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カレが妬くと大変なことになりまs(略 加賀2話


【居酒屋】

津軽
ウサちゃんってかわいいよね。俺のペットみたいで

サトコ
「ペット···」

加賀
······

(ダメだ、怒っていらっしゃる···!)
(津軽さんも、妙に “俺の” の部分を強調してるし···)

サトコ
「あのですね、私は人間であって、決してペットでは···」

津軽
そういえば、ウサギって寂しいと死んじゃうんだっけ?

サトコ
「そういえば、そんな話を聞いたことが···」

突然、津軽さんに肩をグイッと引き寄せられた。
あまりにも急なことで、驚きのあまり拒否すらできない。

津軽
どう?兵吾くん、羨ましいでしょ

サトコ
「······!?」

加賀
···なんの話だ

津軽
ずーっとかわいがってた補佐官は、本当は自分の班で引き取りたかったんじゃない?
でも残念だけど今はうちの班の子で、俺の大事な大事な大事な部下だからね

サトコ
「なんでそんな、何回も言うんですか···!?」
「っていうか、離してください!せ、セクハラですよ!」

津軽
いい反応するよねーウサちゃんって
純粋で素直で···男としてはそばに置いておきたいけど
でもウサちゃんを狙う男はきっと単純な奴ばっかりだから、気をつけなきゃダメだよ

加賀
······

(津軽さんの気まぐれで、今まさに私の命の灯が消えようとしてる···!)
(津軽さん、顔には出ないだけでやっぱり酔ってるんじゃ···!?)

加賀
···くだらねぇな

鼻で笑う加賀さんからは、さっきまでの禍々しいオーラを感じない。
どうやら、怒りはすでに収まったらしかった。

(よ、よかった···)

津軽
あれ?変だな~。俺の思い違いかな
兵吾くんとウサちゃんの間には、他の人たちにはない “何か” を感じるんだけど

サトコ
「そ、それは···2年も専属補佐官だったので、そのせいだと思います!」

加賀
···どうでもいいが、津軽

ようやく私の方から手を離した津軽さんに、加賀さんが一瞬だけ鋭い視線を向けた。

加賀
あんまりそいつを舐めてると、今にえらい目にあうぞ

サトコ
「···?」

津軽
ふーん?それって俺に対する忠告?
それとも···

サトコ
「わ、私···ちょっと失礼します!」

ふたりの間に流れる空気に耐えかねて、慌てて立ち上がった。

加賀
···まあ、いつまで経ってもクズはクズだがな

お手洗いへと逃げる私の背中を、加賀さんの声が追いかけてきたのだった···


【駅】

その後飲み会はお開きになり、無事に解放された。

(結局、加賀さんとは一緒に帰れなかった···)
(津軽さん、鋭いから···目くばせしようものなら瞬時に気付かれそうだったし)

お店を出ると、仕方なく加賀さんとは反対方向へと歩き出す。
津軽さんとは同じマンションなので、途中でコンビニによると言ってなんとか別れた。

(なんか···なんとなく、一緒に帰るところを加賀さんに見られたくなくて)

もちろん、加賀さんは私と津軽さんが同じマンションだと知っている。
誤解されるようなこともないけど、気持ち的に、目の前でほかの男性と帰るというのは憚られた。

(どっちにしても今日はこのまま帰るしかない···えーと、家の鍵は)
(···ん?あれっ!?)

慌ててバッグを探したけど、いつも入れている場所に鍵が入っていない。

(忘れてきた···?いや、朝はちゃんと鍵をかけて出てきたはず)
(ってことは、落とした···!?どこに!?)

サトコ
「うう···鍵つけ変えないとダメかも···」
「っていうか、今日どこに泊まろう···」

津軽さんと時間をずらして電車に乗り、家に近くの駅で降りる。
鳴子に連絡しようかと思いながら顔を上げると、見慣れた車が近くに停まっていた。

加賀
クズ

サトコ
「···加賀さん!?」

その手にちらつかせているのは、間違いなく私の部屋の鍵だ。

サトコ
「もしかして拾ってくれたんですか!?」
「すみません、どこに落ちて···」

加賀
落ちてたんじゃねぇ

サトコ
「へ?」

(ま、まさか···)

いくら思い出してみても、落とした記憶がない。
バッグに決まった場所に入れて、いつも玄関につくまで取り出さないからだ。

(でも鍵があのポケットに入っていることを、加賀さんは知っている···)
(···つまり!?)

