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読書の秋?食欲の秋?いいえ、恋の秋! ~プロローグ~

【教官室】

夕暮れの教官室。

サトコ
「えーっと‥あの‥みなさん‥」

私は5人の教官に迫られていた。

石神
氷川、君は誰を選ぶつもりだ?

後藤
‥アンタが誰を選んでも俺は構わないが、俺を選んでくれると嬉しい

颯馬
もちろん貴女が選ぶのは私、ですよね?

加賀
クズに選択権はねぇ‥分かってるよな?


いやだなぁ、彼女が選ぶのはオレですよ、ね?

(ど、どうすればいいの‥!?)

事の始まりは1か月前だった。

【廊下】

サトコ
「『公安学校☆秋の大感謝祭』‥?何だろう、これ‥」

鳴子
「‥さぁ?ポスターが貼られたってことは、今日あたり連絡があるんじゃない?」

サトコ
「そうだね‥って、やばい!講義の時間に遅れちゃう!」

鳴子
「うわっ、次って石神教官の講義じゃん!遅刻したら絶対怒られる!」

私と鳴子は慌てて教室まで向かう。
けど、その途中で見慣れないスーツ姿の人を数人見かけた。

(‥あのポスターに関係する人たちなのかな?)

その時は深く考えなかったけど、思えばこれが始まりだったのかもしれない。

【教場】

無事に講義に遅刻することなく出席できて、私と鳴子はホッと胸をなでおろしていた。

石神
廊下に貼ってあったポスターを見た者はいるか?

鳴子
「私、見ました!感謝祭って‥文化祭のようなイベントですか?」

石神
イベント‥か。そんなお気楽なものではないが‥
この学校をより知ってもらうため、警察関係者向けの催しを開くことになった
当日は外部から警察やその関係者たちが校内に入ってくることになる
各自、気を引き締めて迎えるように

(警察関係者が来るんだ‥)
(どうなるのかわからないけど、石神教官の言う通り、気を引き締めなくちゃ‥!)

石神
必須ではないが、当日は教官たちをサポートするボランティアも募集する
協力すれば、評定にポイントがつくかもな

警察関係者向けということで、甘いものじゃないというのは分かっている。
けど、華やかそうなイベント開催に心が弾むのを止めることはできなかった。

(‥どんな感じなのか分からないけど、あの人と回れるかな‥?)

頭に思い描いたのは、私が好意を寄せるあの人‥

(でも、教官って忙しいよね‥一緒に回ったりはできないんだろうなぁ)

鳴子
「ねぇ、厳しい毎日だけど楽しみができたよね」
「どんなイベントになるか分からないけど‥あ~、楽しみっ!」

サトコ
「わかる!」
「だけど、関係者向けってことは遊びじゃないから、うっかりすると教官に怒られそうだよね」

鳴子
「でも、遊び心を忘れちゃったらいいものはできないよ~」

(鳴子、楽しそうだなぁ‥)
(まぁ、私も人の事は言えないけど‥ふふっ、楽しみ‥!)

あれから数日。
イベントを控えているからか、校内も少し浮き足立っている。

サトコ
「教官たちを手伝うボランティアを募集するって言ってたけど‥私、どうしようかな‥」
「ん‥あれ?」

考えながら歩いていると、見慣れない男性が歩いているのを見かけた。

(日にちが経つにつれて、スーツ姿の人を見かける回数が多くなってる気がする)

気のせいかな、と思いかけた時、スーツ姿の男性の顔が見えた。

(えっ、あれって‥っ!)

学校関係者と話しているのは、警察庁長官。
実際に見るのは初めてだけど、写真で何度か見かけたことがある。


あーあ、見ちゃった?

ぽん、と肩を叩かれながら話しかけられ、振り向くと東雲教官が立っていた。

サトコ
「東雲教官‥どうして警察庁長官が、公安学校に来てるんですか?」
「もしかしてイベント開催で‥?でも、長官も参加するなんて、石神教官は一言も‥」


おバカなキミでも気づいたみたいだね、偉い偉い

まるで誤魔化すかのように、東雲教官は私の頭を撫でながら言葉を投げかけてくる。

サトコ
「ご、誤魔化さないでください‥!」
「もしかして、公安学校の中で何か事件でも発生してるんじゃ‥」


大丈夫だよ。きっとそのうち分かるから

(分かるって‥いや、だから何がって聞いているのに‥!)


