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加賀 恋の行方編 3話

【寮 談話室】

鳴子
「科捜研の人と仲良くなった?」

サトコ
「うん、なんか成り行きで‥」

莉子さんと知り合った数日後、鳴子と千葉さんと一緒に朝食をとっていた。

千葉
「科捜研の人たちなんて、オレたちにとっては雲の上の存在だよな」

鳴子
「立派な刑事になれば、そういう人たちと一緒に仕事することもあるだろうけど」
「まだ訓練生なのに科捜研の人と知り合いになれるなんて、すごいことだよ」

サトコ
「美人で優しくて、それに加賀教官からも信頼されてるみたいだったよ」

千葉
「オレなんか、そんな人を前にしたら、緊張して言葉がでないかも」

2人の反応を見て、改めてすごい人と知り合いになったのだと気づく。

(教官への気持ちも、結局気づかれちゃったけど)
(でも‥『生半可な気持ちじゃ辛いだけ』って‥どういう意味だろう)

千葉
「今日からついに、マンツーマンの訓練がスタートだな」

鳴子
「緊張しちゃうな~。どんなことやるのかな」

サトコ
「私はあんまり、普段と変わらないような気も」

鳴子
「そうだよね。普段から加賀教官の補佐官だもんね」

でもマンツーマンとなると、今まで以上につきっきりになることが予想される。
教官にこの気持ちが気づかれないように、しっかり集中するよう、気を引き締め直した。

【寮前】

支度を済ませると、早めに行って準備するために鳴子たちよりも先に寮を出た。


あれ、サトコちゃん、もう行くの?早いね

サトコ
「東雲教官!おはようございます」


おはよ。そういえば聞いたよ、莉子ちゃんと知り合いになったって

サトコ
「はい‥っていうか、東雲教官!莉子さんとのこと知ってて、私をからかったんですね」

思わず問い詰める私にも、東雲教官は涼しい顔だった。


なんのこと?

サトコ
「莉子さんは加賀教官の彼女だとか、教官は莉子さんの虜だとか」
「それに‥その、私の経験が足りないから、教官を満足させられない、とか‥!」


うん、サトコちゃんはまだまだ、捜査面で技量も経験も少ないもんね

サトコ
「捜査‥?」

思わず聞き返すと、東雲教官がいたずらっぽく笑う。


あっ、もしかして違うこと想像してた?
私‥ベッドの中で兵吾さんを満足させられるかしら‥
とか?

サトコ
「‥それは私のマネですか?」


うん、似てた?

サトコ
「似てません‥ってそうじゃなくて!」


そっか~、サトコちゃんは男女関係のことだと思ってたんだ
そうだよね、オレの着替えを2回も覗くくらいだし‥そりゃエロイ発想しちゃうよね

サトコ
「ち、違います!大きな声で変なこと言わないでください!」


でもサトコちゃんの場合、夜の訓練も必要かも

東雲教官の笑顔が、意味深な微笑に変わった。

サトコ
「夜の訓練‥」


オレが相手してあげるよ

サトコ
「え!?」


あ~でもお気に入りの駒に手を出しちゃ、兵吾さんに怒られるかなぁ

私の反応を見るように、東雲教官が私の顔を覗き込んでくる。

(東雲教官には、加賀教官のことでものすごく遊ばれてる気がする‥)

サトコ
「それじゃ私、先に教官室に行くので、失礼しま‥」


あ、違う違う。今日はこっちだよ

サトコ
「え?」

【モニタールーム】

東雲教官に連れられて、モニタールームにやってきた。

(何度入っても、このパソコンとモニターの数、すごすぎる‥)
(今日はここで捜査会議が行われるって、東雲教官が言ってたけど)

最新鋭の設備が完備されたモニタールームでは、たまにこうして捜査会議が行われている。

(確かにここなら警察組織内のシステムと連動してるから、そこから情報を引っ張ってこれるし)
(わざわざ資料を見なくてもモニターで済むし‥うってつけかも)

東雲教官と一緒にモニタールームに入ると、一人の男性がこちらに気づいて走ってきた。

公安課男性
「歩さ~ん!ここにいたら会えると思ったんですよ!」


あれ、透?生きてたんだ?

