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ヒミツの恋敵編 後藤購入特典ストーリー



【後藤マンション】

目を覚ますと、カーテンの隙間から射し込む日差しが見える。

(寝過ぎたか?)

そう思って時計を見ると、朝の7時だった。

(休みの日にしては早く目が覚めたな)

身じろぐと触れる温もり。

サトコ
「ん···」

後藤
サトコ···

隣に顔を向けると、いつも俺より早く起きるサトコがスヤスヤと眠っていた。

(そうか···今日、2人とも休みだから泊まっていったんだったか)

サトコ
「後藤さん···」

後藤
起きたのか?

むにゃむにゃと唇を動かしたサトコの手が何かを探すように動く。

後藤
ここにいる

サトコ
「ん···」

その手をぎゅっと握ってやると、こちらに身を寄せてくるサトコ。
安心したように寝息を立てる姿を見ていると愛しさが増す。

(このまま二度寝してもいいが···)

やけにすっきりと目が覚めている。

(たまには朝飯でも作ってみるか)

眠るサトコの髪に静かにキスを落とすと、俺はそっとベッドを降りた。


【キッチン】

後藤
少し前のことを考えれば、これが俺の部屋の台所だとは思えないな

もはやサトコの城となっているキッチン。
ピカピカに磨かれ、俺には分からないキッチングッズが並べられている。

後藤
これは何に使うんだ?

謎の棒を手に取ったりしながら、使えそうなものを···と冷蔵庫を確認する。

(俺の部屋の冷蔵庫に、こんなに物が入ってるとは)
(朝飯に使えそうなものはタマゴにハム、ベーコン···冷凍庫には冷凍野菜もあるのか)

後藤
俺に作れそうなものは···

チラッと視界に入った食パンの袋。

後藤
トーストだな

一番手堅いものを考えつき、パンをオーブントースターに入れる。

後藤
とはいえ、トーストだけっていうのもな···

(焼くだけなら、俺にもできるんじゃないか?)

冷蔵庫からベーコンとタマゴ、それから冷凍のミックスベジタブルを出してみる。

後藤
何事も挑戦だ。ベーコンエッグと付け合せの野菜を作ってみるか

サトコが作ってくれる朝食を思い出しながら、作った結果······

後藤
これが···俺が作った飯か?

皿に盛り付けたものを見て、自分でも信じられない。
そこには程よく焼けたベーコンエッグに彩りをプラスするミックスベジタブル。

(こうなってくるとスープも欲しくなるな)
(確か、サトコは冷凍の野菜とスープの素を使って···)

欲が出てきて、俺は他の料理にも手を出してみることにした。

サトコ
「後藤さん···?」

後藤
起きたのか

サトコ
「すみません。私だけ寝ていて···」

後藤
ゆっくり休めたなら何よりだ

昨晩貸した俺のTシャツは、サトコには少し大きいようだ。
その姿を見ると、昨夜のことが自然に思い出されて······

後藤
······

サトコ
「後藤さん?どうかしましたか?」

後藤
いや、何でもない

(朝から何を考えてるんだ、俺は)

サトコ
「すごくいい匂いがしますけど、これは···」

後藤
今日は俺が朝飯を作ってみた

サトコ
「後藤さんが!?」

サトコがその目を瞬かせる。

(まあ、驚くよな)

後藤
テーブルで待っていてくれ。あとは並べるだけだ

サトコ
「はい!」

できたばかりのスープを器によそい、トースターに入れておいた食パンを焼き始めた。

【リビング】

サトコ
「こ、この朝ごはん、全部後藤さんが作ったんですか!?」

後藤
ああ。見よう見真似だったが···少しは俺の腕も上達したらしい

食卓に並ぶベーコンエッグとミックスベジタブルがのったプレート。
それからニンジンとブロッコリー入りのコンソメスープとトーストを用意した。

後藤
ジャムとバターはどっちがいい?

サトコ
「それじゃ、バターで。これだけ作れたら、もう料理が苦手なんて言えませんね!」

後藤
そうか?

サトコ
「そうですよ!」
「タマゴを塊にして焼くことしかできなかった後藤さんが、こんな見事なベーコンエッグを···」

サトコがうっとその目元を押さえる。

後藤
そこまで感動するものか?

