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東雲 ふたりの卒業編 購入特典



【教官室】

最近、校内がざわついているような気がする。
もしかして卒業式が近いせいだろうか。

(···まさかね)
(あり得ないし。たかだか卒業くらいで···)

黒澤
あーソワソワしますねー
卒業後の人事、まだ発表されていないんでしたっけ?

東雲
······

黒澤
サトコさんはどこ配属かな~
所轄かな~、警視庁かな~
案外、長野に戻ったりして···

東雲
透、うるさい
それと、さっきから椅子でクルクル回りすぎ

黒澤
いいじゃないですか。ちょっとしたエクササイズですよ
昨日の合コンで、つい食べ過ぎちゃって

東雲
何を?
もしくは『誰を』?

黒澤
うわー、歩さん、ゲスーい
もしかして、そろそろまた合コンに行きたくなってきました?

東雲
べつに
興味ない

黒澤
もうー、歩さんってばつれないなぁ
···で、サトコさん、どこに配属されると思います?

東雲
知るか

(できることならオレだってさっさと知りたいくらいなのに)
(あんな事件が起きたから···)

数週間前の「神経ガスばらまき事件」--
あれのせいで、今年は卒業認定者の発表が大幅に遅れてしまった。
そのため、配属先の決定も後ろ倒しになってしまったらしい。

(あの子の希望は「都内勤務」···)
(となると可能性が高いのは警視庁への配属だろうけど···)

黒澤
オレ、配属先って大事だと思うんですよね
人って環境によって変わりますし

東雲
······

黒澤
どうします、歩さん
大事に育てた補佐官が、配属1年目で上司に食べられて寿退社したら

(あり得ない)
(せいぜい千葉と宮山くらいだし。あんな色気のない子に引っかかるの)

黒澤
あー、でも敏腕鬼刑事に成長するのもなー
それはそれで『黒いハイヒールに踏まれたーい』みたいな?

(履かないから。ハイヒールなんて)
(まぁ、黒のパンプスならアリだけど。以前オレが贈ったアレなら···)

黒澤
まぁ、でもその前にやることがありますよね

東雲
······

黒澤
歩さーん!『や・る・こ・と』あるじゃないですかー

東雲
しつこい。なに?

黒澤
決まってるでしょう。『思い出作り』です
2年間を共に過ごした教場で···
ふたりでランチしたカフェテラスで···
ついでに、教官室でも『ナイショの思い出』を···
あ、おつかれさまでーす

石神
···黒澤、なぜお前がここにいる

黒澤
室長に資料を届けに来た帰りです
ついでに、むさ苦しい教官室にオレという爽やかな風を···

石神
つまり時間が有り余っているということだな
だったら資料室に行って書籍をピックアップしてこい
全部で13冊だ

黒澤
ええっ、ムリですよ!?
オレ、先割れスプーンよりも重いものを持ったことがないのに

東雲
石神さん、オレが行ってきますよ

黒澤
えっ

石神
いいのか?

東雲
ええ、オレも資料室に用があるんで

それに、このままここにいると透がいろいろ突っ込んできそうだ。

石神
だったら頼む。これがピックアップする書籍のリストだ

黒澤
いってらっしゃーい、歩さーん

東雲
······



【廊下】

東雲
···ったく

(ほんと、ワケわかんないんだけど。「思い出作り」とか)

ここにいる人間は「小中高大」と最低4回は卒業式を経験しているはずだ。
今更、訓練学校の卒業程度で感慨なんてあるはずもない。

(そんなことで浮かれるのは、せいぜい透くらい···)

女子訓練生A
「千葉先輩、退院おめでとうございます」

千葉
「ああ、ありがとう」

女子訓練生A
「先輩、もうすぐ卒業ですよね?」

女子訓練生B
「先輩に会えなくなるなんて、なんだか寂しいです···」

千葉
「えっ、そ···そうかな」

(···なにあれ。千葉のくせに鼻の下を伸ばしたりして)
(そんなの『卒業特需』だって指摘される前に気付けよ)

???
「はぁぁ···佐々木の配属先、どこだろうな」

(···ん?)