公安課男性
「いや~なんとかギリギリ」

(誰だろう‥?初めて見る人だけど、この人も公安課の刑事‥なのかな)
(でも、公安課の人ってみんな眉間に皺が寄って怖いイメージがあるけど‥)

その人は人懐っこい笑顔のせいか、話しやすい印象だった。

公安課男性
「そうそう、お土産があるんですよ~。歩さんもどうぞどうぞ」


ありがと。相変わらずマメに買ってくるよね

公安課男性
「いくら仕事とは言え、せっかく行くんだから、ご当地の物を堪能したいじゃないですか」
「はい、貴女もどうぞ」

サトコ
「ありがとうございます」

公安課男性
「あ、自己紹介が遅れましたね。オレは公安課石神班の永遠の新人、黒澤透です!」
「呼び方は黒澤さーん☆とか、透さん☆とか好きなように呼んでください」

サトコ
「は、はぁ‥」

黒澤
「貴女は公安学校の生徒さん?」

サトコ
「あ、はい!加賀教官の専任補佐官をしています、氷川サトコです」

黒澤
「氷川サトコさん‥?ああ、じゃあ貴女が」

合点がいったというように、黒澤さんがうなずく。

黒澤
「アレですね?加賀さんお気に入りの駒!」


さすが、情報早いね

黒澤
「それだけが取り柄ですからね~」
「お気に入り‥いや、もしかしてもうそれ以上ですね」

サトコ
「えっ?」

黒澤
「加賀さんだって男なんですから、あり得ますよね、そういうこと!」

<選択してください>

A:どういうこと?

サトコ
「そういうことって、どういうことですか?」

黒澤
「歩さん‥、サトコさんって鈍いんですか?」


鈍いっていうか、こういうことに免疫ないみたいなんだよね

黒澤
「へ~、だからなおさら加賀さんは気に入ったんですかね」
「オレ、加賀さんのイメージ変わるかも」

B:あり得ないです

サトコ
「いいえ!あり得ないです!」

黒澤
「そんな全力で否定するってことは、貴女もまんざらじゃない‥」

サトコ
「えっ!?」

黒澤
「あ、正解でしたか?」

サトコ
「それは、その‥」

慌てる私を見て、黒澤さんが吹き出す。

黒澤
「歩さん、サトコさんっておもしろいですね」


だろ?兵吾さんが気に入る気持ちもわかるよね

C:あり得るんですか?

サトコ
「あの‥あり得るんですか?」

大真面目で聞くと、一瞬目を見張った後、黒澤さんが吹き出した。

黒澤
「歩さん、聞きました?すごい真剣でしたよ!」


そうなんだよ、こういうところが飽きないんだよね~サトコちゃんって

(笑われた‥ちょっと本気で聞いたんだけどな)

黒澤
「そうですか~、ではではお近づきのしるしに、いいこと教えてあげますね」

サトコ
「いいこと?」

黒澤
「加賀さんってね、手触りがいいものが好きみたいなんですよね~」
「特に柔らかいものが好みらしいですよ。以上、黒澤マル秘☆情報でした!」

(柔らかくて手触りがいい‥そういえば桜見大福の求肥の柔らかさが好きみたいだし)
(私のふくらはぎや二の腕をぷにぷに触ってたし‥こ、心当たりがあるかも)


そんなこと教えていいの?あとで兵吾さんにひどい目にあわされるかもよ?

黒澤
「大丈夫ですよ、ちゃんと程度はわきまえてますから」


まぁ、透はびっくりするくらい情報通だしね

黒澤
「ハハッ、いやだなー、歩さんには及びませんよ」
「あ、ちなみに石神さんの好みは‥」

ゴン!

黒澤さんの頭に、まっすぐゲンコツが落ちてきた。

後藤
うるさい

黒澤
「イタタタ‥!あ、後藤さん!?」
「この黒澤、無事帰還いたしました!」

後藤
‥‥‥

黒澤
「あー、オレの話を全部スルーする感じ、懐かしいな~」


あれ?もしかしてそろそろ始まりますか?

後藤
ああ

その時モニタールームのドアが開き、加賀教官や石神教官が入ってきた。
その後に公安課の難波室長と、どこかで見たことのある男性が続く。

サトコ
「あの人は‥?」


警視庁の理事官だよ。なんであの人がここに‥

石神
これより、先日起きたホテル爆破事件の追捜査会議を始める
難波室長、お願いします

難波
あー‥指揮を執るのは本来俺だが‥
‥松田、あとは頼んだ

松田
「はい」

あくびをしながら、難波室長がモニタールームを出ていく。


相変わらず緩いね、室長は

松田
「今回の捜査を取り仕切る、警視庁理事官の松田だ」
「難波室長の手を煩わせないためにも、以後は私の指示にしたがってもらう」

松田理事官の説明のもと、モニターを使用して今回の捜査の説明が始まった。

(この捜査は、加賀教官とのマンツーマンの訓練も兼ねてる‥)
(教官の足を引っ張らないためにも、しっかり説明を聞こう)



