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加賀 出会い編 グッドエンド

【道】

数日後、久しぶりの休日。
私は病院からの帰り道を歩いていた。

(あの時怪我した足も、無事に完治したし‥)
(絶対ダメだと思ってた審査もパスしたし、夢の刑事に少しは近付けたかな)

その時、ゆっくりと私の横に車が停まった。
後部座席の窓が開き、加賀教官が顔を出す。

加賀
何ニヤニヤしてる。気持ち悪ぃ

サトコ
「か、加賀教官!?」

今度は運転席の方から、東雲教官が顔を覗かせた。


サトコちゃん、乗って乗って

サトコ
「えっ?」

加賀
さっさとしろ

サトコ
「は、はい!失礼します!」

加賀教官の鋭い視線に、慌てて後部座席に乗り込んだ。

【車】

サトコ
「お二人とも、もしかして捜査の帰りですか?」


そう。やっと終わった~

加賀
奴隷に報告書を作らせようと思ってたところだ。ちょうどよかったな

(あ、なるほど‥なんで乗せてくれるのかと思ったけど、そういうことか)

納得していると、加賀教官がふと何か思いついたように前を見る。

加賀
歩、ルート変更だ


加賀
今から言う店に向かえ


あ、そういうことね。了解でーす♪

【スイーツ店】

東雲教官に車で待つように指示すると、教官は私を連れて、あるスイーツ店を訪れた。

サトコ
「教官、ここって‥」

加賀
新しい味の桜見大福が出た

サトコ
「はい?」

加賀
ここはいつも新作が出そろうのが早い

サトコ
「はあ‥」

ショーケースに桜見大福の新作が並んでいて、その他にもおいしそうなスイーツが並んでいた。

サトコ
「でも、そうしてここに連れてきてくれたんですか?」

加賀
報酬だ

どうやら、あの時限装置のコードを切る直前の話のことらしい。

(あんな約束、もう忘れられてるかと思ってた‥覚えててくれたんだ)

加賀
好きなだけ選べ。それでチャラだ

サトコ
「そんな、むしろ私の方が教官に助けていただいたのに」

加賀
さっさとしろ。俺はもう決めてる

サトコ
「あ、はい‥!ちょ、ちょっと待ってください。えーと‥」

(どれもおいしそうで決められない‥)

石神
‥氷川?

低い声に振り返ると、そこには石神教官が立っていた。

サトコ
「い、石神教官!?どうして‥」

加賀
よぉ、クソメガネ。こんなとこで会うとはな

石神
‥お前もいたのか

また2人の言い合いが始まるのかと思った時、店内に店員さんの声が響いた。

店員
「お待たせいたしました、当店特選プリン6個入りでお待ちのお客様~」

(特選プリン‥それもおいしそう。でも6個も誰が買ったんだろう)

店員
「特選プリン6個入りでお待ちのお客様いらっしゃいますか?」

石神
‥‥‥

サイドの呼びかけに、石神教官は無言で店員さんからプリンを受け取った。

(ええ!?石神教官のプリン‥!?)

加賀
またそんな邪道なもん買ってんのか

石神
ふん、桜見大福も悪くはないがやはりプリンの舌触りには適わない

加賀
バカか。桜見大福の求肥はプリンより上だろ。あの触感がいいんだよ

(あ、甘いもの談議‥?ってことは、石神教官も甘党‥)
(いつもはライバル心むき出しでケンカばっかりなのに、甘いものが好きなんて‥なんだかかわいい)

そう思った瞬間、両教官にチラリと睨まれて思わず背筋が伸びた。

サトコ
「すみません!か、かわいいなんて思ってません!」

加賀
なに言ってやがる

石神
‥氷川、このことは覚えておく

サトコ
は、はい‥

(やっちゃった‥)

石神
それにしても、また2人で行動とはな。相変わらず、恋人のフリでもして潜入捜査か?

加賀
さあな

石神
ならば、生徒を連れてこんな店に来る必要はないだろう

加賀
うるせぇな。これは俺のだ。ゴチャゴチャ文句言ってんじゃねぇよ

サトコ
「えっ!?」

加賀
あ?

サトコ
「い、いえ‥」

(今の『俺のだ』って‥私のことだよね!?)
(ど、どういう意味‥!?奴隷?使いっ走り?駒?‥それとも)

あれこれ考え一人で赤面する私を見て、
教官がニヤリと口の端を持ち上げたことには気づかなかった。

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【個別教官室】

あの後、スイーツをお持ち帰りにしてもらい、
そのまま加賀教官と東雲教官と一緒に教官室に戻ってきた。

サトコ
「まさか休みの日まで手伝わされるなんて‥」

加賀
奴隷のくせに文句言ってんじゃねぇよ。手伝えて嬉しいだろ?

サトコ
「‥ハイ」

(なんか、さっきの石神教官とのやりとりを思い出すと恥ずかしくて)
(まともに加賀教官の顔が見れない‥)


あれ。誰かの携帯鳴ってない?