男子訓練生A
「できれば佐々木と同じとこに配属されたいよな」

男子訓練生B
「わかる!佐々木、美人だもんなぁ」

男子訓練生A
「···決めた。オレ、卒業式に佐々木に告白する」

男子訓練生B
「なんだよ、それ!抜け駆けかよ!」

(···くだらなすぎ。中学生か!)
(いい大人が、卒業式程度で浮かれて···)

プルッ···

(LIDE···彼女から···?)

東雲

(なに、このリップクリームの写真···)
(「潤い保湿120%」···?)

プルッ···

(またメッセージが···)

「卒業キッスのために準備万端です!」

東雲
············

(···有り得ない)
(うちの彼女が一番浮かれているとか···)



【資料室】

(バカなの、あの子)
(いくらヒマだからって、こんなのいちいち送ってくるとか···)

東雲
······

(まぁ、そこまで期待してるなら···)
(いろいろ考えてあげないこともないけど···)

???
「うわ···バカでしょ、先輩。『準備万端』って···」

(この声は···)

宮山
「サイアクですよ、これ」
「確実に『浮かれすぎ。キモ』って言われるパターンですよ」

サトコ
「そうとも限らないでしょ」
「むしろ『あの子、オレのために』ってキュンと···」

宮山
「しません。賭けてもいいです」
「あの人、こういうイベントごと、嫌いそうですし」
「これまでの卒業式でも、涙ひとつ流さなかったタイプですよ」
「つまり先輩とは『真逆』ということです」

サトコ
「···っ、よけいなお世話!」
「それより返してよ、私のスマホ」

(···なにやってんの、あの2人)
(ありえないんだけど。資料室で騒ぐとか)
(まぁ、他に人はいないからアレだけど···)

宮山
「うわっ」

(なに、今度は···)

宮山
「せ、先輩···まさか···」

サトコ
「しーっ!」
「違うから!これは···」

(···は?耳打ち!?)
(あの子、宮山相手に何して···)

宮山
「そ、そうですか···」
「そういえば、その···見たことあるかも···」

(···なにが?)
(しかも、なんで赤面してんの?)

疑問がどんどん膨らんでいく。
けれども、今あの2人の間に割って入るのは何だか癪だ。

(···まぁ、いいけど)

どんなに宮山が赤面しようが、あの子はオレのものだ。
この程度のことでいちいち妬いてたまるか。

(ていうか妬いてないし)
(オレはただ資料室で騒ぐ2人に腹を立てているだけで)
(この程度のこと、教官として当然···)

千葉
「あ、東雲教官、おつかれさまで···」
「ひっ···」

東雲
···なに?

千葉
「い、いえ···その···なんだかすごく険しい顔をされているので···」

東雲
そう?気のせいじゃない?
ところで今時間ある?

千葉
「はい、まぁ···」

東雲
じゃあ、この資料、石神さんに渡しておいて

ドサッ···

千葉
「えっ、あの···」

東雲
それじゃ、よろしく

(あー、なんかスッキリしない)
(こういうときは···)



【ジム】

(ふーん···意外と混んでるんだ)
(で、お目当てのランニングマシンは···)

幸いなことにまだ2台空いている。
そのうちの1台に乗ると、設定を済ませてすぐにスタートボタンを押した。

(意外といいんだよね、気分転換のためのランニングって)

ただ走るだけなので、筋トレほど考えずに身体を動かすことができる。
さらに、集中すればするほど頭が空っぽになって余計なことを考えなくなる。

(ああ、この感じ···)
(このまま···集中できれば···)
(これ以上、くだらないことを···)

宮山
「あ···」

東雲

宮山
「おつかれさまです」

東雲
·········おつかれ

宮山は軽くストレッチをすると、オレの隣のマシンを作動させた。
どうやらコイツもランニングをしに来たようだ。

(だからって、なんでよりによってこのタイミングで···)
(少し前まで資料室にいたくせに···)

宮山
「教官、さっきまで資料室にいましたよね」

東雲

宮山
「何してたんですか。コソコソと」

(は?なにその言い草)
(コソコソとなんかした覚えないし!)

