【スーパー】
休日のある日、1人で近所のスーパーへ買い物に来た。
(今日は何を食べようか···)
献立を考えながら食材を物色していると、山積みされた季節のフルーツが目に留まった。
(美味しそうだな···サトコが喜びそうだ)
瞬の味わいを一緒に楽しもうと、迷わずカートに入れる。
そのままカートを押していくと、今度はお菓子のワゴンセールが目に留まる。
(おや、これはサトコがお気に入りのクッキーじゃないか)
そう思ってワゴンから商品を手に取ってみる。
(チョコチップに抹茶に焦がしバター味か···う~ん、どれがいいんだ?)
パッケージに見覚えはあるが、何味が好きなのかまでは把握していない。
(まだまだサトコの身辺について捜査不足か···)
結局3つの味を全て買うことに。
( “これじゃない” って思われるよりはいいだろう)
3種類のクッキーの箱をカートに加え、買い物を続ける。
(そういえば紅茶を切らしていたな)
紅茶の売り場へ向かう途中、お酒のコーナーを通りかかった。
(今度サトコが来た時のためにワインでも買っておくか)
つい寄り道し、今度はワインの種類で悩みだす。
(サトコはどちらかというと赤が好きだよな?)
(最近は芳醇なフルボディタイプがお気に入りのようだが···)
数本手に取ってはラベルを見比べ、これというものを決めてカートに入れる。
(となると、このワインに合うチーズも欲しくなる)
すぐ近くにちょうどチーズフェアのブースが設置されていた。
(このスーパーは気が利いてるな)
いい気になってチーズを選び、それもカートに加える。
それからようやく紅茶売り場に移動し、お目当ての紅茶を見つけた。
(サトコはこのオレンジティーが美味しいと言っていたな)
迷わずそれを選び、その後もマイペースでゆっくりとスーパーを見て回る。
(良いワインとチーズも手に入ったし···今夜は彼女を招待するか)
ワインでほんのり頬を染めたサトコの顔を想像しながら、ふとカートの中に目をやった。
颯馬
「ん···?」
思わずカートを押す手を止めた。
カートの中は、サトコが喜びそうな商品でいっぱいになっている。
(いつの間にこんな···)
どれも手にするたびにサトコの嬉しそうな笑顔が浮かんだものばかりだ。
(ふふっ···誰かのために何かを選ぶとか、家族以外にそんな存在ができるとは思わなかったな···)
(しかもこんな楽しい気分で···)
自然と浮かれている自分に気付き、こっそり苦笑いを浮かべる。
(買い物ひとつでこんな幸せな気分にさせてくれるサトコ···)
(今夜来てくれたら、いつもよりたっぷり愛してあげよう)
浮かべた苦笑いに、俺はそっと甘さをプラスした。
Happy End