サトコ
「恋人は怪盗K···」

加賀
あ?

サトコ
「っていうか、いつの間に!?」

加賀
お前に気付かれるようなヘマはしねぇ

(公安刑事が堂々と、人のバッグから鍵を拝借するって···い、いいの?)

加賀
返してほしけりゃ、さっさと乗れ

(しかも脅し始めた···)
(いや、脅されるのはいつものこと···)

加賀
乗らねぇんだな

サトコ
「乗ります!」

鍵を返してもらうかわりに、助手席に乗り込む。

(ここまでして私を拉致りたかった理由···そんなの、ひとつしかない)
(お仕置きだ···!)

死刑宣告をされたような気持で、助手席で震えていた。


【加賀マンション】

そのまま、なすすべもなく加賀さんの部屋へと連行された。

(甘かった···津軽さんに散々からかわれた怒りを、加賀さんが抑えられるはずなかった···)

リビングのドアが閉まる音が響き渡り、加賀さんがネクタイを緩める。

加賀
さて···

サトコ
「ヒィ···」

思い起こせば、津軽さんとの飲み会の間中、加賀さんはほぼ無言だった。
それが怒りゲージを表していたというのに、最後のほうは油断してしまっていた。

(だって、なんかそれまで怒りが通り過ぎて余裕がある表情だったから)
(でも、違った···!あれはやっぱり、静かに怒ってたんだ!)

サトコ
「か、加賀さん!あのですね···」

加賀
コーヒーでも飲むか

サトコ
「···んっ!?」

加賀
他の飲みもんのほうがいいか

サトコ
「い、いえ···」

(コーヒー···?この状況で···?)
(もしかして、やっぱり怒ってなかった···?)

コーヒーの香ばしい香りがして、目の前にカップが置かれる。
並んでソファに座ると、加賀さんを取り巻く空気が緩んだ気がした。

(そう、だよね···津軽さんのああいう冗談はいつものことだし)
(加賀さんだって、そんな毎度毎度怒らないか···)

もしかして、
最近は加賀さんのことなら何でも分かっているような気になっていたのかもしれない。

(でも、2年以上付き合ってもやっぱりまだまだ、知らないことがあるんだな)
(加賀さんは実は、あの程度では怒ったりしない···)

加賀
···で?

サトコ
「はい?」

加賀
覚悟はできたか?

サトコ
「かく···ご···?」

カップを置いた加賀さんが、ゆっくりと立ち上がる。
その背後に、ゴゴゴゴゴ···というおどろおどろしい文字が見えるようだった。

サトコ
「ままま、まさか···」

加賀
···処刑の時間だ

サトコ
「しょけ···処刑!?」
「お仕置きでも躾でもなく···処刑!?」

加賀
そんだけのことはしただろうが

サトコ
「あっ···」

固まったままの私をまるで荷物のように担ぎ上げると、加賀さんが寝室のドアを開けた。

【寝室】

相変わらず荷物のように、ベッドに投げ飛ばされる。

加賀
もう一度聞いてやる
···覚悟は決まったか

サトコ
「命を捨てる覚悟は、まだできてません···無理です···」

ブルブル震えながら答える私を追い詰めるように、加賀さんがベッドに膝をつく。
その眼に浮かんでいるのは、獲物を追い詰める肉食獣さながらの光だ。

(やっぱり私、加賀さんのことちゃんとわかってた···!)
(あんなことがあって、怒らない人なわけなかったよ!)