東雲
べつに。石神さんに頼まれた資料を取りに行ってただけ

宮山
「その資料、千葉先輩が持っていきましたよね?」

東雲
彼に、届けてくれるように頼んだから

宮山
「そうなんですか?」
「俺が見かけたとき、千葉先輩は慌てふためいていましたけど···」

東雲
ああ、それは···
密会現場を目撃したからじゃない?誰かさんたちの

口にしてから「しまった」と思った。
今のは明らかに「余計なひと言」だ。

宮山
「へぇ···やっぱり···」
「コソコソ見てたんですね、俺たちのこと」

東雲
見てない

(ていうか何?「俺たち」って)
(なに勝手にひとくくりにしてんの?)

宮山
「なんの話をしていたか、知りたいですか?」

東雲
べつに

宮山
「へぇ、興味ないですか」
「だったら『俺たち』だけのヒミツにしておきますね」

(こいつ···もしかして、わざと···)

東雲
···いいけど
ヒミツくらい『オレたち』にもあるし

宮山
「!」
「へ···え···」
「でも、それって『俺たち』のヒミツほどヒミツでしょうか」

東雲
!!

宮山
「先輩、教官には言えないことも俺には打ち明けてくれますし」
「守秘レベルは、案外『俺たち』のヒミツのほうが上だったりして」

(は?)
(バカなの、本気で言ってるの?)

東雲
あのさ···

半ば反射的に言い返そうとして、ようやくオレは我に返った。

(なに本気だしてんの)
(たかが宮山相手に···)

もう先日の潜入捜査の二の舞はごめんだ。
こいつの存在に揺さぶられたせいで、オレは彼女をいったん突き放すはめになって···
その結果、妙な誤解をさせてしまったのだ。

(ここは冷静に···)
(こんなヤツはスルーで···)

オレは、前に向き直るとランニングマシンの速度を1段階上げた。

(よし、ここからはランニングに集中···)

ピピッ!

(···は?)
(なに、こいつ。オレより速度を上げて···)
(だったら···)

ピピピッ!

宮山
「!」
「···くそっ」

ピピピッ!

東雲
!!

(こうなったら最高速度に···)

ピピピッ!

宮山
「!!!」

ピピピピッ!

東雲
···っ!

(しつこすぎ!)
(これだから「スッポン2号」は···)

果たして···

東雲
はぁ···はぁ···

宮山
「はぁ···はぁ···っ」

男子訓練生C
「···なぁ、東雲教官と宮山···ヤバくね?」

男子訓練生D
「その速度じゃ、そのうち倒れるだろ」

(誰が···倒れるか···!)

残り時間はあと1分。
これくらいならギリギリもつはずだ。

(こうなったら意地でも···なんとしてでも完走して···)

東雲
はぁ···はぁ······はぁ···っ



【シャワールーム】

東雲
···くそっ

全身の汗を洗い流しながら、オレは幾度となく舌打ちを堪えた。

(ヤラれた···)
(よりによって宮山相手にムキになるなんて)

途中、一度は冷静になろうとしたはずなのだ。
それなのに最終的にはこのザマだ。

(ほんと、あり得ない)
(おかげでまだ足が震えているし)

ひととおり汗を流したところで、シャワーを止める。
本当はもう少し丁寧に洗いたかったけれど仕方がない。

(ここでゆっくりしていると、また宮山と出くわしかねないし)

全身を軽く拭ったバスタオルを、素早く腰に巻く。
髪の毛をもう少し拭きたかったけど、それは後回しだ。

(ドライヤーで乾かすときに拭き直せば···)
(···ん?)

