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3周年スペシャルストーリー 後藤



【後藤マンション】

(腹減った···)

深夜の帰宅となり、ふらふらとキッチンへ直行した。

(そういえば、昼メシ食い損ねたままだった···)

レンジで温めればすぐに食べられるご飯のパックに手を伸ばす。
だが、寸前でその手を冷蔵庫の方へ方向転換させた。

(もはやレンジで温めることすら面倒だ···)

空腹より面倒臭さが勝ってしまい、夕食はエナジーゼリーで済ませることにした。

(何より、チンした飯だけじゃ味気ない)

買いだめしているのはご飯のパックだけで、おかずになるものなど何もない。

(自分で調理するのは自殺行為だしな···)
(その点、エナジーゼリーは手軽で有難い。食わないよりはマシだろう)

そんな理屈で自分を納得させ、冷蔵庫を開けた。

後藤
あ···
これがあったか

呟くと同時に、自然と頬が緩んだ。
目に留まったプラスチック容器を手に取り、中から小さな玉状のものをひとつ取り出す。
一見たこ焼きのようなそれは、先日サトコが作ってくれた味噌玉だ。

サトコ
「お味噌汁一回分になっているので、その味噌汁玉をお椀に入れて熱湯を注いでください」
「すぐにひとり分のお味噌汁ができますよ」

後藤
アンタ···すごいな。プロの料理人みたいだ

サトコ
「ふふ、ネットでレシピを見て作っただけですよ」

優しく微笑んだサトコの顔が浮かび、緩んだ頬がさらに緩みそうになる。
あれ以来、彼女はこの味噌玉をよく作ってくれている。

(なくなりそうになると、いつの間にか補充されていて···)
(いつも、不摂生な生活をしている俺の身体を心配してくれている)

彼女と出会うまでは、食事に気を遣うことなど皆無だった。

(とりあえず腹が満たせれればそれでいいと思ってたからな···)

ちらりと冷蔵庫の中のエナジーゼリーに目をやる。

(ふっ、それですますのは、サトコの気持ちを踏みにじる事になるな···)

苦笑いを浮かべると、そのまま冷蔵庫の扉を閉めた。
手にはもちろん、よく冷えたゼリーではなく、サトコお手製の味噌玉を持って。

後藤
これがあれば温めたご飯もご馳走になる

満足げに独り言を呟くと、俺は重い腰を上げ、やかんに水を汲んで火にかける。
お湯が沸く間に、ご飯のパックをレンジにセットし、味噌玉をお椀に落とす。
そこへ湧いたばかりの熱湯を注ぐ。
サトコの笑顔を思い浮かべながら。

後藤
···いい香りだ

柔らかな味噌汁の香りが漂う中、レンジがチン!と軽やかな音を立てた。

Happy End



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