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東雲 ヒミツの恋敵編 3話



【廊下】

宮山くんのひと言に、自分でも血の気が引いたのが分かった。

(ど、どうしよう)
(なんで教官と付き合ってることがバレて···)

サトコ
「···っ」

(ダメだ、落ち着け)
(ここは何がなんでも知らんぷりしないと···)

サトコ
「ミ、宮山クンッテバ、ナニ言ッテルノカナー」
「私ト教官ガ付キ合ッテルトカ、アリエナインダケドー」

宮山
「···棒読みすぎ」
「この程度の演技もできないとか、それこそ『アリエナインダケドー』」

(く···っ)
(ちょっとくらい優秀だからってバカにして···っ)

でも、ここで動じる訳にはいかない。
教官とのことは絶対に隠さなければいけないのだ。

サトコ
「あ、あのさ···ちょっと冷静になろうよ」
「100歩···ううん、1000歩譲って私が教官を好きだったとしてね?」
「東雲教官も私のことを好きってあり得ないんじゃないかな」

宮山
「そうですね。俺も1万歩譲ってもあり得ないと思ってました」
「だって東雲教官って理想高そうだし」
「どう考えても氷川先輩とは釣り合わないし」

(うっ···)

宮山
「しかも、東雲教官って年上好みっぽいですよね」
「年上の、美人で、笑顔が魅力的で···」
「育ちが良さそうなお嬢様系?」

(うう、痛い···)
(いろんな意味で痛すぎるんですけど···っ)

宮山
「でも、俺、見ちゃったんですよね」
「一昨日の夜、先輩がとあるマンションの前をウロウロしていたところ」

(え···)

宮山
「いちおうスマホで撮ったんですけど···」

サトコ
「!!」

(こ、これ···教官のマンションのエントランス···!)
(そうだ···部屋の片づけが終わるのを待っていたときの···)

サトコ
「で、でも写ってるの、私だけだよね?」
「東雲教官はどこにもいないけど···」

宮山
「いちいちとぼけるの、やめてくださいよ。時間の無駄なんで」
「ここ東雲教官が住んでるマンションですよね」
「非番日に教官の家にいるとか、普通考えられないんですけど」

サトコ
「そ、そんなことないよ!ほら、書類の提出とか···」

宮山
「夜中の0時過ぎに?」

サトコ
「···っ」

宮山
「だとしたらパワハラですよね」
「分かりました。先輩のためにも室長に訴えて···」

(マズい!)

サトコ
「違うの!私が勝手に行ったの!」
「休みの日だけど、教官の姿を一目見られたらって思って」

宮山
「···は?」

サトコ
「ていうか、教官と同じ息を吸いたい、みたいな?」
「それでついつい近所まで行っちゃった、的な?」

宮山
「······」

サトコ
「ほ···ほら、あるでしょ、そういうの」

宮山
「いえ、ありませんけど」

(く···っ)

サトコ
「と、とにかく何が言いたいかっていうと···」
「私が、一方的に好きなの」
「これは私の片想いなの」
「だからお願い!」

ドンッ、と私は、彼を壁際に追い詰めた。

宮山
「ちょ···何を···」

サトコ
「秘密にして」
「絶っっっ対、誰にも言わないで」

宮山
「······」

サトコ
「バレたら補佐官を外されるから。だから···」

宮山
「だったら、まずは離れてくれませんか」
「女の人に壁ドンされてるとか、格好つかないんですけど」

(え···)

サトコ
「あっ、ごめん。つい···」

(私ってばなんてことを···)

慌てて離れた私を見て、宮山くんは軽く顎を上げた。

宮山
「だいたいのことは分かりました」
「先輩の気持ちも···」
「先輩が、俺に何を望んでいるのかも」

サトコ
「···ほんとに?だったら···」

宮山
「あーなんか喉渇いたなー」
「オレンジジュースが飲みたいなー」

(···はい?)

宮山
「聞こえましたか?」
「100%のオレンジジュース、食堂の自販機にありますんで」

サトコ
「······」

宮山
「あ、もちろん先輩のおごりですよねー?」

サトコ
「·········」



サトコ
「はぁ···はぁ···」

(なんか、ものすごく···)
(デジャヴなんですけど···!)