【外】

その夜から、早速私と加賀教官は捜査を始めた。

(けど‥)

加賀
チッ‥またハズレか

サトコ
「松田理事官に指示された場所を当たってますけど、今のところ駄目ですね」

加賀
ああ‥

何か考えるように、加賀教官が遠くを見る。
そして、予定とは違う方へと足を向けた。

サトコ
「教官?次のお店はそっちじゃないですよ」

加賀
これ以上無駄足を踏みてぇのか

サトコ
「え?」

加賀
どうせ他んとこもハズレだ

サトコ
「じゃあ帰るんですか?」

加賀
そう思うなら寮に戻れ

(ってことは‥帰るんじゃないんだ)
(教官、もしかして何か心当たりがあるのかな)



【キャバクラ】

教官について扉をくぐったそのお店は‥

妖艶な女性
「あら!加賀さんじゃな~い」

煌びやかな女性
「いらっしゃ~い!待ってたのよ~」

セクシーな女性
「加賀さん、私のこと指名してほしいわぁ」

(!?)

入った瞬間に、綺麗な女性たちが加賀教官を取り囲む。

加賀
いいからさっさと席に案内しろ

セクシーな女性
「もう、相変わらずつれないんだから~」

妖艶な女性
「加賀さんこっちよ~」

(ここってもしかして‥キャバクラ!?捜査中なのに、どうしてこんな‥)

店内は上品な装飾で、女性たちにも華やかで高級感あふれる雰囲気が漂っている。

加賀
おい

サトコ
「はいっ」

加賀
そこで突っ立っていたいなら止めねぇが

サトコ
「で、でも‥私も行っていいんですか?」

加賀
お前は何しに来たんだ?

(ってことは、これも捜査の一環?)
(じゃあこの人たちが、捜査の情報を持ってるの‥?)

【VIPルーム】

奥のVIPルームに案内されると、加賀教官の顔を見て次々にホステスたちが集まってきた。

サトコ
「あ、あの‥他のお客さんはいいんですか?」

妖艶な女性
「いいのよ、加賀さんはお得意様だもの」

セクシーな女性
「でも仕事抜きで、加賀さんになら抱かれてもいいな」

煌びやかな女性
「わかるぅ~あのクールな雰囲気がたまらないのよね」

女性たちは隣を奪い合い、教官に身を寄せて誰もが誘惑するようなしぐさを見せる。
でも教官はまったく気に留めることなく、いつもの余裕の態度だった。

綺麗な女性
「ねぇ加賀さん、今夜デートしない?もちろん仕事抜きで」

加賀
気分次第だな。有益なネタでも回せるなら、相手にしてやる

セクシーな女性
「ねぇねぇ、今度は何を探ってるの?」

加賀
梅田って客を相手したことがある奴はいるか

その名前を聞いて、ピンと来た。

(梅田って‥あのホテルに爆弾を仕掛けた犯人だ!)
(竹田を逃がそうとしたり、加賀教官を殺そうとしたり‥)

サトコ
「梅田がここに通ってたんですか?」

加賀
そういう話もあるってだけだ

小声で聞くと、教官は女性が作ったお酒を飲みながら答える。

煌びやかな女性
「梅田って、あの冴えない男のことでしょ?私、何度か指名されたことあるわ」

綺麗な女性
「あの人、ちょっと陰気だったじゃない。被害者支援団体がどうのとか」

加賀
‥‥‥

女性たちはぎゅっと教官にすり寄りながら話す。

(うう‥これって本当に捜査?目のやり場に困るし、それに‥)

女性たちに囲まれ、ぴったりと寄り添われている加賀教官を見ていると、
今すぐこの場から逃げ出したくなってしまう。

(教官、こんな綺麗な人たちに囲まれても全然平気そう‥)
(女に困ってない、っていうのは本当だったんだ‥でもあの女の人たち、ちょっとくっつきすぎじゃ)

加賀
おい

目を細めた教官を見て、ハッとなる。

加賀
いつまでそこにいる

サトコ
「は、はい‥」

綺麗な女性
「ねぇ、この子って加賀さんのなんなの?」

加賀
そうだな‥

そばに来るように目線で合図され、おずおずとそちらにむかう。
隣に立つと、ソファに座ったままの教官が私の腰を抱き寄せた。

サトコ
「!?」

加賀
お前も、こうしてほしかったんだろ?

教官の手が、太ももを撫でるように肌をくすぐる。

<選択してください>

A:手を振り払う

サトコ
「な、何するんですか!こんな時に‥!」

思わず逃げ出すようにして教官の手を振り払うと、つまらなそうに手を離された。

加賀
冗談もわかんねぇのか

(今のが冗談‥!?放っておいたらもっと触られそうだったのに!?)