耳を澄ませると、足音が近づいてくる。
どうやら誰かがシャワー室に向かっているようだ。

(サイアク···)
(宮山のヤツ、もう···)

東雲
え···

サトコ
「えっ?」

東雲
······

サトコ
「きゃあああっ!」

現れたのは、完全に予想外の人物だった。

サトコ
「きょ···きょきょきょ教官がなんで···」

東雲
なんでってシャワー···

サトコ
「今は女性が入る時間帯です!」

そんなわけがあるか。
この子と違って、オレはそのテのミスはしない。

東雲
そこにいて
確認してくるから

濡れた肌に最低限の衣服を身に着けて、オレはシャワー室の外に出た。
案の定、ドアノブにかけられていた札は「男性OK」となっていた。

(ほら、見ろ)
(これだからあの子は···)

思えば、彼女と初めて言葉を交わしたのはシャワー室だった。
オレがシャワーを浴び終わったところに、彼女が入ってきたのだ。

(そのあとも、似たようなトラブルでオレがびしょ濡れになったり···)
(慰安旅行先の温泉旅館でも、浴場でばったり出くわしたりして···)

もっとも、彼女が卒業すればそんな機会もなくなるはずだ。

(なぁ、いいけど)
(これも最後のハプニングだと思えば···)

その時だった。
少し離れたところから声が聞こえてきたのは。

宮山
「あ、先日はお世話になりました」

黒澤
いえ、こちらこそ。今からシャワールームですか?

宮山
「ええ、汗をかいてしまったんで···」

(マズい、宮山が···)

サトコ
「教官、どっち···」

東雲
来て

サトコ
「えっ?」

東雲
早く!こっち

サトコ
「あの、なにが···」

東雲
宮山が来る

サトコ
「!!じゃあ、私の勘違い···」

東雲
そこじゃないから!問題は

今の彼女は、上はキャミソールを着ているものの、下は下着のみだ。
いちおうバスタオルがあるとはいえ···

(あり得ないから)
(こんな姿、宮山に見せるとか)

サトコ
「教官、私どうすれば···」

東雲
しばらく待機
宮山がシャワーを浴びるまで

とはいえ、このままだと明らかに不自然だ。

(まずはシャワー室を使っているように見せかけないと···)

東雲
バスタオル貸して

サトコ
「はい···」

(これを扉にかけて···)
(あとはシャワーを···)

けれども、このまま蛇口を捻れば2人ともびしょ濡れになってしまう。

東雲
キミ、もっと隅に寄って

サトコ
「えっ···こうですか?」

東雲
うん

(あとはオレが身体を寄せて···シャワーの角度を調節して···)
(よし、これならギリギリ···)

サトコ
「きょ···教官···」

東雲
なに?

サトコ
「その···ちょっと···」
「私には刺激が···」

東雲
·········は?

サトコ
「···っ」
「だから、その···距離···近すぎて···」

(···今更?)

東雲
なに、いきなり
さんざん抱きついたり、足を絡めたことだって···

サトコ
「違···っ」
「いえ、違わない気もしますけど···!」

東雲
じゃあ、なんで?

サトコ
「ここ···校内···だし···」
「場所も場所···だし···」
「私···こんな恰好で······」

東雲
······

サトコ
「それに···教官のシャツ···」
「なんか···その···目のやり場が···」

(······ふーん)

頬を染める彼女を見て、少しだけ意地の悪い気持ちになった。
たぶん、資料室での彼女と宮山のやりとりが頭をよぎったせいだ。

東雲
ねぇ、そんなに目のやり場に困るならさ···
キス、しようか

サトコ
「えっ」

東雲
困らないじゃん。そのほうが
目、閉じてればいいんだし

サトコ
「で、でも、もうすぐ宮山くんが···」

東雲
バレないよ
キミが声を我慢すれば

サトコ
「···っ」

東雲
さ、作ろうか
キミとオレだけのヒミツ···

サトコ
「教官、なに言って···」
「ん···っ」

言葉を封じるように、彼女の唇を塞いでしまう。
いつもより性急に仕掛けてしまうのは、たぶんこのシチュエーションのせいだ。

(やば···なんか···)
(すごい背徳感···)