【食堂】

サトコ
「はぁ···はぁ···」

(あった···100%オレンジジュース···)
(よかった···コンビニとか行かなくて済んで···)

サトコ
「って、よくないってば!」

(なんでパシリ?)
(私、これでも先輩で指導係なんですけど···)

サトコ
「···違うか」

(結局、全部隠し通せなかった私が悪いんだよね)

もし、これが教官なら、きっと完璧に誤魔化せていたはずだ。

(でも、私は中途半端な嘘しかつけなかった···)
(こういうところ、まだまだだよね)

嫌でもため息がこぼれてしまう。
でも、だからって、このまま落ち込んでいるわけにもいかない、

(とりあえず『付き合ってる』ことだけはバレないようにしなくちゃ)
(そのためなら何だってしよう)
(そう、何だって···)

【教場】

ところが···

千葉
「なぁ、今日習った問題だけど···」

サトコ
「ああ、これって確か···」

ピンポーン!

(ん?LIDEにメッセージ···)

······「おつかれさまです。オレンジジュースをお願いします」

(ええっ!?)

【カフェテラス】

さらに翌日···

鳴子
「ねぇ、今度の訓練だけど···」

ピンポーン!

······「喉渇いた、買ってきて」

(ちょ···命令形!?)

【更衣室】

さらにさらに翌日···

ピンポーン!

鳴子
「サトコー、またLIDEのメッセージ···」
「···なに、このスタンプ」
「なんで『オレンジジュース』?」

サトコ
「さ、さぁ···」

(ああ、もう···!)

(信じられない···)
(後輩のクセに、スタンプ1個で先輩をパシらせるとか···)

サトコ
「ほんと、あり得ないんですけどーっ!」

とはいえ、弱みを握られている以上、無視するわけにもいかなくて···

【教場】

サトコ
「はぁ···はぁ···」

男子訓練生A
「ああ、氷川先輩···お疲れさまです」

サトコ
「お疲れさまです。宮山くんはいますか?」

男子訓練生A
「ええと、宮山は···」

宮山
「へぇ、今日は早かったですね。エライエライ」

(くっ···なにこの上から目線!)

宮山
「それで、オレンジジュースは?」

サトコ
「···どうぞ」

宮山
「うわーアリガトウゴザイマース」

(···全然ありがたいなんて思ってないくせに)

心の中でツッコミを入れつつ、私は回れ右をする。
ところが、歩き出そうとしたその時、ひそひそ声が背中にぶつかった。

男子訓練生A
「お前···さすがにヤバいだろ。先輩をパシリに使うとか···」

宮山
「いいんだよ」
「俺、あの人のこと、先輩なんて思ってないし」

サトコ
「!」

男子訓練生A
「おい···」

宮山
「だって、あの人。たった1期早く入校しただけだろ」
「尊敬に値しない人のことなんて先輩とは思えないって」

サトコ
「!!」

(た、確かに私は優秀じゃないけど···むしろウラグチですけど!)
(だからって、何もそんな言い方しなくても···)

悔しさのあまり、ギュウッと親指を握り込む。

(こ、こうなったら···)

<選択してください>

A: 待って、落ち着こう

(···待って。落ち着こう)
(向こうは弱みを握ってるんだから、下手に抵抗したらどうなるか···)
(ここは冷静に···深呼吸でもして···)

サトコ
「すー···はー···すー···はー」

宮山
「?」

サトコ
「···よし!」

パチン!と自分の頬を叩くと、振り返ることなく歩き出す。
とはいえ、100%すっきりしたわけじゃない。
わずかに残っていたモヤモヤはどうにもできなくて···

B: うるさい、バーカ!

サトコ
「うるさい、バーカ!」

宮山
「は?」

サトコ
「バーカバーカバーカ!」
「こっちだって後輩だなんて思ってないんだから···っ」
「バーカッ」

かなり低レベルな悪口をぶつけて、今度こそ私は歩き出す。

宮山
「···なにあいつ···ガキかよ」

(うるさい、バーカ!)