サトコ
「冷蔵庫がカラッポだった頃に比べれば、すごい進歩です!」
「私も負けてられないですね」

テーブルについたサトコははじけるような笑顔を見せてくれる。

サトコ
「私、幸せですね。後藤さんの手料理が食べられるなんて」

後藤
簡単な朝飯くらいで大袈裟だ

サトコ
「そんなことないですよ。本当にうれしいです」

(こんなに喜んでくれるとは···可愛いヤツだな)
(やっぱり、サトコには笑顔が似合う)

後藤
今日はどうする?どこかに出かけるか?

サトコ
「そうですね。いいお天気ですし···」

カーテンを開け、日差しを浴びながらサトコと食べる朝飯はいつも以上に美味しく感じられた。


【レストラン】

日中は都内の水族館と併設されている遊園地を回った。
夜はあらかじめ予約していたホテルのレストランへと連れてくる。

サトコ
「夜景が綺麗···後藤さんと一緒に、こんな素敵なレストランに来られるなんて···」

後藤
今日は久しぶりに、アンタとゆっくり過ごせる時間がとれてよかった

サトコ
「水族館も遊園地も空いててよかったですね」

後藤
世間は平日だからな

サトコ
「ペンギンのエサやりも楽しかったです」

後藤
ああ。魚を持った途端、集まってきたのには驚いた

(ペンギンまみれになっているサトコは可愛かった)

楽しそうに今日の思い出を話しているサトコは綺麗だ。

(サトコがいなければ、こんなところにも来ることもないが)
(たまには、こういう洒落たレストランもいいもんだな)

サトコ
「······」

後藤
サトコ?

サトコが急に食事の手を止める。
その瞳が潤んでいることに気が付き、俺は慌てて身を乗り出した。

後藤
どうした?何か気に障ったか?

サトコ
「ち、違うんです!これは嬉し涙で···」

後藤
「嬉し涙?」

サトコ
「ここ、予約取るの、すごく難しいレストランですよね」
「前に都内の激戦レストランだって『オヒルナンデスネ』で紹介されてました」

後藤
ああ···

(俺もそれで知って、キャンセル待ちをしたんだ)

サトコ
「ありがとうございます。私のために···」

後藤
アンタが喜んでくれるなら、大したことじゃない

すっとテーブルにハンカチを置く。

(この間、アイロンをかけておいて正解だった)

サトコ
「後藤さんが、こんなに綺麗なハンカチを···ううっ」

後藤
アンタは小さなことで泣きすぎだ

サトコ
「そんなことないです。本当に全部嬉しくて」

(嬉し涙を流すサトコも可愛い)


【ホテル】

食事を終えると、自然にデートも終わりの雰囲気になる。

サトコ
「今日はありがとうございました。こんなにリフレッシュできた日は久しぶりです」

後藤
俺も楽しかった

サトコ
「また、休みを合わせて出掛けましょうね」

後藤
ああ

(明日からは、またいつもの忙しい日が戻ってくる···)

こんなふうにサトコだけを見ているわけにはいかない。

後藤
······

サトコ
「後藤さん?」

気が付けば、俺はその手を掴んでいた。

(俺は、いったい何を···)

後藤
今日は帰したくない

サトコ
「後藤さん···」

理性では抑えられなかった言葉が零れ落ちる。

(俺はこんなに堪え性のない男だったか?)

そう思ったけれど、今さら言葉を引っ込めることはできない。

サトコ
「···私も」

後藤
ん?

サトコは真っ赤になってうつむくも、その顔を上げてこちらを見つめてきた。

(そんな顔を見せられたら···)

サトコ
「私も帰りたくないです···」

(帰せるわけがないだろう?)

後藤
···行こう

サトコの手を取り立ち上がる。
頭に過るのは、今日1日見たサトコの様々な顔。

(笑った顔も嬉し泣きする顔も照れる顔も···)
(サトコの表情全てをずっと近くで見ていたい)

【エレベーター】

後藤
······

サトコ
「······」

急きょ部屋を取り、客室に向かうエレベーターの中では互いに無言だった。

(いつも俺の部屋だからな)
(余裕がないと思われてるだろうな···)

視線を下ろすと、サトコと目が合った。

サトコ
「······」

後藤
······

(サトコ···)

その唇に引き寄せられるように口づけてしまう。

サトコ
「んっ···」

サトコの背中がエレベーターの壁にぶつかる。
上からするキスにサトコは少し苦しそうな顔を見せたけれど、それにすら煽られるようだった。

サトコ
「後藤さ···」

後藤
······

(そんな顔を見せるな)
(ただでさえ、我慢が効かなくなってるのに···)

エレベーターが止まり、やっとその唇を離すことができる。
その腕を引いて、俺は真っ直ぐに部屋へと向かった。

【部屋】

サトコ
「ど、どうしたんですか?んっ···」

後藤
アンタが誘うような顔を見せるからだ

サトコ
「そんなこと···っ」

部屋に入るなり先程の続きというように、入り口のドアにサトコを押し付けキスをしてしまう。
息をつく間もないキスにサトコの手が俺のシャツを掴んだ。

後藤
···嫌か?