ま、そういうことで

サトコ
「あ、ちょっと!」

ひらひら、と手を振りながら東雲教官は教室に入ってしまう。

(うぅ、余計に気になるようなことしか言ってくれなかった‥)
(他の教官なら教えてくれるかな?それとも本当に生徒には言えないこと、だったりして)

鳴子
「サトコ?こんなところで何してるの?」

サトコ
「あっ、鳴子‥ううん、何でもない」
「鳴子こそどうしたの?」

鳴子
「感謝祭の日、教官たちのお手伝いをするか、普通に参加して楽しむか迷ってて‥」
「考える時間も勿体ないから、直接教官い聞いてみようかなと思って」

サトコ
「たしかに‥」

(そうだ、ついでに東雲教官が曖昧に濁した件について聞いてみようかな)

【教官室】

後藤
‥警察庁長官?
いや、来るという話は聞いていなかったが‥そうか、長官が来られていたのか

警察庁長官について聞いてみたけど、後藤教官は何も知らない感じだった。

サトコ
「あの、加賀教官は‥」

加賀
‥‥

何か知ってますか、と最後まで言う前にギロリと鋭い視線で睨まれてしまう。

加賀
自分で考えろグズ
こっちはイベントのせいで色々と大変なんだよ

(う‥不機嫌な時に声かけちゃった‥って、教官が不機嫌なのはいつものことだけど‥)

加賀教官は舌打ちをしながら、山積みの資料をバンと叩く。
その音に、鳴子はビクッと肩を震わせた。

後藤
加賀さん、それは生徒に関係ないことです

加賀
ここの生徒である以上、関係ないことはないだろ
‥数少ない女が2人‥か。有効活用するのも手だな

サトコ
「有効活用って‥」

鳴子
「‥私たち、何をさせられるんですか」

加賀
キャンペーンガールみたいにすればいい、愛想振りまいて笑ってろ

加賀教官はニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、言葉を投げかけてくる。

鳴子
「見世物にされるなんて‥!」

サトコ
「そ、そんなの絶対に無理‥」

加賀
あー、確かに氷川じゃ無理だな

サトコ
「え‥」

加賀
お前、キャンペーンガールって華のあるツラかよ

(それって‥私じゃ力不足だって言いたいの‥?失礼な!)
(‥本当のことかもしれないけど!)

サトコ
「‥そ、そんな言い方も酷いと思います!」

加賀
っつーわけで、役立たずのクズ共は早く行け

凍るような冷たい視線と共に言葉を投げかけてきた。

(うぅ‥相変わらず手厳しい‥)



【剣道場】

鳴子
「そりゃあ、あんないい男の加賀教官なら、女を見る目も肥えてるんだろうけど‥」
「サトコにだってできるよ、コンパニオンの1つや2つ!」

(なんで鳴子がそんなに怒るか分からないけど‥)

颯馬
加賀さんが、どうかしましたか?

剣道の稽古が終わり、私と鳴子が愚痴っていると不思議そうに颯馬教官が問いかけてきた。

サトコ
「実は‥‥‥」

颯馬
「‥なるほど。そういうことがあったんですか」

私の説明を聞いて、颯馬教官は困ったように微笑んでくる。

颯馬
彼なりの考えがあったのでしょう
加賀さんは誤解されがちですけど、根は真面目な方ですよ

鳴子
「‥そうでしょうか」

颯馬
彼は言葉選びが下手ですからね‥
それより、あなたがキャンペーンガールをやったら大勢の人が集まるでしょうね
その時は、あなたの専属カメラマンにでも立候補しようかな

(えっ‥)

冗談だとわかっているけど、颯馬教官の甘い言葉にドキドキしてしまう。

颯馬
‥なんてね、さすがに教官の立場でそれは無理でしょうけど

サトコ
「あ、あはは‥ですよね」



【廊下】

千葉
「氷川、聞いた?」

道場を後にし廊下に出ると、千葉さんが慌てたように話しかけてきた。

サトコ
「千葉さん、そんなに慌ててどうしたんですか?」

千葉
「最近、スーツ姿の人がうろついてるの‥知ってる?」

サトコ
「警察関係者の方ですよね?」
「警察庁長官の姿もありましたし‥」

千葉
「警察庁長官まで?」
「やっぱり。あの噂は本当だったのかな‥」

私の言葉を聞いて、千葉さんの顔色がさぁっと青ざめる。

サトコ
「噂って‥」

千葉
「公安学校存続の危機って噂が流れてるんだよ‥」

サトコ
「え!?」

鳴子
「なによ、それ!」

千葉
「警察庁長官まで来ているなら、監査で来ているって話は本当なのかもしれないね」
「刑事を輩出できてないから、今回の感謝祭は接待になってるんじゃないかって‥」

(まだ半人前にもなれていないのに、ここが潰れるなんて‥どうしよう!)