今なら、彼女が困惑していた理由が少しわかる。

(校内···シャワールーム···)
(ほんと···ありえない···)

これまで保ってきた理性が揺らぎそうになる。
「食べてはいけないもの」の蜜の味は、なぜこんなにも甘いのだろう。

(ダメだ···そろそろやめないと···)
(いい加減、歯止めが···)

理性を総動員して、彼女の身体を離そうとする。
そのとき、手のひらがキャミソールのストラップに触れた。

(あれ、そういえば···)

2人
「!」

ドアが開くと同時に、人の気配がした。
宮山らしき人物が、億の個室へと入っていく。

サトコ
「教か···」

東雲
しっ

(あとはシャワーを浴び始めたら···)
(···今だ!)



【個別教官室】

そんなわけで数十分後···

サトコ
「ありがとうございます!」
「本当に···ほん···っとうに助かりました!」

東雲
だろうね

(あり得ないし。宮山に見られるとか)
(下着姿も、バスタオル姿も、そういうの全部···)

そこで、ふと先ほどの疑問を思い出した。
彼女のキャミソールのストラップに触れたときに気付いたこと。

東雲
ねぇ、キミさ。もしかして今···
ノーブラ?

サトコ
「!!!」

(ああ、図星···)

サトコ
「違っ···」

東雲
ん、違うの?ノーブラじゃないの?

サトコ
「ちが···いえ···確かに今日はしてないですけど···」
「今日はキャミソールと一体化しているもので···」

東雲
ブラが?

サトコ
「···っ」

東雲
どういうこと?ブラと一体化って···

サトコ
「そんなに何度も『ブラ』って言わないでください!」
「宮山くんは、もっと恥ずかしそうにしてたのに···」

(···へぇ)

ようやく腑に落ちた。
資料室で宮山が赤面していたのは、恐らくこのことだ。

(ていうか、なんでアイツが気付いてんの?)
(ほんと、油断ならないんだけど)

サトコ
「教官···私からも質問していいですか?」

東雲
いいよ。なに?

サトコ
「あの···今日何かありましたか?」

東雲
······

サトコ
「なんかいつもと様子が違うっていうか···」
「シャワー室でのキッスもそうですけど···」
「その···いきなり『ヒミツを作ろう』とかそういうのも···」
「なんだか教官らしくない気がして···」

東雲
······

サトコ
「あっ、もちろんイヤとかじゃないんですよ?」
「ただ、さすがにちょっとビックリして···」
「どうしてあんなことしたのかなぁ···なんて···」

彼女の指摘はごもっともだ。
あんなリスキーな場所でキスするなんて、オレもどうかしてる。
でも、その理由を考えたくはない。
というか認めたくない。

サトコ
「···教官?」

結局、オレが口にした「答え」は···

東雲
べつに。理由なんてないけど

サトコ
「ほんとですか?」

東雲
ほんとに
まぁ、強いて言うなら···
·········卒業前の思い出作り?

言ってから後悔した。
間違いなく、今日2度目の失言だ。
それなのに、うちの彼女ときたら···

サトコ
「教官ーーっ!」

東雲
痛っ···
抱きつくな!ここ、学校···

サトコ
「好きです!大好きです!ほんと大好きです!」

東雲
うざ···

サトコ
「うざくて結構です」
「氷川サトコ、今日のキッスを心の卒業アルバムに収めて···」

東雲
いいから、収めなくても
それより下着
色気なさすぎ

サトコ
「それは、その···」
「は、初めての時は、ちゃんとしますんで···」

東雲
···っ

(バカ···ほんとバカ···)

宮山の指摘は正しい。
オレは、イベントに興味がないし、卒業式で泣いたこともない。
もちろん、いかにもな「思い出作り」もまっぴらごめんだ。

(でも、一部例外も···)

あるかもしれないし、ないかもしれない。
そのカギを握るのは、恐らく今抱きついている彼女に違いないのだった。

Happy End




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