とはいえ、この程度のことですっきりするはずがない。
むしろモヤモヤは募るばかりで···

C: キノコの呪いをかける

(こ、こうなったらキノコの呪いをかけてやるんだから!)

サトコ
「キノコになれ···キノコになれ···」
「朝、目覚めたら、宮山くん髪型がキノコになって···」
「毎朝ブローに追われるハメになって···」
「美容院にも月1で行くハメになって···」

男子訓練生A
「···なぁ、氷川先輩、何だかブツブツ言ってんだけど···」

宮山
「放っとけよ。どうせくだらないことだろ」

とはいえ、呪い程度で気分がスッキリするはずがない。
むしろ呪い返しでもされたのか、モヤモヤは募るばかりで···

【個別教官室】

その日の夜···

サトコ
「お疲れさまです」
「頼まれていた資料、持ってきました」

東雲
あっそう。貸して

サトコ
「どうぞ」

東雲
······

(ん?なんだかジッと見られているような···)

東雲
なに、その般若
そんなブサイクだったっけ、キミ

(うっ、教官までひどい···)

東雲
で、もう終わり?

サトコ
「え···」

東雲
キミの今日の業務。これで終わりだっけ?

サトコ
「···はい、まぁ···」

東雲
だったら···
来れば

独り言のようにボソリと言って、教官はなぜか左手を広げた。

サトコ
「え···あの···」

(これってもしかして···)
(抱きついてもOK···的な···?)

東雲
···来ないの?

サトコ
「で、でも今、教官は仕事中で···」

東雲
休憩中。5分間だけ

(教官···)

涙腺が緩みそうになるのをグッと堪えて、私は教官に抱きついた。
広げてくれた腕の中は暖かく、頬に当たる髪の感触がひどく心地いい。

サトコ
「教官···」

東雲
······

サトコ
「教官、私···」

<選択してください>

A: 今、ムカついている人がいて···

サトコ
「今、ムカついている人がいて···」

東雲
······

サトコ
「その人のことを考えると、落ち込んだり悔しかったり···」
「とにかく胸の中がモヤモヤして···」

東雲
なにそれ、浮気?

(えっ···)

東雲
『落ち込む』とか『モヤモヤする』とか···
恋愛の初期症状だよね、それ

(違···っ)

サトコ
「ぜんっぜん違います!」

東雲
······

サトコ
「こんなの恋愛じゃないし···」
「ましてや浮気なんて、私···」

B: 指導係に向いてないです···

サトコ
「指導係に向いてないです···」

東雲
······

サトコ
「もともと『ウラグチ』だし」
「教官がいないと成績もダメダメだったし」
「こんな私が指導係なんて、やっぱり···」

C: どうすれば『いい先輩』になれる?

サトコ
「どうすれば『いい先輩』になれますか?」
「どうすれば、尊敬してもらえる先輩に···」

東雲
そんなものになりたいの、キミ

サトコ
「えっ···」

東雲
『尊敬されたい』とか『いい先輩』とか

サトコ
「だって、それは···!」
「バカにされるよりは、その方がいいし···」

東雲
······

サトコ
「それに···」

そのあとの言葉が出て来なくて、シャツを掴む手に力を込める。
すると、私の耳元に呟くような声が落ちてきた。

東雲
···早かったかな

(え···)

東雲
キミならできると思って任せたけど···
まだ早すぎたみたいだね

サトコ
「···っ」

(私、何を···)
(教官にこんなことを言わせるなんて、補佐官として失格だ!)

慌てて教官の身体を押しやると、私は力いっぱい頭を下げた。

サトコ
「すみません、もう大丈夫です!」
「明日からはちゃんとしますんで!」

(教官に、失望だけはされたくない···!)