B:されるがまま

(ど、どうしよう!?でももしかして教官のことだから、何か考えがあるのかも‥!)

緊張に身を固くしながらも、教官の指の感触に頬が熱くなる。

加賀
つまんねぇな。せめて啼いて愉しませてみろよ

サトコ
「な‥!?」

C:加賀を見る

(教官、なんでこんな‥!)

泣きそうになりながら教官を見ると、面白いものを見たように笑われた。

加賀
お前のその顔は悪くねぇ

サトコ
「え‥?」

加賀
もっと追い詰めてやりたくなる

(き、鬼畜‥!)

セクシーな女性
「ねぇ、どうしてその子ばっかり構うの?私たちのことは~?」

加賀
こいつは、よく尽くすように躾けた俺の駒だ
今、一番のお気に入りでな

サトコ
「え‥!?」

加賀教官の言葉に、女性たちがざわめく。

煌びやかな女性
「ちょっとなにそれ。羨ましい~。私も加賀さんのお気に入りになりた~い」

セクシーな女性
「私もぉ~。捨て駒でいいから」

加賀
そうなりたいなら、さっさと情報よこせ

女性たちに言い寄られながらも、加賀教官はずっと感触を楽しむように私の肌に触れている。

(いつまでこのまま‥!?心臓が持たないよ‥!)

そして、私は教官が情報を仕入れ終わるまで、ずっと隣で固まっているのだった。

【教官室】

到底、普通の捜査とは思えないキャバクラでの聞き込みの後、
翌日もその次の日も、講義が終わると加賀教官と捜査に向かった。

(でも、今のところ収穫なしか‥)

サトコ
「ああ、報告書のこの部分どうしよう‥」

加賀
情けねぇ声出すな

サトコ
「すみません。でも‥」

(この日も、松田理事官に言われたのとは違うところを捜査したんだよね)
(あのキャバクラもそうだったけど、報告書に書けないことが多すぎて)

石神
氷川はいるか

唸りながら報告書を作っていると、石神教官が入ってきた。

サトコ
「はい、なんでしょう」

石神
この報告書はどういうことだ

心配していたところを指摘されて、そろっと加賀教官を見る。

加賀
完璧な報告書なんてあり得ねぇだろ

石神
これでは上からつつかれる
お前のことだ、どうせ理事官の指示を無視して動いているのだろうがな

加賀
そう思うならいちいち突っかかってくるな
とにかく、報告書の直しならそいつにやらせろ

加賀教官が、他の資料に目を通しながら顎で私を指す。

加賀
俺の躾が行き届いた、お気に入りの駒だからな

(うう‥また駒って‥!でもお気に入り、って言われると拒否できない!)
(教官、わかっててわざとやってるんじゃ‥)

ため息まじりに、石神教官が私に報告書を持ってくる。

石神
お前の教官はどうなっている

サトコ
「わ、私に言われても‥」

石神
お前がしっかり手綱を握っておけ

加賀
その駒には一生かかっても無理だな

(教官、しっかり聞いてる‥)

その後、石神教官にチクチク怒られながら、必死に報告書を修正したのだった。

(はぁ、やっと報告書が終わった‥でも、石神教官が指摘してくれなかったら)
(松田理事官に加賀教官の単独行動がバレるところだったんだよね)

加賀
終わったか

サトコ
「はい、なんとか‥これで松田理事官に気づかれずにすむと思います」

加賀
次からはもっとうまくやれ

サトコ
「はい‥」
「だけど、理事官の指示に従ってないことが多すぎて、ごまかすにも限界が‥」

加賀
明日は、梅田が出入りしていたっていう被害者支援団体の集会に行く

サトコ
「え?」

加賀
あいつがそんなもんに出入りしていたのには、必ず裏がある
前みたいに潜入するから、今からしっかり準備しとけ

(前と同じ潜入捜査ってことは‥もしかしてまた恋人のフリ!?)

私の焦りを感じ取ったのか、教官が意地悪に笑う。

加賀
前よりうまくできなきゃ、奴隷に逆戻りだ

サトコ
「そ、そんな‥」

(奴隷だったら、まだ『駒』の方がマシかも‥!)

サトコ
「が、頑張りますから!」

加賀
なら、朝までに下調べしとけよ

そう言って、教官がこれまで目を通していた資料のファイルを投げ渡す。

(これ‥全部その支援団体の資料!?)
(明日の朝まで‥無茶すぎるけど、きっと私に断る権利はないんだろうな)

ため息をつきながらも、私は覚悟を決めてその膨大な資料に向き直った。

to be continued

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