「おい、赤クズ」

(···ん?)

加賀
てめぇだ、そこの顔の赤いクズ

サトコ
「は···はい、なにか···!」

加賀
業務命令だ
明日までに30人規模で入れる居酒屋をリストアップしろ

サトコ
「えっ···」

加賀
日にちは今月の25日、開始時間は20時から
場所は新宿、宴会時間は2時間、予算は1人5000円
リストアップが済んだら俺にメールしろ

サトコ
「えっ···あの···」

(私、引き受けるなんて一言も言ってないんですけど···っ!)



【東雲マンション】

そうはいっても、加賀教官からの仕事を断るわけにはいかない。

(以前ラーメンをおごってもらったし···)
(この間は、部屋にも泊めてもらったし)
(考えてもみれば私、加賀教官には相当お世話になってるんだよね)

東雲
なにしてるの

サトコ
「居酒屋検索です」
「30人規模の飲み会を開けるお店を至急探すように頼まれて···」

東雲
誰から?

サトコ
「加賀教官からです」

東雲

サトコ
「ああ···でも30人って結構ハードル高いですよね」
「検索範囲、広げたらダメですかね···」

東雲
······

サトコ
「新宿御苑か西新宿か···いっそ東新宿も···」

ドンッ!

東雲
なんで兵吾さんの仕事引き受けてんの
いつの間にそんなに仲良くなってんの?

(え···なにこのシチュエーション···)
(壁ドンならぬ、『椅子ドン』···?)

東雲
そういえばキミさ
前に兵吾さんの家に泊まってるよね

サトコ
「はい、まぁ···」

東雲
まさかとは思うけど、そのとき色々···

サトコ
「さ···されてませんよ!されるわけないじゃないですか!」

東雲
······

サトコ
「だいたい教官だって言ってたじゃないですか」
「加賀教官が私に手を出すはずないって」

東雲
···まぁ、確かに

サトコ
「そもそも付き合ってもいない相手に平気でキスしてくるの、教官くらいですよ」

東雲
は?

サトコ
「前々から思ってましたけど···」
「教官ってキス魔ですよね?」
「けっこう簡単にキスしますよね?」

東雲
···なに?不満?

サトコ
「ふ、不満じゃないですけど···!」
「肝心なこと言ってくれないのにキスばかり···」

ちゅっ!

サトコ
「ほら、また!」

東雲
仕方ないでしょ
オレ、アメリカ帰りだし

サトコ
「えっ」

東雲
あっちじゃ挨拶だから、こんなの

ちゅっ!

サトコ
「ちょ···違···」

ちゅっ!

サトコ
「ストップ、ストップ!」
「そ、そんなに向こうの人ってしょっちゅうキスするんですか?」

東雲
するよ。挨拶だし

サトコ
「······」

東雲
···納得した?

サトコ
「···はい。まぁ···」

東雲
···なに、不満そうだね

サトコ
「だって、挨拶だとありがたみがないような···」

(そっか、今までのは挨拶だったんだ···そっか···)

東雲
嘘だけど

サトコ
「えっ」

東雲
キミ、ほんとバカだよね
オレの言うこと、すぐに信じたりして

サトコ
「待っ···どこから嘘···」

東雲
アメリカ帰り

サトコ
「そこから!?」

東雲
でも、キミが『ありがたみがない』って言うなら···
キスするのやめるけど

サトコ
「!」

東雲
どうする?年に1回にしとく?
それとも4年に1回くらいにしとこうか
今年は冬季オリンピックもあったし···
今後はオリンピックイヤーに1回ってことで

(つまり4年後···?)
(それまで、一緒にいてくれるってこと?

東雲
···なにその顔

サトコ
「えっ」

東雲
今の、ガッカリするとこじゃないの?

サトコ
「し、してますよ!」

東雲
嘘。若干、嬉しそうな顔してる

サトコ
「そ、それは···」
「4年後も付き合ってくれるつもりなんだなーなんて···」

東雲
······
···バッカじゃないの

教官に、むにっと唇を摘まれる。

東雲
キミってほんと···

サトコ
「?」

東雲
···前言撤回

目尻に、ちゅっと唇を落とされる。
それから、こめかみ···頬···
鼻の頭には軽く歯をたてられて···そして···

(あ···)

頭の中がフワフワしてくるようなキス···
甘くて、柔らかくて···

(すごく幸せな···)

東雲
···面白い顔

サトコ
「!?」

東雲
だからやめられないんだよね
キミにキスするの

(ひど···っ)

サトコ
「やっぱりダメです」
「4年に1度で十分です!」

東雲
いいけどキミ、我慢できるの
好きでしょ、オレとキスするの

サトコ
「···っ」
「で···でも、面白い顔とか···」

東雲
いいでしょ、面白い顔
だから、オレ以外には見せないで

サトコ
「······」

東雲
ほんと兵吾さんとかありえない···

(教官···)

サトコ
「···だからなにもしてませんってば」

東雲
······

サトコ
「そもそもあの日部屋にいたの、私だけじゃないですし···」

東雲

サトコ
「黒澤さんも一緒だったんですよ」
「あと、その···後藤教官も···」

(後藤教官にはマズいところ見られちゃったけど···)

東雲
···なに赤くなってんの

(げ···)

東雲
まさか兵吾さんじゃなくて後藤さんと···

サトコ
「だから何もないですってば!」
「ほんとに何も···」
「んんん···っ」

さっきとは、うって変わった荒っぽいキスに、私は慌てて足をバタつかせる。
それでも、こういう日常が続くのは悪くないと思った。
4年後も···その先もずーっと···

Secret End



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