サトコ
「それじゃ、今日はもう失礼しま···」

東雲
保管庫

サトコ
「はい?」

東雲
この資料、保管庫に返してきて

サトコ
「でもこれ、今持ってきたばかりの···」

東雲
もういい
必要なくなったから

サトコ
「···そうですか」

(へんなの。1ページも読まないで「必要なくなった」なんて)
(代わりの資料でも手に入ったのかな)
(でも、これ···探すの結構大変だったのに)

【保管庫】

サトコ
「あれ?」

(電気が点いてる···誰かいるのかな)

よくよく耳を澄ませると、確かに話し声らしきものが聞こえてくる。

後藤
つまり···が···で···

???
「でも、これは···なのでは···」

後藤
いや、だから···

(誰だろう、こんな時間に)
(1人は後藤教官っぽいけど···)

声の聞こえるほうに近付いて、棚越しにそっと覗いてみた。

(やっぱり後藤教官だ。もう1人は···)

サトコ
「!」

(な、なんで宮山くんがここに···)

その答えは、すぐに分かった。
宮山くんは真剣な顔つきで資料を開いていたからだ。

(そっか···勉強中なんだ···)
(分からないところは後藤教官に聞いて···)

サトコ
「······」

(···私、なにやってるんだろう)
(宮山くんにバカにされて、落ち込んで、ふてくされて···)

その間、宮山くんは自分で勉強していた。
教官に泣き言をこぼしてがっかりさせた私とは大違いだ。

(これじゃ「必要ない」って言われて当然だ)
(私、宮山くんに全部負けてるもん)
(知識も努力も、訓練生としての心構えも···)

それでも、何か力になりたい。
指導係として、少しでもできることをしてあげたい···

(···ううん、「してあげたい」じゃない。「させてもらう」だ)
(それには、まず···)


【教官室】

翌朝。

サトコ
「おはようございます」

後藤
ああ、氷川か。どうした?」
歩なら、今日は午後から出勤のはずだが···

サトコ
「いえ、後藤教官に用があって」
「実は···」

後藤
···なるほど
そういうことなら、このあたりの本が参考になるな
それから、これとこれと···この本も読むといい

サトコ
「ありがとうございます!」

(よし、あとで全部資料室から借りて来よう)
(それから···)

【カフェテラス】

(宮山くんは···)
(···いた!あの端っこの席だ)

一度深呼吸してから、私は宮山くんへと近づいた。

サトコ
「お疲れさま、宮山くん!」

宮山
「···なんだ、アンタか」
「別に今はオレンジジュースを飲みたい気分じゃないんだけど···」

サトコ
「うん、知ってる。勉強中だもんね」
「あ、やっぱり爆発物処理について勉強してるんだ」

宮山
「···だから何?」
「アンタに教わることは何もないって···」

サトコ
「そうだよね。だから···」
「一緒に勉強しよう。参考資料も借りてきたから」

宮山
「は!?」

サトコ
「これね、全部後藤教官おすすめの本」
「読む順番も決まっていてね、まず1冊目はこの青い表紙ので···」
「その次に、この茶色い表紙の本を読むといいって···」
「あっ、ちょっと!」
「一緒に勉強しようってば!」

宮山
「お断りします。ハッキリ言って迷惑です」

(···行っちゃった)
(でも···)

