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3周年スペシャルストーリー 難波



【難波マンション 寝室】

ピピピピッ!

難波
んあああ···?

やかましい目覚ましの音で目が覚めた。

(なんだ、もう朝か···)

カーテンの隙間からこぼれてくる朝日を恨めしく見つつ、寝ぼけ眼で目覚ましを切る。
でも徹夜明けの身体は限りなく重く、なかなか起き上がることができない。

(確か、一昨日も徹夜だったよな)
(この歳で連日の徹夜は、さすがに···)

未練がましくベッドでもぞもぞしていると
スヌーズ設定になっていた目覚ましが再びけたたましく鳴りだした。

難波
ああ···はいはい
起きりゃいいんだろ、起きりゃ

目覚ましを叩き切った反動で、自分にムチ打つように起き上がる。
まだ頭はぼんやりしているが、そろそろ動き出さないとさすがに仕事に間に合わない。

(今週もようやく半ば···こんな状態があと2日も続くのか···?)

固くなった首をゴキゴキ言わせながら、軽くため息をついた。


【洗面所】

洗面所に入ると、鏡の中の疲れ切ったオッサンと目が合った。

(おいおい、大丈夫か、このオッサン···)
(髪はボサボサだし、ヒゲは伸び放題だし、我ながら精彩を欠いた顔してんな)

苦笑しながら歯ブラシに手を伸ばすと、
俺のと一緒に入っていたピンクの歯ブラシがカラカラと揺れた。

(なんだか、あいつの笑い声みてぇだな···)

難波
ふっ···

サトコのことを思ったら、なんとなく元気が湧いてきた。

(そういや今週末は、アイツが来るんだった···)

そう思っただけで、さっきまで全身にこびりついていた泥のような疲れが、
一気に身体から剥がれ落ちていくのを感じる。
週末まではあと2日。
サトコとの2人の時間をきちんと確保するためにも、ここが頑張りどころだ。

難波
気合入れねぇとな

ペシ、ペシッ
両手で頬を軽く叩いた。
鏡の中のオッサンの顔は、さっきとは別人のように生気を取り戻している。

(これもサトコのお蔭···いや、サトコの歯ブラシのお蔭か)
(歯ブラシ1本で元気が出るとは、俺もずいぶん簡単だな)

単純な自分に若干呆れつつ、でもまんざらでもない思いで歯を磨く。
顔を洗ってヒゲを手入れし、スタイリング剤で髪型をセットすれば、
あっという間に出勤準備完了だ。

難波
それじゃ、行ってくるな

ピンクの歯ブラシにそっと声をかけると、
半透明の柄がまるでサトコの目の輝きを移したかのようにキラキラと光った。

(あと2日···意外と時間ねぇぞ)

ついさっきまでは「あと2日もこの状態が続くのか」と思っていたが、
楽しみがあると、考え方も180度変わってしまうから不思議なものだ。
いつの間にかみなぎったやる気に背中を押されるように。
俺は今日も、颯爽と家を後にした。

Happy End



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