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教官たちの贈り物 後藤



【後藤 マンション】

土曜の夜、サトコが泊まりに来た。

サトコ
「来週から、また演習が始まりますね」

後藤
ああ

サトコ
「そういえば次の演習って、誠二さんが···」

久々の泊まりで話したいことが溜まっていたのか、サトコの口が止まることはない。

(気持ちは分からないでもないが···)
(俺だってもう、限界だ)

後藤
サトコ

サトコの意識をこちらに向けて、シャツを脱ぎ捨てる。
それを見たサトコが、頬を染めて目を伏せた。

後藤
もう見慣れてるだろ

サトコ
「そ、そういう問題じゃないんですよ···」
「···あ」

何かを思い出したように、サトコが顔を上げた。
だが上半身裸という俺の格好を改めて見て、慌てたように目を逸らす。

後藤
どうした?

サトコ
「い、いえ···そういえばあのときも、誠二さんが急に脱ぎ出したので、びっくりして」

後藤
あのとき···?

サトコ
「ほら、私が入学して初めての、訓練での潜入捜査でーーー」

【個別教官室】

サトコを伴い、個別教官室へ入る。
あのとき、サトコは後ろで所在なさげにそわそわしていた。

サトコ
「あの、訓練の潜入捜査は」

捜査のために着替えようと、来ていた服を脱いでデスクに置く。
サトコが息を呑む気配があったが、気にしていなかった。

後藤
アンタ···
俺の女になれ

サトコ
「は!?」

上半身裸の俺に、サトコは顔を真っ赤にさせて混乱の表情を浮かべていた···

サトコ
「『俺の女になれ』なんて、紛らわしいですよね」

後藤
······

(···確かに、言葉足らずだったな)

今もそうだが、どうも何かを説明したり言葉にするのが得意ではない。
自分ではわかっているから相手にも伝わっているだろうと、説明を省く癖があった。

(それに、あのときはサトコのことを当然女として意識してなかったからな···)
(目の前で着替えたり、『女になれ』なんて突拍子もない言い方もした)

サトコを好きになったあとであの状況に陥っていたら、また違った言い方をしたかもしれない。

(···いや、そこまで器用じゃないか)
(『俺の女になれ』という意味を、深く考えるか考えないかの違いで)

後藤
あのときは···悪かったな

サトコ
「ふふ···今は誠二さんがどんな人か分かってるから、平気ですよ」
「ちょっと···いや、かなり言葉が足りないけど、言ってることは本心なんですよね」

後藤
······

返す言葉もないのが、なんとなく悔しい。
サトコの両脇に手をついて、ベッドと自分の間に閉じ込めた。

後藤
分かってるなら···もういいよな?

サトコ
「もういいって?」

不思議そうに首を傾げるサトコに、思わず苦笑した。

(···また言葉が足りなかったのか)
(学習しないな、俺も)

後藤
今は正真正銘、俺の女だ

サトコ
「······!」

後藤
だから···好きにしてもいいか?

息を呑んだような表情のあと、サトコがいっそう頬を染めた。
控えめにうなずくその恥ずかしそうな姿は、あの頃には決して見られなかったものだ。

(サトコと一緒に過ごすようになって、もうだいぶ経つんだな)

恥らいながらも、どこか嬉しそうな、期待しているような表情が愛おしい。
顔を近付けてキスをすると、サトコがそれに応えた。

サトコ
「っ······ん、······」

後藤
······

サトコ
「誠二さ···」

(···煽るなよ)
(アンタのその声に俺が弱いって、知ってるだろ)

サトコのブラウスのボタンを、ひとつひとつ丁寧に外す。
その度に零れるサトコの甘い吐息が、身体を満たしていくようだ。

(···アンタのその顔は、俺だけのものだ)
(たとえ捜査だろうが仕事だろうが、他の男には見せるな)

肌に手を滑らせてサトコを抱き寄せ、身体を重ねる。

サトコ
「誠二さ···」
「誠二、さんっ···」

後藤
···サトコ···

彼女が自分を呼ぶ声を聞くたびに、幸せが募っていくのを感じていた。

Happy End



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