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加賀 カレ目線 1話



『クズ女との出会い』

【加賀マンション 寝室】

(まさか俺がこんな、なんの取り柄もなさそうな奴に‥)

サトコの身体の隅々にまで、俺の気持ちを教え込んでやったその夜。

サトコ
「な、なんですか‥」

加賀
何がだ

サトコ
「なんでそんなに見るんですか‥」

恥ずかしそうにシーツにくるまり、サトコがベッドの端へと逃げる。

(バカが。逃がすかよ)

手を伸ばしてその肌に触れると、相変わらず柔らかくて触わり心地がいい。

加賀
お前の唯一の長所は、この触り心地だけだな

サトコ
「ほ、他に褒めてもらえるところはないんですか!?」

加賀
向こう見ずで無鉄砲で考えなしのクズが、百年早ぇ

サトコ
「そこまで言わなくても‥」

少しふてくされたように唇を尖らすそのしぐさすら‥

(‥悪くねぇ、なんて思うとはな)

サトコ
「教官?なんか笑ってませんか?」

加賀
てめぇはやっぱり傲慢だと思っただけだ

サトコ
「ご、傲慢なのは教官の方‥」

加賀
あ?

サトコ
「なんでもないです」

加賀
そうか

肌に指を這わせると、身体を震わせて慌てたようにさらにシーツを体に巻きつけた。

加賀
なんの真似だ

サトコ
「だ、ダメです‥教官に触られると、なんか変になるから‥」

加賀
それがいいんだろうが

(ここでこうして、遊んでやるのも悪くねぇが‥)

ベッドから抜け出すと、サトコが慌てたように顔を隠す。

加賀
なんだ

サトコ
「だ、だだ、だって‥教官っ‥」

何も着ていないことを恥らっているらしい。

加賀
昨日、この体を存分に味わったのは‥

サトコ
「わーっ!わーっ!」

加賀
先にシャワーに行ってる。5分以内に来い

サトコ
「え?」

バスルームへ向かう俺を見上げたかと思ったら、また恥ずかしそうにベッドに顔を伏せる。

サトコ
「も、もしかして‥一緒に入るってことですか!?」

加賀
嫌なら別にいい

サトコ
「い、嫌とかじゃなくて、あの‥」

加賀
来なかったら、昨日の夜よりも激しい仕置きをしてやる
お前の好きな方を選べ

真っ赤な顔で泣きそうになってる姿に笑い、揚々とバスルームへ向かった。



【バスルーム】

シャワーを浴びながら、昨日のサトコを思い出す。

(触り心地も抱き心地も、今までのどの女より一番いい)
(だが、それより‥)

サトコに対して言いようのない気持ちがこみ上げてきた時、
不意に、あいつが公安学校に来て間のない頃のことを思い出した。

【教官室】

それは、歩から報告を受けた後、電話で使えねぇクズを切り捨てた数日後‥
教官室で書類を眺めながら、心の中で何度目かの舌打ちをする

(報告書か‥めんどくせぇな。クズの後始末なんざ適当にやっときゃいい)
(それをあのクソメガネが、ここがダメだ、あそこがおかしいといちゃもんつけてきやがるから)

その時、教官室のドアがノックされて、サトコが顔を出す。

サトコ
「失礼します‥」


サトコちゃんお疲れ様。成田教官の講義、終わった?

サトコ
「はい、今さっき」

歩たちには笑顔を浮かべたサトコが、俺を見るなり目をそらす。

サトコ
「‥これ、昨日の報告書です」

加賀
ああ

サトコ
「では‥失礼します」

言葉少なに教官室を出ていくと、歩たちが顔を見合わせた。


サトコちゃん、元気なかったね。っていうか‥機嫌悪かった?

颯馬
そうですね。加賀さんに怒ってるようにも見えましたけど

加賀
‥‥‥

(あいつが考えてることなんざ手に取るようにわかる)
(あの時‥初めて俺に真正面から歯向ってきやがった)

サトコ
『一度のミスで切られるっていうのは、納得がいきません』

加賀
‥その一度のミスで、誰かが死んだらどうする?
手柄を逃がさねぇためにも、いらねぇ奴には消えてもらう

(どうせ、捜査員を切り捨てたのがおもしろくねぇんだろう)
(クソが‥だからクズだって言ってんだ)

颯馬
ところで、専任補佐官がついてから、少し経ちますけど

颯馬の声に、ふと我に返った。

颯馬
みなさん、うまくやってますか?


