カテゴリー

恋の秋 石神1



教官たちから選択権を与えられた私は、補佐官を務めている石神教官を選んだ。


やっぱり石神さん‥

颯馬
彼女は補佐官ですからね

難波
それじゃ、決まりだな

サトコ
「はい、よろしくお願いします」

(委員長の補佐は大変だろうけど‥頑張らなきゃ!)

私は石神教官に向かって、頭を下げた。

難波
‥そういえば、重役との接待があったな

サトコ
「接待、ですか?」

難波
ああ、感謝祭当日にな
さて、誰にやってもらうか‥

石神
室長、氷川はいかがですか?

サトコ
「わ、私ですか!?」

難波
ほう、氷川か‥

石神教官に推薦され、難波室長はまじまじと私を見る。

難波
まぁ、むさっ苦しい男に接待されるより、女に接待された方が喜ばれると思うが‥

サトコ
「そ、そんな、私なんて‥」

(ただでさえ接待は緊張するのに、今回は学校の存続もかかっているんだよね‥)
(そんな重要な役、私にできるのかな‥?)

石神
氷川、お前にしかできない仕事だ

サトコ
「!!」


へぇ、石神さんがそこまで言うなんて、ね

颯馬
それだけサトコさんのことを信用しているんでしょう

後藤
石神さんが言うなら、氷川でいいんじゃないですか?

加賀
勝手にしろ。俺じゃなかったら誰だっていい

難波
‥ってことだ。氷川、引き受けてくれるか?

(本当に私でいいのかな‥?)

石神
‥‥‥

チラリと石神教官を見ると、まっすぐな目で私を見ていた。

(‥教官は私を信じて推薦してくれたんだ。補佐官として、ここはやらないわけにはいかないよね)

サトコ
「‥はい、やります。やらせてください!」

難波
ははっ、その意気だ。それじゃ、当日の接待は氷川に任せる

サトコ
「はい!」

難波
それじゃ、各自しっかりやれよ

難波室長の緩い一言で、その場は解散となった。



夜になり、感謝祭の調べもののため資料室に行く。

サトコ
「あっ‥石神教官」

石神
氷川か‥どうしたんだ、こんな時間に?

サトコ
「調べものがあってきました」

石神
そうか‥

石神教官はそう言いながら、手に持っている資料に視線を落とす。

(こうやって、教官とふたりきりで会うの久しぶりだな‥)
(もし、学校が存続できなくなったら‥こうして教官と一緒にいることもできなくなるんだ‥)

サトコ
「‥教官、私、頑張りますね!」

石神
頑張るって‥接待の事か?

サトコ
「はい!教官が推薦してくれたってこともありますけど」
「なにより学校の存続がかかってますから」

石神
存続‥?どういうことだ?

サトコ
「同期から聞いたんです。今回の感謝祭は、学校の存続危機がかかってるって」

石神
どこから流れたんだ、そんな噂

サトコ
「え?違うんですか‥?」

石神
ああ、ただの噂だ。そんな事実など、どこにもない

サトコ
「そうだったんですね‥」

(よかった‥)

石神
まさか、本気にしていたのか?

サトコ
「だって、皆が話していたから‥」

石神
氷川は刑事になるのが夢なんだろう?
だったら、噂に惑わされずに物事をきちんと判断しろ

サトコ
「はい‥すみませんでした」

(噂を鵜呑みにするなんて‥ちょっと、軽率すぎたよね‥)

石神
‥さて、俺はそろそろ部屋に戻る

サトコ
「あっ‥」

教官が私の横を通りすぎようとする。

サトコ
「石神教官‥」

(せっかく、こうしてふたりで会えたのに‥)

私はすれ違いの日々に寂しくなり、思わず教官の服の裾を掴んだ。

<選択してください>

A:もう少し一緒にいたいです

サトコ
「あの‥もう少しだけ、一緒にいたいです」

石神
氷川‥

石神さんは、少し困ったような顔をして私の名前を呼ぶ。

サトコ
「あっ、すみません。いきなりこんなことをして、でも、私‥」

石神
‥‥‥

私は教官の視線に耐えきれず、掴んでいた裾を離した。

B:石神教官をじっと見つめる

サトコ
「‥‥‥」

私は石神教官をじっと見つめた。

石神
‥氷川、俺はこの後、仕事が入ってる

サトコ
「あっ、そうですよね‥」

(教官は忙しいのに、何やってんだろう私‥)