サトコ
「嫌じゃ···ないです···」

潤んだ瞳で答えるサトコの声はかすかに掠れている。
俺はサトコを抱き上げると、ベッドへと向かった。

サトコ
「今日の後藤さん···なんか、いつもと違います···」

後藤
これが本当の俺だ

サトコ
「え···」

後藤
アンタのことを考えれば、ただの男になる

サトコ
「後藤さん···」

その服に手を掛けると、サトコが恥じらうような顔を見せる。

サトコ
「後藤さんがいつもと違うと、私もどうしたらいいのか···」

わからない···と、俺の手にその手を重ねてくる。

後藤
どんなサトコでも、俺は好きだ
俺のことしか考えられなくなってるアンタを見たい
だから今は···俺のことだけ考えてろ

(ん?今のセリフ、誰かが言いそうだな···)

サトコ
「何だかその言い方···昴さんみたいですね」

後藤
アンタ···

(いつの間に、一柳のことを名前で呼ぶようになったんだ?)

サトコの口から、その名前が出ただけで胸の奥がカッと熱くなる。
同時に渦巻く嫉妬の感情。

サトコ
「そういえば、すば···」

後藤
サトコ

サトコが一柳の名を呼ぶ声を聞きたくなくて、キスで言葉を遮る。

サトコ
「ん···後藤さん?」

後藤
全然聞こえない···だから、その話はあとで、覚えてたらな

サトコ
「···っ」

俺を呼ぶ声以外は聞きたくない。
深く口づけながら、その肌を求めた時······

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【後藤マンション】

サトコ
「後藤さん、後藤さん···」

後藤
ん···?

肩を揺すられ、薄っすらと目を開ける。
するとエプロン姿のサトコがベッドサイドで屈んでいた。

サトコ
「そろそろ起きませんか?もうすぐ、お昼ですよ」

後藤
昼···?

サトコに言われて時計をを見ると、昼の11時を過ぎている。

後藤
俺は···

(サトコとホテルにいたはずだが···)
(まだ明るいってことは···)

後藤
トーストは···

(俺が作った朝飯はどうなったんだ?)

サトコ
「すみません。今日はパンじゃなくてご飯なんです」

後藤
ご飯···アンタが作ったのか?

サトコ
「はい。あとはお味噌汁を温め直すだけです」

サトコの話に、やっと見えてくる真実。

(最初から全部夢だったのか···)

後藤
そうだよな···あそこまで上手く話が運ぶわけない

サトコ
「え?」

後藤
簡単に料理ができるわけないし、ハンカチにアイロンがかかってるわけないし
そのあとも···

サトコ
「何の話ですか?」

後藤
···こっちの話だ

不思議そうな顔をするサトコに腕を伸ばし、そのままベッドの中に引き戻す。

サトコ
「後藤さん?」

(けど···現実が一番いいな···)

その温もりを確認するように抱きしめる。
そして自然と、夢の続きを求めるように彼女に口づけてしまう。

サトコ
「あの、朝ご飯は···」

後藤
もうこの時間だ。昼飯にしよう

そのエプロンの結び目をゆっくりと外すと、サトコの頬が赤く染まる。

サトコ
「今日の後藤さん···ちょっと強引ですね···?」

後藤
···こんなもんじゃない

サトコ
「え?」

(夢の中の俺はもっと強引だった)
(あれの俺の本心なのか···?)

サトコにはいつも優しく触れたいと思っている。
なのに、夢の中の俺は余裕がなさすぎた。

サトコ
「後藤さん···?」

エプロンを外して、その服に手を掛けるとサトコの声に戸惑いが滲む。
それを宥めるように、俺は抱きしめながらそっとキスをした。

(やはり夢と現実は違う)
(サトコのこんな顔を見せられれば···勝手な事ばかりできない)

後藤
そういう顔、他の男には見せるなよ

サトコ
「え···?」

ひとり夢の続きを追っていることはわかっていたが、
それでも、本心は隠しきれなかった。

後藤
俺だけのサトコでいてくれ···

夢で告げられなかった言葉を告げ、本物の温もりを抱きしめた。

Happy End



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