最後のほうで余裕そうだったのは、私への処刑を決めて心が落ち着いたからかもしれない。
片手でネクタイを引っ張って緩めると、加賀さんがぐいっと私に顔を近づける。

加賀
飼い犬に手を噛まれるとはこのことだな

サトコ
「誤解です···!私は他の人なんて、まったく···」

加賀
喚くな

苛立ちを隠そうともせず、加賀さんが感情をぶつけるようなキスで口をふさぐ。
必死に止めようとする私の手を押しのけて、強引に服を脱がせ始めた。

サトコ
「ん···!」

加賀
···チッ
あいつの匂いなんてさせてんじゃねぇ

サトコ
「あいつって···」

加賀
···何がウサギだ
テメェは、俺だけの犬だろうが

サトコ
「···っ」

苦しい息の下で、必死に背中に手を回す。
乱暴に脱がされた服の裾から手を差し入れて、加賀さんが私の肌を乱した。

サトコ
「かが、さ···」
「待っ···急に、こん、な···ーーー」

加賀
あいつの匂いなんざ消してやる

肌に吸い付きながら、加賀さんが私の奥を求めようと脚を持ち上げる。
さっきまでの穏やかな雰囲気は消え去り、その瞳には私しか映っていない。

加賀
テメェはそうやって、俺の下で啼いてりゃいい
少しでもその声を他の野郎に聞かせたら、どうなるかわかってるな

サトコ
「わ、わかっ···」
「っ······!」

急激に揺さぶられて、一気に押し寄せる快感に何もかもわからなくなる。
必死に加賀さんにしがみつき、私だけに与えられる快感を余すことなく受け止めた。

サトコ
「ひどい···」

ベッドから起き上がる気力もないほど疲れ果てながら、せめて恨み言をつぶやく。
カーテンの外はすでに明るく、でも私も加賀さんも一睡もしていない。

(あんなに激しい加賀さん、久しぶり···かも···)
(まさか本当に、寝かせてもらえないなんて···)

ドアが開く音が聞こえて、顔だけ持ち上げる。
濡れたままの髪で水の入ったペットボトルに口をつけるその姿は、妙に色っぽい。

加賀
シャワーは

サトコ
「そんな元気ないです···」

加賀
···口開けろ

横になったままの私の肩を優しく押さえつけて、加賀さんが口映して水を飲ませてくれる。
久しぶりに飲み物を口にした気がして、夢中で飲んだ。

加賀
···もう、この程度じゃ動じねぇか

サトコ
「え···あ···」
「ち、ちが···あの、すごく喉が渇いてて···!」

上半身裸の加賀さんの髪からぽたりとこぼれた雫は、私の頬に落ちて首へと伝っていった。
色気があふれるその姿から、目が離せない。

加賀
あいつの前では、喚いてりゃいい

サトコ
「え···」

加賀
従順になるのは、俺にだけだ
···違うか?

(こんな言い方···さっきはあんなに激しくて、『処刑だ』なんて)
(なのに今は、こんなに甘い···ずるい···)

サトコ
「違わないです···」

もう一度、加賀さんの唇が戻ってくる。
重なり合う肌の心地よさに目を閉じると、疲れ果てたはずの身体に再び熱を灯されたーーー


【警察庁 休憩室】

休み明け、差し入れで余ったお菓子を持って休憩室のドアを開ける。
中にいたのはちょうど加賀さんだけで、不意に目が合った。

サトコ
「お疲れ様です!」

加賀
ああ

サトコ
「さっき差し入れたお菓子が余ったんですよ。ひとつ食べませんか?」

加賀
テメェ···

私が持っているお菓子の箱を見て、加賀さんが眉根を寄せる。

サトコ
「うっ···すみません、たまには洋菓子もと思って」
「でもせめて、加賀さんが好きな柔らかいお菓子を選んだ私の努力を認めてください!」

加賀
大福や求肥の柔らかさには適わねぇだろうが

サトコ
「そうですけど、このスポンジケーキだってふわふわですよ!」
「ただ、中に入ってるのがカスタードですけど···」

加賀
······

サトコ
「すみません···石神教官には好評でした···」

加賀
···チッ

(盛大な舌打ち···)
(でもそういえば、職場でこうやってのんびり話すのは久しぶりかも)

結局加賀さんは差し入れを受け取ってはくれなかったけど、ふたりで話せただけで充分だ。
加賀さんを見上げようとしたとき、いつの間にかその近くに立っていた人影を見つける。

津軽
お疲れ~

サトコ
「つ、津軽さん!?いつからそこに···!?」

津軽
この間、二日酔いにならなかった?
また飲みに行こうね。3人で

加賀
······

ひらひらと手を振り、津軽さんが休憩室を出ていく。
私の隣で、加賀さんの手の中の缶コーヒーがベキッと音を立てて潰れたのだった···

Happy End



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