サトコ
「このくらい想定内だし」

【教場】

その後も···

男子訓練生A
「宮山ー、課題やってきた?」

宮山
「ああ、昨日の···」

サトコ
「宮山くーん」

宮山
「うわっ」

【食堂】

もちろん昼休みも···

サトコ
「宮山くーん」

宮山
「ゲホッ」

【屋上】

放課後も···

女子訓練生A
「宮山くーん···」

宮山
「来るな!!」

女子訓練生A
「えっ?」

宮山
「あ···そ、その···ごめん、間違···」

サトコ
「宮山くーん」

宮山
「うわああっ」

【カフェテラス】

宮山
「くそっ···なんなんだよ、アンタ!」
「しつこすぎるんだよ!」

サトコ
「うん、よく言われる」
「あだ名も『長野のすっぽん』だし」

宮山
「すっぽんって···」

宮山くんは、露骨に舌打ちすると窓際の席に腰を下ろした。

宮山
「あのさ···ちょっと思ったんだけど···」
「アンタ、もしかして俺に······たの?」

サトコ
「えっ、なに?」

宮山
「だから···っ」
「アンタがそんなにしつこいのって···」
「その···俺に惚れたとか···」

サトコ
「ごめん。私、教官ひと筋だから」

宮山
「即答かよ!」
「ていうかなんで俺が謝られてるんだよ!」

サトコ
「だって、ご期待に添えられなかったみたいだし···」

宮山
「期待なんかしてねーよ!」
「むしろ清々してるし···」

サトコ
「あ、そうなんだ。良かった」

宮山
「······」

サトコ
「でも、宮山くんのこと、もっと知りたいと思ってるよ」

宮山
「は?」

サトコ
「せっかく縁があったわけだし」
「私も、宮山くんから学べること、いろいろありそうだもん」

宮山
「······」

サトコ
「だからね。一緒に頑張ろうよ」
「ほら、後藤教官おすすめの本、今日も持ってきたからさ」

鞄の中から本を5冊取り出して、テーブルの上に積み重ねる。
宮山くんは背表紙に目を向けて···

宮山
「······」

上の2冊だけを手に取った。

宮山
「これ、もう読んでる」
「初心者向けだし」

サトコ
「あ、そうなんだ···」

宮山
「アンタもこの2冊は読んでおけば?」
「その···本気で勉強したいなら···」

サトコ
「分かった、そうするね!」
「じゃあ、この3冊目は···」

ヴーッ!ヴーッ!

(あ、教官からだ···)

サトコ
「お疲れさまです。氷川です」

東雲
お疲れ
5分以内に来て。教官室にいるから

サトコ
「分かりました。何か持っていくものは···」

東雲
宮山

サトコ
「はい?」

東雲
宮山を連れて来て

(宮山くんを?どうして?)


【個別教官室】

サトコ
「えっ、爆破予告?」

東雲
そう。サイキ・エレクトロニクスの『習志野研究室』宛てにね

(習志野研究室···それって確か···)

宮山
「もしかして『パーソナル・キャッチング』絡みですか?」

東雲
···知ってんの?

宮山
「噂で聞いたことがあります」
「警察庁だけじゃなくFBIも注目している技術だと」

東雲
だったら話しは早いね
脅迫状の内容は、その研究を『今すぐ止めろ』というもの
さらに、その旨を24時間以内に宣言しないと『施設内に爆弾を仕掛ける』と続いている

サトコ
「脅迫状が届いたのはいつですか?」

東雲
22時間前
もちろんサイキ・エレクトロニクスは研究を止めるつもりはない

サトコ
「じゃあ···」

東雲
現場にはすでに兵吾さんたちが向かっている
キミらも追いかけて、すぐに指示を仰いで

サトコ
「分かりました!行こう、宮山くん」

宮山
「はい!」

東雲
······

【コンビニ】

後から加わった私たちは、近くのコンビニから裏門を見張ることになった。

(でも、どうして今回公安が動いたんだろう)
(一企業の爆破予告だけなら、刑事部の管轄のはずなのに···)

実際、店内には刑事部らしき人たちがいる。
目的は、たぶん私たちと一緒だ。

(もしかして、脅迫状の差出人はテロ組織の可能性があるってこと?)
(だとすると最近警戒されていたどこかの組織とか···)

ふいに隣に気配を感じた。

(え、宮山くん?)
(まさか、何か異変が···)

宮山
「先輩、不審者です」

(やっぱり···!)

サトコ
「どこ···っ」

宮山
「プリペイドカードのコーナーです」
「ほら、あの男···」

(え···)

サトコ
「!!」

(万引き!?でも···)

宮山
「このまま見張って、店を出たら捕まえます」
「念のため、先輩も一緒に···」

サトコ
「待って。今、張り込み中だよ!?」

宮山
「だから何です」
「目の前の犯罪を見逃すつもりですか!」

サトコ
「そうじゃない、でも···っ」

私たちが小声で揉めている間に、男は店を出て行ってしまう。
もちろん、ポケットの中には会計前のプリペイドカードが入ったままだ。

宮山
「くそっ」

追いかけようとした宮山くんを、私は慌てて引き留めた。

サトコ
「ダメだってば!ちょっと落ち着いて···」

宮山
「離せ!俺はアンタとは違うんだ!」

私の手を振り払って、宮山くんは走り出す。

(どうしよう!なんでこんな···)

サトコ
「ああ、もうっ!」

やむを得ず、私も宮山くんを追いかけた。

to be contineud

※プリペイドカードはレジで入金しないとただの紙···



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