サトコ
「でも‥」

(噂が本当なら東雲教官が曖昧に誤魔化したのも納得できるし‥)
(加賀教官のいつも以上の眉間のシワも、分かるような気がする‥)

サトコ
「‥鳴子、私‥もう一度教官室に行ってくる!」

鳴子
「あっ、ちょ、ちょっと‥!」



【教官室】

サトコ
「すみません!」

加賀
うるさい、ドアはもっと静かに開けろ、クズ

教官室に入ると、そこにはいつもの面々がいて真剣な表情を見せていた。

石神
どうした?何かあったのか?

慌てる私に、石神教官が冷静な口調で話しかけてくる。

サトコ
「ぼ、ボランティアで参加します!」

石神
ボランティア?

サトコ
「何でもいいです、私に手伝えることがあったら何でも言ってください!」
「CPガールでも何でもいいです、私に何か手伝わせてください‥!」

加賀
‥コンパニオンじゃねぇって言ってたのは誰だ?ああ?

ここが潰れる話を聞かなければ、CPガールなんて今でも嫌に決まってる。

(けど、それでどうにかなるのなら‥CPガールでも何でもやってやるんだから‥!)

難波
何があったのかは知らんが‥
やる気になってくれたならよかったな


難波さん‥

難波
後藤には案内係を頼んでるんだ、当日は結構な人数がくると予想されているからな
加賀には当日の講演を頼んでいる。公安学校の良さを知ってもらうために

後藤・加賀
「‥‥‥」

難波
石神には実行委員を頼んでいる、一番ハードな仕事を任せてしまって悪いな

石神
‥いえ

(3人とも‥特に石神教官‥すごい眉間のシワ!あんまり乗り気じゃないみたい‥)

難波
颯馬は広報係、色々と奇抜な感じでやってると耳に届いてるが‥大丈夫か?

颯馬
随分な言われようですね‥刑法に触れない範囲で楽しくやらせてもらってますよ

難波
最後に東雲には‥親に連れられてやってきたお子様の相手だ


ぴったりな役回りありがとうございます

(颯馬教官も東雲教官も笑ってるけど、何でだろう‥その笑顔が逆に怖い)

颯馬
サトコさん、何か失礼なことを考えませんでした?


何?キミもオレに遊んでほしいの?

サトコ
「と、とんでもないです‥」

難波
氷川も手伝ってくれるって言ったけど‥
誰かと一緒に組んでもらおうかな。氷川がいた方が評判いいみたいだし
教官たちもその分、楽になるだろうしな

(あ、あれ?)
(何か、空気が変わったような‥気のせいかな?)

後藤
案内係は一人でも多くの手を借りたい、アンタには俺と組んでほしい

加賀
何言ってんだ、俺の手伝いに決まってるだろ?資料集めとかやること沢山なんだよ

石神
忙しさで言うなら私だろう。ほぼ全部の管理をしなくてはいけないんだからな

颯馬
私と一緒に広報係になりましょうよ、ね?


何言ってるの、子どもの相手しなくちゃなんないオレが一番大変でしょ

全員ほぼ同時に話しかけてきて、私はおろおろとしてしまう。

(ど、どうしよう‥)

まさか全員から手伝いを頼まれるなんて想像もしておらず、誰を選んでいいか分からない。

難波
氷川が一番手伝いたいって人でいいから

(室長!簡単に言わないでください‥!)
(この状況なら、誰を選んでも選ばなかった人に怒られちゃいそうですよ‥)

石神
氷川、君は誰を選ぶつもりだ?

後藤
‥アンタが誰を選んでも俺は構わないが、俺を選んでくれると嬉しい

颯馬
もちろん貴女が選ぶのは私、ですよね?

加賀
クズに選択権はねぇ‥分かってるよな?


いやだなぁ、彼女が選ぶのはオレですよ、ね?

(ど、どうすればいいの‥!?)

5人の男性に迫られながら、私は強く目を閉じて一緒に組む相手を選んだ。

サトコ
「わ、私が手伝うのは‥‥‥!」

<選択してください>

A:無愛想な案内係  後藤

B:胡散臭い講演係  加賀

C:大忙しの委員長  石神

D:怪しげな広報係  颯馬

E:お子様の相手  東雲

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