加賀
俺だ。ちょっと外す


はーい

加賀教官が教官室を出て行くと、東雲教官がイスに乗ったまま私の方へ向かってきた。


で?

サトコ
「はい?」


やっぱり、兵吾さんとなんかあったでしょ

サトコ
「な、ななな、なんかってなんですか!?」


具体的に言っちゃっていいの?

(なんで!?東雲教官、いったい何を知ってるの!?)

サトコ
「な、何もないですよ」


そう?今までの2人とは明らかに雰囲気が違うよね
特にサトコちゃんの方の気持ちに変化があったように見えるんだけど

(本当鋭い‥!)

にこにこしている東雲教官を前に、なんとか誤魔化そうとする。
でも教官は何かに気づいているように、その悪戯な笑みを崩さなかった。


オレの目をごまかせるとでも思った?
どうしてもって言うなら、2人きりにしてあげるけど

サトコ
「け、結構です!」


ほんとに?我慢しなくてもいいよ?

ぐっと乗り出した東雲教官に慌てて手を振る。

サトコ
「いいんです、私なんか加賀教官に‥」

加賀
チッ、石神からくだらねぇ電話だった

サトコ
「!」

戻ってきた教官に慌てる私を見て、東雲教官はハッとした顔になった。


兵吾さん、すみません。オレ、公安課ルームのパソコンつけっぱなしにしてきたかも

加賀
あ?んなもん、誰かに落とさせりゃいいだろ


イヤ~、一応オレにも誰にも見られたくないファイルとかあるんです
じゃあ、ちょっと行ってきま~す

(白々しい‥!東雲教官、天才って言われてるのに演技力はないの!?それとも、わざと!?)
(絶対わざとだ‥)

東雲教官がいなくなると、加賀教官と2人きりになる。

(気まずい‥早く書類作成終わらせて帰ろう!)

サトコ
「教官!報告書、終わりました!」

加賀
ああ、ご苦労。んじゃ食うか

サトコ
「え?」

加賀
さっき買った桜見大福

サトコ
あ、いただきます
そういえばさっきの石神教官からの電話って、仕事ですか?

加賀
いや、あの店で売っていた桜見大福の味はなんだった、ってしょうもねぇ用件だった

その言葉に、思わず吹き出してしまう。

(仲がいいのか悪いのかわからない‥)

話しながら、加賀教官が私に新作の桜見大福を手渡してくれた

サトコ
「わあ‥ふわふわですね」

加賀
この求肥の中のカスタードがうまい

桜見大福にかぶりつく加賀教官に倣って、私も同じようにする。
口の中に上品な甘さが広がり、思わず顔がほころんだ。

サトコ
「んん!おいしい!この味のカスタード、求肥に合いますね!」

加賀
‥‥‥

サトコ
「教官?どうしたんですか?」

加賀
ったく‥

突然、加賀教官の手が伸びてきて、私の口元を指で拭う。

サトコ
「あ‥!?す、すみません!」

(うそ‥口についてた‥!?子供じゃないんだから‥恥ずかしい‥)

慌てる私を見て、くっ、と微かに声を上げて加賀教官が笑った。

(あ‥今の笑顔、初めて見た)
(もっと教官に笑ってほしいな‥教官のいろんな顔を見たい)

加賀
あ?ジロジロ見てんじゃねぇよ

サトコ
「す、すみません」

(怖い一面もあるけど、教官と一緒にいるだけでこんなにドキドキする‥)
(私‥やっぱり、教官のことが好きなんだ‥)

【資料室】

数日後、私は一人、学校の資料室で膨大な資料とにらめっこしていた。

サトコ
「えーと、これじゃないし、こっちでもない‥なんでこんなバラバラに収納されてるの!?」

加賀教官はあの日の優しさがウソだったかのように、
また私を『駒』として容赦なくこき使うようになった。
でも実際は、『奴隷』と呼ばれていた時とさほど変わらない。

(嬉しいような、悲しいような‥でも、前よりは全然、嫌じゃない)
(やっぱり、私が教官のこと好きだから‥かな)

サトコ
「あ、やっと見つけた‥この辺の資料、全部だ」

膨大なファイルを一気に抱えたせいか、数冊のファイルが手元から落ちる。
慌ててかき集めると、最後に見た書類に『加賀兵吾』の名前を見つけた。

(教官が関係した事件の資料‥?)

詳細を見ると、それは数年前の連続爆弾事件の捜査資料だった。

(『加賀兵吾を除く、チーム全員が殉職』‥)

加賀
‥昔一緒に仕事した奴らに少し似てるってだけだ
もう、誰も残ってねぇけどな

あの時の教官の言葉が過った。
数年前の爆弾事件。教官の過去に何があったのか、今の私は知る由もなかった‥‥

Good End

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