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加賀 恋の行方編 シークレット6.5

『入院2日目。教官と秘密の一時』

【病室】

浜口さんの奥さんに襲われ、加賀教官と共に病院に運ばれ‥
教官は『入院は必要ない』と無理矢理退院してしまい、病院には私1人が残された。

(教官‥ちょっとくらい大丈夫、とか言って無茶してないといいけど)

黒澤
サトコさん、お元気ですか?貴女の黒澤がお見舞いに来ましたよー

サトコ
「黒澤さん、いつもすみません」

黒澤
いえいえ。じゃーん!今日は後藤さんも連れてきました!

後藤
‥‥‥

サトコ
「ご、後藤教官!お忙しいところすみません」

黒澤
サトコさんも、そろそろ後藤さんの
この凍えるような冷たい視線が恋しいんじゃないかと思って

後藤
うるさい


サトコちゃん、具合どう?
あれ?後藤さんに透じゃん、お前も来てたんだ

颯馬
サトコさん、怪我の具合はどうですか?アイスを買って‥
ん?歩に透に‥後藤まで?


あ、颯馬さんも来たの?

颯馬
サトコさんの様子が気になったものだからね
それで、後藤も?

後藤
‥‥‥

サトコ
「あの‥黒澤さんと一緒に来て下さって」

後藤
強引に連れて来られてな
まぁいい、食え

颯馬教官のアイスと一緒に、後藤教官がカットフルーツのバックをテーブルに置いてくれる。

サトコ
「皆さん、ありがとうございます」


お見舞いに食べ物って、みんな安直だよね
ねぇサトコちゃん、あのあとって結局どうなったの?

サトコ
「え?」


ほら、2人を病院に連れてきた後、兵吾さんと2人きりにしてあげたでしょ?

サトコ
「あ、いや‥あの!」

黒澤
えっ?なんですかその聞き捨てならない情報は!
深夜の病室に男女が2人きりって‥なんかあったに決まってるパターンのやつですね

サトコ
「な、何もないですよ!本当に!」

颯馬
加賀さんも男ですからね、やっぱり看病されると、気持ちがぐっと傾く可能性も


でしょ?オレもそう思うんですけど

黒澤
まさか、あの加賀さんを本当に落とす人が現れるなんて‥!スクープですね!

サトコ
「お、落とすだなんてそんな‥!」

後藤
おい、黒澤、歩‥

看護師
「はいはい、ちょっと静かにしてくださいね!隣の病室に迷惑ですよ!」

通りかかったベテランの看護師さんに怒られて、みんな一瞬、黙りこくる。


‥で?

サトコ
「え?」

黒澤
小さい声で話しますから☆教えてください。何があったのか

同じ動きで悪戯っ子な笑顔を浮かべた2人が迫ってくる。

後藤
‥ったく

颯馬
フフ

サトコ
「ほ、本当に何もありませんから‥!」

必死に否定しながらも、私は昨日のことを思い出していた。



【ナースステーション】

(今日で入院2日目かあ‥明日には退院できるって言われてるから、あと1日の我慢だよね)
(でも頭は少し痛むけど、他は元気だし‥ちょっと暇だな)

看護師
「あら氷川さん、ここにいたの。探したのよ」

サトコ
「すみません、病室に戻った方がいいですか?」

看護師
「違うの。莉子ちゃんから伝言を預かっててね。203号室に行けって」

サトコ
「莉子さんから‥?」

莉子さんの知り合いらしい看護師さんにお礼を言うと、203号室へ向かった。



【病室】

サトコ
「失礼します‥」

病室のドアを開けると、なぜか加賀教官がスーツに着替えているところだった。

サトコ
「ええ!?ど、どうして教官が‥」

加賀
なにノコノコ出歩いてんだ

サトコ
「教官こそ、昨日無理矢理退院したはずじゃ」

加賀
莉子が持ってるホシのDNA鑑定の結果と引き換えに半日入院だ

サトコ
「入院って、どうして‥」

加賀
知るか。莉子に聞け

(きっとじゅぶんな検査もせずにさっさと退院しちゃったから、莉子さんが心配したんだろうな)
(それにしても、情報欲しさにおとなしく入院するって‥教官らしいかも)

加賀
それで、テメェは何しに来た

サトコ
「え?いえ、その‥」

加賀
何もねぇならクズは黙って寝てろ

サトコ
「‥教官のこと、心配しちゃダメですか」

加賀
必要ねぇ

サトコ
「でも‥」

加賀
最低限の検査は終わった。捜査に戻る

サトコ
「え!?」

(まさか、だからスーツに着替えてたの!?)

サトコ
「ダメですよ、検査入院とはいえ、安静にしてなくちゃ」

加賀
はぁ‥めんどくせぇ時に来たもんだな
駒は駒らしく、俺の利益になることを考えてりゃいい

そう言われて、ようやく莉子さんが私をここに呼んだ意図に気づいた。

(教官がおとなしく入院してるはずない‥きっとそれを見越して、私に見張っておけってことなんだ)

サトコ
「捜査に戻ったら、莉子さんに言いつけますよ」

加賀
あぁ?

サトコ
「お、脅したってダメです!結果の書類渡さないように莉子さんに言いますよ」

思い切って強気に出ると、教官は見下ろすように笑う。

加賀
いい度胸じゃねぇか

サトコ
「このくらいしないと、教官を止められませんから」

加賀
そうかよ

(でも、こうしてるとようやく日常が戻ってきたって感じがする)
(検査入院なんて必要なさそうなくらい、教官も元気だし)

少しにやけながらそんなことを思っていると、教官は私の前まで歩いてきて、ポンと頭に手を置く。
そして耳元に唇を寄せられ、それが微かに、耳たぶに触れた。

サトコ
「ひゃっ」

加賀
お前の秘密、教えてやろうか

サトコ
「え?」

加賀
毎日、部屋でストレッチしてるのに、一向に体が締まらない
‥歩と黒澤辺りに教えてやったら、楽しめそうだ

サトコ
「!!」

(ど、どうしてそれを、教官が知ってるの!?)

サトコ
「お、お願いです!それだけは誰にも言わないでください!」

加賀
それはお前の態度次第だ
まぁ、俺は最悪、莉子の情報がなくてもどうとでもなるがな

サトコ
「うう‥!」

がくりと肩を落とすと、頭の上に置かれた手が微かにくしゃりと私の髪を撫でた。

サトコ
「?」

加賀
とっとと治せ、クズ

サトコ
「‥教官、本当に捜査に行っちゃうんですか?」

加賀
ホシまであと一歩に迫ってんのに、入院なんてしてられるか

病室をあとにする教官を見送り、ため息をつきながらも、自然と手は頭へ動く。

(さっき‥撫でてくれたように感じた)
(手‥優しかったな‥)

まだ教官の温もりが残っている感覚に、心がじんわりと暖かくなる。
以前の雰囲気が戻りつつあることに、頬を緩ませたのだった。

End

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