私は掴んでいた石神教官の裾を離した。

C:裾を離す

サトコ
「あっ、すみません!」

私は慌てて、掴んでいた裾を離した。

サトコ
「教官は忙しいのに、いきなりこんなことをして‥」

石神
いや‥

サトコ
「‥‥‥」

石神さんは少しだけ寂しそうな表情を私に向ける。

サトコ
「教官‥?」

(教官も、私と同じ気持ちだったらいいのに‥)

サトコ
「あっ‥」

石神教官は、私の頭にポンッと手を置く。

石神
氷川も、あまり遅くならないうちに戻れ

サトコ
「はい‥」

石神

‥‥‥

教官はそう言うと、資料室から出て行った。

私は自分の唇をそっと撫でながら、教官が出て行ったドアを見つめる。

(そういえば最近、キス‥してないな)

教官との間に不安はなかったけど‥少しだけ、寂しいという気持ちが過った。

翌日。
昼休みになり、鳴子と千葉さんと一緒にお昼ご飯を食べていた。

鳴子
「それじゃあ、廃校にはならないってこと?」

サトコ
「うん。ただの噂だって石神教官が言ってたよ」

千葉
「そっか、よかった。もし学校が廃校になったら、どうしようかと思ったよ」

鳴子
「これで安心して、感謝祭を楽しめるわね」
「ああ、でもサトコは補佐官の仕事があるんだっけ?」
「まぁ、石神教官だったらひとりでテキパキこなしそうだよね」

サトコ
「補佐官の仕事というか‥接待をすることになったんだ」

千葉
「接待?」

サトコ
「うん。なんでも重役の方々が来るから、私が接待することになって‥」
「石神教官が推薦してくれたんだ」

千葉
「そうなんだ。でも、その人たちって‥」

サトコ
「え?」

千葉
「いや‥なんでもないよ。まさか石神教官がそんなことするわけないだろうし‥」

(千葉さん、どうしたんだろう‥?)

鳴子
「あっ、そろそろ休み時間終わっちゃう!早く講堂に行こう」

サトコ
「うん」

私たちは食器を片づけると、講堂へ急いだ。

授業が終わると、私は接待の打ち合わせのため教官室にやってきた。

難波
氷川は接待だったな

サトコ
「はい」

難波
難しいことは特にない。いい感じに接待してくれればそれでいい

サトコ
「は、はい‥」

(いい感じって‥それが一番難しい気が‥)

難波
あと、視察に来る連中はセクハラで有名なオヤジだからな。気をつけろよ

サトコ
「え!?」

(せ、セクハラって‥)

颯馬
サトコさん、大丈夫ですか?

加賀
こいつに欲情するやつなんかいねーだろ


世の中には物好きがいますからね
ね、石神さん?

石神
‥それで俺に振るな

後藤
まぁ、頑張って接待するんだな

サトコ
「‥‥」

(私が接待役って‥女性だったら誰でもよかったじゃない!?)
(でも、鳴子にさせるわけにはいかないし‥)
(そもそも、石神さん‥なんで私を推薦したんだろう?女だから?)
(だから、セクハラする人って知っていて推薦したのかな‥)

チラリと石神教官を見るも、平然としているようだった。

(はぁ、なんか凹むかも‥)

颯馬
サトコさん。彼には彼なりの考えがあると思いますよ

サトコ
「颯馬教官‥」

難波
それじゃ、各自やることはちゃんと把握したな?
当日はミスすることなく、適当にやれよ

(本当に大丈夫かな‥なんだか、不安になってきた‥)

感謝祭前日。
当日のタイムスケジュールや接待の店の手配をしていたら、あっという間に時間は過ぎて行った。

(あとはもう一度、明日のスケジュールを確認して‥後は当日を迎えるだけ、かな)

サトコ
「はぁ‥」

(最近は石神教官とすれ違ってばかりで、まともに話もできないんだよね‥)

そんなことを考えていると、資料室のドアが開く。

石神
‥氷川?

サトコ
「あっ、石神教官‥お疲れ様です」

石神
ああ

(教官、なんだか顔色悪いけど‥どうしたんだろう?)
(ここのところ、教官もずっと忙しそうだったから‥)

サトコ
「‥教官。顔色が悪いですけど‥大丈夫ですか?」

石神
‥‥‥

石神教官は私の顔をじっと見て、ゆっくりと口を開いた。

石神
‥今日の夜、時間取れるか?