まぁ、仕事は楽になったよね。雑用を任せられるし

後藤
俺は特に何も変わらない

颯馬
後藤はもっと、補佐官にやらせればいいんですよ
結局全部自分がやるから、今までと変わらないんです

石神
確かに、後藤はもう少し補佐官に仕事をさせるべきだな


そういう石神さんだって、ほとんど自分でやってますよね?

石神
自分でやった方が早いし、効率がいい


うーん‥でもオレも確かにそうかも
だけどどうせなら、兵吾さんみたいに女の子の補佐官がよかったな

チラリと、歩がこちらを見て笑う。

颯馬
確かに、サトコさんが補佐官だったら色々と楽しいでしょうね

石神
足手まといなだけだ

後藤
いや‥意外と気が付く奴だと思います


あれ?後藤さん、もしかしてサトコちゃんにご執心?

後藤
‥‥‥

颯馬
ふふ‥どうですか?サトコさんは

颯馬の言葉に、持っていた書類をデスクに放り投げた。

加賀
使えねぇクズ女だ


ははっ、相変わらずですね、兵吾さん
でも、そういえばこの前、自分のパソコンがウイルスに感染したかもって相談されたんだけど

後藤
スパムメールでも開いたのか

颯馬
セキュリティソフトは?


そういうのに疎いらしいんですよね。でも詳しくなった方が今後のサトコちゃんのためでもあるし
すごく難しいソフトをものすごく複雑なやり方で説明してあげたんだけど‥あれからどうなったかな

石神
相変わらずなのはお前も一緒だろう

後藤
でもあいつは、確かに少し抜けている

颯馬
それがいいところなのかもしれませんけどね


でも第一線に配置されたが最後、あっさりやられちゃいそうだけど

石神
しかし、いくら出来の悪い生徒とはいえ、奴隷などと勝手に駒扱いするのはやめろ、加賀

加賀
利用価値のねぇクズをうまく使ってやってんだ。文句を言われる筋合いはねぇ

石神
生徒は、お前の私物ではない

加賀
チッ

歩たちの話を聞きながら、ふとあのクズが専任補佐官になってから今日までのことが頭を過る。

(そもそもあのクズ、入学してくる前にも電車の中で余計なことしやがって)
(そのせいで一度は犯人を取り逃がした)

無事に確保したが、あのクズのせいで遠回りしたことには違いない。

(潜入捜査もできねぇ、取り調べもできねぇ)
(奴隷以外の使い道すらねぇクズが‥まだ捨て駒にもならねぇ)
(しばらくは暇つぶしくらいにはなるか‥いたらいたで面倒だが、とりあえず煮るか焼くか‥)


あっ、兵吾さん悪い顔してる

加賀
あ?


あの子の使い道でも考えてるんですか?

相変わらず読みが鋭い歩を一瞥して、さっきあのクズが持ってきた報告書を手に取った。

(こいつの“コレ”はたまに厄介だが‥この鋭さがなきゃわざわざ引っ張ってきた意味がねぇ)


それで、どうするんですか?
とりあえず専任補佐官としてそばに置いとくって感じ?

加賀
そうだな‥

颯馬
でも正直、少し意外でした。加賀さんなら補佐官なんて放っておくと思ってましたけど
雑用とはいえ、意外と使ってあげてますよね

加賀
まあな、だがクズの使い道ほど難しくてめんどくせぇもんはねぇ

報告書の中のサトコの字を目で追っていると、思い出したのは5年前のことだった。

(‥あいつらも、たいがいクズだったな。最後の最後で俺を信用するなんざ)
(特に浜口‥あいつはどうしようもねぇクズだ)

報告書を石神のデスクに放り投げると、ドアの方へ向かう。

石神
おい、ちゃんと目を通したのか?

加賀
目を通すのはてめぇの仕事だろ

石神
担当補佐官の仕事くらい、きちんと把握しておけ

石神の言葉を無視して、教官室を出る。

(もう、クズな仲間は必要ねぇ)
(他人のために死ぬのは、救いようのない人間がやることだ)

to be continued

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