サトコ
「え‥?」

石神
‥氷川とふたりで会いたいんだ

サトコ
「教官‥」

(まさか、教官からこんなこと言ってくれるなんて‥)

サトコ
「はい!もちろんです!」

石神
そうか‥楽しみにしてるからな

<選択してください>

A:私も楽しみにしています

サトコ
「私も楽しみにしています。その‥教官とふたりで会うの、久しぶりですから‥」

石神
そうだな‥あまり時間を取ってやれなくてすまない

サトコ
「謝らないでください。こうやって会いたいって言ってくれるだけで、私は十分ですから‥」

石神
そうか‥

石神教官は、私の言葉に嬉しそうに目を細めた。

B:でも‥身体は大丈夫ですか?

サトコ
「でも‥体調は大丈夫ですか?」
「会いたいって言ってくれるのは嬉しいです。でも、無理はしてほしくないから‥」

石神
だから、氷川に会いたいんだ

サトコ
「石神さん‥?」

石神
いや‥なんでもない

石神教官はそう言いながら、私は視線を逸らした。

C:なんだか、素直ですね

サトコ
「なんだか、素直ですね」

石神
確かに、俺らしくないな

教官は、少しだけバツが悪そうに苦笑いする。

石神
だが‥これが俺の本心なんだ

サトコ
「教官‥教官も、もっと私に頼ってください。私、教官の事受け止めますから!」

石神
‥普通、そういうのは男が言うものじゃないか?

サトコ
「そ、そうですか?」

石神
まぁ‥氷川らしいといえば氷川らしいな

石神
それじゃあ、俺は仕事が残っているから戻る‥また、後で

教官はそう言って資料を取ると、早々に資料室を後にした。

(夜になったら、教官とふたりで会えるんだ‥)

サトコ
「‥よし!もうひと踏ん張り!」

私はそう奮起し、最後の作業にとりかかった。

ポイントサイトのポイントインカム

夜になり、私は石神教官の部屋に向かっていた。

(明日の準備も無事に終わったし‥今日はゆっくり話ができるといいな)

サトコ
「あっ‥」

石神
氷川か

サトコ
「石神教官‥」

(と、後ろにいる人たちは誰だろう‥?)
(教官、すごく複雑そうな顔してるけど‥何かあるのかな?)

石神
氷川。こちらは明日の視察にやってきた方々だ
今日は寮の視察も兼ねて一泊されることになったらしい

サトコ
「初めまして。氷川サトコと申します」

男1
「ほう、この子が数少ない女子生徒のひとりか‥」

男2
「キミみたいな可愛い子が、公安を目指しているのか」

(うっ‥なんだか、視線が‥)

石神
‥氷川、突然ですまないが案内を頼んでもいいか?

(あ‥だから、あんなに複雑そうな顔してたんだ‥でも仕事だし‥仕方ないよね)

サトコ
「はい!」

石神
すみません。私はまだ仕事が残っていますので、あとはこちらの氷川が案内します

男2
「氷川‥確か、キミの補佐官だったか」

石神
はい。優秀な補佐官ですよ

男1
「そうか‥それは楽しみだ」

石神
それでは、私は失礼します‥氷川、後は頼んだぞ

石神教官はこの場を私に任せ、部屋を出ていく。

サトコ
「それでは、ここから先は私が案内しますね」

私はなるべく笑顔になるように努めて、案内を始めた。



寮の案内が終わると、そのまま居酒屋で接待をした。

サトコ
「はぁ‥散々な目に遭った‥」

(肩を抱かれたり、腰を引き寄せられたり‥うわさ通りの、セクハラおやじだった‥)
(石神さんの手前、我慢したけど‥明日もあの人たちの接待をするのか‥)

お偉い方を寮に送り届けた私は、教官室に向かっていた。

(石神さんに文句のひとつでも言ってやりたいけど‥)

結局、気づいたら差し入れのプリンを律儀に購入している自分がいた。

教官室を覗くも、そこには誰もいなかった。

(もう0時近いし、やっぱり帰っちゃったかな‥)

私は肩を落としながら教官室を出る。

(プリンどうしようかな)
(今から石神さんの部屋に行っても、きっと明日に備えて休んでるだろうし‥)

いつも見慣れている廊下だったが、暗いというだけで恐怖心を煽られる。

(うぅ、なんだか怖いな‥早く帰ろう)

足早に廊下を歩くと、カタンッと物音がした。

サトコ
「っ!!」

(い、いま、なんか音したよね‥!?この曲がり角の先かな‥)

私は恐る恐る曲がり角から顔をだし、音がした方を見る。

サトコ
「あれ?あの教室‥明かりが漏れている」

(誰かいるのかな?)

明かりが漏れている教室まで行くと、私は意を決してドアを開いた。

サトコ
「あっ‥石神教官!?」

石神
氷川‥?

(どうして、石神教官がここに‥?)

to be continued

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする